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aff 2023 MARCH 3月号
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廃校再生プロジェクト

廃校再生プロジェクト

第10回 THE 610 BASE(ムトベース)[京都府福知山市] 第10回 THE 610 BASE(ムトベース)[京都府福知山市]

地域と人を結び
たくさんの笑顔を生む
体験型農業施設

京都府北部、福知山市の中心部から車で20分ほど。旧中六人部(なかむとべ)小学校は、山々に囲まれ田畑が広がる自然豊かな中六人部地域にあります。いちご摘みができる体験型農業施設「THE 610 BASE(ムトベース)」に生まれ変わったのは、2020年10月のこと。廃校に再び人が集うようになり、地域活性化の拠点となっています。

農業で
地域の課題解決に挑戦

旧中六人部小学校

少子化が加速する福知山市では、2012年度から2020年度まで小学校の統廃合が進み、16校が廃校になりました。中六人部小学校もその一環で2018年3月に役割を終えることとなったのです。思い出が詰まった学校跡地をどう有効活用したらいいか、中六人部地域の住民の方々は頭を悩ませていたといいます。そんな折に活用を申し出たのが、福知山市内の電気設備資材卸会社、井上(株)でした。

井上大輔社長

同社の井上大輔社長は、地域密着企業として福知山市の課題解決に貢献できる新規事業はないかと模索していました。社内の意見を聞いたところ、家族や親戚など身近な人たちが営んでいる農業の未来を不安視する社員が少なくないことがわかります。そこで、まったく畑違いの農業に取り組むことを決断。まずは電気事業で培ったIT技術で環境制御できる、いちごのハウス栽培を始めようということになりました。

ビニールハウスをつなげた栽培施設

さっそく農地探しをする中で、廃校活用のアイデアが浮上します。日当たりや広さなどの条件に適していたことから、廃校になって間もない中六人部小学校が第一候補に。跡地活用事業の公募型プロポーザルで「農業を通じて地域課題の解決に挑戦したい」と訴えたところ、熱意が評価され、活用事業者に選定されたのです。2019年12月に市と10年の賃貸借契約を結び、校庭に7棟のビニールハウスをつなげた2,142平方メートルの栽培施設を建設。井上(株)の社員4人で結成したアグリチームのメンバーが農業指導を受け、いちご栽培をスタートさせました。

甘い香りが漂うハウス内

ハウス内の温度・湿度・潅水・施肥などの管理は自社の制御技術で自動化しています。栽培品種は章姫(あきひめ)、かおり野、紅ほっぺの3種。合わせて約1万4,000株の苗を育てています。12月下旬から5月下旬までの収穫シーズンには、7トンほどのいちごが実るとか。2020年10月に体験型農業施設「THE 610 BASE」としてグランドオープンすると、福知山市内外から多くの人が遊びに来るように。その数は年間約1万人に上り、廃校に再び賑わいが生まれています。

合言葉は
「FUNMER(ファンマー)」

森翔平さん

アグリチームのリーダー、森翔平さんは「いざ農業を始めたら、毎日がすごく楽しくて、忙しさも苦になりません」と笑顔を浮かべます。農家の祖父母を見て、農業は大変な仕事と知っていたため、自ら始めるまで、まさかこんなにクリエイティブで面白いとは思わなかったそうです。「それに普通の農家と違って、ここへはたくさんの人がいちごを買いに来たり、いちご摘みに来たりしてくれます。来場者と交流できるのがまた楽しいんですよね」

「楽しむ農業」がスローガン

THE 610 BASEの合言葉は「FUN(楽しい)」と「FARMER(農業者)」を組み合わせた「FUNMER(ファンマー)」。農業自体を楽しむコンテンツにしようと考案した造語です。農業を通じてたくさんの笑顔を生み出したい。作り手も来場者もみんなが笑顔になれる施設に。そんな想いが込められています。ちなみに施設名は、地名の「六人部」を数字化し、人々が集う「基地」になるようにという想いを重ねて付けられました。

いちごたっぷりのパフェ

「僕たちはいちごの栽培と直売だけでなく、お菓子やジャムも自分たちで加工販売しています。何でもやってみようというチャレンジ精神が弊社のモットーなんです」(森さん)。現在、アグリチームのメンバーは社員3名、嘱託社員・アルバイトスタッフ4名の計7名。お菓子作りの得意なメンバーが、新鮮ないちごを使って作る、おしゃれなスイーツメニューの数々が好評です。

おしゃれな
空間づくりにこだわる

エントランスホール

おしゃれといえば、校舎内も学校らしさを残しつつ、スタイリッシュにリノベーションされています。特にエントランスホールは、アーティストが描いたパステルカラーの壁画や、フランスの学校で使われていたブルーのベンチなどが目を引くSNS映えスポット。中六人部小学校の卒業生からは、「母校がこんなにかっこよく生まれ変わってうれしい」と喜ばれているそうです。

SLIDERS CAFE

カフェは元視聴覚室をリノベーション。ヴィンテージのソファや壁のサインペイントが、これまたかっこいいと評判です。「おしゃれな空間づくりにもこだわりました。僕たち大人がおしゃれな施設で楽しそうに働いている姿を、地域のこどもたちに見せたいんです。地元の魅力をもっと知ってもらえたら、将来、大学進学などで都会に出ても、福知山に戻ってきてくれるのではないかと期待しています」(森さん)

地域とともに、
この場所を盛り上げる

いちごスイーツ作りのイベント
こどもたちの笑顔があふれる

地域住民が楽しめるさまざまなイベントを企画し開催しています。「廃校活用は地域の方々の協力なしに進めることはできません。中六人部地域の自治会の方々は、最初から『一緒にやろう』という前向きなスタンスで接してくれました。今も何かを決めるときは、必ず行政と地域の方々と3者協議しています。みんなでこの場所を盛り上げていこうという団結力がすごいんです」(森さん)

クラフトビール醸造所を準備中

2023年春には、校舎内にクラフトビール醸造所が完成予定。すでに原料となる麦を地域の方々と一緒に栽培しており、間もなくオリジナルクラフトビールの製造・販売を始めるそうです。新しいことに貪欲にチャレンジし、農業を通じた福知山の魅力発信基地として、今後も進化を遂げていくであろうTHE 610 BASE。次は何を始めるのか、目が離せません。

THE 610 BASE

(PDF:1,984KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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