あんこが世界を救う!?日本あんこ協会会長にインタビュー!!
今回は、農水省に来たインターンシップ生が、日本あんこ協会のにしいあんこ会長にインタビュー!お砂糖とあんこに対する思いから、人生で大切にしている考えや学生へのメッセージまで様々な内容をお聞きしました!あんこ協会の理念やあんこの奥深さなど、大変興味深いお話ばかり!
なにか新しいことを始めたいと思っている方や、若いときに何をすればいいのか悩んでいる方も要チェック! (インタビュー実施日:2023年7月14日)
協会の概要及び会長のプロフィール
協会の概要
協会名:日本あんこ協会
創立:2018(平成30)年10月1日
目的:あんこを通じた世界平和の実現と、あんこの普及振興。
会長のプロフィール
立命館大学理工学部物理科学科卒。広告代理店勤務の後、2016年に起業。現在は、日本あんこ協会に所属し、会長を務めており、日本の令和あんこブームの火付け役とされる。また、本名(西井成弘)では、マーケターとしていくつかの企業のグロース戦略に携わる傍ら、コピーライター、PRライターなどでも活躍しており、プレスリリースアワード2022では特別賞を受賞している。
インターン生によるインタビュー

今回のインターン生は、アメリカの大学に通っている大学1年生(写真右)。YouTube等で前々から「ありが糖運動」に興味を持っていたとのこと!それがインターンシップでこの課を選んだ理由のひとつでもあるのだとか!
――あんこを好きになったきっかけは何ですか?
確か小学校2年の頃に、自分の母親があん巻き(小麦粉の生地であんこを包んだ和菓子。愛知県知立市の名物)を作ってくれて。何であん巻きを作ってくれたのかは思い出せないんですけど、それがとんでもなく美味しくて。それがキッカケで「自分ってあんこが好きなんだなぁ」と自覚したのを覚えています。
――あんこ協会の主な活動内容を教えてください。
あんこ協会では、活動にあたって、「歴史」、「発掘」、「健康」、「可能性」の四つの柱を持っています。
あんこって、和菓子によく用いられたり、お茶と一緒に食べられたりすると思うんですけど、「歴史」というのは、あんこの歴史やあんこと関連を持つ文化、周辺史実を研究することを指します。
「発掘」では、各地の「眠れる美食あんこ」の情報発信を行っています。やはり、地域ごとにあんこというのは違う味わいを持っているので、まだ充分に認知されていないような日本各地にあるご当地あんこをWEBやSNS、イベント等で広く紹介しています。
また、「健康」の分野では、管理栄養士や大学の先生方のご協力も仰ぎつつ、健康食としてのあんこの魅力の発信を目指しています。砂糖というと「健康に悪い」みたいなイメージがあるようですが、そのような考えは少々短絡的だと思うんですね。糖はエネルギーの源泉ですし、甘いものは幸福感を生み出してくれます。砂糖は間違いなく、ヒトが生きていく上で重要なものです。ただ何でもそうですが、摂りすぎは要注意で、本当に大事なことは過剰摂取を防ぐこと、それから「抗糖化対策」、つまり過剰な糖の影響から体内で老化物質が産生されてしまうのを防ぐことだと思うんですよね。
最後に「可能性」の分野では、あんこと相性のいい食べ物・飲み物の発見・開発・発信を行っています。つまり、食べ合わせ・飲み合わせですね。例えば、最近は日本酒と一緒にあんこを食べるのが流行っています。日本酒のフルーティーさと大福が合ったり、辛口には羊羹や最中など濃いあんこが合います。他には、スパイス類とあんこ。カルダモンやシナモンのほか、ブラックペッパーだと白あんに合わせてみるとアクセントが効いて美味しいんです。新しいあんこの可能性を感じられます。コロナ初期のステイホーム期間には、105通りのあんこ活用レシピをまとめてブックレットとしてオンライン配布しました。
――活動するうえで、大切にされていることは何ですか?
