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農林水産省

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議事録

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平成:16年6月15日
会場:農水省4階第2特別会議室
時間:9:00~12時20分

議事次第

  1. 開会
  2. 農村振興局長あいさつ
  3. 議題
    (1)関係団体からの意見聴取について
          (休憩)
    (2)現地調査結果について
    (3)都道府県からの評価結果の概要について
    (4)検討会における指摘事項について
    (5)中山間地域等直接支払制度の顕彰に関する論点(案)
    (6)その他
  4. 閉会

(午前9時00分開会)

地域振興課長
定刻となりましたので、中山間地域等総合対策検討会を始めさせていただきます。
委員の先生方には、ご多忙の中、ご出席をいただきまして、大変ありがとうございます。

私は農村振興局の地域振興課長でございます。
本日は新潟県と山口県の現地検討会を挟んで5回目の会合となります。
なお、先日から庁舎内の軽装を励行するということになってございますので、恐れ入りますが、ご自由に上着をお取りになっていただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、座長、よろしくお願いいたします。

佐藤座長
おはようございます。
それでは、ただいまから第16回になりますが、中山間地域等総合対策検討会を開催したいと思います。

今日はお手元の議事次第にございますように、内容がたくさんございますが、まず最初に関係団体の方からご意見をいただきまして、その後5分くらいの休憩をとって、そして今日の本題でございます5番目の中山間地域等直接支払制度の検討に関する論点について、じっくりと時間をかけて議論したいと思います。予定では12時までには終わりたいと思いますので、よろしくご協力をお願いいたします。

それでは、早速、議事次第に従って始めますが、まず局長の挨拶ということですが、若干遅れておりますので、次長の方から挨拶をお願いします。

農村振興局次長
おはようございます。
農村振興局次長の中條でございます。

今程お話がございましたように、局長が所用で遅れておりますので、開催に当たりまして私の方から一言ご挨拶を申し上げます。

委員の皆様におかれましては、ご多忙中にもかかわらず、早朝からご出席を賜りましてありがとうございました。厚く御礼を申し上げたいと思います。

本日の検討会は先ほどお話がございましたように、第5回目になりますけれども、引き続き中山間地域等直接支払制度の平成17年度以降の概要についての検討に向けて、現行体制の検証を行っていただきたいと思います。

前回、前々回は新潟県、山口県において現地検討会があったわけでございますけれども、ご出席賜りました委員の方については大変ありがとうございました。後ほど出席いただいた方々からご報告をいただくこととしております。よろしくお願いいたします。

本日のメインテーマは本制度の成果、課題について、関係団体の皆さんからご意見を伺うことであります。本日、ご出席いただいております全国農業会議所、それから全国農業協同組合中央会、全国水土里ネット、全国町村会、日本経済団体連合会の代表の方々におかれましては、ご多忙のところご足労いただきまして御礼を申し上げます。

さて、本制度につきましては、これまでも地方公共団体等からたくさんの継続に向けての要望が寄せられております。一部ご案内のとおり、先月の17日に財政制度等審議会が中山間地域等直接支払制度については、廃止を含め抜本的な見直しを行うべきというふうな建議を行いましたけれども、この後は地方公共団体等からの提案活動もますます活発化してきておりまして、これは制度の重要性、関心の高さを示すものであるというふうに考えております。

いずれにしましても、本制度の検証、課題につきましては、平成17年度概算要求のときまでに取りまとめる必要があると考えておりますので、限られた時間ではございますけれども、よろしくご審議をお願いいたします。

以上、開催に当たりましてご挨拶といたします。
よろしくお願いいたします。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ご報告申し上げるのを忘れましたのですが、今日は内藤委員と清水委員がご欠席でございます。

それから、毎度のことですが、13回のこの検討会の議事録については既にホームページに掲載してございますし、それから先般行いました現地調査の資料等につきましても既にホームページに掲載してございます。

それでは、早速議事に入りますが、お手元に配付されておりますように今日はたくさんの議題がございます。その中心は先ほど申し上げましたように、現行対策の検証に関する論点案についての議論でございますが、まずその前に今、局次長のごあいさつの中にもございましたように、関係団体の方からの意見聴取ということで、10時40分ぐらいまでにご意見を賜りまして、それから引き続き本題に入りたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

今日ご出席いただきました5つの団体にはお忙しい中、ありがとうございます。余り時間がとれなくて恐縮なんですが、それぞれ10分程度でお話をいただきたいと思います。まず最初に全国農業会議所の高橋事務局長からよろしくお願いいたします。

全国農業会議所
それでは、私の方から説明します。

委員の名簿を見させていただくと、全国農業会議所は何をやっているところかは、よくわからないかもしれませんで、私どもの組織を簡単に説明させていただきます。
私どもは市町村に農業委員会というのがございまして、土地と人の問題につきまして、責任を持って仕事をさせていただいている組織だということで、今日こういうところへご案内いただいたんだと思っていますので、それに基づきまして説明させていただきます。

お手元に中山間地域等総合対策に対する意見という私どもの報告がございますので、これに基づきましてご報告をさせていただきます。

私どもはこの5月26日に全国の農業委員会の会長大会を開き現在政府で進めております「食料・農業・農村基本計画」の見直しに対して組織検討を踏まえた提案として政府・農水省等関係部署に要望したわけでございます。その一貫として中山間地域対策等につきましても、各県から意見を求めました。その求めた結果を踏まえましてこれからご報告をさせていただくわけですが、基本的には私どもとしてはこの直接支払制度を引き続き17年度以降についてもきちっと確保をしてもらいたいというのが各県からの強い要望でございました。

その要望を具体的にしたのが各地の検証事例等でございますが、まず最初に私どもが先ほど申し上げましたように、各県の意見を取りまとめる中で、例えば京都府農業会議はこの直接支払制度を実施している32市町村の農業委員会、農業委員に意見を聞いております。

その中で主なものだけちょっとご報告させていただきますが、まず直接支払制度の集落協定の評価についてでございますが、(1)の集落協定の締結と実践を通じて、どのような効果がありましたかということを聞いたわけですが、右側に回答がございますが、一番大きいのはとにかく地権者や集落に「農地の遊休・荒廃化を防ごう」という意識が強まったというのが9割ございます。それから、次に遊休農地の解消につながったとか、あるいは農振農用地区域内の農地を守るべき、そういう意識づけが非常に高揚されたというのが59%。実際取り組んでみて、その取り組んだ結果としてそういう評価がされております。

それから、32農業委員会の中の274人の農業委員に聞いております。その中で、交付金の主な使途というのがございますが、いろいろあるわけですが、一番多いのは農道・水路等の施設管理のための資材の購入費用に充てたとか、鳥獣害対策のための購入費用に充てたとか、ある意味からしますと集落の農地をみんなで守っていこうという、そういうものに主な交付金の使途がうかがえるということでございます。

また、協定の締結後、新たに定着した取り組みはどういうのがあるかということを聞いたわけでございますが、その中で一番多いのが共同出役作業であります。ある意味からしますと、条件の悪いところ、高齢化、あるいは後継者のいない地域の中で、えてして従来あった共同作業がなくなってきているという中で、この事業を通じて共同出役作業ができるようになったとかということがございます。

それから、協定の締結後に見られる意識変化としてはどういうものがあったかということでございますが、先ほど申し上げましたように集落の守るべき農地の範囲についての共通認識ができたとか、新たに協力して農地を管理しようとする意識がこの事業を通じて非常に芽生えたという答えになってます。

一番最後でございますが、もしもこの直接支払制度が17年度以降になくなった場合遊休農地の見通しはどうかということを聞いております。その中で、一番危惧されますのは、直接支払制度が廃止されても「守るべき農地」は耕作・管理できそうだというのがわずか6%しかないと、こういうのが実態でございます。それ以外はなかなか難しい状態になるのではないかというのが農業委員会の意識としてあるということであります。この京都のアンケート結果は、私ども47県組織も同様であります。この事業が大きく役立っており引き続き17年度以降もお願いしたいということであります。

次に各地のいろいろな取り組みの中で、特徴的なものを出していただいた検証事例が一頁以降でございます。青森県の蟹田町から始まりまして、かなり多くあります。いちいちこれを説明しますと時間がございませんが、これを通じて見えますのは、この対策を通じて、遊休農地の解消に向けまして、地域協定を結んでいない方々との協力などをしながら、まさにさまざまな取り組みをしながら、農地のいわゆる維持、確保に向けて努力をしているというのがわかります。これはまた後ほど委員の先生方に見ていただければというふうに思っております。

そういういろいろな取り組みをする中で、なかなかいろいろ難しいこともあったわけですが、引き続きこういう課題がありますというのが9頁以降に出されてきた内容でございます。

いろいろあるわけでございますが、4点位あるんだろうと思っております。1つは、この事業を進めていく上で対象地域、農用地の取り方についてでございますが、水田と畑のいわゆる条件が非常に違う、畑の要件が厳しく、単価が低いというのが全体を通じて出されてきた問題です。それから、1haの一団の農用地の条件でございますが、これがなかなかとれないで、残念ながら遊休化をしてしまうという状況があるということが報告されています。

それから、2つ目としまして、一定の条件である多面的機能を増進するという活動について、やむを得ない部分もあると思うんですが、これに対しては高齢化等進んでいる地域では、負担感が非常にあるということが報告をされております。

それから、3つ目は事業の実施期間に対する考え方と交付金の返還要件というのが非常に厳し過ぎるという問題が3つ目として出されてきているように思います。

それから、4点目としまして、集落の事務処理、課税等も含めた事務処理等の作業が特定の人間に集中してくるということになりますので、そういう意味で事務的な処理に対する簡素化の問題が出されております。

その他いろいろ書かれていますが、秋田県の意見では、集落営農の組織化や地域の創意工夫に基づく独創的な取り組みが芽生えつつあり、より自立的な営農の展開に結びつけるためにも、なお一層の意識の高揚に努めるとともに、これらの取り組みを中断させることなく長期的なスパンで支援していく必要があるのではないかということが出されております。認定農業者及び農作業受託面積も増加してきて、これが効率的で安定的な農業経営を展開するためにも、なお一層の農地の利用集積を進めることが重要だ等この事業を通じていろいろ反省すべき点、またこういうふうに改善すべき点、いろいろ出されておりますので、またこの辺は後ほど参考までにまた議論の中でご紹介できればよろしいのではないかと思っていますので、以上報告を終わらせていただきます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ご意見もあろうかと思いますが、まとめて5つの団体からご発表いただいた後、意見交換というふうにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、引き続きまして全国農業協同組合中央会の冨士農政部長さんから。

全国農業協同組合中央会
ご紹介いただきましたJA全中の農政部長の冨士と申します。本日はこうした機会をいただきましてありがとうございます。きょうはJAグループの立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

お手元に3枚紙で中山間地等直接支払制度に関する意見ということでお配りしてございます。これは前文にありますように、全中で5月に47県のJA都道府県中央会を対象として、この制度の成果、それからこの制度の問題点なり改善すべき点、それからJAの取り組み状況等についてアンケート調査を行いました。これを集約して全中で取りまとめたものです。

まず、第1のこの現行制度の評価と意義でございますが、ここにありますように耕作放棄地の発生防止や集落機能の強化等に大変大きな成果を上げておりまして、現場での農業生産・地域資源の維持に必要な制度として定着しております。現行制度は大いに成果を上げているというのがアンケート調査の結果でございます。

その下に主な意見を載せてございますが、最初の丸、2つ目の丸にありますように、地域農業の将来像の話し合いが活発に行われた。それから、水路・農道等の管理の共同の取り組みの増加等、集落活動が活発になった。それから、4つ目では集落内の共同作業や話し合いの増加、集落活動の活発化等を通じて、耕作放棄地の発生防止や耕作放棄地の減少に役立っているというような意見、それから下から2つ目の丸では、条件不利地域の農地の維持管理に、集落の共同作業の促進と経費の補助が重要で、この制度は十分寄与している。それから、一番下の丸では営農活動としての役割分担がされて、農作業の受託面積の増加、認定農業者の増加等々、担い手の確保につながっているというような、大変現行制度を評価する意見が上がっております。

総括して、この制度は農地・農業資源の保全という地域農業全体の共通の課題の解決に地域みずからが取り組むことを促すことで、地域の主体性を高めてさまざまな地域活動の活発化につながっているという評価ができるということであります。中には、この集落協定の締結をきっかけに、特定農業法人の設立に至ったという事例もございます。そういう意味で、この中山間に限らず、集落機能の強化ということはますます重要性を増していると考えます。

我が国の分散農地を面的・団地的に利用集積するには集落等の単位で農地をどうまとまって利用するか、まただれが担うのか、水管理、農道、畦管理など地域資源の保全をどうみんなで分担するのかを描いていくことが日本型の構造改革ではないかと思います。そのためにも、地域での合意形成が基本となった集落機能の強化を目指すことが重要であると考えます。特にこの平場との生産コストの格差、耕作放棄地の増大などを抱えます中山間地域では引き続き営農活動や地域の資源保全活動における集落の共同の取り組みを進めることが重要であろうと思っております。

それから、中山間地域だけでなくて、集落機能の強化を図るという観点から、農道、水路、畦等の地域資源保全に向けた共同活動への直接支払、平場における直接支払ということも、今、新しい基本計画で議論がされておりますが、この中山間の直接支払との整合性を図りつつ、この際、そういった平場の直接支払という施策の確立を思い切って図っていく必要があるのではないかと思っております。

続きまして、2ページ目に今後の制度のあり方等々について意見集約をしてございます。

最初にありますように、まずこの制度の継続強化が大原則ということです。この制度は、新たな基本法に規定された政策、それから我が国農政史上初の直接支払制度であるということ、それからまたWTO協定上も緑の政策であるといったことでスタートしたこの仕組みですので、ぜひとも継続強化していただきたいということです。

