
2026年6月号
広がる「中食」


その地域でしか食べられない中食も各地で開発されています。その土地の食文化や地元でとれた食材を使用するなど、観光のついでに楽しめる、こだわりの逸品をご紹介します。
(一社)全国スーパーマーケット協会が主催する「お弁当・お惣菜大賞」は、「売り場に並んでいたら買いたくなる商品」をコンセプトに、消費者目線で選ばれるもので、今年は全国から15,000件近いエントリーがありました。担当の籾山(もみやま)朋輝さんは、「受賞商品を見ると、そのときどきの消費者の嗜好がよくわかります」と話します。2010年代当初は、コスパとボリューム重視の、いわゆる「茶色いお弁当」が主流でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に惣菜売り場は大きく変化したと言います。外食が難しくなったことで各国の料理が並ぶようになり、揚げ物中心から蒸す・煮るといった調理法も増えて、バリエーションが一気に広がりました。さらに健康志向の商品も定着しています。また、単身・少人数世帯の増加やおいしさにこだわった商品の登場を背景に、お弁当やお惣菜を日常的に利用する人が増加。「今ではスーパーマーケット(以下スーパー)にとって、惣菜コーナーは他社との差別化をする最大のポイントとなっており、各社が売り場を拡大しています」(籾山さん)。その受賞商品から中食の進化やトレンドを紹介します。


健康にこだわり、優秀賞と健康長寿賞をダブル受賞したのが、沖縄県のスーパー、(株)丸大の「沖縄風三色重」。ごはんに味噌と黒糖で味付けしたアグー豚の「合いびきそぼろ」、日本高血圧学会認証の減塩調味料を使用した「にんじんしりしり」、沖縄野菜の「からし菜煮」をのせたお弁当は、彩り鮮やかで食欲をそそる仕上がりに。同社商品開発部部長の大城(おおしろ)良仁さんは「このお弁当は、主食・主菜・副菜が揃い、野菜の量や塩分にも配慮した栄養バランスの取れた食事の基準『スマートミール』認証も獲得。沖縄は健康長寿県とも聞きますが、最近は働き盛り世代の肥満や生活習慣病が増えているそう。そこで少しでも地元の方々に健康になってほしいと、南風原町役場の管理栄養士さんと協力してヘルシーで手軽なお弁当を開発しました」と語ります。同社では、他にも様々なスマートミール認証弁当を開発しており、お弁当全体の売上の4割を占めるほど好評です。その秘密は「おいしさにある」と大城さん。「おいしいから食べてもらえて、結果、健康にもよかったというのが人気の理由になっています」



地元の食材にこだわった各地のお弁当。地元の人たちはもちろん、観光客にとっても「一度は食べてみたい」と人気が高まっている、地産地消弁当の魅力について探ってみました。
全国各地で、その地域ならではの食材を使ったお弁当が、SNSなどで話題になっています。地産地消のお弁当が注目を集める理由は、「鮮度のよさ」と、そこでしか味わえないという「特別感」、生産者の顔が見えるという「安心感」といった点にあります。地元のものを食べることは、地域を応援することにつながるため、地産地消のお弁当が人気になっているのです。全国スーパーマーケット協会の籾山さんは、「『鮮度がいい=おいしい』というプラスのイメージがあるので買ってみたくなりますよね。そして、実際に買って食べてみると、それが本当においしくて、口コミで広がる。そんな好循環のサイクルが回っています」と分析。地元食材の安心感、おいしさ、そしてその地域の個性を味わえるのが、地域住民や観光客にウケているようです。


