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農林水産省

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  • aff03 MARCH 2022
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輸入規制の廃止や技術開発で日本産食材の輸出拡大を支える

みかん畑

日本産の野菜や果実は、その美味しさや品質が評価されて海外でも人気を博しています。しかし、国や地域によっては、さまざまな理由から日本の農産物に対する輸入規制を設けている場合があるため、規制の撤廃を目指して、政府一丸となって、粘り強い協議が行われています。また、長期輸送過程における鮮度の保持も課題であり、さまざまな技術の開発が行われています。
本特集では、輸出拡大を後押しする多面的な取り組みを紹介します。

うんしゅうみかんの
美味しさを
和歌山からベトナムへ

うんしゅうみかん生産量日本一を誇る和歌山県のブランド「有田みかん」。

2021年11月、うんしゅうみかんの生産量日本一を誇る和歌山県の有田地域では、トップブランドである「有田みかん」のベトナムへの輸出に向けた出発式が行われ、同国に向けておよそ2トンの有田みかんの輸出を実現しました。数多くの困難を乗り越えたその道のりに迫ります。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール画像

ありだ農業協同組合 営農販売部

上田 浩晶 さん

1999年に有田地区の6つの農業協同組合が合併して発足したありだ農業協同組合。有田みかんと農業を核にした地域社会づくりへの貢献を目指す。さらに、SNSによる情報発信やファーマーズマーケットの運営にも積極的で、多彩な取り組みを行いながら幅広い世代に向けて有田みかんの魅力を発信。
有田地域出身で営農販売部長を務める上田さんは、生産振興に留まらず、地域の活性化や商品のブランディング、ファーマーズマーケットの運営など幅広い分野で活躍。大のみかん好きで、シーズン中は「常にみかんを食べている」とか。

うんしゅうみかんのベトナムへの
輸出解禁までの道のり

ベトナム向け「有田みかん」の輸出に向けた出発式の様子。

日本を代表する果実のひとつである「うんしゅうみかん」。その魅力は国内にとどまらず、例えばカナダにおいては、クリスマスに大切な人に向けて送る「クリスマスオレンジ」として人気を博すなど、世界各地で愛されてきました。しかし、ベトナムにおいては、同国が侵入を警戒する病害虫が日本国内で発生していることを理由として、これまで日本産うんしゅうみかんの輸入を禁止してきました。農林水産省では、ベトナムへの輸出解禁に向け、同国の植物検疫当局との間で技術的協議を積み重ねてきました。その結果、2021年10月1日より、ミカンバエの発生がないことが確認できた地域で生産されたうんしゅうみかんについて、ベトナムへの輸出が可能となりました。

有田みかんとは?

有田川と有田みかんの畑の様子。

和歌山県有田地域で栽培されるうんしゅうみかんのトップブランド「有田みかん」。その歴史は古く、栽培が始まったのは約450年前と言われています。同地域では、高い観察力を持った生産者の方々が、日々の農作業の中で数多くの優良品種を見出し、多様な品種を育成するとともに、高品質な苗木(2年生・土付き苗木)の育成を行うことで、新品種を速やかに普及させ、自立した産地を形成してきました。温暖で恵まれた気候を活かし、多様な地勢、地質に応じた栽培や品種の選定を行うことで、日本一の生産量を誇る産地となりました。令和3年2月には、「みかん栽培の礎を築いた有田みかんシステム」として、日本農業遺産にも認定されました。上田さんによれば、有田みかんのおすすめの食べ方は「有田むき」。これは、みかんの上部から皮ごと四つに割いたら、実をそのまま口に運ぶ食べ方で、すぐにむけて皮も散らからないそうです。

上部から割いて、パクッ! 手軽に食べられる「有田むき」。

ベトナムへの有田みかんの
輸出に向けた産地での取り組み

ベトナムへの輸出を実現するための主要な検疫条件として、次の5つが挙げられます。

  • 1

    日本の植物防疫所があらかじめ登録した「登録生産園地*」で生産されること

    *ミカンバエが発生している地域から地理的な障壁又は緩衝地帯によって隔てられ、調査によりミカンバエの発生がないことを確認した生産園地のこと。園地内では、県などの指導に基づき、ベトナムが侵入を警戒する病害虫の防除を行うことが必要です。

  • 2

    日本の植物防疫所等により、登録生産園地における病害虫の発生状況を確認するため、ミカンバエおよびミカンバエ以外の検疫対象病害虫のそれぞれについて、指定された方法で調査および検査を行うこと

