

2026年6月号
広がる「中食」



2026年6月3日配信
時間と心にゆとりが生まれる
持ち帰って食べる “食” のスタイル
「中食(なかしょく)」をご存じですか?「中食」は多くの人にとって
日々の食事を支えてくれる、頼もしい相棒になりつつあります。


「外食」はよく知られているけれど、「中食(なかしょく)」って何でしょうか?実は、テイクアウトして家で食べる食事も中食のひとつ。今、幅広い世代に利用されている中食とは何か、またその広がりの理由をひも解きます。
コンビニエンスストア(以下コンビニ)のお弁当、スーパーマーケット(以下スーパー)のお惣菜……。忙しい日でも、食べたいものを持ち帰ってすぐに食べられるといった体験にホッとしたことはありませんか。中食とは、市販のお弁当やお惣菜などを買い、家や職場などに持ち帰って食べるスタイルのことを言います。レストランなどへ出かけて食べる「外食」と、家庭でつくって食べる「内食(ないしょく)」とともに、食事スタイルとして定着し、近年、その需要は拡大し続けています。おいしいものを手軽に食べられることは、日々の安心感や心のゆとりにつながります。また、食べることは幸福感を満たす大切な行為のひとつであり、中食はこの“ しあわせ ”を支える一端を担っています。

社会変化とライフスタイルの多様化
昔も今も、中食は働く人たちのランチタイムを支える大切な存在に変わりありません。加えて、共働き世帯やひとり暮らしの増加、テレワークが普及するなどの社会変化が進み、ライフスタイルに合わせて人々のニーズが多様化したことにより、日常の食事としても広く利用されはじめています。さらに「調理の手間をかけたくない」「おいしいものをより手軽に食べたい」といった、食事の簡便化志向への変化とともに、その日、その時の気分に合わせて選べるといった中食の特徴は、忙しい現代人の心に余白をもたらし、暮らし全体の満足度を高める存在となっています。
毎日に寄り添うちょうどよさ
中食の利用が拡大した背景には、すぐに食べられる調理済食品、いわゆるお弁当やお惣菜を扱う小売店が全国に広がったことも理由のひとつと言えます。
昭和の時代には、お肉屋さんやお惣菜屋さんなどの商店が販売するおかずや、中華料理、お蕎麦、お鮨などの出前が中食需要の多くを担っていました。時代の移り変わりとともに、デパートでは地下惣菜売り場の人気が高まり、惣菜専門店やスーパーなど中食を製造販売する小売店が増加。さらには、コンビニが全国に広がったことにより、外出帰りに気軽に寄れる「ちょうどいい距離感」での日々の寄り添いが、中食需要の拡大を後押ししていると言えそうです。




「出来合いのお弁当やお惣菜はラクだけど、栄養が心配…」と思われることもあるかもしれません。必要な栄養素をしっかり摂るための中食メニューの選び方・食べ方のコツを、料理研究家で栄養士の、ほりえさわこさんがアドバイスします。
「近年、コンビニやスーパーなどでは、様々な調理済食品が誕生し、日本のお弁当・お惣菜の研究開発力はすごい!と感心するほどです。ただ、消費者は好きなものを中心に購入する傾向があるため、塩分過多や、栄養の偏りが気になります。大切なのは『栄養バランスを整える』こと。どう選んだらいいか迷ったときは、ぜひ『給食の献立』を思い出してチョイスしてみてください。基本は、一食の中で『主食(ごはんやパン、麺類など)』『主菜(肉や魚など)』『副菜(野菜やきのこ、海藻類など)』を適度に組み合わせること。中食は好きなメインのおかずで選びがちですが、肉や魚を交互に選ぶようにしたり、揚げ物など同じ調理法のものが続かないようにしたりを、意識しましょう」
食品表示や組合せを意識して選ぶ
「今のお弁当やお惣菜のパックには様々な情報が記載されていて便利です。選ぶ際には、商品についているシールの『栄養成分表示』をぜひ確認してみてください。カロリーやたんぱく質、脂質、炭水化物(糖質・食物繊維)、塩分量などが表示されているので、例えば、ダイエット目的ならカロリー数値の低いものを選んでみたり、減塩を意識するなら、より塩分量の少ないものを選んだりするといいでしょう。栄養バランス的には、幕の内弁当のように色々な食材や調理法が使われているものがおすすめですが、おにぎりや丼物などを選ぶ際は、副菜となる野菜・海藻・きのこなどを使ったお惣菜をプラスしてみてください。たとえば、加熱した緑黄色野菜のお浸しやナムル、カボチャやブロッコリーサラダなど。加熱すると生より多くの量を摂取できる上、消化吸収時の胃腸での負担が少なく済みます。ただし、野菜は生と加熱それぞれいい部分があるので、季節や体調に合わせて選びましょう」


