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農林水産省

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  • aff11 NOVEMBER 2021
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砂糖の原料「てん菜」と「さとうきび」の生産現場をのぞいてみよう!

写真

国内で生産される砂糖は、主にてん菜とさとうきびからできています。今回は、北海道のてん菜生産現場と、沖縄県のさとうきび生産現場でそれらの栽培についてお話を伺うとともに、製糖工場での砂糖の製造についても紹介します。

てん菜が砂糖になるまで

砂糖の原料となるてん菜(ビート)は、砂糖大根とも呼ばれ、北海道の畑作地帯で作付けされています。令和元砂糖年度(2019年10月から2020年9月)の国内産糖の生産(供給)量は788千トン。その内てん菜糖が650千トンとおよそ8割を占めています。
今回は、北海道網走郡津別町でてん菜を栽培するJAつべつの有岡敏也さんに、その栽培プロセスと、大型収穫機の導入による省力化の取り組みや、ICT技術を活用したスマート農業の推進について伺いました。

てん菜の栽培プロセス

てん菜の栽培方法には、移植栽培(育てた苗を畑に植える方法)と直播栽培(畑に直接種を蒔く方法)の2種類があります。

1苗の育成・植え付け
(移植栽培の場合)

移植栽培では、毎年3月上旬からハウス内で苗を育成。4月末頃、育った苗をトラクターで畑に植え付ける移植作業を行います。
てん菜は栽培期間が長いほど収量と糖分が増え、製糖工場による買い上げ価格が高くなります。そこで、北海道では1960年代から、雪に覆われた時期でもハウス内で育苗することで栽培期間を延長することが可能となる、移植栽培の技術が取り入れられました。

苗ポットに種を植え付け。

2種まき
(直播栽培の場合)

苗を使わない直播栽培では、4月中旬から下旬頃、トラクターに取付けた播種機で畑に種を蒔きます。
移植栽培では1日2ヘクタール前後しか植え付けることができませんが、直播栽培では1日5ヘクタールから6ヘクタールもの農地に種を蒔くことができます。

播種機による種まき。

3中耕・防除

5月中旬、葉が大きくなりすぎる前に、畝と畝の間を耕す中耕作業を行います。耕すことで雑草対策になるほか、土が柔らかくなり空気や水の通りが良くなります。
その後、タイミングを見て除草剤や殺菌剤などを散布する防除作業を行います。中でも、カビの一種によって引き起こされる褐斑(かっぱん)病対策が重要。褐斑病はてん菜の大敵で、高温・多湿の環境で発生しやすく、葉に小さな斑点ができて徐々に広がり、葉が枯れ落ちて収穫量が下がったり、収穫後のてん菜に含まれる糖分の割合が減少するなど、深刻な被害に繋がります。
防除は製糖会社(日本甜菜製糖(株))と協力して行います。同社の専門スタッフが常日頃から畑を巡回し、その年の気候に応じた防除のタイミングなどを生産者にアドバイスします。

防除作業。

てん菜の病害「褐斑病」。写真提供:北海道農産協会

4収穫

収穫は10月上旬から11月上旬までに行います。従来は各生産者がトラクターに収穫機をつけて1畝ずつ収穫していましたが、JAつべつを含む4農協では2017年からドイツの大型収穫機「テラドス」を導入し、一度に6畝を収穫できるようになりました。これにより、1日の収穫面積は従来の約2ヘクタールから約10ヘクタールへと大幅にアップして、農作業の効率化に繋がりました。

ドイツの大型収穫機「テラドス」と収穫後のてん菜。

Point

ICT×農業で
てん菜の病害を防除

JAつべつでは、2019年度からNTTドコモなどと協力してスマート農業の取り組みを進めています。2021年度はてん菜栽培における褐斑病対策もスタート。ドローンとトラクターに積んだカメラでてん菜の葉を撮影し、AIで画像を分析して褐斑病を見つけます。
現在は病斑が2ミリメートルから3ミリメートル程度の段階で発見できますが、赤外線カメラなどの活用により、病斑が現れる前の段階で見つけられるように実験中です。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

JAつべつ経済部営農課審査役 MRマネージャー

有岡 敏也 さん

JAつべつでは、ハウスで育てる前の苗作りや収穫委託業務、スマート農業の推進など、あらゆる側面から生産者を支えています。「ダイエットブームの影響で敬遠されがちな砂糖ですが、重要なエネルギー源として食料の基礎を支える役割を担っています。私たちは国内はもちろん、海外の方々も含めて消費拡大に貢献していきたいと思います。多くのみなさんに砂糖の良さを知って欲しいですね」と有岡さんは語ります。

てん菜が加工されて
砂糖になるまで

収穫されたてん菜が工場に運ばれてから、1日かけて砂糖が出来上がります。複数の工程を経ることで茶褐色の糖液が透明になり、サラサラした純白の砂糖へと生まれ変わるのです。