  • 3

    輸出時期の前に、ベトナムの植物検疫当局により登録生産園地の確認をうけること

  • 4

    日本の植物防疫所が登録した選果こん包施設において選果、こん包が行われること

  • 5

    輸出時に、日本の植物防疫所により、ベトナムが侵入を警戒する病害虫に対する輸出検査が行われること

上田さんによると、特に大変だったことは、登録生産園地での調査および検査だったそうです。
管内の生産者の方々の協力を得て登録した生産園地において、2021年4月から10月の約半年間にわたり、タンク内にエサを入れて害虫を捕まえる「ガロントラップ」を仕掛け、2週間に1回トラップに掛かった虫を回収。さらに6月からは、畑に落ちた未成熟のみかんも回収し、それらを神戸植物防疫所に送ってミカンバエの発生などがないことを確認する作業を続けてきました。

園地に仕掛けられたガロントラップ。

輸出が解禁されるまでには、他にもハードルがあったそうです。例えば、国内流通用のみかんの段ボールには取っ手と通気口があり、輸送の過程で害虫が入ることが懸念されました。しかし、穴を完全に塞いでしまうと、果実が早く劣化してしまう恐れがあります。そこで、ありだ農業協同組合の皆さんと和歌山県の職員の方々で、みかん2トン分の段ボールに、ひとつひとつ手作業でメッシュのシールを貼り付けて穴を塞ぐ作業を行ったそうです。 こうした粘り強い取り組みのかいもあり、2021年11月に、管内の登録園地で生産された有田みかん2トンの輸出が実現しました。

ひとつひとつ手作業で行われた、メッシュシール貼り付け後のダンボール。

現地での反応や今後の展望

初回輸出分の2トンの有田みかんは、現地において2週間で完売しました。「日本のみかんはおいしい」「大切な人に送りたい」と、現地の方々から好評だったそうです。同組合では、2022年の秋より、さらに本格的にベトナムへの輸出を行っていく予定です。さらなるブランド力向上を目指し、通常のパックに加え、ギフト用の化粧箱の作成を検討しているそうです。上田さんは、「ベトナムの皆さんにはまず『有田みかんは美味しい』と知って頂き、さらにブランドの認知を広めた上で『大切な方への贈り物』としても愛されるような商品にしていきたいですね。」と語ります。

ベトナムの店舗での有田みかんの販売の様子。

高品質な
「日本産」をアピール!
富士山印の
「日本産果実マーク」

「日本青果物輸出促進協議会」のロゴマーク

農林水産省では、海外市場において、高品質な日本産の果実であることをバイヤーや消費者が一目で識別できるようにするため、日本産果実の輸出に関する統一的なブランドマーク「日本産果実マーク」を発行しています。このマークを、輸出する果実や訪日外国人観光客等が購入する果実等に貼り付けて表示することで、日本産果実のアピール、ブランド力の向上に役立てています。
また、日本産果実マークは、果実・野菜の輸出促進を一層強化していくことを目的として設立された「日本青果物輸出促進協議会」のロゴマークとしても使用されています。協議会が行う、国内・海外における展示会、セミナー等において、このマークを使って事業が展開されているなど、さまざまな場面で大いに活躍しています。

野菜も果実も長持ち!
MA包装で輸出青果物の
鮮度をキープ

日本の高品質な野菜や果実を、海外の方にも美味しく食べてもらえるよう、産地から現地の消費者のもとに届くまでの過程において、鮮度を保持するためのさまざまな技術が開発されています。ここでは、青果物の呼吸を利用して鮮度を保つ「MA包装」について紹介します。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール画像

住友ベークライト(株) フィルム・シート営業本部
P-プラス・食品包装営業部

坂口 真俊 さん

日本のプラスチック事業の草分けとして、長年蓄積してきた専門技術と最新の設備を用いて、食品の流通に欠かせない包装資材を開発。同社の包装資材「P-プラス®」は、販売開始から2022年で30年を経過する。坂口さんは、「P-プラス®」グループリーダーを務める。

美味しさを長時間キープする
「MA包装」とは?