昨年末には、三位一体改革ということで、急遽この交付金が51億円縮減されたということは市町村の財政が困難ということがありますけれども、大変残念であります。したがいまして、国の負担割合を高める等々、この制度を充実・強化していただきたいということでございます。

それから、先ほどありましたけれども、財政制度審議会でこの制度の廃止を含めた抜本的な見直し等々提起されておりますが、大変遺憾であると思っております。繰り返しになりますが、この制度の継続こそ、大変大事であり、廃止や後退ということは断じて認められないというのが現場の切なる声ではないかと考えております。

2つ目の四角で囲ってありますが、この制度の問題点、改善点等の意見を聞いておりますが、ここにありますように、現行制度では同一集落内でありましても傾斜度、ゾーニングの問題等々により、対象外農地が存在して、対象とならない者は集落協定への参加に二の足を踏んでいるという状況でございます。したがいまして、多面的機能を確保し、それから集落全体の共同取り組み活動による農村資源の保全が必要という観点から、対象農地や集落協定参加者の見直しを行って、対象農地所有者の協定から集落全体を制度の対象にすることが必要ではないかというように思っております。

四角の中で対象農用地について幾つか意見がありますが、最初の丸では傾斜地を要件としてため、集落全員が協定の対象とならない集落が多く、集落での調整が困難というような問題点。それから2つ目の丸では集落の全員が対象になるように改善してほしい。3つ目は水利等の活動が分断しないよう、平地を含めた集落一体となった仕組みとなるよう要件を緩和すべきであるというようなことが出されています。

4番目の丸でございますけれども、基準の尺度に満たない用地は制度の対象外ということに対して、平均傾斜度というような基準による判定を導入するなど、傾斜度の基準の見直しが必要ではないかという強い意見がございます。

それから、6つ目の丸のところで農振白地地区の問題も出されております。制度の対象外である中山間地域の農振の白地地区では、耕作放棄地割合が12.3%という高い数値ということも聞いております。したがいまして、この制度の対象を白地であっても集落の一団として対象とするよう、より弾力的に農振の白地地区を農振農用地に編入することも必要ではないかというふうに考える次第です。

このように、集落の中の一団の規模、それからこうした傾斜度、農振農用地の問題等々含めまして、集落の農地全体を制度の対象にすべきという意見が多数あると見ております。

それから、対象者の問題につきましては、下から4つ目、3つ目、2つ目の丸にありますように、中山間地域での農家の高齢化等によりまして、制度発足と比較しまして5年間で集落協定を協定することが非常に困難となっているというような状況も見られます。また、現行制度で対象外となっている農地を所有していない非農家、地域住民を含めた集落協定や、非農家の共同取組活動への参画を促進することも必要ではないかという意見がございます。

例えば、集落協定に参加する非農家につきまして、その人数等の一定基準等について、集落への交付金額を上乗せするとか、さらに一定要件を付した上で、地域住民やNPO法人が共同取組活動に参画することができるような仕組みの構築も、検討する必要があるのではないかというような意見もございます。
以上が問題点、改善点等の内容・意見です。

次に、3ページ目に交付金の単価充実といった改善の意見が出されております。

この四角で囲ってありますように、耕作放棄地等の発生防止というどちらかというと守りという姿勢から、既に耕作放棄地になっている農地の復旧という、復元という意味での攻めと言っておりますが、そういった観点から交付金単価の充実・強化が必要ではないかという考え方の整理でございます。

下の方に問題点、改善点が幾つか出されてきておりますが、1つ目の丸では耕作放棄地の復旧には大変な経費と労力がかかるということで、加算的な方策を講ずる等の支援が必要ではないかという意見。

それから、2つ目の丸では林地化の場合については、林地化前の単価による交付が必要ではないかという意見。

3つ目では、単価の引き上げにつきましては、傾斜度格差の是正、それから田畑の格差の是正という意味で、畑の単価を上げることが必要ではないかというような意見が多数出てきております。

それから、4つ目の丸では、より生産条件の厳しい急傾斜地についての区分を新たに新設して、その分交付金単価の引き上げを図るべきではないかというような意見。

それから、5つ目の丸では、担い手への作業受託をより助長・支援する上乗せ単価の引き上げ、それから市町村とかJAが受託する場合の支援対策というのも必要ではないかという意見が出されております。

6つ目では、畑地の排水不良地帯、それから石れき等の多い地域に対する制度の充実、それから7つ目の丸では樹園地についての単価の見直しというような意見も出されております。

それから、下から3つ目の丸では、税金のことについて意見が出ております。共同活動分の個人課税の見直しということで、非課税ないしは一時所得扱いにできないか。それから、個人が受領できる交付金の上限額の廃止、それから共同取組活動への拠出のうち後年に充てる積立金等への課税の見直しというような、税金問題というものも意見で出されてきております。

それから、最後に4番目で、JAほか関係機関の一体的な推進の整備ということを載せてございます。関係機関が連携した協議会等、一体的な推進体制についての整備が必要ではないかということです。現行制度につきましては、JAを含むいろいろな関係機関の役割は事業実施主体が市町村ということでありますので、大変不明確でございまして、JA全中が調べたアンケート調査でも、JAの役割というのは集落の寄り合いに参加するといった程度の関与が大半を占めております。市町村合併が進み、JA合併も進む、それからまた農業委員会や普及センターの見直し等々が進んでおります。そういう意味で、個々の集落への目が行き届きにくい実態となっているのではないかということから、関係団体のより一層の連携が必要ではないかと考えます。

例えば、JA山口中央では従来から関係機関が一体となって集落をサポートする体制が整備されてきております。地区内に集落協定推進協議会というのを発足させ、町、JA、農業委員会、土地改良区、森林組合、ふるさと振興公社、農林事務所、農家代表等、チーム3人による推進チームを編成して全集落を巡回、制度の説明とか合意形成、協定締結後の支援活動を実施しております。推進チーム39人のうち20人がJA山口中央の職員ということで、そういう実働部隊の中心として機能を発揮しているという実態もございます。そういう意味で、集落協定の事業実施主体を市町村ということだけではなくて、例えば行政、JA、農業委員会等を含めた協議会ということも考えていただいて、地域における一層の推進体制の整備・強化を考えていただければというような意見でございます。

簡単でございますが、私からの報告とさせていただきます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

(資料の訂正方お願いいたします)

それでは、引き続きまして、全国水土里ネットの佐藤専務理事よりお願いします。

全国水土里ネット
全国水土里ネットの専務理事の佐藤でございます。本日はこういう委員会で我々の意見を発表する機会を設けていただきまして、本当にありがとうございます。当方からは3枚紙の意見というペーパーを一応用意させていただいておりますので、それに基づきましてお話をさせていただきたいと思います。

まず、1ページ目でございますが、当全国水土里ネット、いわゆる全国土地改良事業団体連合会でございますけれども、これまでもそれぞれの農業・農村におきます重要な課題につきまして、いろいろと県水土里ネットと連携をしながら、いろいろな意見を出してまいったところでございます。そして、この(3)にございますけれども、我々自身もそういう課題に具体的に携わっていくというような観点から、まず地域の土地改良区、地域の水土里ネット、これがみずから行動していこうじゃないかということで、時代とともに、地域ともに歩む土地改良区と、こういうようなものを今目指し、創造運動というような形でそれぞれのところで取り組んでいるところでございます。やれることは、基本的に小さいことではございますけれども、水土里ネットという数、実際動いておりますのが 4,000ほどございますが、そういうところが全体で全国一斉にやれば非常に大きな形になるのではないかというようなことを努力しているところでございます。
そういう中で、中山間地域につきまして、いろいろ考えておりますが、まさに農業生産の場と国土保全、そういうような意味、または多面的機能の観点、このようなことから非常に重要な地域であると認識をしております。しかしながら、なかなかそこでの種々の条件の悪さから農業が停滞し、地域の活力が失われつつあるというような状況も基本的に認識をしております。
そういうような中で、我々として考えますのは、中山間地域の振興という課題に対しましては、1つだけで全部うまくいくということではなくて、いろいろな政策、基盤の条件の整備ですとか、それからソフトの施策ですとか、そういうようなものを総合的にいろいろとやっていくこと、その地域、地域に合ったといいますか、間尺に合った形ということになろうかと思いますけれども、そういうような施策が重要だろうというふうに思っております。

それで、2枚目に移っていただきまして、直接支払制度に対します我々の認識というところでございますが、中山間地域の農業というのはまさに生産条件が不利であります。そういうようなところで、先ほど申しましたように、総合的な対策が必要だろうというふうに考えております。地域の特性に応じました生産基盤の整備、生活環境の整備、それとあわせて直接支払制度のようないわゆる耕作放棄の防止だとか、多面的機能の発揮を促進する、そういうソフトの制度、こういうようなものが組み合わされるということが非常に効果的に機能するものだろうというふうに考えております。

それで、今回都道府県の水土里ネット、それからさらに集落協定に直接参加している地域の水土里ネット、いわゆる土地改良区も幾つかございます。そういうようなところに今回意見を聞き、また実施の状況もいろいろ聞いたところでございますけれども、その結果によりますと、おおむねといいますか、まず積極的にこの制度というものは非常に支持をされているということが明らかになっております。

それで、特に具体的には先ほどからそれぞれのコメンテーターがお話しになっておりますけれども、直接支払制度によりまして、ア、イ、ウ、エ、オと書いてございますけれども、水路、農道、農地の適切な維持管理ができるようになった。また、耕作放棄の拡大が防止されている。それから、景観保全への取り組みまでも進んでいるところがある。それから、地域の話し合い、これによる活性化ということが非常に大きいと思いますけれども、活性化が図られている。また、共同活動により集落機能の維持が図られてきている。こういうようなことが非常に高く評価されておりまして、この制度そのものについては、こういう制度がなければなかなかこれが継続できないだろうというようなことから、その継続が強く要望されているところでございます。

また、直接支払制度に対します意見といいますか、コメントというようなことでは、先程から出ておりますいろいろな要件の緩和ですとか、単価の話ですとか、そういうのは当然ございますけれども、我々の関係としてちょっと特徴のあるものとして、ア、イ、ウと挙げさせていただいておりますが、1つは共同体意識の高揚というのが、これは集落、またはその地域の農地を保全していく上で非常に大きい意味がある。この共同体意識というのが中山間といえどもかなり薄くなっていたという現状があったんだろうと思います。そういう意味で、こういう直接支払制度の使い道というんですか、そういうようなものも共同活動にもう少し重点を置いたような制度にしてもらったらどうだろうかというような意見が1つございました。
また、農業生産活動をそういう中山間地域で進めるに当たりましては、継続していくに当たりましては、直接支払とあわせて、その地域の農地の条件をもう少しよくしていく基盤整備というようなものも必要なんだと、そういうものがないと、例えば共同作業で水路、水管理をやるとかいっても、余り手間がかかるようなものではなかなか継続できないというようなことで、そういうようなものとあわせて行う必要があるよという意見がありました。

また、事例などを見ますと、そういうようなものに充てようということで交付金を集落の中の合意のもとにプールをしているとか、ため込んで少し大きなお金になったらそういう条件整備をやるとか、そんなようなことを考えておられるような事例もあるというふうに私はいろいろな資料で見させていただいております。

また、ウとしましては、いわゆる土地改良区といいますか、全体の水管理をする側から見ますと、こういう集落での末端部分での水管理、こういうようなものが非常にしっかりされるということは、いわゆる基幹部分に戻りましても水の有効利用とか、そういうような意味で非常にありがたいことだということで、そういうような面も評価をしている意見もございました。

4番目でございますけれども、次に直接参加している水土里ネットというようなもの、これは133というような数字を私は見させていただきましたけれども、かなり限定的ではございますが、こういうようなところはまさに水土里ネットの管轄している区域そのものが集落協定なりの範囲と大きく重なっているようなところ、こういうようなところではこの水土里ネットがかなり積極的に参加をしているというようなことかと思っております。

具体的にどんなことをやっているんだということになりますと、組織として賦課金の徴収ですとか、それから圃場整備などを行いますときの換地の計画ですとか、そういうような全体的にまとめていくという議論といいますか、そういうようなものにかけているというようなことで、集落との役割分担というようなものをもとに、水路とか農道といったものの維持管理と、それからさらには直接支払関係の事務を行うとか、それからいわゆる共同出役するときのスケジュールだとか、だれだれさんがどうだとか、そういうマネジメントの調整機能、そんなようなことを担っているというような事例の報告が来ております。

3枚目でございますが、直接支払制度に対する意見全般ということでございますが、今回いろいろ農林水産省におかれまして調査されたような資料も見させさせていただいておりますが、特に集落協定を締結するための話し合い、そしてそれに基づいていろいろなものを実行していくということで、地域みずからが地域の将来を考える、中山間地域のそういう将来を考える非常にいい契機になったのではないかというふうに思っております。また、こういう集落でも話し合う機会ができたということで、地域コミュニティ、いわゆる地域内の非農家も含めましたそういう地域コミュニティの復活、醸成が図られているというような事例もある。また、この結果として集落での共同作業というものが大分すたれていたというふうにも聞いておりましたけれども、これによってまた復活をし、そして農道ですとかかんがい用水路などの直営施工、こんなようなものも行われるようになったと、復活してきたということ。

それから、地域によってはこれは多くの事例ではございませんけれども、非農家を含めた活動にまで発展をしておりまして、農村の多様な資源を地域全体で維持保全していくと、そういう体制の芽が生まれてきているのではないかというふうに考えております。

