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農林水産省

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指定の公示について(指定番号第93号)

下記の地理表示について、指定の公示をしたのでお知らせします。

更新日:令和3年2月1日
担当:輸出・国際局 知的財産課

Telemea de Ibănești(テレメア デ イバネシュティ) 


1 指定年月日     令和3年2月1日
2 指定番号  第93号
3 締約国の名称  欧州連合
4 農林水産物等の区分  第6類 畜産加工品類 酪農製品類(ナチュラルチーズ) 
5 農林水産物等の名称  Telemea de Ibănești(テレメア デ イバネシュティ) 
6 農林水産物等の生産地  ルーマニア

 Mureș郡のGurghiu、Hodac、Ibăneștiの行政区域。
 これら行政区画の範囲は、Gurghiu Valleyの一部を形成する。
7 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1) 特性
 テレメア デ イバネシュティは、在来の牛から搾られる乳を酸凝固することで生産されるチーズである。
 テレメア デ イバネシュティは、次の特性を有する。底面が正方形の塊は0.3~1.0kgである一方、底面が長方形の塊は0.3~0.7kgである。均一の密度を有する身が詰まったしっかりした塊で、バターのように滑らかである。崩すことなく、簡単に分けることができる。色はやや黄色がかった白色で、塊全体で均一である。仄かな甘さと酸味、そして仄かな塩気が特徴の心地よい風味で、チーズの熟成が進むに従い味は濃くなる。匂いと香りは微かにする程度で心地よく、これも熟成が進むに従い強くなる。高地の牧草地の特徴的な香りがする。水分は62%未満で、乾燥物質の脂肪含量は38%未満である。エネルギー値は、産品100g当たり198kcalである。テレメア デ イバネシュティのカルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)の最低含量は、産品100g当たりそれぞれ400mgと35mgである。
 このチーズは1年を通して生産でき、「proaspătă」(生)又は「maturată」(熟成)の表示を用いて販売される。「proaspătă」(生)のテレメア デ イバネシュティは、製造後24時間以内に消費される。「maturată」(熟成)のテレメア デ イバネシュティの最低熟成期間は、製造日から20日である。
 テレメア デ イバネシュティの名称は、Gurghiu Valleyの酪農場で採れる牛乳のおかげで心地良い微かな塩気のある風味がするソフトから半硬質のチーズを指すものである。
 その密度と、カルシウムとマグネシウムの高い含有量は、Orsovaにある泉から抽出する塩水を用いた加塩と保存加工によって実現される。これらの特性が本産品を、飲み水と塩から作られる塩水を用いて製造される産品と異なる突出した存在にしている。
 Orsovaの泉から抽出した塩水に漬けたテレメア デ イバネシュティと、飲料水と塩(NaCl)から作られた塩水に漬けたチーズにおいて観察されたミネラルに関する試験報告書によると、前者については、100gの産品中540mgのカルシウム(Ca)が含有されているのに対し、後者の100g当たりの含有量は380 mgである。それぞれのマグネシウム(Mg)の含有量は、100g当たり前者が50mgに対し後者が32mgである。したがって、テレメア デ イバネシュティは、飲料水と塩でできた塩水に漬けた産品とは異なる特性を持つ。

(2) 生産方法
◯ 原料
 テレメア デ イバネシュティの生産に用いられる原料は、専らGurghiu Valleyで飼育された健康な牛から搾られた乳である。牛乳のレンネット(凝固)には、微生物レンネットを使用する。
 加塩には、Orșovaにある塩水泉から抽出する塩水を使用する。この塩水には、1リットル当たり184.4mgのカルシウムと94.6mgのマグネシウムが含まれている。他方、飲み水と塩から作られる塩濃度が21~23%と同じ塩水においては、1リットル当たりのカルシウムは88.2mg、マグネシウムは32.4mgである。
 この塩水が、浸透圧の上昇、不要な微生物の活動の減速又は停止、静菌効果によるチーズ内の微生物相の調節を引き起こす。また、チーズの長期保存を可能にする役割も果たす。

◯ 飼料
 テレメア デ イバネシュティに必要な原料を生産する乳牛に与える飼料は、Gurghiu Valley内の生産地からの繊維飼料に限定されている。
 春と夏は、放牧により又は例外的だが牛舎内で牧草を食べさせる。秋と冬は、生産地内の草地で採れた干し草を与える。
 乳牛に与える飼料には濃厚飼料は含まれていない。年間の最低放牧期間は6か月である。
 牛乳の品質は、放し飼いによる酪農とGurghiu Valleyで得られる飼料の質の両方に由来する。牧草地と草地は、天然肥料(有機質肥料)を用いて肥沃にし、維持する。

◯ 包装等
 テレメア デ イバネシュティの塊は、加塩後直ちに真空密閉した袋に入れる。当該塊は加塩後直ちに、チーズを塩水に浸す円筒形容器に入れてもよい。このようにすることで、チーズが甘さと塩気が混ざった風味と密度を保ち、かつ脱水や塊が崩れる危険を排除する。