1てん菜の搬入・裁断・
滲出

収穫したてん菜は、葉を切り落として根部だけを製糖工場に搬入し、一旦受け入れ施設(ビートビン)に蓄えます。その後、水を利用して工場まで洗浄しながら移送されます。工場では土砂などの付着物をさらに洗浄機を用いて除去し、その後細長く裁断します。
裁断されたてん菜は滲出塔に運ばれ、そこで70度前後の湯に浸して糖分を抽出します。

集めたてん菜をビートビンに投入。この後、水流に乗せて、洗いながら工場内へ流し込みます。

裁断後のてん菜。4ミリメートルから5ミリメートル幅に細長く裁断されたてん菜は、「コセット」と呼ばれます。

2清浄・精製・濃縮

抽出された糖液の不純物を取り除くため、清浄工程では、抽出後の糖液に含まれる非糖分(不純物)を炭酸カルシウムに吸着させ、ろ過器に通すことで除去。その後さらにイオン交換樹脂に通すことで純度の高い糖液を精製していきます。
次に、この糖液を濃縮缶に移して煮詰め、水分を蒸発させて、約15パーセントだった糖の濃度が約60パーセントになるまで濃縮します。

ろ過器で非糖分(不純物)を除去。

イオン交換樹脂にて、イオン性非糖分を吸着除去。

3結晶化・分蜜・
乾燥・包装

濃縮した糖液を結晶缶に移してさらに濃縮した後、核となる粉糖を投入し、結晶を作ります。この結晶と糖蜜が混ざった液体を分蜜機に移し、遠心力で結晶を分離。結晶の表面に残った蜜を水で洗い流し、大型ドライヤーで乾燥させて冷却させた後、ふるい掛けして粒を揃え、袋詰めして出荷します。

分蜜機で砂糖と糖蜜を分離。

4完成

サラリとした甘さで、料理から菓子作りまで幅広く使えるグラニュ糖が完成します。
他に、オリゴ糖シロップ「北海道ビートオリゴ」や、美幌製糖所のみで生産される「ビート含蜜糖」など、てん菜の成分や風味を生かした製品も製造されています。

グラニュ糖
ビート含蜜糖

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

日本甜菜製糖(株) 技術部次長(製造担当)

高谷 元幸 さん

1989年入社。士別製糖所、芽室製糖所勤務を経て2003年から本社技術部。砂糖などの生産管理業務にあたる。
入社3年目に商品開発に携わった「北海道ビートオリゴ」は、コーヒーやヨーグルトはもちろん、煮物などの料理にもよくあい、高谷さんの一番の愛用品。

さとうきびが砂糖に
なるまで

砂糖の原料となるさとうきびは、沖縄県や鹿児島県南西諸島の農業と地域経済を支える重要な作物です。しかし、沖縄県においては、1990年に2万ヘクタールあった収穫面積が2020年には1.3万ヘクタールへと減少しており、その原因の一つとして考えられるのが、生産者の高齢化などによる担い手不足です。今回は、沖縄県本島南部にある南城市でさとうきび生産を受託している「農業生産法人(有)大農ファーム」の新垣智也さんに、その栽培のプロセスとあわせて、地域の生産者を支える取り組みについて伺いました。

さとうきび栽培の
プロセス

さとうきびの植え付けには大きく春植えと夏植えの2種類がありますが、沖縄県南部では春植えが主流です。さとうきびは、1年目に新たに苗を植えて育てる新植栽培を行いますが、2年目以降から数年間は、収穫後の残株を活かして育てる株出し栽培へ切り替えます。

1畑の天地を
入れ替えてから耕す

春植えの新植栽培の場合、収穫後の1月から3月頃、雑草の種が残った畑の表面の土と状態の良いその下層の土を入れ替える「天地返し」を行い、その後、畑をトラクターで耕し肥料を入れます。天地返しを行わない場合もありますが、新垣さんは雑草対策として有効なので行っています。

パワーショベルによる天地返し。

2苗刈り・植え付け・
防除

苗用に育てたさとうきび(約1.5メートル)を斧で1本1本倒す「苗刈り」を行い、20センチメートルから30センチメートル程度にカットして苗を作ります。
植え付けは苗を畑に挿すこともありますが、現在は畑の畝の溝部分に苗を並べて土を被せる方法が主流です。苗用のさとうきびの刈取りから植え付けまではトラクターと農業機械で一気に作業することも可能ですが、前年度の台風の影響などでさとうきびが斜めに生えていたり絡まったりしているため、苗刈りは手作業が主流です。また、このタイミングで害虫対策として薬剤による防除を行います。

植付機で苗をカットしながら畝の溝に並べ、土を被せる。

3培土(ばいど)・除草

植え付けの1か月から2か月後、台風の季節の前に培土作業(株元に、土を厚く被せること)を行います。耕運機で畝を崩し、溝に植えつけた苗から伸びてきた新芽の株元に土を被せて畑を平らにすることで、さとうきびが成長していきます。
その後は、雑草対策が重要です。さとうきびの生育が悪くなるだけでなく、収穫したものに雑草が多く混ざっていると製糖工場の受け入れが困難になるためです。

成長したさとうきびの間に入り、培土作業を行う。

4収穫・製糖工場へ搬入

春植えの場合、植え付けから約1年たった1月から3月頃が一番忙しい収穫期になります。手作業の場合は、さとうきびを斧で倒しますが、人の背丈以上に育ったさとうきびを畑から引き出すだけでも重労働です。そのため、現在は搬出まで行うハーベスタという農業機械を利用する生産者が増えています。
刈り入れたさとうきびは、運搬業者によって製糖工場へと運ばれます。

ハーベスタによる収穫。

Point

自社農場経営で
繁忙期の人材を確保!