また、こういう共同活動は今、話し合いというところに焦点を当ててお話しいたしましたけれども、こういうような話し合うということ、具体的な行動をするということのためには、具体的な経費がこれは確保されているという効果は非常に大きいと思います。いわゆる何かをやろうとする、日常的な農地の保全や水路、農道の補修、こういうようなことをやろうとしますと、必ずそこに何らかの資材費だとか、それから借料だとか、そんなものが必要になっておりまして、これが確保されないと、なかなか中山間地域で真剣に何をやろうかという話し合いが進まないというような面もあるのではないかと思っております。そういう意味で、共同作業を行う動機づけとして、金額の多寡は別でございますけれども、非常に大きなインパクトがあったのではないかというふうに思っております。

最後、結びというところに述べさせていただいておりますが、この制度がより有効に機能するためにはということで、集落協定を今一つ結んでおるわけですけれども、引き続き何らかの形で見直しなり何なりを行っていくと思います。そういう機会をいわゆる集落みずからが考えて実践していくということを考える機会を今後も制度の中に組み込んでいただけたらどうかということでございます。

それから、イは農地の保全や水路などの土地改良施設の維持管理を共同活動によって適切に行える体制を整えていくように誘導をしていただけたらというふうに思っております。

それから、ウといたしましては、生産基盤などとの総合的な直接支払制度とのリンクというようなものも、これも必要であるというふうに思っております。

それから、エでございますけれども、いわゆる既存の水土里ネット、土地改良区のあるところ、それから末端でありまして、そういう管理組合とか水利組合とか、そういうようなものが担っている部分、そういうような地域もあるわけでございますけれども、そういう既存施設が有効に活用できる場合には、運用や行政コストの低減等の観点からも、こういう組織は十分に活用できるので、ぜひ活用を図っていただきたいというふうに思っております。最終的には、ぜひこういう制度を継続していただきたいということでございます。

以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
引き続きまして、全国町村会の魚津監事からお願いいたします。よろしくお願いします。

全国町村会
おはようございます。
全国町村会を代表して、5月の末に何か話をということでありました、まず私達の町の現状を申し上げさせていただきます。そして、私がおつき合い頂いている町村長さんの話を聞き、まとめますと、結果は中山間地域直接支払制度を継続していただきたいと、願っていますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

私達の町は277.41平方kmであります。一番高い山が 2,933m、海岸が11.45km、山地が70%でありますから、30%の平地の中で実は1万 5,600人の人間が生活しているというふうにご理解いただきたいと思いますし、そんなことですから、平地と山地の間の中山間地はたくさんあるわけでありまして、その中で傾斜度20分の1という一つの指標の中で、そしてまた 100分の1というところも含めましてこの事業に取り組ませていただいたわけであります。

集落がこの事業の対象になりました。最初は苦労いたしました。それこそ、事務的なことをスムーズにやれる人がなかなかいなかったのであります。しかしながら、それこそ富山県も含めてでありますが、いろいろな角度でご理解いただきながら、ご指導いただいてようやく立ち上がりました。最初のとき、1集落がどうしても同時に立ち上がらなかったのであります。今は6集落すべて立ち上がっております。

1ページにはA地区からF地区まで書いてあります。そして、最後のページの方にそれぞれA地区はこういう効果があった、こういう取り組みをしたということを書いてあるわけであります、何点かかいつまんで申し上げさせていただきます。例えばA地区、B地区、C地区、F地区におきまして、世代間で話ができたということであります。

私どもの町に中山間地域直接支払を受けておられる方が210名であります。そのうちの70代、80代、90代という方が71人おられます。そして、30代、40代、50代、60代という方は139人おられます。これは総まとめであるわけです。その中で、90歳の人が30歳の人と話が出来たということも、その集落にある歴史、文化、そんなものが継承されていくだろうと思っております。そして、この人たちだけではそれぞれの中山間地と言えるところは守ることができません。一つの集落に全体的に「江刈り・江浚い」(水路の草刈り、溝浚い)をやっておられるわけでありまして、そういう中で一人一人の人間と人間としての関わり、何をすべきかということに大分自覚を持っていただいたと私は自負しているところであります。

そんな中で、早いもので平成12年から16年までのこの制度が終わろうとしているこの段階におきまして、私どもも検証しながら、そしてこれからどうしていくべきだろうかということを常に念頭に置いているわけであります。

富山県は35市町村あります。355集落が補助対象でありました。事業費にいたしますと、国の補助金の3億 4,161万円を含めて総額7億 5,232万円になります。それぞれ35市町村がいろいろな取り組みをやっています。これにつきましては、時間の制約がございますので、割愛させていただきますが、とにかく本制度の成果と評価につきましては、2ページ目にも書かせていただきましたが、それは、どの全国の市町村、それこそ集落協定の代表の方々のアンケート結果を見ても、我が朝日町と同様の取り組み状況や成果が見られていると、そして耕作放棄地の発生防止はもとより、農道や水路の共同管理、国土保全や良好な景観形成、農作業受託組織や担い手の育成・明確化など、持続的な農業生産に向けた取り組み、さらには話し合いや共同活動の活発化による地域の活性化に大きな成果があったのであります。

それから、2つほど下がりますと、まさに昔からあった農山漁村の地域の自治と、地域の住民が老若男女を問わず能力に応じて相互に支え合って生きる習慣を呼び戻すきっかけになったのではないかなと。私達の町も高齢化社会を迎えております。今リストラ等で私も団塊時代でございますが、勤めを辞めて毎日ぶらぶらしている人もたくさんいるんですね。そういう友達も含めて、何かやろうという模索をしておるところであります。そんなことで、こういう制度が一つのきっかけになれば良いのにと日々思っております。

本制度の課題と改善点につきましては、対象農用地につきましては、地域(集落)全体を対象とした活動を促すため、傾斜農地に限定することなく、それと営農上の一体性を有する平坦農用地も含めていただきたい。今ほど申し上げましたように、この制度の指定を受けておられる人達以外の方も集落におられます。集落の中に中山間地域直接支払制度の恩恵を被っておられる方とおられない方がおられますので、全体で考えなければと思っています。

地域の特性に応じた対策を促進するため、市町村に対象農用地の指定や交付金の交付方法に関する裁量を拡大していただきまして、弾力的な制度運用を可能にして頂くことは出来ないでしょうか。そして、またこの交付金につきましては、非課税に出来ればいいのかなと思ったりしています。

また、交付金の市町村負担分、例えば一般は4分の1、特認が3分の1に係る地方財政措置の充実を図っていただきまして、また事務手続の簡素化も図っていただければ、もっともっと有効にこの制度が使っていけるのではと考えております。

先ほども申し上げましたが、全国の私の知る町村長の話を聞きますと、三位一体は理解はするけれども、課税客体の小さな町村をどう考えているのかということを、大声で言っていこうと、また、言い続けていく必要だとも情報交換としております。ぜひとも農林水産省の寛大なるご理解をいただきまして、農林水産省としての要望として、五本の指に入れていただければ、この中山間地域等直接支払制度が継続していけると希望を持って今日臨んでおりますので、今後ともよろしくご指導いただきますことをお願い申し上げまして、私の意見陳述にかえさせていただきます。

ありがとうございました。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
それでは、最後になりましたけれども、日本経済団体連合会の立花専務理事からお願いいたします。よろしくお願いします。

日本経済団体連合会
ちょっとおくれて参りまして大変どうも失礼いたしました。

私ども経団連はこの制度の直接の当事者ではないわけですけれども、農水省の方から組織としての見解を聞かせてもらいたいというお話をちょうだいいたしました。私どもは内部で検討したところ、時間的制約もあって、この段階で明確に私ども組織として結論を得るに至っておりません。その意味で、本日は若干私の個人的な考え方も交えながら、正直言いますと歯切れが悪くなる点もございますけれども、内部での中間的な検討状況をご参考までにご説明申し上げて、皆様のご議論の参考に供したいと思っております。そういう意味で、今日は他の皆様と違って恐縮でございますが、資料は用意させていただいておりません。

私の方からきょうお話し申し上げる点は3点ございます。

私どもは農業構造改革についてどのように考えているのかという点が第1点でございます。

それから、2つ目が私どもの中に農政問題委員会という委員会がございますが、その中に部会がございまして、その部会で議論をこの問題について重ねたわけですが、その部会の中でこの制度についての評価なり課題といった点について、どういう議論があったのかという点をご参考までにご紹介したい。それが2番目でございます。

3番目に、若干私見も交えながら、現段階でこの制度についての私なりの考え方、評価といいましょうか、結論といいましょうか、その辺を申し上げたいと思っております。

まず、私どもの農業構造改革に対する考え方でございますが、1つは私どもはグローバル経済のもとで活力と魅力のある日本をつくりたいということで国内農業のあり方につきましても、そういう観点から関心を持って、また農業団体の幹部の皆様とも意見交換しながら、この問題について検討を続けております。

私どもが見るところ、国内農業にとっての最大の課題は何かと言われれば、これは釈迦に説法でございますけれども、自由貿易の枠組みと整合性のとれた形で水際での国境措置をできるだけ早く見直しをしていくことと、WTOの規律とも整合性のとれた形で必要な国内対策を講じて、農業の構造改革を加速化することにあるのではないかと考えております。

また、昨年の1月に私ども経団連が打ち出した政策ビジョンの中では、高関税なり、あるいは価格支持なり、国境措置による保護政策を改めて、財政支出による直接所得補償へと抜本的に農政の仕組みを転換することが必要ではないかという考え方をとっております。

ことしの3月にも、東アジアとのEPAの提携交渉の本格化に向けて、経済連携の強化に向けた緊急提言を発表させていただいたわけですが、その中でも関税等の国境措置が縮小、廃止された場合に影響を受けるであろう一定の農業経営に対しまして、所得減を補償する品目横断的な直接支払など、新たな支援策の導入の必要性について私どもは申し上げております。

また農業経営の担い手の一つとして、農業生産法人の形態、あるいは設立要件につきまして、できるだけ地域の実情に対応できるよう、柔軟性のあるものにしていくことが必要ではないかということで、具体的には株式会社の構成員要件などの緩和と同時に、来年、2005年の商法改正において導入が検討されております新たな会社形態、すなわち株式会社のいい点と組合のいい面をあわせ持った日本版のLLCといいましょうか、有限責任事業組合、あるいは有限責任事業会社といったものを農業経営に取り組む法人形態として採用することをぜひ検討してもらいたいということを申し上げたわけでございます。

以上が私どものこの構造改革についての基本的な考え方でございます。

2番目に、私どもの中でこの制度の評価なり課題についてどういう議論があったのかという点をご紹介申し上げます。

今、私が申し上げたような基本的なスタンスに立った上で、今回の中山間地域等の直接支払制度をどう評価するかという点でございますが、私どもの農政問題委員会の部会で、農水省のご担当の方からお話を伺った上で議論を行ったわけでございます。

大別して3つ論点がございました。

1つは、これは今までのお四方と違いまして、直接の当事者じゃない点もあるものですから、若干失礼に当たる点はお許しをいただきたいと思いますが、なぜ平場と中山間地域との格差是正が必要なのかという論点がございますけれども、これについてはこの制度の目的なり、あるいはプライオリティーをはっきりさせるべきではないかということでございます。具体的には例えば制度の目標の第一に、日本の農地をこれ以上減らさないということに目標を置くのであれば、耕地面積の4割をも占める地域を対象に、予算を広く、薄く配分するということがいいのか、それよりもより対象を絞った上で、新規就農者をふやすようなインセンティブをつけた方が効率的なのではないかといった点の検証をどう考えるかという点が一つございます。

それかとも農業の多面的な機能の維持、発揮をこの目標の第一に据えるということであれば、本来的には環境省なり、あるいは文化庁なり、あるいは国土交通省、観光とか、こういった施策との連携が当然考えられます。当然その辺の配慮もされてると思うのですが、この辺の横断的な政策の評価、検証はどうされてるんだろうかという点がございました。

それから、2つ目の論点としましては、この中山間地域等で農業を維持することが本当に適切なのかどうなのかという点でございまして、例えば森林に返すこと、あるいは文化財なり、あるいは観光資源なり、あるいは自然公園とすることの方がよいのかどうなのかといった点について、地域のことは地域が決めるというのが構造改革の取り組み方の一つの大方針であるわけですが、そういった方針に沿って、この制度のもとで地域で最善の選択ができる仕組みになっているのかどうか、あるいはこの制度がそういった地域の選択をゆがめている点がないのかどうかといった点の検証がされる必要があるのではないかという点がございます。

それから、3つ目の論点でございますが、制度の導入した後の実績と効果という点につきまして、実はこの導入の際の目標が概して定性的なものにとどまって、定量的、数量的なものが必ずしも十分に明らかにされてないという点がございまして、私どもみたいに制度の直接の当事者じゃない者から見ますと、事後的な評価が非常に難しい点がございます。

農政当局の方は今回の評価に当たりまして、自治体と関係の方々に実施したアンケートの結果をもとに分析しておられるわけですが、例えば耕作放棄農地の減少が本当にこの制度によるものなのか、他の代替策と比べてその費用対効果がどうなのかとか、あるいはそもそも消費者なり、納税者にとってのメリットは具体的に何かといった点については、公表された資料では必ずしも十分納得できるようなものは私どもから見ますとなかったわけでございます。

もちろんこのアンケート調査による回答は政策評価分析の重要な要素の一つであるわけでございますけれども、制度の受益者からのご回答であるだけに若干バイアスがかかっている面も否定できないのではないかという意見もございます。その関連で、制度を導入した後、例えば失敗したケースはどの程度あったのか、あるいはその理由は一体何なのかといった点につきましても、うまくいった方の分析だけではなくて、こういったマイナスの方の分析も同時に明らかにすることがこれからの施策の発展につなげることができるのではないかと思っております。

