世界的パティシエ辻口シェフにインタビュー!!
今回は、ありが糖運動担当職員が、
世界的パティシエであり、日本スイーツ協会代表理事なども務める辻口博啓様にインタビュー!
パティシエとしてだけでなく、日本スイーツ協会代表理事としての活動について、
大変興味深いお話をお聞かせいただきました!
パティシエや、スイーツに興味がある方も、ぜひご覧ください!
(インタビュー実施日:2025年4月24日)
辻口博啓様のプロフィール及び日本スイーツ協会の概要
プロフィール
洋菓子の世界大会に日本代表として出場し、数々の優勝経験を持つパティシエ、ショコラティエ。
スイーツを通した地域振興、企業とのコラボレーションやプロデュース、講演や著書出版など積極的に活動している。
また、スーパースイーツ製菓専門学校(石川県)の校長、一般社団法人日本スイーツ協会の代表理事を務め、後進育成やスイーツ文化の発展に取り組む。
日本スイーツ協会では、「スイーツコンシェルジュ検定」を実施する他、お菓子作りを通して人を育てる「スイーツ育」を提唱 。
協会の概要
協会名:一般社団法人日本スイーツ協会
創立:2011年9月1日
目的:スイーツおよびパン製菓等の専門的な啓発活動の実施および資格・認定・付与並びにスイーツ業界の繁栄に役立つ人材の育成およびこれらに付随した各種活動を行い、スイーツの普及を促進し、文化・芸術の振興およびスイーツ業界の活性化に貢献すること。
ありが糖運動担当職員によるインタビュー
――パティシエを目指したきっかけは何ですか?
実家が和菓子屋だったこともあり、職人たちと共に過ごす中で、自分も将来は和菓子職人になりたいという思いを抱くようになりました。そんなある日、小学校三年生のときですが、友達のバースデーパーティーに呼ばれて、初めてショートケーキというものを食べたんです。そのおいしさに感動して、お皿に残ったクリームまで「もったいない」と思いながらきれいに舐めていたら、僕の様子を見て「こんなにおいしいお菓子はないでしょうね」と言われて。それが悔しくて、恥ずかしくて……。思わず「うちの和菓子の方がおいしい!」と言い返そうとしたのですが、顔が映るくらいピカピカにお皿を舐めている最中だったので、言葉にできず、ただただ悔しい気持ちが残りました。
でもそれ以上に、そのとき初めて食べたケーキの魅力に強く惹かれ、「自分もいつか、こんなふうに人の心を動かすケーキを作ってみたい」と思ったのを、今でもはっきり覚えています。小学校三年生のあの時の気持ちが、今もずっと、自分の中でパティシエとしての原点になっています。
――パティシエとして活動するうえで大切にされている点はありますか?
お菓子の“鮮度”を何より大切にしています。その日のうちに作ったものを、しっかりと売り切ること。
やはりお菓子は、できたてが一番おいしいんです。勿論、焼き菓子のように時間が経つことで風味がなじみ、よりおいしくなるものもありますが、ショートケーキのような繊細でみずみずしいお菓子は、やはり作りたてが格別です。そうした“おいしい瞬間”を届けることを、いつも心がけています。
――シェフ自身どれくらいスイーツを食べられていますか?
実は今日もカステラを3切れほど食べました。普段から甘いものはけっこう食べますね。やっぱり興味があるというか、「どういう配合で、どうやって作っているのか」「時間が経つとどんな変化が起きるのか」などを考えながら、スイーツを食べることが多いです。
――パティシエの他、日本スイーツ協会の代表理事もされていますが、どのような目的や思いをもって活動されているのでしょうか? また、今後の展望についてもお聞かせください。
まず、「スイーツ」という言葉は英語由来ではありますが、日本で独自に発展・定着した表現です。英語圏では「sweets」というと、主にキャンディーやチョコレートなどの甘い菓子全般を指しますが、日本では洋菓子を含む幅広い甘味全般、特にパティシエが作るようなケーキやデザートを指す言葉として使われています。そうした背景からも、日本で使われる「スイーツ」という言葉には、独自の文化や価値観が色濃く反映されていると感じています。
僕は、日本のスイーツは世界に誇れるコンテンツだと思っています。たとえば、僕が小学校三年生のときに初めて食べたショートケーキ。あれは日本にしかない特別なもので、フランスやアメリカには存在しない、まさに日本ならではのスイーツなんです。そう考えると、日本のショートケーキのようなスイーツも、ひとつの“文化”として大切にしていくべきだと感じています。
日本スイーツ協会では、日本各地に息づくスイーツの歴史や文化を掘り起こしながら、北海道から沖縄まで、地域ごとに異なる豊かな食材、たとえばフルーツや砂糖などにも光を当て、そうした魅力を広く社会に発信していきたいと考えています。 また今後は、農林水産省とも連携しながら、日本の素材やスイーツ文化について、より分かりやすく発信していけるような仕組みづくりを目指していけたらと思っています。たとえば、地域ごとの特色や素材の背景に触れられるような情報発信や、紹介の機会を少しずつ増やしていきたいですね。