野菜が摂れる、健康的な中食も登場
「最近では、健康ニーズの高まりとともに健康を意識した中食も増えています。野菜料理専門のお惣菜店もありますし、コンビニの商品にも野菜をたっぷり使用したもの、管理栄養士が監修した健康と栄養を意識したものも登場しています。健康を意識するなら、こうしたものを積極的に選ぶようにすれば、栄養バランスを整えながらより健康的に中食を楽しめるでしょう」


お正月、節分、お彼岸…日本には季節行事に合わせた食習慣が根付いています。令和の時代の今、日本の行事に欠かせない“ 食 ”のカタチはどう変化しているのでしょうか。
拡大する惣菜市場の中、忘れてならないのは季節ごとの特別な中食の存在です。古来、日本人は季節の節目のお祝いや子どもの成長を願う行事、先祖供養を大切にしてきました。多くの人の心には、一年をとおした様々な行事の中での忘れがたい食の想い出がたくさんあることでしょう。これらの四季折々の行事食は、今も変わらず日本人の暮らしの中で楽しまれています。また、これまで家庭で手間暇かけて手作りしていた特別な行事食は、社会構造の変化に伴い「つくる」よりも「買って楽しむ」という人が徐々に増えつつあります。そうしたニーズに応えるように、行事に合わせた中食も多様化し、より手軽においしくなって、人々の暮らしに彩りを添えています。

行事食として古来受け継がれている「おせち」。その中食需要は年々高まる傾向にあります。単身やシニア世帯の増加により、「ひとりでもお正月気分を楽しみたい」「セットのおせち重では多すぎる」という声を受け、コンビニチェーンの「ローソンストア100」には、“ 食べたいものを少しずつ ”というニーズに応えた「選べるおせち」が登場。少量パックかつ、定番から中華、洋風まで、味も種類も多種多様な商品の中から好きなものを自由に選べる便利さと、選びやすい価格も相まって、人気の正月向け商品となっています。


また、日本では古くから「節分」の日には、焼いた「いわし」を食べて邪気払いをする風習もありますが、徐々に「恵方巻き」が広がり、今や節分の代名詞と言えるほどの知名度になりました。一説では、恵方巻きとは、大阪商人独自の風習だったようですが、今では全国のコンビニやスーパーがこぞって販売するほど、節分の定番商品へと成長しています。また、京都で、毎年6月30日に一年の残り半分の無病息災を祈願する「夏越の祓(なごしのはらえ)」で食べられている、「水無月(みなづき)」という和菓子も、行事食として広がりつつあります。おせちや恵方巻き以外にも、年中行事を彩る中食はいっぱいあります。ひな祭りにはちらし寿司、端午の節句には柏餅やちまき、お彼岸には、おはぎやぼた餅、クリスマスにはケーキやチキンが店頭に並びます。土用の丑の日にはうなぎ弁当が並び、専門店に行かずとも夏の風物詩を自宅で手軽に楽しめるようになりました。このように中食は、様々なシーンで日本人の“ 食 ”の楽しみを支える、身近な存在になっています。
ライフスタイルの変化の中で中食を選ぶことは、限られた時間を上手に使い、無理をしすぎないためのひとつの手段です。手軽さ・おいしさ、そして自分らしさ。中食は、ひとりひとりの暮らしに、新たな満足をもたらしています。
イラストレーション=南トトコ
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