その意味で、私どもは公表された資料を見る限りにおきまして、現段階での実績につきましては、一定の肯定的な評価は可能だと思っております。ただ、今後の見直しに当たりましては、目下食料・農業・農村政策審議会の方で検討中のいわゆる品目横断的な直接支払制度の導入等の全体的な大枠の議論と整合性のとれた形で論議がなされまして、全体として納得のある見直しがなされることを望みたいといった議論が中でございました。
それで、3番目に現段階でのこの制度につきましての若干私の個人的な考えを交えての考え方、評価でございます。

私どもはこの制度は関税ですとか、あるいは価格支持政策による保護から一定の担い手に対象を絞った、いわゆる貿易歪曲効果の少ない直接支払制度にシフトするプロセスを補完するものとして、評価できるのではないかと考えております。ご説明がございましたように、問題の本質はいかにしてこの担い手を確保するかという点に私どもはあるのだろうと考えております。その意味で、冒頭の基本的な考え方のところで申し上げましたけれども、集落営農をいかに組織化して、担い手に土地を集約化する手法として、先ほどご紹介申し上げたLLC制度を農業生産法人の一つのやり方として活用することを私どもとして農政審の場でもご提案させていただいているわけであります。このLLCは有限責任事業会社、あるいは有限責任事業組合という形で、新しい事業を共同で立ち上げる、あるいは事業を合理化する等々、定款による自治を広く認めた法人形態でございまして、集落の中における専業農家のような担い手に利益を多く配分するといった定めを置くこともできるわけでございます。その意味で、私どもはこの中山間地域等の直接支払制度における集落協定とこのLLCの導入とを組み合わせることによって、集落営農の活性化、発展につなげることができるのではないかといった希望を持っておるわけでございます。

農政の場合に、政策目標というのはどうしても定性的なものにとどまりがちで、それでやむを得ないということでこれまで来た面もあったわけですけれども、事後の評価のためにいろいろご苦労いただいて、ぜひ定量的な目標を明らかにしていただければと思っております。定量的な目標が明らかにされませんと、関係者で目標が共有されないということで、よくある批判でございますけれども、いつまでたっても同じような政策が継続されがちだといった批判につながるわけでございます。、その意味でこの制度の見直しの結果、仮にこの制度を続ける場合であっても、ぜひこの定量的な政策目標を関係者間で、自治体なり、あるいは集落の方、あるいは個別の農家、こういった方々でぜひ共有すべき定量的な政策目標を持つことが不可欠ではないかという感じでございます。

私からのご説明は以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの5つの団体からのご意見をいただきましたので、意見交換をいたしたいと思います。
どなたでも結構ですので、ご発言をお願いいたします。

服部委員
今、最後にご報告をいただいた経団連の立花さんにちょっとご質問したいんですけれども、定量的目標といった場合に、中山間地域直接支払制度に対して、どういうことを例えばイメージされているのか、ちょっとお聞かせいただければありがたいと思うんですけれども。

日本経済団体連合会
先生のご質問でございますけれども、はっきり申し上げまして、具体的にこういった目標ということで持ち合わせているわけではございません。まだそれほど詳しく皆さんと共有できるような目標というものは突っ込んで議論しておりません。それよりむしろ私は農政当局の方がこういった政策を打ち出される場合に、どういう目標を、数字目標といいましょうか、考えたのかという点は当然、導入する際の議論の中ではおやりになったんだと思うんですが、むしろそういった点を逆に教えていただければと感じております。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。

松田委員
ちょっと教えていただきたいんですけれども、地域単位の水土里ネットが土地改良区が集落協定に直接参加している例について、2ページでお話しくださいました。全国で133あるとおっしゃったんですが、これについては何か地域的な特徴がございましょうか。全国で何か分布とかありましょうか。この例は大変将来を考えるときに参考になる事例だと思うので、ちょっと教えてください。

全国水土里ネット
地域的な特徴というよりも、集落協定に土地改良区が直接参加しているところは少ないだろうと実際我々は思っていたのですが、133程あります。そういう特徴は集落協定を結んでいるエリアと改良区が所掌しているエリアがある程度大きさが近いところなんです。そうすると、地域の組織としてそういうところを活用してやっていこうじゃないかというのが地域の中で選ばれるというか、地域イコール土地改良区というようなところに非常に近いところがそういう活動に参加をしていく。逆に幹線だけを管理している大土地改良区が必ずしも集落のところまで相談するとか、意見を述べるのは、そういう地域ではちょっと不自然なんです。必ず水路はありますので、その水路の管理組合というのは末端でもあるわけですけれども、その管理組合は土地改良区の全体の所掌の中には入りますが、組織としてあの改良区と末端の管理組合とは地域から受け取られる感じ方からするとちょっと違うと、そういう水利組合なんかは集落協定にそういう組織として土地改良区の代わりに活用されているような例もある、そんなところでございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
確認したいのですが、直接参加している水土里ネットの数は33ですか。

全国水土里ネット
133と聞いております。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかにご意見。

守友委
員全中の冨士部長さんにちょっとお聞きしたいのですけれども、資料の2枚目のところで2-2、対象農地所有者協定から集落全体、地域社会を対象とする協定へという、この話がございます。私も現地を歩いていると、何かそうかなという感じもするのですけれども、これはその後2の中で四角で囲って、対象とすることは必要と書いてありますが、こうしますとどういう条件でそれをくくれるのか、その下のところの丸の4番目のところでは、平均傾斜度を基準として等の説明がございますけれども、この他にこういった地域社会を対象とするような形に切りかえるとすれば、どのような条件が必要なのか、その辺ちょっとご説明いただければと思います。

全国農業協同組合中央会
まだちょっと混乱している部分があって、完全には整理はされてないんですけれども、ここにありますようなそういう中山間地域直接支払の要件、斜度の問題、それから6つ目の丸にありますそういう農振白地地域の問題等々、この中山間地域直接支払の中でのいろいろな要件の問題を改善していくという手法が一つあるかと思いますが、もう一つ今新しい基本計画の見直し議論がされてございますが、先ほど朝日町の町長さんの方からありましたように、平場での我々中山間地域直接支払と同じような平場地域での農業資源、地域資源、水管理、畦等々含めて、そうした集落機能の低下、農地資源の共同活動の低下というのは平場地域でも厳然としてあるということで、平場地域にもこうした中山間地域直接支払と同じような仕組みの水準論はいろいろございますけれども、直接支払が必要じゃないかということがあります。こういうものとの組み合わせといいますか、整合性と、そういうものも政策全体の体系を考えて、再構築していただければというようなイメージでございます。

小田切委員
今の論点についてご質問させていただきたいんですが、私も現行の農地支払に加えて、集落支払というオプションを考えるべきではないかというふうに思うわけなんですが、その点について全国農業会議所の高橋局長にお尋ねしします。いただきました資料の9ページ目からの各県の農業会議の要望を見ますと、これを細かく見ていきますと、特に西日本の県ではこうした要望が本当に強く出ていると読み取れるわけなんですが、全国農業会議所としての全体の総括の中にはこれが抜け落ちております。こういうふうな集落支払への転換ないしは現行制度との併存ということに対して、どんなご見解をお持ちなのかどうか、教えていただければと思います。

全国農業会議所
抜け落ちているというよりも、今、小田切先生のおっしゃったような日本の中でもさらにいろいろ地域によって大分条件が違うというのがございます。そういう意味では、私どもの事例にも広島県をかなり多く入れてきているわけですが、今、先生がおっしゃったような集落にもそのようなことが当然しかるべきではないかと、思っております。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。

小田切委員
なければ私の方から、水土里ネットの佐藤専務にお尋ねしたいと思います。

今回の現行対策におきましては、交付金の約二十数%が集落における人件費として使われているわけであります。恐らくその多くがいわゆるムラ仕事、つまり水利掃除とか、あるいは道普請などに使われているわけなんですが、実はこれをめぐっては賛否両論がございます。こういう形で交付金を使うことによって、将来的に「金の切れ目が縁の切れ目」のようにムラ仕事が崩壊してしまうのではないかという見解と、あるいはむしろ積極的に使うべきではないかという見解があります。恐らく環境・資源保全の対策とのリンケージともかかわって、非常に重要な論点であると思うわけなんですが、どのようなご見解をお持ちなのか、お尋ねしてみたいと思います。

全国水土里ネット
今、先生が両方おっしっゃたとおりだろうと思います。非常に高く評価をしている、いわゆる共同作業のようなものに使うということ、人件費という、そういうことによって、いわゆる共同作業に出る方も出やすくなるし、頼みやすくもなるし、またそういうものをきちんとやっていただけるようになるし、そういう意味では昔の無償でやっておりました道普請の出役、そういうようなものが復活をしているという、そういうインセンティブが非常に強くなっていて、これは非常に大きい効果があったという、とりあえずは今そういう状況だろうと思っております。

ただ、それをかえって今度は金がなければそういうものは働かないのかということにつながっていくのかどうか、ただ今はそういう使われ方といいますか、そういうものに使うということが全部じゃなくて3割とか4割がそういう共同作業をする、またみんなでやっていくということに非常に大きな効果といいますか、インセンティブを与えているという、肯定的に評価をしている例が我々のところには多く届いているというような状況でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょう。

野中特別委員
多面的機能の評価について伺います。

全国農業会議所の高橋事務局長さんに伺うんですけれども、資料の9ページに総括されたところで、多面的機能を増進する活動への負担感があるというふうに書いておられるんですけれども、もう少し詳しく多面的評価についてどういうふうにお考えになっているか、会議所の方での評価になっているのか。例えば、12ページなんかで和歌山県なんかの評価でも、多面的機能に着目した制度の拡充・強化が望まれるというふうに書かれているんですけれども、いろいろな部分的な多面的評価についての評価がやられていますけれども、負担感があること、あるいは制度拡充も含めて、多面的評価について農業会議所の方でどういうふうに評価をされているのかということを伺いたいと思います。

同時に、その点に関連をいたしまして、日本経済団体連合会の立花専務さんにちょっと伺いたいんですが、生産の方につきましては、先ほどの議論でなぜ格差が必要かとか、農業法人が必要かとかというご議論があるということですけれども、多面的機能については横断的な政策評価が必要だということではございましたけれども、経団連さんとしてはこの農山村地、特に中山間地域の多面的機能というのは一つの評価の要素だろうと思うんですね。生産とか経営でなくて、これはレクリエーション機能とか、国土維持機能とかいろいろあると思いますけれども、こういう点につきましては、経団連さんの方ではどういう評価をされているのかということをあわせてお伺いできればと思います。

全国農業会議所
私の方から申します。

今、おっしゃった負担感についてでありますが、私どもとしても率直に意見として出したわけですけれども、この直接支払が行われている地域は、ある意味では高齢化が非常に進んだ地域でございますから、多面的機能という表現に対する理解度がどのくらいあるかという部分があろうかと思います。そういう意味で、私どもは通常多面的機能というのは、皆さんご存じのように生産だけじゃなくて、さまざまな側面があるということを認識しているわけでございますが、高齢化が進んでいる地域によっては、よう知らんけれども、ちゃんと農地を守って使えばいいんだということで理解していると思ってます。そういう意味で、私どもは負担感があるといいますのは、事業の内容をいわゆる体で理解しながらも、そのことが自主的に行う上で先ほど私が申し上げたような幾つかの問題がある中で、条件がいろいろ大変だなというところに収斂されているんだろうと、このように思っています。必ずしも多面的機能が大変で負担感が重いとかというふうには私どもとしても強くは思っていないと、こういうことです。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

日本経済団体連合会
中山間部における多面的機能の役割というのは、これは当然実感できる面もございますし、また定量的にも評価されてありますが、それは私どもも評価させていただいているわけですが、だからといって若過大といいましょうか、評価され過ぎる点もあるのかなという感じがしておりまして、基本的には私どもはできればこの農業が一人前できちっと回っていく仕組みをいかに作れるかということであり、私が冒頭も最後もこの担い手の問題に強調させていただくのは、まさにその点にあるわけでございまして、私どもはそういった健全な農業の発展、あるいはそれが支えることになる多面的な問題についても、基本は担い手をいかにして育てて、あるいは確保して、あるいは支援していくか、これが一番の政策の根幹ではないかなと。あとは付随的なものだというふうにはっきり言えばそのぐらい政策目標をはっきりさせることが大事ではないかなという感じがあります。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

村田委員
質問というよりかちょっと私の意見を経団連の立花さんに言わせていただきたい。農政問題委員会での議論をご紹介いただきまして、3つ論点があるということでした。なぜ平場と中山間の格差是正が必要なのか、これ以上農地を減らさないことを第一義的に考えるならば、広く、薄くの中山間等直接支払制度というのは効果が少ないんじゃないか、あるいは多面的機能を第一に考えるならば、もっと別のやり方もあるんじゃないかという議論があるというご紹介でした。

なぜ中山間地域直接支払が必要なのかと私は思うのは、広く、薄く地方負担分も入れてわずか 700億円足らずのお金で、少ない予算で全国土の4割を占める中山間とか農山村がこれで守られているすごく効果的というか、非常に予算の使い方としても適切だと思うんですね。もちろん失敗の事例もたくさんあるんですけれども、それは地域に任せているからであって、すごく創意工夫して、わずかなお金で効果的にやっているところもあるし、それこそ無駄遣いしちゃっているところもある。それは事実なんですけれども、国なり上からああしろ、こうしろと細かく言わないところがこの制度のいいところだと僕は思うんですね。

そういう無駄遣いの事例を指摘して、これは非効果的だという指摘もできるとは思うんですけれども、むしろプラス面に着目すべきじゃないと思うんです。こういう直接支払という助成の仕方というのは、未来指向型の補助金だと思うんですね。さっき立花さんもおっしゃったように、貿易を歪曲しないのも直接支払制度の特徴の一つです。担い手に絞った所得補償というのが直接支払制度の中心に位置すると思うんですけれども、こういう条件不利地域に着目した直接支払、ないしは今日議論になっていませんけれども、環境づくりということに着目した直接支払と三つあると思うんです。この中山間地域等直接支払制度というのは、そういう意味では広く、薄くというか、わずかのお金で大きな効果を上げているということで私は評価すべきだと思っています。そういう議論を経団連もしていただければなと思うんです。

