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農林水産省

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  • aff04 APRIL 2022
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新茶の季節を楽しもう! 私のためのお茶時間

画像:ブレケル・オスカル氏がお茶を入れているところ

4月から新茶シーズンが本格化してきます。爽やかな香りとうま味たっぷりの美味しいお茶が楽しめるこの季節に、普段慣れ親しんでいる緑茶を一層美味しくする淹れ方(いれかた)や、海外の方の視点から再発見する日本茶の魅力を紹介します。

ブレケル・オスカルさん
に聞く
“日本茶の魅力”

昨今、日本文化の浸透とともに日本茶は海外にも普及しています。今回は、スウェーデン出身の日本茶インストラクター ブレケル・オスカルさんに日本茶の魅力や日本茶との出会いなどについてお話を伺いました。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール画像

日本茶インストラクター

ブレケル・オスカル さん

1985年、スウェーデン生まれ。高校時代に日本茶に出会い、そのとりこに。日本茶を学ぶため、スウェーデンのルンド大学で日本語を習得し、2010年に岐阜大学へ留学。2013年に再来日し、2014年に「日本茶インストラクター」の資格を習得。日本茶輸出促進協議会での勤務を経て、現在は日本茶セミナーやイベントの講師をしながら、国内外に日本茶を紹介する活動を続けている。

Q1

日本茶に興味をもった
きっかけを教えて下さい。

A1

きっかけは高校の世界史で学んだ明治時代の近代化。古い考え方や生き方が新しい思想とぶつかり合い、新しい文化が生まれる過程に興味を持ちました。それで身の回りを見渡すと、テレビはシャープ、ステレオはソニーと日本製のものに囲まれていることに気づいたんです。好奇心から図書館で日本に関する本を読み始め、“侘び寂び”の文化のことを知り、出会ったのが岡倉天心の「茶の本」。お茶のためにわざわざ作法を覚えたり、専用の茶室を作ったりすることに衝撃を受け、一度でいいからこの部屋に入ってみたいと思いました。

写真:インタビューを受ける様子
Q2

初めて日本茶を飲んだ時の
感想を教えて下さい。

A2

18歳の時、スウェーデンの紅茶専門店で購入した煎茶を飲んだのが初めてですが、手探りで淹れたせいか美味しくなかった。青臭く、渋くて、苦いという印象でした。紅茶をよく飲む家庭で育ったため、熱湯で淹れ、時間を置いてしまったのが良くなかったのです。しかし、急須などの道具を揃えたり、煎茶に適した温度があることを調べたりしながら何度も飲み重ねていくと、山々や森林を思わせるような自然の香りやすっきりとした後味を感じ、美味しいと思うようになっていきました。

写真:日本茶一式
Q3

日本茶の魅力や、一番印象に
残っているお茶を教えて下さい。

A3

美味しいという味わいはもちろんですが、それ以上に、美しく、緑に溢れた風景へとトリップさせてくれる日本茶ならではの自然の香りでしょうか。忙しい日々を送る現代人の精神をリセットさせてくれるものですよね。一番印象的だったお茶は、日本での留学生活の終盤に東京表参道の日本茶専門店『茶茶の間』で出会った「東頭(とうべっとう)」です。標高800メートルほどのところで作られているお茶で、甘み、うま味の奥にこれまで感じたことがない独特の香りがあり、余韻がしっかりと長く残ることに感動しました。改めて日本茶に向き合うきっかけになったお茶です。

写真:橋の上に立つブレケル氏
Q4

国内外での活動を通じて
感じたことを教えて下さい。

A4

日本に来て驚いたのは、お茶はよく無料のサービスとして出ているため、ワインや紅茶などの嗜好品と比べると“安い飲み物”とされ、お茶の価値が低いこと。一方海外では、「お茶」=「抹茶」や「茶道」という認識です。そういったイメージと戦い、日本ではお茶の価値観を上げ、海外では知名度がまだ低いリーフの日本茶(煎茶など)の情報や楽しみ方を伝えていくのが、活動を通して感じる大変さですね。

写真:外を歩くブレケル氏
Q5

これから挑戦してみたいことは
ありますか?

A5

私は日本茶インストラクターになるため、まず日本語を覚えるところからスタートしました。この資格を取るための情報が現在日本語に限られているので、今後は他の言語でも勉強できるような教育体制が整えばいいなと思っています。その手助けとなるべく、より多くの国々で日本茶に関する情報を発信できるよう、私の日本茶の著書もさまざまな国(言語)で出版していきたいですね。またシャトーのワインやシングルモルトのウイスキーなどと同じように個性が楽しめる、いわゆるシングルオリジン (特定の農園で栽培された、特定の品種のみでつくられた茶)の日本茶を中心に2018年からティーブランドを立ち上げました。生産量は少ないのですが、日本茶の嗜好品としての可能性が垣間見えるとても面白い分野です。

写真:急須でお茶を入れているところ
Q6

日本茶を美味しく淹れるための
工夫について教えて下さい。

A6

日本茶を美味しく淹れるためにはやはり急須を入手することをおすすめします。出来れば温度の調整も簡単にできるように湯冷ましという器まで用意しておくとベストです。それが、気持ちが豊かになるような美しい茶器だとよいですね。例えばこの急須は愛知県の常骨焼ですが、藻掛けという手法で焼いているため、2つと同じ柄のものがない。そんな茶器を愛でながら淹れるお茶は格別です。