さとうきび生産で一番の繁忙期となる収穫時期の受託作業が(有)大農ファームの主な事業。
生産者からの依頼を受けて、苗刈りなどの手作業からハーベスタなどの農業機械を用いる作業まで幅広く対応しています。
さとうきび生産の現場では人手不足が深刻。同社は主に繁忙期の重労働を農業機械と人の両面からサポートすることによって、地域のさとうきび生産を支えます。
繁忙期に安定的に人手を確保するためには、季節雇用に頼らずスタッフを通年雇用する必要があります。同社では自社農場を増やしてさまざまな作物を生産し、繁忙期以外にも働ける仕組みを整えています。現在は、沖縄銘菓の原料となる紅芋を中心に生産していますが、単価が高いパパイヤにも挑戦中。

自社農場はスタッフ研修の場としても活用。同じ農業機械でも操縦者の技術によって収穫率が大きく変わるため、自社農場で訓練を積み、技術をしっかり身に付けてから各生産者の畑へ出向きます。

高い技術力で地元の生産者をサポートし、雇用を生み、新たな作物の生産にもチャレンジ。自社農場の経営が、地域のさとうきび生産を支える秘訣です。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

農業生産法人(有)大農ファーム 代表取締役社長

新垣 智也 さん

さとうきびの生産工程を請け負う受託会社。受託事業の他にも自社農場でさまざまな作物の生産を行う。父の急逝に伴い23歳の時に事業を継ぐ。農業のことなど何も分からない状態の中、会社を守るために関係機関が開催するセミナーや会合などにも積極的に参加し、さとうきびの生産について学ぶ。現在は地域の生産者から「あなたたちのお陰でさとうきび作りが続けられる」と頼りにされる存在に。

さとうきびが加工されて
原料糖になるまで

沖縄県にある製糖工場は、原料糖である分蜜糖の工場が9か所、含蜜糖(黒糖)工場が8か所あります。さとうきびの搾り汁を煮詰めてそのまま固めたものがいわゆる黒砂糖。搾り汁から結晶を起こして分離した「分蜜糖」は、精製工場で上白糖やグラニュー糖へと加工されます。今回は分蜜糖を作っているゆがふ製糖(株)の工場での生産工程を紹介します。

さとうきびから作られる(左)粗糖、上白糖(スプーン)(右)黒糖

さとうきびから作られる(上)粗糖、上白糖(スプーン)(下)黒糖

1搬入・品質測定・裁断

搬入されたさとうきびは、生産者(トラック)毎に計量した後、夾雑物(トラッシュ)や糖度などを測定し、品質を見極めます。その後、原料ヤード内にさとうきびを受け入れ、工場内へと運び込み、裁断機で細かく砕きます。

さとうきびはトラック毎に計量。

2圧搾・抽出・清浄

細かく砕かれたさとうきびを圧搾機に投入し、「糖汁」を搾汁します。糖汁をジュースヒーターで加熱して連続沈殿槽に移し、不純物が沈殿したら上澄み液を回収します。この糖汁が「清浄汁」と呼ばれます。

さとうきびを圧搾。

3濃縮・結晶・
分離・原料出荷

清浄汁は5つの濃縮缶を経て加熱され水分が蒸発して濃縮し「シラップ」と呼ばれる濃度の高い液体になります。これに核となる砂糖の結晶を加え、結晶が大きくなるまで煮詰めていきます。
煮詰めてできた砂糖の結晶と蜜が混ざった状態の「白下(しろした)」を遠心分離機にかけ、糖と蜜に分離します。ここで分離した糖が「原料糖(粗糖、分蜜糖)」です。シュガービンに詰め、精製工場へと運びます。

4時間から5時間かけてじっくり煮詰めます。できた原料糖は船で県外の精製工場へ出荷。1隻で約1500トンを輸送します。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール写真

ゆがふ製糖(株)

沖縄本島全域のさとうきびを扱う製糖工場。「生産農家と共に」をスローガンに増産に取り組んでいる。 「ゆがふ」は、沖縄の言葉で「世界の幸せ」や「素晴らしいこと」という意味があり、「豊年」や「五穀豊穣」の願いが込められています。

砂糖の魅力

編集後記

小学1年生のときに、沖縄に親戚のいるクラスメイトが給食の時間にクラス全員にさとうきびを振る舞ってくれたのを覚えています。かじるとジューシーで、優しい甘さで、こういった植物から砂糖が作られているのかと、とても驚いたものです。生産者の方々が日々丹精を込めて作るさとうきびやてん菜から私たちの食卓に欠かせない砂糖が作られているのですね。(広報室AY)

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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