中山間地支払制度の中で問題があると思うのは、限界集落対策に効果がないことです。農協中央会の資料の2ページ目にあるんですけれども、高齢化や兼業化の進行で集落内で完結できないとか、対策期間5年というのは長過ぎると、高齢化で5年も先を見通せないというような、そういう限界的な集落が結構たくさんあるんですよ。要するに、集落として消滅してしまうような限界集落が日本国中に結構あるんですね。それは人為的に守るのは大変だから、消えるのはやむを得ないといえばやむを得ないんだけれども、そういうところをどうするか、そういう所は直接支払ですら救えない。それは消えてなくなるしかないなという感じもします。そんなに山奥に住むなと、町へ出てきて跡地に木を植えろというのも一つの選択だと思うんですけれども、日本全国の4割を占める中山間地域全部をそうするわけにいかないわけです。富山県の朝日町のあたりはもうなくなっちゃうぐらいなんですね。それをわずかなお金で維持できているというのは、繰り返しますけれども、未来指向型の予算の使い方として僕はこの制度を高く評価していいんじゃないかと思うので、その辺のところを立花さん、経団連の中でご議論していただければありがたいと思っています。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

服部委員
具体的な質問を少しさせていただきます。

1点は1ヘクタールという一団農地のとり方、これが山間地ではかなり厳しいのではないのかという具体的な指摘が全中の方からありまして、それから会議所の方からも9ページの検証に基づく課題というところで、一団の農用地をとれない地域があるということが出ているんですね。全中からの指摘の方にそれが多数だと括弧で書いてありまして、会議所の方には事例があるというような指摘なんだけれども、会議所さんの方ではどのような程度のものとしてこういうことが指摘されているということなのか、その点どうなんでしょうか。

全国農業会議所
かなりあるというふうに理解していただければよろしいと思います。

服部委員
それから、もう1点、これはちょっと私がこの検討会の最初のときにデータを見て発言したことに関連しているんですけれども、農協中央会の方の指摘の中に、集落内のいわゆる白地区域内の耕作放棄地の拡大が存在していると。現行制度はそれは対象にしないという形になっているんだけれども、集落の一貫として耕作放棄地の防止という目的の観点から、例えばこれを考えるべきじゃないのかという指摘があると思うんですね。こういう現行制度の対象になってないけれども、白地地域内での耕作放棄地の拡大が進んでいるという点について、これはかなりのところでこういうことが問題にされているのか、その点お聞きできたらと思います。できれば中央会と会議所さんの両方から聞ければと思います。

佐藤座長
いかがでしょう、白地の中の耕作放棄地については。

全国農業協同組合中央会
かなりあるのではないかと思われますけれども、ちなみに平成12年度から14年度までの間で566市町村で1万1,300haが白地から農振の農用地に編入されているという実績がございます。そういう意味で、これを大きいと見るか、少ないと見るかありますが、かなりそういう実態に基づいて編入をしていただいたということではないかと思っています。

全国農業会議所
私どもの方も事例を見させてもらって、農振農用地の方に編入をしているという事例の報告が結構されております。したがって、今、全中がおっしゃったようなことの効果があると思います。

ただ、私どもは遊休農地が、固まってあちこちにある状況ではそんなにないと思っています。先程経団連がおっしゃいましたけれども、条件の悪いところを起こしたりして遊休化しているところについては、言葉は悪いんですけれども、山に戻すような指導をきちっとしながら、しかしながら、まだまだ耕作を放棄しちゃいかんような土地については、どう守っていくかということをいろいろ苦慮しながら、こういう施策を使いながらやっていかなければいけないのではないかと、こんなふうに思っておりましす。平場地帯でも相続を契機にあるいは土地条件の悪いところが遊休化したりする場合がありますので、平場地帯にもこのような直接支払等の対策が立てられないだろうかということが組織の中で意見として出てきております。ただ、当面はこういう条件の悪い、しかも農業生産等で4割を占めるところを何とか維持しながら、最終的には担い手を育成できれば一番よろしいと思います。先程村田委員がおっしゃったような数少ない金の中で、これだけの農地を守っていけるということは非常に大事なことではないかと、そんなふうに思っております。

佐藤座長
ぼちぼち時間ですので切り上げたいと思っているのですが、まだご発言のない柏委員に手短にお願いいたします。

柏委員
全中さんの資料の2ページに、先ほど守友委員からもちょっと指摘があったところですけれども、2番目のところ、集落全体、地域社会を対象とする協定ですが、これは非常に重要なポイントであろうと全く実感しております。今回、阿東町に初めて行かせてもらったんですけれども、町が単独で対象にならないものに金を1,000円ずつ配分して、それを「持参金」にこの協定に入るというようなことで、それで集落内の平地も一体となった集落全体での取り組みができるようになり、集団転作ができるようになったり、集落全体が一体となった取組ができる素地ができたように思います。また、そうならねばならないという気がいたします。その意味でご指摘は全くそのとおりだと思います。

その下の線を引いているところがありますね。集落全体、地域社会を制度の対象とすることが必要というふうにありますが、もっと進んで個人支払から集落支払というやつですね、そっちの方に移るべきではないかというお考えも全中さんはお持ちなんでしょうか。例えば、ヨーロッパの場合ですと、1戸当たりの面積が大きいですから、単価が低くても相当政策効果が出てくるんですけれども、日本の場合個人配分であるとこれは本当に広くばらまかれてしまってどうしようもない。ですから、集落全体で何とかそれを集中的な取り組みに使おうということで今やっているわけですけれども、むしろもっとわかりやすくするなら集落支払みたいな、そういシステムみたいなものをも考えておられるのかどうかということが1点。

それから、2点目ですけれども、その次の3ページ目に4と書いてあるところですね。JAほか関係機関の一体的な推進体制の整備とあります。

先ほど立花さんが何か優良事例ばかり出して「マイナス、失敗のケース」がどれくらいあったのか、「マイナス面」も明らかにせよということがちょっと言われたわけですね。確かに、我々は多くの場合実際優良事例しか見てないんです。失敗している事例というのは余り見に行ってはいなくて、そういうのもたくさんあるだろうとは思うんだけれども、優良事例しか確かに見てない。ですから、日本全国の中山間の対象地域でどれだけ量的に、本当にどれだけ効果が上がっているところがどれくらいの割合かというのはわからないわけです。ただ、現実にうまくやっているところは相当たくさん出てきているということも事実である。その違いは何かというと、結局、地域マネジメント機能にあると思うわけです。

それをだれが果たすかというと、自治体であろうし、農協であろうし、特に自治体の責務は重いのですけれども、もちろん農協も入るし、農業委員会も入る必要がある。そういう意味では、一体的な推進体制を整備して、地域マネジメント体制をより強化させるということがこれが優良事例なるものをどんどん一般化させるという意味で非常に重要なポイントになると思います。しかしそれは結局今のところ成果が何に規定されているかというと、偶然性にかかってるいような気がします。要するに、たまたまその自治体に、大体優良事例を見に行きますと、すごい係長とか課長とかがいるわけですね。そういうたまたま人材がいて、強力に推進し、それがうまく現場とマッチした場合にはうまくいくけれども、そういう偶然性のないところは余りうまくいかない。だから、そういう偶然性に左右されない高位平準化できるような地域マネジメントシステムを地域に作るためにはどうすればいいんですかね。協議会をつくるだけじゃだめだと思います。何か新たなアイデアがもしあるのであれば、教えていただきたい。以上2点です。

全国農業協同組合中央会
1点目の集落支払というのも念頭に置いているのかという意味では、そういう集落に着目した支払ということも念頭に置いております。そういうものを考えべきだというように思っています。
2点目は推進体制の点についてはおっしゃるとおりで、優良事例についてはほとんど農協なり市町村等、農業委員会等に地域を引っ張る素晴らしい人がいるということで、そういう人が地域のマネジメント機能をきちんと担っているというのはおっしゃるとおりであります。そういう意味で、偶然性に左右されないという意味では、私どももこれだというのは今はありませんが、関係機関が寄って一体的になる、そういう枠組みというものを制度的に担保できるような仕組みといいますか、関係者が一体となってやれる、そういう枠組みを制度的な形で担保してあげるということが推進するうえで重要なのではないかと思います。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

予定の時間をちょっと過ぎているので、まだご意見、ご質問あるかもしれませんけれども、この辺で休憩を5分間、10時45分からまた再開するということにしたいと思います。
どうも5つの団体の皆様方、お忙しい中をご出席いただきましてありがとうございました。貴重なご意見ありがとうございました。もし時間が許すようでしたらば、席を用意してございますので、傍聴席でお聴きください。

ひとまず休憩にいたします。


(休憩)

 

佐藤座長
再開したいと思います。
お手元の議事次第の2番目に移ります。

現地調査の結果についてということで、先般2つの地区に行っていただきましたが、それぞれについて小田切委員と柏委員の方から簡単なご報告をいただきたいと思います。

まず、新潟県松代町については小田切委員の方からご報告を5分くらいでお願いします。

小田切委員
それでは、報告させていただきます。

資料はお手元の資料2月1日及び参考資料がありますでしょうか。ごらんいただきたいと思います。資料の2-1の意見陳述の主な内容、これに沿いまして発表させていただきます。
なお、私どもは3人の委員が参加させていただきました。内藤委員、守友委員、そして私でございまして、主として視察といいしましょうか、現場は松代町を中心に幾つかの集落及び施設を歩かせていただきました。その上で、ここに書かれております6名の方々から意見陳述をいただきました。

まず、一番最初の松代町、これは助役さんがお答えいただいたんですが、「営農活動や集落の活性化に大きな効果が出ている。町も元気になった」という話をいただきました。特にこの営農活動につきましては、具体的に申し上げれば圃場整備に、自力土地改良でございますが、それに対する交付金の支出、あるいは生産組織の立ち上げに対する支出、そういうものに使われているという話でございました。松代町では経営規模の拡大は困難であったわけでございますが、そうした投資によって、規模の拡大まではいきませんが、少なくとも機械化がより進んだという成果が見られたそうです。

それから、お二人目の蓬平集落、この集落代表者の方でございますが、ここでは「集落での共同活動を行うことによって、集落内の住民同士の交流が活発となった」という話をいただきました。この共同活動というのは、先ほどの自力土地改良、特に農道施工でございます。これは直営施工でございまして、この蓬平集落約51haの集落協定でございますが、おおむね 5kmにわたる自力での農道整備、2.5m幅の整備を行ったということでございます。

なお、それに加えまして、集落の女性たちが近隣の施設に対する花壇の整備等々も行われたということでございます。

この蓬平集落の代表者の方のご発言で非常に印象的だったのが、「耕作放棄がそれまで毎年増加していたわけですが、とにかくこの直接支払制度ができてからは本当に見事にストップした」という発言や「ちょっとぐあいが悪くなってどうしようという話になったら、これは組合員がでございますが、次の日にはもう耕作者が決まっているというふうに、とにかくこの制度を本当に大事にしなければならないということを皆さん一生懸命になって考えている」、という印象的なご発言もございました。

それから、3人目はJA十日町の営農センター長でございます。このJA十日町は集落協定の締結には直接にはかかわっておりませんが、地域農業に密着した主体として特に新規作物に関する相談がJAの営農センターにふえているという、そういうことをご報告いただきました。あるいは地域農業に対する振興主体として研究会を立ち上げて、特に山菜の導入、これは山菜を田んぼの法面に導入することで、法面の崩れを防止するという新しい考え方でございます。そんなことに取り組んである程度の成果を上げているという話も承ってきました。

次のページになりますが、4番目でございます。松代町とつながっておりませんが、同じ東頚城郡の安塚町でございます。その助役さんの言葉でございますが、本制度を国土保全対策として持続的かつ安定的な制度とするべき、また頑張っている集落に加算する等のメリハリが必要だということをおっしゃっておりました。全ての集落、それを対象とするのは、それはそれでいいわけでございますが、特にその上に上乗せ支払のような形で、頑張っている集落をより応援することができないか、そんな提案をしていただきました。

ここには書かれておりませんが、議論の中でこの助役さんは特に市町村学校が現在進行していく中で、中山間地域の推進体制、それが市町村合併後も全面的に出るような、そんな仕組みをぜひ国としても構築していただきたい、そんな要望もあったわけでございます。

それから、5番目、坊金集落でございます。これは同じ安塚町の中の集落でございますが、この集落では制度を契機に安全、安心な米づくりを目標に営農活動を行っている。それから、集落組織内に女性・若者の部会、これは正確に言いますと集落協定に部会を作っております。集落協定を単に紙の上でのアグリーメントとしてとらえるのではなく、集落協定組織という形で組織を作り上げていく。具体的に申し上げれば、生産振興部、観光環境部、いきいき楽習部、そんな3部にわたりまして、集落協定内部で組織的活動を行っているという事例でございました。

そして、最後に新潟県でございますが、新潟県では昨年の8月から集落直接支払制度あり方検討会というのを立ち上げまして、そこで検討した成果を農林部長さんがご説明いただきました。そこでの検討の中身としまして、第1に守りと攻めの活動、この2つの活動が両立するような、そんな考え方が必要だ。第2に集落プランを重視すべき、新潟県では現行対策におきましても、単なる集落協定ではなくて、集落プランを同時につくることを義務づけているわけなんですが、そうした集落プランを重視することを改めて強調しておりました。そして、3番目には守るべき農地のゾーニング、4番目には地方裁量主義のさらなる推進、この4点を部長さんは強調されておりました。

