
2026年7月号
暑さに向き合う~進む日本の農業~
埼玉県春日部市を中心に周辺の地域を管轄エリアとするJA南彩(なんさい)。生産者の高齢化・後継者不足が進む中、遊休農地の解消を目指して新たに生産をスタートしたのが、夏の暑さに強い「青パパイヤ」でした。
今ではすっかりJA南彩エリアの特産品として知られるようになった青パパイヤ。青パパイヤとは、黄色く熟す前の緑の状態で収穫したパパイヤのこと。東南アジアや沖縄では、サラダや炒めものによく使われる身近な果樹です。この青パパイヤの地域特産化に取り組むことになったきっかけは、生産者の高齢化・後継者不足でした。いちごや梨を栽培していた生産者が廃業して農地面積が減少することを食い止めるため、遊休農地を活用した試験栽培が2016年にスタート。温暖化でトマトやなすなどの夏野菜が収量を落とす中、青パパイヤが暑さに強いのが大きなポイントでした。さらに青パパイヤは農薬がほとんどいらず、機械作業や設備投資も不要。鳥獣害も受けにくいなど、高齢の生産者でも無理なく取り組める条件が揃っていました。
栽培ノウハウを蓄積し、生産の輪を広げる
試験栽培開始から1年後の2017年3月には、生産者向けにJAが栽培方法を教える基礎研修会を開き、360本の苗から本格栽培をスタート。同年9月には69人の生産者が集まり「JA南彩青パパイヤ研究会」を発足します。誰でも栽培の様子を見学できるデモ用の農地・展示圃場(ほじょう)も設けました。栽培にあたっては、育苗期はハウス内の気温16℃以上・地温25℃以上の確保が大切です。2月初旬に種をまき、5月上旬に畑に植え付けますが、特に生育初期は、温度管理のための毎日の見回りと地温を上げるマルチ(土の表面を覆うシート)の管理が必須となります。導入当初は沖縄から苗を取り寄せていましたが、その際の費用も課題となるなど、コスト面のハードルもありました。そこで種から育てる自家育苗に切り替え、コストを半分ほどに抑えることに成功。県の種苗センターやJA青年部などの協力を得ながら、JA南彩の担当者が中心となり地域に合わせた栽培ノウハウを積み上げていきました。現在は、JA南彩管内の約100名の生産者が青パパイヤづくりに取り組んでいます。
レシピコンテストやオリジナル商品も
生産体制を整える一方で、青パパイヤのPR活動にも積極的に乗り出しました。これまであまりなじみのなかった青パパイヤ。調理法などを提案しつつ食べる機会を増やす戦略です。JA南彩女性部の「青パパイヤ料理コンテスト」は地元テレビ局でも放映され、優秀レシピを集めたレシピ集も配布。地域のイベントでJA職員(南彩小町)による販売促進活動を行い、青パパイヤの塩昆布和えなどの試食を提供。実際に消費者に食べてもらう機会を増やしました。初めて口にした来場者からは「おいしい」と好評の声が上がっています。その他にもオリジナルのレトルト商品「青パパイヤのドライカレー」を開発し、直売所やオンラインショップでも販売。青パパイヤのふりかけも開発中です。
京都市・向日市・長岡京市・大山崎町からなる京都乙訓(おとくに)地域では、新たな特産品として「京おくら」の栽培を行っています。2020年から特産化の取り組みをスタートして、今年で7年目を迎えました。
京都乙訓地域では長年、「賀茂なす」「九条ねぎ」「伏見とうがらし」など京の伝統野菜を栽培。しかし近年は夏場の高温化が続き、なすは花がつかなくなって実が育たず、ねぎは十分に太ることができないなど、品質や収穫量に大きな影響が出ています。さらに虫害も増え、伝統野菜をつくり続けることが年々難しくなってきました。そこで、暑い夏でも育てやすい新たな作物として白羽の矢が立ったのが、おくらです。アフリカ原産のおくらは暑さに強く、栽培の負担が比較的軽いのがポイントでした。「おくらは高齢者はもちろん、新規で農業を始める方でも取り組みやすいのがメリットです。支柱などで支える必要もないので低コストで始められ、難しい剪定技術も不要。果実は小さく軽いため、収穫作業の体力的な負担が少ないのも魅力です」(京都府京都乙訓農業改良普及センター・門馬葵さん)。