写真:急須を眺めるブレケル氏

取材協力

外観画像

取材協力

ホテル椿山荘東京 料亭 錦水
「残月」

千利休の屋敷にあった「残月亭」を模して造られ、国の有形文化財に登録されている茶室「残月」。侘び寂びの風情を感じることができる茶室。

自宅で楽しむ
緑茶の美味しい淹れ方

画像:茶葉

普段何気なく淹れているお茶も、湯の温度調整や注ぐ順序などで一層美味しく味わうことができます。今回は静岡県で茶問屋を営む茶師の前田文男さんに、お茶の魅力や美味しい緑茶の淹れ方について教えていただきました。

今回教えてくれたのは・・・

プロフィール画像

やまはち (株)前田幸太郎商店

前田 文男 さん

1960年静岡県生まれ。大学卒業後、電気メーカーに就職するが、1985年に祖父の後を継ぎ創業96年の静岡県老舗茶問屋「前田幸太郎商店」入社。茶師として、こだわりの茶の製造・販売などを行いながら、日本茶に関するイベントなどで講師としても活躍。全国茶審査技術大会では史上初の十段を取得。

(※全国のお茶の産地や品種、茶期(茶を畑から摘みとる時期)を、茶葉の形や香りだけで判別したり、実際に飲んで産地を判別したりする競技。優勝者には農林水産大臣賞が授与され、得点により最高十段位までの段位も授与される。)

Q1

茶師を目指したきっかけを
教えて下さい。

A1

茶師の仕事を始めて今年で35年になります。茶師とはお茶の仕事に関わる人全般を指すのですが、茶葉を生産者の方々から仕入れて、火入れ、合組(ごうぐみ ※ブレンドすること)などを行い製品にして、卸業者や小売店などに卸すというのが主な仕事です。学生の時は消防士になろうと思った時期もありましたが、祖父からの「茶師に」という想いを受け、目指すようになりました。当初はどんなお茶を仕入れたらいいかもわからなかったのですが、とにかくお茶をよく見て、茶葉の香りをかぐということを続けました。そうすると徐々にですが、いいお茶を感覚的に理解できるようになったのです。

出荷を待つ茶箱と前田さん。

Q2

日本茶の魅力はどのような
ところにあると思いますか?

A2

茶葉の種類や摘む時期、また製法の違いによって、さまざまな香り、味、うま味を楽しむことができることです。製法では、例えば日本茶特有の蒸すという工程でも、深蒸しや浅蒸しといった時間の差で香りや味わいが違ってきます。更にそれらをブレンドすることによって楽しみ方が大きく広がるので、幅広い好みに対応できるのも魅力だと思います。また、飲むことでリラックスできるのもいいですね。

茶葉の香りを確かめる。/茶葉の「火入れ」の様子。

Q3

茶師のお仕事の中でこだわって
いることを教えて下さい。

A3

厳選した産地から仕入れる茶葉の個性をうまく生かしながら、理想のブレンドを作っています。目指すのは、飲んでホッとできる、ゆるやかな優しい味と香り。そして欠かせないのが“品格”です。見た目が青々としていても、火入れをした時に青臭くならないか、コクが出るかなどを仕入れの際に見極めたり、強い火入れを好まれるお客様のオーダーにも燻したような香りにならないよう品を保ちつつ、インパクトが残るような火入れをするなど、ひとつひとつの作業工程でお茶の魅力を引き出していくことを心がけています。

火入れした茶葉。ふわっと緑茶の香りが漂う。

Q4

これから挑戦してみたいことは
ありますか?

A4

お茶はまだまだ食事についてくる「おまけ」というイメージがあります。嗜好品としてじっくり味わってもらえるよう、幅広い年齢層にお茶の魅力を発信していきたいです。年によってお茶の出来が違うという難しさもありますが、お客様の声をきちんと聞いて、柔軟さを持ちながらいいお茶を提供していきたいです。

Q5

緑茶の美味しい淹れ方を
教えて下さい。

A5

ポイントはお茶を淹れる時のお湯の温度。お湯が熱ければ、苦味や渋味成分であるカテキンが強くでてきてしまうのですが、お湯を冷ますことで、カテキンの抽出が減り、テアニンといううま味成分が前面に出てきます。あまり苦味や渋味がないのも物足りないですが、香りやうま味も含め味わいのバランスがうまく取れるお湯の温度は約70度です。また、急須の最後の1滴が「ベストドロップ」と言われ、うま味が凝縮されているので、最後の1滴まで注ぎきることが大切です。

お茶の道具。

前田さんがおすすめする
美味しい緑茶(煎茶)の淹れ方

お茶は一度淹れたあとでも、湯の温度を変えて何度か楽しむことができます。 その都度お湯の温度にこだわり淹れることで、異なる美味しさのお茶がいただけます。

お茶の味わいの変化

1煎目:甘み・うま味を強く
感じられる

2煎目:うま味と苦味がバランスよく
感じられる

3煎目:すっきりとした味わい

前田さんがおすすめする1煎目から3煎目までの美味しい淹れ方を教えていただきました。

日本茶を愉しむ

編集後記

おいしいお茶は、湯の温度。いや、わかってるんです。わかってるんですけど、難しくないですか?もちろん、茶事は全ての手間に意義があることは承知の上ですが、この70度とか、玉露の60度とかをもっと簡単に、それこそお湯を沸かす一連の手間の中で実現できる方法を、どなたか編み出してくださいませんかね。(広報室YT)

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お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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