以上、6名の方々からのお話を聞いたわけでございますが、若干の印象を申し上げれば、第1番目の感想としまして、先ほどの集落の方々、この制度を大切に考えているという言葉に見られますように、この制度を育てようとしているといいましょうか、少なくとも壊すことがないように大切に育てていく、一種の制度に関する参加意識が強いということが今回の調査で明らかになっています。

2番目の感想としまして、特に町あるいは県、つまりこの制度を推進する立場の方々はいずれも、現行の守りのこの制度、これを攻めに転じるような、そうしたことをこの制度の内でやるのか外でやるのかという議論があるわけでございますが、少なくともそれを推進するような努力と、あるいは次期対策に向けた発想をされている。そういうことが明らかになったというふうに思います。

以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
引き続きまして、山口県の東和町及び福栄村について柏委員からお願いします。

柏委員
お手元に資料を配付させていただきました。

まず、阿東町でございますけれども、この町の基本方針として、複数集落で締結させるということですね。それで、全部で136集落あるんですけれども、それで68協定にまで圧縮してます。最初は26協定を目指していたんですけれども、水利関係などがあって68になったということです。そこでのポリシーは、力のある集落と弱い集落とを抱き合わせて複数協定化するというように言われておりました。

それから、2番目に町単独での支払金制度というのをつくっております。これは要するに国の制度に入らない対象集落中の平地水田、こうした所有者たちにも入ってもらおうという、先ほど全中さんが言われたような集落全体で、全員で協定に入れるような仕組みをつくるために導入したものです。要するに、「躊躇している」という言い方を全中さんがしていましたね。「二の足を踏んでいる」とありましたけれども、それを反当たり1,000円の金を配ることによって、これは全部プール金に入れることにしまして、それをもって地主が協定に入るときの「持参金」にするという、そういうことで入り易くするというようなことであります。

これで何ができるかというと、要するに集落一体化で協定ができますと、すなわち平地水田部分も入るということになりますと、これは集落ぐるみで全水田を対象とした協定をつくらせることで、水利管理や集団転作に有利になるということです。こういう中で、広域営農組合が設立されたり、集団転作が実現したりしております。

この誘導事例として徳佐上中集落というところを見させていただいたんですけれども、これは土地改良区が事務局機能を持ちまして、16集落で協定を結んでおります。なかなか結ぶまでには苦労が相当あったようですが、それを克服していったわけです。

15年度から集落営農組織が発足しまして、45名の輪番制のオペでやっておりますが、転作用の大型機械は16集落全体で買う、中型機械は集落単位で買う、小型機械は個人でというような、そういう機械の買い方をしているということです。プール金で購入した転作の大型機械というのは、大豆、ソバの収穫機、それから水稲直播機です。
それで、平地水田も含めた集落協定になっております。

こうした中で、大豆団地を15ha作っております。これは平場の農村並みのことが中山間地でもできるようになっている事例といえます。大体、中山間地というとネガティブな転作形態が多かったわけですけれども、一定の土地条件下では努力すればこういうようなことができるということです。

その大豆の団地も45haある大きな集落に固定するというようなやり方をとっています。要するに、集落で「バラ転」しないということです。一番平場の平地水田のたくさんある集落にまとめてつくってしまうということです。ソバも5haの団地化をしている。これは転作の「適地、適作主義」ということを言っておりましたけれども、まさにこういうことができるんだということです。

それから、現場の会長さんがおりまして、山見さんといって88歳ですごく元気なんですけれども、こういうふうに言われていたことが印象に残っています。

今ある集落営農は過渡的だというご指摘でした。「緊急避難的」だというような言い方もされていました。「このままでは続かない」と、「今は退職者と高齢女性でもっている」と。「今後は企業的なものに移行させなきゃいかん」ということを言っていたのが非常に印象的です。

それから、水稲の作業適正規模についてちょっと質問したんですが、これは山見係長さんが答えてくれたんですけれども、この町では大体1集落12haの稲作が平均的であり、1集落1農場制をつくって、それをカバーする集団をつくっていかないと中核的なオペが入ってこないということで、そういったものを目指しているということです。
それから、次に福栄村です。ここは「農区制度」というのが平成2年度からあります。これは技術的な視野から見て合理的な地域区分をしたものでありまして、いくつかの集落が集まって農区を形成しているわけです。といっても非常に多様でありまして、1集落だけがある農区もあれば、7集落まとまった農区もある。13戸のものから95戸のものもある。14haから123haまである農区もあるという状況です。これは一言でいうと、その目的は農地利用の合理化を図る基礎的仕組みづくりであるという1点に尽きると思います。分け方は水系による地区区分と農道による地区区分で農区が形成されています。
その農区、こういった制度がもともとあったところに直接支払制度が入ってきたわけですけれども、そこで農区をつくったことが非常に活かされてきたということです。例えば、第13区というところを見たんですけれども、そこでは「至福の里」という組合がありまして、それが支払金のもとで機械を買い足して非常に活力を持つようになったというようなお話をいただきました。

それから、あとはプール金によって急傾斜農地の農道を舗装するとか、そのようなかたちで農区制度がより活かされる形が見られました。

最後に簡単に総括をいたします。1点目は直接支払金は地域の創意工夫や努力によって、平地農村同様の集団転作をも条件に応じて可能にしたり、それから集団営農の振興に大きく寄与しているという事実があります。付随して集落活性化機能も増進されているということも見てとれました。その場合、地域の創意工夫、努力、このプロセスが大事でありまして、その苦労の中でパトナムという学者が最近、十数年前からソーシャルキャピタルという言葉をよく使うんですけれども、「人間・社会関係資本」という、「地域力」あるいは「地域的力量」みたいな概念と考えていただいていいと思うんですが、そうしたものがプロセスの中から地球に形成されてきてくる。それによって、次から次にスパイラル的にいろいろな意義深いアイデアが出てきたり、みんなでまとまっていろいろなことをやれるという、そういう効果や意義がむしろ非常に大きいのではないかという気がいたしました。

2番目は村田委員が現地でたしか「自由に使える金」の存在は地域間格差をもたらすということを言われたわけですが、まさにそのとおりでしょう。さらにこの地域間格差というのは地域マネジメント機能にかかっくてる。ですから、それをどう高めるシステムを構築するかが重要となってくる。先ほど全中さんは「協議会」と言われましたけれども、集まっても別に何か特別できるわけでもないわけで、どういうふうに集まっていい地域経営システムを創出するかが問われる。これは日本のみならずヨーロッパでも今非常に苦労しているわけですが、本当に地域マネジメント機能の高位平準化をどう図るかということを真剣かつ抜本的に考えなきゃいかんということです。

それから、3番目は「人口論的な限界」をどう克服するかということです。

先日、山口県で2つ「優良事例」を見ましたけれども、地域リーダーの方が来られましたが、おしなべて70代の方ばかり、元気ですけれども、山見会長なんて88歳、もう90ですよね。そういう人たちが非常に頑張ってやっているわけです。そして、村の中にソーシャルキャピタルを形成してきたわけなんです。いろいろな「財産」を作っていったわけです。仕組みも意識もいろいろなものを作り上げた。しかし、その「財産」を受け継いでいく後継者、それを受け継いで発展させる人材・システム、それをどういうふうに今後獲得していくのか、それがないと「今」、あるいは数年後で終わってしまう。その辺は先ほど経団連の方が「担い手」ということをよく言われていましたけれども、こうした点を彼は感じて言っていたんじゃないかという気がします。

それから、もう一つは私が先程申し上げた山見会長のご指摘にもありましたように、輪番制で、いわゆる地代重視型といいますか、古いタイプのみんなが協力し合ってオペをやっていくというような集落営農というのはことにこうした高齢化地域ではなかなか長続きしない、「新しい革袋」にしていかなきゃならないということでございます。

それから、「食っていける」営農集団、若手が参入したくなる集団形成をやらねばならない。そのときには何らかのインキュベーター機能を持った組織が必要となってくると言えるのではないかと思います。その意味で、今後は「投資論的視座」での思考がより必要となると思います。

以上です。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

ただいま現地調査報告を簡単にいただきましたが、これについてご質問等々おありかと思いますけれども、今日の主要な議題に時間をとりたいと思いますので、省かせていただきたいと思いますが、特にご質問ございましたら承りますけれども、よろしいですか。

どうもありがとうございます。
それでは、次の議題に移ります。

3番目です。
都道府県からの評価結果の概要についてということで、お手元に厚い資料があると思いますが、それについて事務局からご説明をお願いいたします。

地域振興課長
それでは、資料の説明をさせていただきます。
恐れ入りますが、座って説明させていただきます。資料3の1ページをお開きいただきたいと思います。

都道府県における評価結果の概要ということで、その概要の取りまとめをこの1ページにしてございます。これは都道府県の中立的第三者機関が市町村から報告を受けました集落等の取り組み状況の評価につきまして、評価した結果を事務局の方で取りまとめさせていただいたものでございます。

1の主な成果でございますけれども、耕作放棄の発生が防止されている。また、農業生産性の向上や多面的機能の増進に係る取り組みが着実に進展している。多面的機能を増進する活動を通じて、地域住民が集落活動の必要性を再認識するようになった。集落機能の維持強化や地域農業が維持されている。集落の連帯感や意識が高まり、持続的な農業生産活動の体制整備が助長されている。集落の将来についての前向きな話し合いが増加している。住民相互のコミュニケーションの増加が、地域の将来展望や地域が持つ多面的機能を自覚するきっかけになっている。農村社会の形成に必要なコミュニティの再構築や豊かな農村環境の整備・保全がなされている。集落活動の回復や新たな作物の導入など力強い活動が芽生えている。農業施設の管理体制が強化されている。鳥獣害対策、農道補修等きめ細かな取り組みが展開されている担い手との連携・育成、集落営農組織の育成等の取り組みの検討が始まっている。個人では困難な取り組み活動に集落で取り組む体制づくりがなされている。また、集落農場型農業生産法人の検討が集落協定の範囲で行われるようになり、営農集団活動が復活している。農用地の連担化・交換分合、新規就農者の受け入れ先の確保とうに大きな成果を上げている。

次の2ページでございますけれども、主な課題といたしまして、担い手が集落の中核として定着することにより、本交付金がなくても集落全体として農業生産活動等の継続が可能となれることが重要である一方、持続的かつ継続的な実施が可能となる状況には至っていない。生産性・収益の向上や担い手の定着に関しては一定の効果はあるものの不十分である。制度の定着や担い手の定着等の効果発現のためには5年間では短いので、中長期的な取り組みが必要である。集落営農の組織化や地域の独創的な取り組みをより自立的な営農の展開に結びつけるためにも、長期的なスパンで支援していく必要がある。農用地の持つ多面的機能を都市住民等へ周知する必要がある。事務手続を簡素化し、高齢者にもわかりやすい制度運用にする必要がある。協定に至らない集落への積極的な推進活動が必要である。集落を超えた広範囲での取り組みの推進が必要である。集落内に対象農用地を持つ農家と持たない農家が混在するので、協定取り組みが困難である。協定参加者以外の住民にも効果が波及することが期待されたが、波及しなかった。個人活動が中心で共同取り組み活動に消極的な協定が存在している。協定農用地の農業後継者用住宅への転用は定住促進等の観点からは公共事業の収用に準じた取り扱いが必要であるといったような評価結果が出てございます。
この3ページ以降には、都道府県の評価結果の概要というものを付けさせていただいてございます。

時間の関係もございますので、説明は省略させていただきますが、なお幾つかの県におきましては、中立的第三者機関の評価を終えておりませんので、案の段階のものもございますし、また県によっては添付されていないものもございます。

簡単でございますが、以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

これはその後に検討する制度の検証に反映される各県からの評価結果でございます。特にご質問あればですが、いかがでしょうか、大量な資料ですので、今さっと見て質問することも大変なので、またじっくりお読みいただいて、ご意見をいただくことにしたいと思います。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、次の4に移ります。
これは今までの検討会で宿題になっていたものについて、事務局からご回答いただく、ご説明いただくということでお願いいたします。

地域振興課長
資料の4でございます。
検討会での指摘事項についてというものでございます。

現地検討会の前に集落協定の締結の前後で変化が見られない集落が一部にあるけれども、その要因を調べてみるのも有益ではないかとご指摘がございました。また、交付金の個人配分を受け取ることによって、どのような意識の変化があるのかというご指摘がありました。

この資料4の1ページでございますけれども、以前、集落協定の締結を契機といたしまして、集落において意思決定システム、地域資源管理システム、営農システムという3つのシステムについてどのように変化したか、調査結果をお示ししたところでございます。この3つのシステムにつきましては、この1ページの左下のところに書いてございますけれども、幾つかの質問について回答していただくということで、例えば集落の活性化や将来の話し合いですとか、共同作業、機械等の共同利用とか、そういったものが活発になったかどうかとか、そういったような質問について、肯定的に答えれば変化ありというようなことで整理をいたしているものでございます。その結果、いずれかのシステムで変化が見られた集落が9割、3つのシステムすべてで変化が見られた集落が4割ということでございました。

また、右側にございますように、集落の農業生産活動の継続に向けましたステップアップの状況を検証するということで、右下の半分のところにございますように、7つの質問項目を設けまして、これも便宜上活発というものを1点、不活発というのを0点として点数づけを行ったところでございます。それによりますと、上のカラー刷りの表にございますように、総体としてはステップアップが図られているという結果が出ていたところでございます。これにつきましても、一部の集落ではシステムのステップアップが見られないということで、これらシステムの変化とステップアップについて、その要因の分析を2ページ以下いたしてございます。

ちょっと詳細な中身になってしまいますので、結論のところだけで恐縮でございますが、7ページのところをごらんいただければと思います。
システムの変化とかステップアップとこの下の表にございますように、耕作放棄地率ですとか、農家人口高齢化率以下の項目がございますけれども、こういったものとどのような関連性が見られるかということで分析した結果でございます。