日本のスイーツには、日本でつくられた砂糖のおいしさがしっかりと活かされています。沖縄の黒糖、北海道のビート糖、さらには三温糖や和三盆など、日本には世界に誇れる多彩な砂糖があります。そういった砂糖一つひとつの個性や製法を学びながら、地域ごとの素材との組み合わせによって、どのようにスイーツの魅力が引き立つのかを探っていきたいです。
こうした取り組みを重ねることで、地域ならではのスイーツが生まれ、それが地元産業の活性化にもつながっていきます。また、スイーツをきっかけに地域を訪れる「食のツーリズム」としても展開が可能です。日本各地の魅力あるスイーツ文化を、国内外に発信することで、インバウンド需要の創出にもつながるはずです。こうした活動を地域や関係機関と連携しながら進めていくことは、日本全体の経済にとっても大きな意義があると感じています。
――スイーツを通じた地域振興について、どのようなお考えをお持ちでしょうか?
パティシエの仕事では、その土地の素材の魅力をいかに活かすかが大切です。たとえば、ゆずを使うときには、その酸味に砂糖の甘さを組み合わせることで、より深い旨味が生まれます。つまり、素材の持ち味を引き出すためには、砂糖の存在が欠かせないんです。
日本各地には、それぞれに特色ある素材があり、それらと砂糖の組み合わせを工夫することで、地域ならではのスイーツが生まれます。そして、それが魅力あるお土産品として定着し、さらにインバウンド需要を取り込むことができれば、地域の活性化につながりますし、砂糖の消費も自然と広がっていくと考えています。
――素材の選定や新作スイーツのアイデアは、どのように考えられているのでしょうか?
まず、日本の魅力は何と言っても四季があること、そして地域ごとに多様な素材があることだと思います。季節によって手に入る素材、地域特有の素材、それぞれの特徴を自分で調べながら、「どうすればその素材を一番おいしく活かせるか」を常に考えています。新作を考える際も、素材ありきの発想で、季節性・地域性・素材の特長、この三つを重ね合わせながらアイデアを形にしていきます。
たとえば、地域ごとの特産素材が明確にわかるような「マップ」のようなものがあれば、全国のパティシエがそれを参考にしながら地域の食材を取り入れることができ、結果的にその素材の需要や認知度も高まると思うんです。日本スイーツ協会としても、そうした情報を体系的に提供できるような仕組みを作っていきたいと考えています。
また、パティシエとして活動していくうえで、素材の扱い方や砂糖の種類・使い方についてもっと知ってもらうことも、非常に重要なことだと感じています。
――今後のスイーツに関連する活動について、どのような構想をお持ちですか?
日本スイーツ協会が行っている「スイーツコンシェルジュ検定」の取り組みを、今後さらに活性化させていきたいと考えています。また、将来的には農林水産省とも連携できればと思っています。
スイーツコンシェルジュ検定では「スイーツコンシェルジュ」という称号を設けており、スイーツの歴史だけではなく砂糖をはじめとする素材に関する知識を体系的に学べる機会を提供しています。より多くの方に受検していただけるよう、環境整備を進めながら、日本のスイーツ文化を支える基盤づくりに力を入れていきたいと思っています。
また、砂糖の作り手にスポットがあたる機会はまだ少ないのが現状です。製糖会社は勿論、規模は小さくても独自の製法で砂糖をつくっているところなどにも注目し、そうした現場でどのように砂糖が生まれているのか、またパティシエや料理人たちが地域の素材とどう向き合い、どのようにおいしさを引き出しているのか――そんな背景まで伝えられる「日本のスイーツマップ」のようなものができたら、とても面白いのではないかと感じています。こうした情報を、たとえば検定のコンテンツとして組み込むことで、素材への理解が深まり、接客や商品提案のスキル向上にもつながるはずです。
砂糖に対する考え方やその役割について、きちんと学ぶことは、実は商品の売上にもつながっていくと感じています。たとえば、お客様から「砂糖を摂ると太りそう」といった声をいただいたとき、どう返答し、どのようにサポートできるか。その背景にある正しい知識を持っていれば、お客様に安心して商品を手に取っていただける機会が増え、結果として消費の促進にもつながるはずです。
そうした知識を広く学び、伝えていくことで、日本のスイーツが“文化”として、そして世界に発信できる“コンテンツ”として根付いていくよう、取り組んでいきたいと考えています。
――スイーツ開発にあたって、砂糖の種類にこだわりはありますか?