「あんこを通じて世界平和を実現する」というミッション・ステートメントを掲げながら活動しています。世界平和を実現する上で重要なのが「経済的安定」、「精神的安定」、「個々人が目指す方向の明確化」であると思います。
「経済的安定」では、経済の活性化を目指しています。具体的には、あんこの普及活動を通して日本各地の和菓子産業など、あんこに関わる産業を興すことで、地域に経済的な潤い・所得の向上をもたらせればと考えています。
ただ、どんなに経済的に安定していても精神的に安定していなければ幸せとはいえません。だから、あんこの普及を通じて社会の皆様に家族愛や人の温もりを思い出していただきたいと考えています。これが「精神的安定」ですね。あんこは、「昔おばあちゃんが炊いてくれた味」とか「親戚一同みんなでお正月に集まって食べたぜんざい」とか、人のつながりやぬくもりを思い起こしてくれる原体験に紐づいていることが多いものです。現代社会は人のつながりが希薄になりがちです。社会の皆さまに、あんこを通じて今一度、そういったハートフルな記憶を呼び起こしていただき、あんこと接するひとときだけでも、やさしい気持ちになってもらえればと考えています。
最後に、我々の活動を見て下さっている皆さま個々人が「目指すべきvision」というものを見つけてもらえればいいなと思っています。人は、未来が明るくないと生きるのがしんどいものです。逆に、たとえ今がダメでも未来に希望さえ持てれば前向きになれます。我々にとっての希望の源というのは、あんこに対する情熱です。我々が、「あんこを愛する」という一途な姿勢を社会に共有することで、他の人たちにも(あんこに限らず)各々が好きなものを見つけて、幸せになってほしいと考えています。あんこを好きでいてくれればベストですが、そこは人それぞれで良い。ちょうど大好きな人ができて恋をすると、すごくハッピーな気持ちになれるし、無尽蔵に頑張れちゃうのと同じで、好きなことに没入できることって、とても大切だと思っています。おこがましいようですが、そういった我々の姿勢が現代社会におけるひとつのロールモデル、生き方の模範になれればと。
ーー「精神的安定」でいうと、確かに自分も母が炊いたあんこの味を未だに覚えていたりしますね。
――あんこの消費拡大を通じた(地域)社会への関わり、貢献について、具体的にどのような取組をされてきましたか?
地方自治体とコラボして、「あんこスタンプラリー」の実施、つまりスイーツ・ツーリズム事業に協力しています。例えば、岡山県で実施した「備中あんたび」や森鷗外の故郷、島根県津和野町で行った「津和野あんこ旅」など。町の和菓子屋さんなどの対象店舗でお買い物をしていただくと豪華賞品が当たる抽選に参加できたり、あんこに関する豆知識が書かれた限定カードが貰えたりするんです。
――人生のターニングポイントは何ですか。協会設立時に苦労などはありましたか?
さっき言った、母親があん巻きを作ってくれたことが大きなターニングポイントだと思います。あと、自分は20代後半の時、経済的にとても苦しかったんです。大きな借金を作っちゃって、周囲との人間関係も徐々に途絶えて行って。そんな時に奈良の父親があんことか羊羹を差し入れで送ってくれたんです。僕の小さい頃からの好物を覚えていてくれたんですね。お金も仕事も人も周りからみんないなくなって、本当に孤独で辛かった時に、送られてきたあんこや羊羹に、親の無条件のやさしさを感じました。この出来事がキッカケで、心のうちに強く再起を誓ったんです。あんこがあったから、あんこに乗って父の愛を受け取り感じることができたから、僕は復活することができたんです。そして、そんな素晴らしいあんこの良さを広めたいと思うようになりました。協会を設立した当初は、「は?あんこで世界平和?」とか「あんこを食べ過ぎると不健康にならない?」とか、批判や反対意見も多く頂きましたが、今お話したように、どうして世界平和の実現を目指すのか、どうしてあんこなのかということを、ご意見をいただく度にキッチリご説明を差し上げ、理解を得られるよう尽力してきました。
――これまでで、とても強く興味を抱いたこと、お仕事やあんこ以外に没頭したことがあれば教えてください。
あんこ以外でというと、とても難しいご質問ですが、あえて言えば、哲学が好きですね。哲学は凝り固まった常識や観念の外側に自分を連れて行ってくれます。色々な“当たり前”を相対化して、「それって本当に正しいの?」「それって本当はどういう意味なの?」という風に、いったん偏った思考をリセットしてくれるんです。これってとても重要だと思っていて、例えば何かニュースを見た時に、その報道の真偽や偏重を自分なりに分析することができます。すると、その報道を鵜呑みにせず、自分の生活や仕事に役立つ情報にまで磨き上げることができます。自分にとって面白いなと思うアイデアや新しい考え方も、普段の哲学的な思考が生み出してくれます。大学で物理学を専攻したのは、高校生の時にアインシュタインの相対性理論に出会って、哲学的に感銘を受けたのがキッカケだったんですが、当時数学が得意だったので、そのまま物理の世界へ入りました。でも、もし高校生の時に国語や社会が得意で、哲学と出会っていたら、哲学の道に進んでいたんじゃないかなと思います。まぁ今はあんこの道ですが・・笑
――今後、流行しそうなあんこを使ったスイーツを教えてください。
フランスだと今、餅がブームであんこを使ったものも流行っています。そういった海外で認められたあんこスイーツが日本に逆輸入されて、流行するというのは考えられると思います。他には、シベリア(カステラで羊羹を挟んだ菓子)っていう菓子がありますよね。
―あ、昨日食べました!