上の四角に囲ってあるような、定性的なもので恐れ入りますけれども、このような結果が出てございまして、3つのシステムとステップアップにおいて変化の見られない集落協定というのは、協定締結面積の規模が小さい、また1協定当たりの交付金額が小さいものが効果といいますか、変化が見られない集落協定に多いという傾向が出ているところでございます。

また、ステップアップが図られていない、見られないような集落協定でございますが、耕作放棄地率と高齢化率が高い、また区画整理水田率が低いという傾向が見られるところでございまして、いわゆる条件の不利性を示す要因が大きいと見られる集落協定でステップアップが見られていない場合が多いという傾向が出ているところでございます。

なお、頑張った集落とそうでない集落というふうな表現がされる場合もあるわけですが、ここでは条件の不利性が相対的に高いようなところでは、変化なりステップアップというのが見られにくいというのが相関関係が定性的に見られるということが出ています。

なお、8ページでございますけれども、ここではステップアップが見られないようないわゆる先程の便宜上つけました点数で0点から0点という集落の事例をちょっと挙げていますが、これらの集落においても活発化の変化というのはまだ見られていませんが、農業生産活動等の継続という点では着実な実施が図られています。事例を見る限りではそういった状況が出ています。

それから、もう1点でございますが、9ページをご覧いただきたいと思います。

交付金の個人配分を受け取ることによって、どのような意識の変化があったかという点についての調査結果でございます。これは5月に個人配分を受けております協定参加者を無作為に抽出いたしまして、アンケート調査を行ったものでございます。

調査結果といたしましては、地域の景観の保全等の地域の環境を守ろうという意欲がわいてきたという回答が37%で最も高く、次いで農業を継続しようという意欲がわいてきたというものが24%、それから地域を活性化させようという意欲がわいてきたというものが17%となってございます。一方で、以前と変わらないですとか、かえって地域のまとまりが悪くなったと答えた協定参加者も9%になってございます。

表でいきますと下の方でございますけれども、交付金がどのように役立ったかにつきましては、農業資材の購入等の営農活動が充実したという回答が49%と最も高くなってございまして、次いで水利費、施設管理費等の負担が楽になったというものが22%になってございます。また、一方でよくわからない、不明と答えた協定参加者も6%ほど見られるという状況でございます。

なお、大変恐れ入りますが、2ページのところでちょっと訂正をさせていただきたいと思います。
ご説明はいたしてございませんが、2ページの下半分のところの(2)の耕作放棄地率との関係の四角の中で、1行目の一番右の方でございますけれども、「高齢化率」という言葉がございますが、これは「耕作放棄地率」でございまして、まことに申しわけございませんが、訂正をさせていただきたいと思います。
一応説明は以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

以前のこの検討会で出されたご質問、1つは協定を結んだといえども必ずしも効果があらわれてないように見えるところがあるけれども、それは一体どういうところなのか、要因は何なのかというご質問に関して、事務局で分析していただいたものの結果のご報告でございます。

それから、もう一つは交付金の使途についてどんな具合なんだろうかということで、これは新たに抽出調査ですが、アンケート調査をしていただいて、そしてご説明があったような分析をいただきました。これについて特にご質問はございますか。

澤井特別委員
ステップアップが少ない人たちではあっても、8ページにありますように、耕作放棄はされていない、耕作は行われているということですが、これはつまりほとんど意識変革や前向きのステップアップ的なものはないわけですから、交付金の効果という視点で見ると、こういうグループの方々は仮に交付金がなくても一定の元気な方であれば、営農は続けられていたと見ることはできないでしょうか。つまり営農が続いているという状態は、交付金のせいで続いているのか、ないしは、例えばさっきの農業委員会のアンケートにもあったように何%かは別に交付金がなくても管理ができるという回答があったように記憶しておりますが、つまり交付金がなくても続いていると考えるべきなのか。

地域振興課長
先程全国農業会議所さんのデータにもございましたが、この制度がなければ相当の割合で耕作放棄が発生したであろうというアンケート調査があるわけでございます。一方で、こういうステップアップが少ないという集落協定でございますけれども、調査結果のまとめのところにございますように、どちらかというと条件不利性が高いようなところでステップアップが見られにくいということと照らし合わせますと、むしろ耕作放棄が発生していたであろう可能性はステップアップの少ないところの方が高いのではないかという論法もあり得るのかなというふうに考えているところでございます。いろいろな見方があるかもしれませんが、そんなふうに考えています。

澤井特別委員
耕作放棄の防止に交付金が一応ぎりぎりのところで役立っているという理解ですか。

地域振興課長
と思います。
補足いたしますと、この交付金につきましては、耕作放棄が発生いたしますと、集落内のすべての対象農用地、協定の対象になっております農用地について、すべてさかのぼって返還をするという、ある意味非常に厳しいペナルティーがかかっておりますので、そういった抑止効果はとにかく働いているという見方もあろうかと思います。

佐藤座長
ありがとうございました。
まだご質問があろうかと思いますけれども。

村田委員
7ページですけれども、活動の状況の位置づけが少ないとありますけれども、位置づけが少ないというのは、これはどういう意味ですか。

地域振興課長
協定書の中に書かれている定活動の項目が少ないということです。

事務局
資料の5ページを見ていただきたいと思うんですけれども、資料の5ページの下の注のところでございますが、表に示してありますが、集落協定の中に項目と書いてありますが、生産活動等として位置づけられている活動とか、4項目について、上から3つ目までが義務的に位置づけることになって、それから下の最後が集落全体としての目標とか、集落マスタープランというのが選択的に集落協定に義務づけることになっているんですが、その位置づけた数をランクづけをしまして、たくさん位置づけをつけているところはどうだろうか、少ないところはどうだろうかというところでこの集計をしたというところでございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
先に進まさせていただきます。
きょうのメインの議題でございます5番目、中山間地域等直接支払制度の検証に関する論点ということで、今までこの検証に関する論点項目ということでは、たびたびこの検討会でご審議いただきましたが、お手元の資料の5に沿って議論したいと思いますので、これについてまずご説明をお願いいたします。

地域振興課長
それでは、資料の5の中山間地域等直接支払制度の検証に関する論点(案)につきましてご説明させていただきます。

これまでの検討会におきまして、さまざまご議論いただいたところでございますし、事務局からは調査結果を出させていただいたりしているところでございます。また、現地調査をやっていただきまして、また先程はご紹介いたしましたように、都道府県の中立的第三者機関の調査結果なども出させていただいたところでございます。これらをもとに、この資料の左側にございますように、論点項目を抽出をいたしまして、それからこの資料の5の表の右側にその評価に当たっての留意点を整理させていただいたものでございます。

ちょっと真ん中のところにこれまでの議論等というのがございますけれども、検討会でのご意見、あるいは県の第三者機関の評価、それから事務局から提出いたしました調査結果などを載せているところでございます。

まず、A.の項目といたしまして、中山間地域等の位置づけと状況ということでございます。

真ん中のところでございますけれども、中山間地域が国土面積の7割、耕地面積、農家数、農業産出額の約4割を占めているということ、それから農業・農村に対する国民の期待として、自然環境の保全ですとか国土の保全の役割が6割を占めていることといったような実態があるわけでございますけれども、留意点といたしまして、本制度の発足後、中山間地域等の食料供給機能、多面的機能に対する国民の期待はどのように変化しているととらえるべきかという点でございます。例えば、こういう点で期待が高まっているととらえてよいのかどうかというようなことでございます。

下の方でございますけれども、中山間地域は零細規模の農家が大半を占めている農業構造にあると。また、労働・土地・資本の各生産性が平地農業地域と比べて低いということ、総人口、農家人口とも全国に比べて高齢化が進展しているということ、農業所得は平地農業地域の56%程度であるといった状況にございますけれども、右の留意点といたしましては、本制度発足後、中山間地域等の自然的・経済的・社会的条件の不利性は変化しているのかどうか、すなわち例えば依然厳しい、あるいは一層厳しいと見るのか、あるいは改善されてきていると言うべきなのかといったような点でございます。

それから、B.の制度の検証という項目でございます。

制度の実施状況といたしましては、66万2,000haの農用地において協定が締結されておりまして、耕作放棄は防止をされているところでございますけれども、これは食料・農業・農村基本法に規定されているとおりでございますが、中山間地域等において適切な農業生産活動が継続的に行われるよう、農業の生産条件に関する不利を補正するための支援等により、多面的機能の確保を図るための施策ということで、これをどのように評価をされるかということでございます。

例えばでございますけれども、耕作放棄の防止、あるいは農業生産活動の継続ということを重点を置いて評価するのか、あるいは多面的機能の確保ということに重点を置いて評価するのかといったような見方の問題でございます。

それから、2ページの(1)が耕作放棄の発生防止ということでございますけれども、96%の集落におきまして、農地の法面や水路・農道等の管理活動が活発という調査に対する回答がございます。また、水路・農道等の管理に係る共同作業の回数も約2倍に増加しているという調査結果が出てございますが、また委員からのご意見といたしまして、制度が厳密に機能している限り、耕作放棄率はゼロであるというお話があったところでございます。これにつきましては、制度の実施についてどのような確認行為がなされているかという点も踏まえる必要があるということでございます。

それから、下の(2)多面的機能の増進でございますけれども、景観作物の植栽ですとか棚田を活用した都市住民との交流活動など、多様な取り組みが見られまして、国土保全の取り組みは約7割、保健休養機能を高める取り組みは約4割の集落協定で取り組まれているという状況にございます。また、委員のご意見といたしまして、多面的機能の効果をより発揮させるための工夫を考える必要があるというご指摘があったところでございます。そうした点を踏まえまして、周辺林地の管理、景観作物の植栽等により多面的機能が増進されていることをどのように評価したらよいかという点でございます。

それから、3ページにまいりまして、(3)の将来に向けた農業生産活動等の継続的な実施ということについてでございます。

真ん中のところでございますが、これまでいわゆる卒業という理由で交付金の交付を終了した協定はないという実態もございます。卒業というのは、自立的に農業生産活動を継続できる状況に至ったというような意味合いでございます。

それから、さらに都道府県の中立的第三者機関の評価結果によりますと、自立的かつ継続的な実施が可能となる状況に至っていない。あるいは担い手の定着等の効果発現のためには、中長期的な取り組みが必要であるといったようなことに触れておりますのが大体約31の都道府県で見られるわけでございます。

それから、そういったことも踏まえますと、留意点といたしましては、中山間地域等の条件不利性ですとか過疎化、高齢化の進展等も考慮した場合、自立的に農業生産活動を継続できる状況となっているか、なっていると評価できるかという点でございます。また、そうした状況になるように促されてきたと評価できるかどうかという点でございます。

それから、下の方でございますが、真ん中のところでございますけれども、集落内の話し合いが2倍に増加したという調査結果が出てございますし、また生産性、収益の向上が約4割、担い手の定着等が約3割の集落協定で活発化したという調査結果となってございます。また、17%の集落で集落営農組織が育成され、4割の集落でその検討が開始されているという調査結果が出てございます。また、委員からは集落協定により、集落の社会関係が回復し、5年間で一定の成果が見られたのではないかというご意見ですとか、あるいは農業生産なり多面的機能なり担い手なり、全体的には効果は上がっているというようなご意見をいただいてございます。

それらも踏まえまして、留意点でございますけれども、総体として生産性・収益の向上、担い手の定着等に向けた取り組み等により、将来に向けた農業生産活動の継続のための集落のステップアップが見られるが、一部の集落において取り組みが停滞していることをどう評価するかという点でございます。

それから、4ページでございますけれども、真ん中の欄でございますが、都道府県の評価結果によりますと、共同取り組みの質の向上を図るためには自立的かつ具体的な活動目標の策定が必要といったうな指摘が熊本県などから出されております。

そうした点を踏まえますと、留意点としては集落の将来像とその実現を図るための具体的な活動等に関し、集落の合意形成とその明確化を図るような取り組みをどう評価するかという点でございます。

また、真ん中の次でございますけれども、規模が大きな協定ほど集落内の話し合いや共同作業の回数は増加しているという調査結果がございますし、都道府県を超えた範囲での取り組みの推進が必要という都道府県の評価結果が5県ほどでございます。それらから見まして、協定面積規模が大きくなるほど集落協定活動が活発化しているという状況をどう評価するかという点でございます。

それから、(4)の集落機能の活性化でございます。

集落活動が活発化しているということにつきましては、都道府県の中立的第三者機関の評価結果で何らかの形でほぼすべての都道府県で触れられているわけでございます。特にここでは多面的機能を増進する活動を通じて、地域住民が集落活動の必要性を再認識しているという趣旨の都道府県の評価結果が6県ほどで出されてございます。そうした点を踏まえますと、右側の留意点でございますが、集落機能の発揮を土台として農業生産活動等の継続を通じた多面的機能の確保を図ることをねらいとする本制度の仕組みをどう評価するかということでございます。

また、真ん中の欄の次のところでございますが、約半分の集落で話し合いに女性や若者等が活発に参加するようになった。また、水路・農道等の管理に係る共同作業の回数が約2倍になったというような調査結果がございますし、都道府県の評価結果でも集落の将来についての前向きな話し合いが増加しているといったような評価結果を出している県が約4県ほどで見られるところでございます。右側の留意点でございますけれども、集落活動の活発化、若者や女性の参加等による集落機能の回復、向上をどう評価するかといった点でございます。

それから、次の5ページでございますけれども、共同取り組み活動への配分割合が2分の1以上の集落協定は77%という評価結果となってございます。この点に関しての留意点でございますが、集落協定に係る交付金の半分以上を共同取り組み活動活用すべきとした現行制度の仕組みは地域の創意・工夫や集落機能の回復・向上にどのような効果を及ぼしたと評価するかといった点でございます。