テレビ番組で取り上げられるほど、お惣菜づくりに情熱を傾けているのが、福岡県のスーパー、(株)ダイキョープラザの惣菜部長・梶原正子さん。同社では地元の食材にこだわり、14年連続で受賞。2026年の優秀賞を受賞した「福岡の海と太陽の恵みのランチプレート」は、梶原さんが偶然、糸島で目にした光景がヒントに。「赤ちゃん連れの若いご夫婦が糸島のカフェでランチをしようとしていたのですが、赤ちゃんがぐずってあきらめてしまったんです。おいしい糸島産の食材でおしゃれなランチを気軽に自宅でも楽しんでもらいたいと翌日には開発を始めました」(梶原さん)。糸島は、鯛の水揚げ量が国内でも多い地域。そこでラタトゥイユには特産の鯛を入れて地元らしさを。ほうれん草ニョッキの素揚げ、パプリカのムース、紫キャベツのラペには糸島野菜を使い、付け合わせのパンも糸島産の小麦にこだわる徹底ぶりです。複雑な調理が必要なラタトゥイユは、販売する店舗ごとに味のばらつきが出ないよう、自ら各店舗に足を運んで調理法を直接指導しているそう。「商品を開発するときは、食べる人のことを想像してつくるのが私のモットー。私たちが地元の農家や漁師と直接つながることで、旬のおいしい食材をふんだんに味わってもらいたいと思っています。それで地元が元気になるなら、こんなにうれしいことはありません」



「ちょっと甘いものが食べたい」――そんなひと時を手軽に叶えてくれるのが、おやつやスイーツ。小腹を満たし、ほっこりとした気持ちにさせてくれる中食は、小腹を満たす日々の暮らしに彩りを添えています。
おやつやスイーツは、和から洋まで幅広いバリエーションがある中食です。コンビニで購入できるおやつやスイーツには、よく見かけるシュークリームや一流パティシエとのコラボスイーツ商品など、様々なものが登場。手軽に本格的な味を楽しめるようになってきました。また、昔ながらの「ご当地おやつ」も人気です。宮城県の「ずんだ餅」や広島県の「もみじ饅頭」のように、全国区の知名度を誇る「ご当地おやつ」中食も数多くあります。近年はスーパーで販売しているおやつやスイーツの製法が大きく変化していると、全国スーパーマーケット協会の籾山さんは語ります。「ひと昔前のスーパーのおやつやスイーツといえば、業務用スポンジとクリームでつくるなど、出来合いの素材を組み合わせるのが主流でした。しかし、今は自社で原材料から加工して商品化するところが増加。中には工場や店舗に専門のパティシエがいるところもあり、より特徴的な商品や手作りに近い専門店化が進んでいます。スーパーのおやつやスイーツは、自分へのご褒美といった『自家需要』が中心です。これから味も見た目もより本格的に進化することで、さらにご褒美感がアップしていくのではないでしょうか」


熊本の伝統的なおやつ「いきなり団子」をアレンジした「粋なり!揚げいきなり団子」でスイーツ部門の最優秀賞を受賞したのが、熊本・福岡・大分・佐賀・宮崎で189店舗を展開する「おべんとうのヒライ」です。「いきなり団子」とは、さつまいもとあんこを団子の生地で包んで蒸したおやつ。その「いきなり団子」を揚げることを考えたのが、同社・商品開発部課長代理の片山拓さんでした。「実は私はスイーツ担当ではなく、揚げ物担当。グループ会社で製造していた『いきなり団子』のおいしさをもっといろいろな人に知ってもらい、食べてほしいと思ったんです」。そこで思いついたのが、片山さんの担当である「揚げる」調理法。「我が社の人気商品の『自信南蛮 』で使っている塩気のある衣で『いきなり団子』を揚げてみたらどうだろう、と。実際に試してみると、さつまいもとあんこの甘さが引き立って、新鮮なおいしさがありました。当初は容器に入れてのパック販売のみでしたが、お客様のご要望によりバイキング方式も取り入れることで、店舗での揚げたてをお客様に提供できるようになりました。最優秀賞を受賞したことも重なり、販売数は前年比の15~16 倍に跳ね上がり、月間50,000個売れる人気商品になりました」

年々進化し続けるスーパーや専門店の、お惣菜やお弁当。地域の方々にとっても、毎日の食に欠かせない存在になっているだけでなく、観光客もその土地の味を楽しめる良い機会にもなっています。そんなお惣菜やお弁当は、健康志向や地産地消にこだわった商品、大胆なアレンジをしたご当地商品などが、全国各地で登場。ご当地中食を通じて、いろいろな"おいしい"を体験する旅にどんどん出かけてみたいですね。
イラストレーション=山本由実
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