おっ。ナイスあんこですね!そのシベリアも何でもっと流行らないのか不思議ですね。今の若い人にとってはとても斬新なスイーツだと思いますし、アレンジを加えて、進化系シベリアとなれば、楽しくって美味しい全く新しいあんこスイーツに生まれ変わると思いますよ!
―ちなみに西井会長はつぶあん派ですか?こしあん派ですか?
それ、よく聞かれるんですけど、自分は特に派閥を持っていないんです。つぶあんもこしあんも全く性質が違う。使いどころ、調理法によってどちらも最高に美味しくなるんです。つまり、あんこにはそれぞれ居場所があって、各々に輝ける場所があると。「つぶあんか?こしあんか?」ではなく、少し角度を変えて見れば、どちらもそれぞれに良いところがあり、なにも対立させる必要はないと思います。世界平和が目的ですから。哲学的に言えば、アウフヘーベン(二項対立の関係にある二つの主張を双方とも否定することなく組み合わせ、新しい主張に発展させること)ですかね。笑
――1日あたり、どれくらいの量のあんこを消費されているんですか?
1日あたり3,4回はあんこを食べて、それが1年365日続きます。
―凄いですね…。
朝は必ずあんこを食べて、夜の間食としても食べて、あとトレーニング前あるいは後にもあんこを食べます。実は、あんこって筋トレと凄く相性が良いんですよ。小豆あんですと、原材料が豆と砂糖だからタンパク質摂取とエネルギーチャージがしっかりできます。そして小豆にはビタミンB群が豊富に含まれているので、タンパク質代謝や脂質代謝にも良い。美容にも良いということですね!何より、大福や羊羹など、昔ながらのあんこスイーツには脂質がほぼ含まれていないのが素晴らしい。だから、トレーニング前には、あんこで糖質を補給して、たくさんエネルギーを使ってトレーニングに励みます。最近では、世界で活躍するボディビルダーやプロのアスリートの方の中にも、あんこを好んで食べられる方が多くいらっしゃいますよ。
―自分も筋トレ始めようと思っているんですけど、大福とかトレーニング前に食べてみようかと思います。
――お砂糖とあんこに対する思いと今後の将来像についてどのように描いているのか教えてください。
砂糖というのは、あんこにとって重要な存在です。白砂糖から黒糖、和三盆など、使う砂糖によってあんこの味も変わってきます。引き続き上質な砂糖が食べられる世の中、昔ながらのやり方によって作られた伝統の味が引き継がれる社会であってほしいなと思っています。
――最後に学生に向けたメッセージ等がありましたらお願いします。
自分の好きなことを育てて、大切にしてほしいと思います。もし、仮に誰にもわかってもらえなかったとしても、自分だけはその好きなことを大切にし続けてください!日本あんこ協会様HPはこちら!〔外部リンク〕
インターンシップ生後記
自分は現在、将来の進路に頭を悩ませています。就職はどうするのか、専攻は何にするのか…。そんな中、人が幸せを得るためには、「経済的な安定」「精神的な安定」「目指す方向の明確化」が必要である、という会長のお言葉が特に印象に残りました。経済的な豊かさだけが重視されがちな世の中ですが、人の温もりや家族との繋がり、そして、自分の好きなことを育てていくという姿勢も進路を選択する上で大切にしていきたいと思いました。あんこ、本当に奥が深いですね。
お問合せ先
農産局地域作物課
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