◯ ラベル表示
 テレメア デ イバネシュティは、「Telemea de Ibănești」という文言が記載された製品ラベルが貼付された平行6面体又は立方体の形状で販売する。

(3) 農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
 テレメア デ イバネシュティが生産されている地理的範囲は、Gurghiu川の谷と一部合致する。このエリアの特徴は、乳牛を初めとする家畜の飼育に適した固有の植物相、地元の人々が乳製品や肉、野菜の保存に使用する塩水の泉、そして、とりわけ、先祖代々伝わる伝統料理や伝統工芸を守る人々が形作っている。
 Gurghiu Valleyは、高地は湿度が高く涼しい温暖な高山気候、そして高原地帯は温暖な大陸性気候である。このエリアにおける豊かで多様な植物相はこのような気候に由来する。
 Gurghiu Valleyは植物相が豊かで(1,194種)、固有種や絶滅危惧種、危急種、希少種が比較的多く存在するということは、このエリアには汚染源が無いということを証明している。
 Gurghiu Valleyの多様な地形は、酪農家やテレメアチーズの生産者にとっては財産である。このエリアには、夏は乳牛に餌を与えるために必要な草地があり、冬は乳牛の給餌に使用する干し草が得られる。
 Gurghiu Valley北部にあるSânioara、Osoiul、Orungiiの丘と、Orșova ValleyにあるIsticeuとMăguraの丘は、中新世の堆積物と、独立した塩の堆積物でできたsub-Carpathianの背斜の丘である。
 ローマが占領していた時代、岩塩坑がいくつか建設され経営されていた。それら岩塩坑の一つが崩落した後、Jabenițaと呼ばれる塩水湖が形成された。
 このエリアの地下水は許容される塩濃度を大きく超えるため(665.23mg/lのClアニオン、420.5mg/lのNa+カチオンとK+カチオン)、飲むことができない。
 乳牛に与える飼料には、牛乳の酸度を高める濃厚飼料が含まれていない。
 風味と保存性によるチーズの評判から、この地域におけるテレメア デ イバネシュティの製法は世代を超えて受け継がれきた。
 本産品と生産エリアの繋がりは、酪農とテレメア デ イバネシュティの生産及び加塩に関するGurghiu Valley特有の昔ながらの伝統に基づく。
 牛の質の良い多様な食事が、特殊な官能特性を牛乳に与え、これが同じカテゴリーの他の産品と異なる独特な風味と香りを有するチーズの基になっている。
 地元の人々の技術と経験に加え、Orsovaの泉からの塩水を用いた地域固有の湿塩法が、本地域固有の産品の要因である。
 テレメア デ イバネシュティの生産工程で今も実践されている昔ながらの技法には、レンネットによる急速な凝乳(1時間未満)や細かい粒へのカードの分解などがある。テレメア デ イバネシュティの生産において今日もなお使用されている伝統的な道具には、カードの切断に使用する通称を「harfă」という道具や、「dog de lemn」(木板)などその他の攪拌用具、カードの攪拌と容器の側面へのカードの吸着の防止に使用される主に木で作られた工芸用具などがある。
 湿塩工程が、塩水の水溶性成分とチーズの水溶性成分の恒久的なバランスと、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムイオン及びチーズ内のイオンの交換を作り出す。可溶性窒素、脂肪、乳糖、無機塩が塩水に移動し、その結果チーズ内のタンパク質の部分的可溶化とチーズ内のタンパク質の変化が生じ、これがタンパク質の食感、可溶性、及び構造に影響を及ぼす。同時に、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウムイオンもチーズに移動する。
 塩水に漬ける工程での塩の吸収は、チーズと塩水が接触する部分近くでの水分の増加を伴う場合がある。とりわけ、カルシウム又はマグネシウムが足りない薄い塩水においては水分の増加が生じ、これが柔らかい皮や気泡等の欠陥を生じさせる。Orsovaの泉から抽出した塩水を用いると、カルシウムとマグネシウムの含有量が多いため、そのような現象は生じない。
 Orsovaの泉からの塩水を用いた場合のもう一つの利点は、チーズの乾燥がより緩やかであり、低い比率の塩類含有量を実現できるという点である。
 はるか昔から、各家族によって乳牛の飼育が伝統的になされてきた。そしてこれらの家族にとって、生乳の加工は重要な収入源になってきた。テレメア デ イバネシュティがこのエリアの伝統料理の一つであることを示す史実は豊富にあり、最も古いものでは17世紀まで遡る。

8 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -

お問合せ先

輸出・国際局 知的財産課

担当者:地理的表示保護制度担当
代表:03-3502-8111(内線4284)
ダイヤルイン:03-6744-2062
FAX番号:03-3502-5301