MA包装を活用した枝豆の包装。

青果物は、収穫後も呼吸を行いながら成熟が進みます。このため、時間の経過とともに、美味しさや栄養、見た目などの品質が低下してしまいます。青果物を輸出する場合、国内の産地から航空機やコンテナ船に運ばれ、さらに輸出先の輸送拠点を経由して現地の消費者の元に届くまでに数十時間を要することから、できるだけ長い時間鮮度を保つことが必要になります。
そこで役立つのが、MA(Modified Atmosphere)包装の技術です。これは、外気の透過を抑制することで青果物の呼吸を低下させ、パッケージ内を「低酸素、高二酸化炭素」状態にして鮮度を保持する技術です。青果物の呼吸によって徐々にパッケージ内の酸素濃度が低下し、青果物が冬眠状態になることで品質低下のペースをゆるやかにすることができます。MA包装に青果物を包んで封をするだけでよく、特殊な機器を導入する必要はありません。
MA包装によって青果物を長期間フレッシュな状態で保てるため、輸出できる範囲が広がったり、日本産青果物のブランドイメージ向上にも繋がります。

パッケージ内の酸素量コントロールが鮮度保持のポイント。

見えない穴で青果物の鮮度を保つ
「P-プラス®」

MA包装のひとつで、小さな穴が青果物の呼吸量を緻密にコントロールし、より長く鮮度を保つことができる包装資材「P-プラス®」を紹介します。

「P-プラス®」で包装したメロンの様子。

「P-プラス®」は同社が開発したMA包装用の資材で、フィルムに極小のミクロの穴(髪の毛の直径程度)が開いています。穴のサイズや数を調整することで、流通環境や青果物の種類に合わせて、パッケージ内外を行き来する酸素や二酸化炭素の量を適切なバランスにコントロールする仕組みです。P-プラス®を活用することで、無包装の場合と比べて、鮮度保持期間を大幅に伸ばすことができたそうです。
輸出においては、高価格帯の果実の包装資材として活躍しており、特にメロンやブドウはツルが枯れにくくなることで、見た目でも鮮度の高さがわかり、値崩れしにくくなるというメリットが期待できます。

鮮度を保持できる期間が伸び、青果物の輸出拡大を支える。

およそ30年前にヨーロッパから持ち込まれた技術を元に、日本の気候や輸送状況、作物の特性に合わせて酸素や二酸化炭素の量をコントロールするために、数多くの試行錯誤を重ね、現在のP-プラス®の形になったそうです。
同社は、東京都中央卸売市場の大田市場と大阪市中央卸売場に評価センターを設置しており、市場や農業協同組合、量販店の協力を得て鮮度保持に関わる調査や試験に長年取り組んでいます。過去30年で取得してきた7000件以上にも及ぶデータは、豊富な知見の蓄積として商品開発に活かされ、青果物のさらなる輸出拡大を支えています。

坂口さんに聞きました!

P-プラス®は家庭用にネットで小売り販売もしています。オススメの使い方はバナナの保存。本当に黒くならないんですよ!

東京電力福島第一原子力発電所
事故に伴う
日本産農林水産物・食品に
対する輸入規制の
撤廃に向けた政府の取り組み

2011年に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故後、55の国・地域が日本産農林水産物・食品に対して輸入規制措置を講じました。しかし、政府一丸となった食品の安全性確保に向けた取り組みや、農林水産大臣を本部長とする「農林水産物・食品輸出本部」の下、各国・地域への粘り強い働きかけが実を結び、2022年3月現在、41の国・地域が輸入規制を撤廃しています。
例えば、日本産農林水産物・食品の輸出額が第3位である米国も、事故発生時より、福島県産のコメや原木シイタケに輸入停止措置を講じてきました。農林水産省や外務省をはじめとして政府が一体となって、米国政府に対して、科学的根拠に基づいた輸入規制の撤廃を働きかけました。その結果、2021年9月22日をもって、事故発生時より続いていた、米国による日本産農林水産物・食品の輸入規制が撤廃され、福島県産のコメや原木シイタケについても輸出が可能となりました。

また、日本産農林水産物・食品の輸出額が第4位である台湾も、2022年2月21日をもって、これまで輸入停止となっていた福島県、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県産食品について、きのこ類や野生鳥獣肉などを除き、放射性物質検査報告書および産地証明書の添付を条件に輸出が可能となりました。

農林水産省では、輸入規制を維持する国・地域に対して、あらゆる機会を捉え、輸入規制の早期撤廃に向け、科学的根拠に基づいた働きかけをより一層行っていきます。

おいしさを世界へ 日本産食材の輸出

編集後記

昨年10月にベトナムへの輸出が解禁された和歌山県産のうんしゅうみかん。輸出解禁の背景には、生産者やJAの皆さん、和歌山県の皆さんの熱意とご尽力がありました。ミカンバエをはじめとした検疫対象病害虫を確実に排除してミカンを送り出すまでは、とても気をつかう毎日だったと思います。そんな課題を乗り越えて日本の美味しいみかんは世界の食卓で食べられているのですね!(広報室KM)

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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