はい。たとえば、私が北海道で展開している「北海道牛乳カステラ」というカステラ専門店では、北海道産の素材にこだわって、ビート糖を使用しています。スイーツに使う砂糖は、その土地の個性や魅力を感じられるものであることを大切にしています。
――異性化糖などは味が違うと一般的には言われていますが、やはり違いますか?
はい、やはり全然違いますね。異性化糖などの甘味料にもそれぞれの良さはありますが、風味という点ではやはり差が出ます。
――砂糖不使用のチョコレートや、いわゆる「低糖質」スイーツが注目されていますが、消費者からの需要についてどう感じていらっしゃいますか?
やはり、需要は多いですね。最近ではパーソナルジムなどでも糖質制限の食事指導が行われていますし、テレビやネットなどのメディアでもさまざまな情報が飛び交っていて、影響を受ける方も多いです。
ただ一方で、「糖」は人間にとってとても大切な栄養素です。エネルギーの源であり、集中力や脳の活性化にも関わってくるので、過剰に摂るのは勿論よくありませんが、適度な摂取は生活の中で必要不可欠なものだと思います。
それにスイーツには、ただ甘いだけでなく、食べたときの満足感や、ご褒美としての役割、気分を上げてくれる力があります。日本では、1,000円前後で世界トップレベルのスイーツが気軽に買えるというのも魅力のひとつです。そういった意味でも、もっとたくさんの方にスイーツの魅力を楽しんでもらえたら嬉しいですね。
――ありが糖運動でも、砂糖の適度な摂取や、砂糖は悪ではないということを情報発信する必要があると考えています。
砂糖に対する知識が正しく伝わっていないのが原因ではないかと感じています。砂糖には栄養素も含まれていて、特に黒糖はミネラルが豊富で、実は体にとって大切な役割を果たす一面もあるんです。だからこそ、砂糖をもっと身近なものとして捉えて、ライフスタイルの中でどう付き合っていくかを考えてみるのもおもしろいと思いますよ。
――私たち、ありが糖運動の中で毎年流行スイーツ予想というものを行っているのですが、今後、どのようなスイーツが流行しそうでしょうか?
そうですね、たとえば「サバラン」でしょうか。ブリオッシュ系のパンにシロップやラム酒を染み込ませて、生クリームを載せたクラシックなお菓子で、100年以上の歴史があります。最近は清美オレンジの果汁や、パッションフルーツの果汁を染み込ませたサバランなど、さまざまなバリエーションにも取り組んでいて、わりと売れていますね。もっと注目が集まるといいなと思っています。
――今回、お話を聞かせていただいた中で、スイーツへの恩返しというような側面があって取り組まれていると感じましたが、そのような側面があるのでしょうか?
そうですね。僕自身、子どもの頃に友達のバースデーパーティーで初めてショートケーキを食べて、「世の中にこんなに感動するものがあるのか」と驚いたんです。その体験が強く心に残っていて、その感動を一人でも多くの方に届けたい――そんな思いから、パティシエの道を志しました。
パティシエという仕事には、つくることの喜びがあり、「おいしかった、ありがとう」と言ってもらえることで自分の存在意義を感じることができます。お菓子を通じて自分自身も成長することができましたし、お客様との関わりの中で、これほど素晴らしい職業はないと実感しています。だからこそ、この魅力をもっと多くの方に伝えたいと思っています。
その思いを胸に、現在は石川県にあるスーパースイーツ製菓専門学校で校長を務めています。お菓子を通じて人を幸せにしたいと思いを持つ若い人たちを、一人でも多く育てていけたらと考えています。
ウェディングケーキやバースデーケーキ、クリスマスケーキ――人の人生の節目や、大切なつながりの場面には、いつもお菓子が寄り添っています。たとえお菓子がなくても生きてはいけるけれど、人と人をつなぐあたたかい存在として、パティシエができることはたくさんあります。そんな世界を、もっと多くの方に知っていただけたらと思っています。
日本スイーツ協会様のHPはこちら!
ありが糖運動担当職員後記
パティシエとしてのスイーツ作りだけでなく、スイーツを通した地域の活性化や人材育成まで幅広く考え、スイーツ振興に向けて活動されており、感服いたしました。また砂糖の消費拡大に対してもお考えをお聞かせいただき、大変勉強になりました。
今回は、貴重なお話をいろいろお聞かせいただき、ありがとうございました!
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