酷暑でも元気に育つ
京おくらの特産化では、京都乙訓農業改良普及センター、JA、京都市の三者が連携して取り組んできました。月1回以上、生産者の農地を巡回し、生産者の疑問や悩みを直接確認しています。「京おくら栽培ごよみ」「京おくら通信」などの情報誌を発行し、時期に合わせた栽培管理のポイントも届けています。先進的な生産者は、春先に水を入れた細長いポリ袋を苗の根元に置く「水封マルチ」をして、昼間に温まった水で夜間の地温を保って苗をしっかり根付かせています。こうした努力の積み重ねが実を結び、2025年度の出荷量は19.3トンと目標としていた17.4トンを大きく上回りました。現在は、管内で26名の生産者が京おくらの栽培に取り組んでいます。「暑さで他の夏野菜の収穫量が落ちる中、おくらだけは青々と元気に育っています。『夏はおくら一本で頑張る』と言ってくれる生産者も増えてきて、手応えを感じているところです。これからも京おくらの特産化にますます力を入れていきたいですね」(門馬さん)。
コラボで京おくらの魅力発信
この6年間で京おくらブランドは、市場でも定着。強みとなっているのは、京都で収穫したおくらがすぐに周辺地域に出荷され、京都近郊でもより鮮度の高いものが食べられる点です。「京都近郊では、京おくらが京野菜の仲間として認められるようになってきたと感じています」(門馬さん)。消費者向けのアピールも積極的に行うことで、さらなる認知度アップを狙います。京都光華女子大学短期大学との産学連携では、ライフデザイン学科の学生たちが考案した京おくらを使った料理の試食会を開催。京都駅直結の商業施設では、学生たちが参加して販売PR活動も行いました。他にも過去には食品メーカーと連携して京おくらのピクルスを提案するなど、様々なコラボ企画がありました。「JAが主催する消費者向けの京おくらの収穫体験も行っています。こうした様々な機会を通じて、より多くの人に京おくらの魅力を伝えています。2026年は出荷量20トンの大台が目標。暑さを前向きにとらえ、京おくらをもっと盛り上げていきたいです」(門馬さん)。
イラストレーション=柳田まち
熱中症の予防には、様々なグッズが役に立ちます。
【帽子・ヘルメット】直射日光を避けるため、つばの広い帽子は必需品。麦わらなど通気性のいい素材を選びましょう。転倒、転落、落下物、飛散物等の危険性がある作業中、道路走行の際には、通気性のあるヘルメット等をかぶりましょう。
【ネッククーラー】冷蔵庫で冷やして首に装着。太い血管のある首を冷やすことで、深部体温を下げる効果があります。濡らしたミニタオルで保冷剤を巻き、首や脇の下に当てても同様の効果を得られます(保冷剤そのものを肌に当てない)。
【送風ファン付ウェア】気化熱の原理で体表面温度を下げて涼しくしてくれる上着。長袖、半袖、ベストとタイプも様々。冷感素材のインナーやシャツと併用すれば効果がよりアップ。
【冷却スプレー】気化熱やメントール効果を利用したスプレー。衣服の上から吹きかけて使用します。医師の石原新菜さんによれば、冷却スプレーが手に入らない場合は、水を入れたスプレーでも代替可能とのこと。休憩時などに直接体に吹きかけると、気化熱効果で涼しくなります。
【ウェアラブル端末】体温や体内の水分バランスなどを計測し、危険な状態をアラートで伝えてくれます。自身の体調を把握する上で効果的です。熱中症対策グッズはいろいろあるので、シーンに合わせて適したものを選んでみてはいかがでしょうか。
イラストレーション=シマノアヤ子
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