真ん中の欄の次でございますけれども、対象農用地を持たない農業者や非農業者が参加している割合は9%という状況になっているわけでございますけれども、留意点といたしまして集落協定は非農家等の参加及び土地住民等の地域外からの支援活動を排除しない仕組みとなっているが、これは集落活動の活発化等に寄与したと評価されるかどうかというようなことでございます。

それから、その真ん中の欄の次のところでございますけれども、集落活動の活発化に関してはほとんどの都道府県の評価結果で何らかの形で触れられてございますけれども、ここでは住民相互のコミュニケーションの増加が図られているとか、農村社会の形成に必要なコミュニティの再構築がなされたといったような形での評価結果を出しているのが9県ほどで見られるところでございます。右側の留意点でございますけれども、本制度は多様な就学活動の活発化を通じて、中山間地域等の活性化に寄与しているという指摘があるけれども、これは農業政策的な意味のみならず、もう少し広い地域政策の面からどう評価するかといった点でございます。

それから、(5)の個別協定でございますけれども、個別協定の経営形態別の内訳について見ますと、認定農業者が約8割、農業生産法人が約1割という形になってございます。締結件数では639件で約2%程度、協定全体の中では2%程度を占めるという非常に少ないものではございますけれども、右側の留意点といたしましては、個別協定については、締結件数は少ないものの、集落協定の締結が困難な地域での補完的な役割、またさらには認定農業者等への利用県の利用、集積といったような面でも一定の役割が見られるけれども、個別協定の意義をどのように評価するかといったような点でございます。

それから、次の6ページでございますが、3の制度の基本的な枠組みでございます。
以下、各論的な項目でございます。

(1)の対象地域でございますが、真ん中の欄にございますように、真ん中の欄にこの運用状況を書いてございますけれども、右側の留意点といたしまして、地域振興立法8法の指定地域に加えて、一定のガイドラインを踏まえながら都道府県知事の裁量によって、地域振興立法の指定地域以外の条件不利地域も対象地域に指定できることになってございます。これをどう評価するかということでございます。

すなわち法令に基づき客観的に指定されている地域、それから都道府県の裁量により地域の実態に応じて指定される地域というのが両方できるようになってございまして、そういった制度が適切かどうかというような点でございます。

それから、(2)の対象農用地でございます。対象農用地につきましては、1ha以上の団地であるということが原則になっていわけでございます。しかしながら、営農上の態勢がある場合には1ha未満の農用地も合わせて1ha以上になれば対象農用地とすることができるという、言ってみれば弾力条項があるわけでございます。

営農上の一体性については、ちょっと資料には記載してございませんが、3つほど中身がございまして、1つ目は団地間で耕作者、受託者等が重複し、かつすべての団地に共通する共同作業が行われている場合と、1ha未満の団地でも耕作者や受託者が同じ方が同じような共同作業を行っていれば、営農上の一体性があるということでございます。

それから、2つ目が同一の生産組織、農業生産活動等により、農業生産活動が行われている場合ということでございます。

3つ目が団地間に水路とか農道といったような線的な施設が介在しているけれども、線的な施設、すなわち水路・農道などを構成員全員によって管理していく場合と、そういったような場合には映像上の一体性があるということで1ha未満の団地もあわせて1ha以上になれば対象になるという扱いがされるわけでございます。これにつきましては、要件を適用している集落協定数というのが60%になってございまして、右側の留意点にございますように、団地要件を弾力的に運用する営農上の一体性の適用条件というのは地域によってばらつきが見られるけれども、こうした運用実態、または仕組みをどう評価するかという点でございます。

それから、次の(3)の対象期間でございます。アンケート調査では、協定代表者の約9割が5年以上というのが適当という回答が出てございますが、右側の留意点にございますように、5年以上継続して農業生産活動を行うという要件が評価されるかどうかといったような点でございます。

それから、7ページでございますが、(4)の交付金の遡及返還についてでございます。

都道府県の評価結果でも出てございますけれども、右側の留意点にございますように、協定締結農用地を農業後継者の住宅用地とする場合などについても、すべての交付金の義務がさのぼって生ずるということをどう評価するかといった点でございます。

それから、(5)がその他でございますが、明確かつ補完的な基準のもとで透明性を確保しつつ、地域の特性に配慮した制度の運営を図る上で他にどのような点に留意すべきかという点でございます。

それから、(4)でございますが、基本計画の見直しにかかわる他の政策との整合性を図っていく必要があるの゛てはないかという、また他の中山間地域対策との連携などをどう考えていけばいいのかという点でございます。

これらを事務局としてたたくたたき台として整理をさせていただいたものでございます。

なお、ご説明の中に何件ぐらいの評価結果があるかという件数を申し上げましたけれども、この評価結果の分類は難しい面がございまして、あくまで目安というふうにお考えいただければありがたいと思います。
以上でございます。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

当検討会では、この制度の検証結果を取りまとめるということが最終的な課題になっておりますが、そのために検証する論点として何なのかというのが左側の論点項目に書いてありまして、それを踏まえながらこの検討会では何度かご意見をいただきました。そのご意見を整理し、かつこの検討会でお出しいただいたデータ等もまとめて、あるいは先程ご説明いただきました都道府県からの評価結果も踏まえて、今日資料5という形で事務局で整理いただきました。

これらを踏まえて、検証結果を出すということになるのですが、その前にまずこの枠組み、あるいは論点等々、これでよろしいかどうか、さらにつけ加えるべきものがあるのかどうかということでご意見を賜りたいと思っております。

初めに、松田委員が所用で途中で退席されたんですが、もし時間があればということで簡単な走り書きのメモですが、1つだけご意見をいただきましたので、それを先にご紹介させていただきます。

3の将来に向けた農業生産活動の継続的な実施ということで、2番目にこれは6ページ、対象農用地のところの議論に関して、今日のいろいろなご説明でも1ヘクタールの団地が非常に難しいというご意見があったと思います。そういうものに関して少し関連づけて議論する必要があるのではないかというコメントをいただいております。
以上です。

それでは、どの委員からでも結構でございますので、ご自由にご発言いただきたいと思います。

村田委員
この論点案の項目に沿ってないんですけれども、私なりに山口県内の現地を見たことを踏まえて意見を言わせていただきたいと思います。

そもそもこの中山間地域等直接支払制度というのは、条件不利地域対策なんですよね。ですから、平場との生産コストの差を補てんするということで、水田で言えば10a当たり最大2万1千円を補てんするというのが制度設計だと思うんです。しかもそれも集落協定を結んだ農業者個人に対して支払う。目的は耕作放棄地の発生の防止と多面的機能の増進だということでございます。

ところが実際に実施された結果を見ると、効果が上がっているというのはきょうもいろいろご報告ありましたけれども、集落共同活動に随分大きな効果があるということだと思うんですね。耕作放棄地対策とか農道・水路整備だとか、農機具の共同利用、伝統行事の復活も含めて、集落の共同活動に非常に効果がある。同時に、また問題点としても出てきたのが平場の農地を対象としていないために、平場に農地を持っている農家が排除されることです。ちょっと不都合があるということで、私が見た阿東町では平場を対象に町独自の直接支払をやるというようなことをしている。ところが、平場を対象としちゃうと一番最初の制度設計に反しちゃうわけですね。条件不利地域対策にならないわけですから。そこで集落支払を求める声が出ているんだけれども、それをどうしたらいいかというのが大きな論点になるかなと思うんです。営農上の一体性を有する平場農地を含むかどうか、僕は含めたらいいと思うんです。けれども、その場合もともとの制度設計とどう整合性をつけるかというのが1つですね。

次に、個人配分分がどうなっているのかということが余り見えてきてない。今日補足的にご説明いただきましたけれども、集落共同活動に効果があるということは異論ないところなんですけれども、個人に回った半分のお金がどうなっているのか。平場との生産コストの補てんなんですから、それは所得減対策なんですから、何に使ってもいいわけなんだけれども、所得補てんにしては中途半端というか金額が少ない。この個人半分をやめたらどうなるか。やめられるのか、やめられないのかということが悩ましい問題です。きょうの補足説明にあったように、農業を継続する活動に使われているし、農地を借りるときの地代分だとか農機具を借りるときの代金に充てられているということでした。お金に色はついてないので、それはお父さんの晩酌代に消えているという話もあります。私は個人配分は残したらいいと思うんですけれども、残さないとまた条件不利地域対策の生産コスト差補てんという大きな考え方と抵触するようなことになるんではないかという心配があります。

それと、あともう一つきょうも補足的にご説明いただいたんですけれども、耕作放棄率がもともと高いところだとか、高齢化率が高いようなところでは、中山間地域直接支払制度の効果が少ない、ステップアップ度が少ないということでした。また、そもそも5年なんて長過ぎるという意見も一部にあるわけです。やる気があるところは5年じゃ短いからもっと長くしろと言うんだけれども、やってみなさいと言われたときに5年なんてとても見通せないと、来年にでも農業をやめてしまいたいと思っている高齢者ばかりの集落にやれといったってやってられないよというようなことがあるわけですね。そういった限界的な集落、集落そのものの存続が難しいような限界的な集落の維持には、この中山間地域等直接支払制度は力不足というか、やっても効果がない。ないしはやりなさいと言っても手を挙げない現状が明らかになったと思うんですよ。

そういう限界的集落をどうしたらいいのかというのは、ちょっと率直に言って私自身は絶望的になるんです。私が阿東町に行ったときに町長さんがなかなか知恵のある人で、抱き合わせ協定というか、複数集落協定を考えたわけです。つまり活力のある集落が元気のない集落を抱き合わせようとしたんだけれども、もくろみはうまくいかなかった、それでもあそこの阿東町は複数集落協定がかなり多い。だから、これは一つの解決策かなという感じがするんです。限界的な集落の維持がこの条件不利地域対策のひとつの目的であると思うんですけれども、それに対して有効でないというか、必ずしも効果を上げてない現実をどうするか、これを考える必要があるんじゃないかと思います。

それから、全然議論になってないんですけれども、北海道の検証というのが不足しているなと思います。北海道は内地と全然違うんじゃないかという気がするんですね、対象がもっぱら草地ですから。しかも金額も大きいし、これについて我々のこの検討会で踏み込んだ検証が行われてないなという印象を持ちました。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

澤井特別委員
今の村田さんの意見の前半の部分と関連しますが、ぎりぎりの限界的、臨界的な集落をどうするかという問題があるとおもいます。今回の制度の検討というのは5年間やってきてのタームに制度を存続させるか、どう改善するかという議論をしているわけですから、この制度の実施の評価の中に、従来の制度にあった発展的卒業という考え方以外に無理な地域の扱いをどうする。という問題があるのではないか、つまりこれは制度の目的との関係もあるが、例えばぎりぎり耕作放棄の防止だけはできるけれども、それ以外、例えば将来に向けた農業生産活動の継続とか、集落機能の活性化という視点では、ほとんど取り組む余裕がない地域、担い手の高齢化の問題だとか、農業条件だとか土地条件からいって難しい地域をどうするかということです。

先程からいろいろな資料を見ても、農業委員会のアンケートでも一、二割はほとんど意識も変化をしていないし、前向きの部分も見られない。

そういう部分がかなりあるんですね。ですから、このような地域には無理してお金で縛りつけるということではなくて5年間やってみてポジティブな形で持続可能性の向上につながらないような、やってみても客観条件としても難しいところはむしろ卒業させてあげる、2期目には卒業させるというような視点も要るのではないかと感じました。

それから、2番目の「目的と効果」の後半の部分にポジティブな要素が出てくるわけですが、これは逆に農業生産活動の永続的な実施だとか、集落機能の活性化の問題をプラスに前向きに議論していくと、本当にこの交付金で言う中山間地域対策だけで対応できるのかという疑問が生じます。例えば、集落の規模が大きくなっていく効果、それから先程の平場を含めての議論もそうだと思うのですが、また時々出てくる農振白地地域の耕作放棄をどうするかと、こういう議論は我が国の全体的な農地保全政策とごちゃごちゃになってしまうような気がします。もっと中山間地域の交付金制度としては目的なり効果を限定して、絞り込んで2期目につなぐという議論をすべきではないのか。あれもこれもで全部取り込むという姿勢では絞り込みができなくなるのではないか心配です。もっと対象地域なり目的なりを思い切って絞り込む努力が要るのではないかというのが私の個人的な意見です。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

小田切委員
先程の村田委員の意見でございますが、特に1番目のご発言については違和感がございます。あるいはあわせて言えば、農水省の今回の提案にも若干の違和感がございます。

今回のご提案の2ページ目の2に制度の目的と効果がございます。この(1)から(3)までは食料・農業・農村基本法35条第2項に書かれている文言に非常に近いものをとっているわけです。しかし(5)の個別協定は置きまして、(4)の集落機能の活性化というのは、そういう意味では集落の目的にそもそも設定されていないものであります。つまりこの集落機能の活性化というのは、直接支払制度から見れば一種の手段にしか過ぎないということであります。私はその視点からこの制度を検証すべきではないというふうに思います。

確かに、私自身もこの制度が集落の活性化にもたらした大変強い効果、それを高く評価しています。あるいはその視点から幾つかの事例分析なども書いているわけなのです。さらに言えば、先程申し上げましたように、この制度に対する農業者の参加意識、あるいは当事者意識といいましょうか、そういうものも他の制度に見られないものとして評価するべきだと思います。

ただ、これらはあくまでも一種の副次的効果に過ぎないのだろうと思います。こういうことで、その視点から評価するというのは、最初に設定した制度の目的からずれるわけでございまして、それはしない方がいいと思います。

つまりこれらの対策の検証の視点と次期対策の制度設計の視点は分けるべきだろうというふうに思います。今やっているのは、今期の対策の検証の過程でございますので、この集落機能の活性化というのは落とす、ないしは「副次的効果」として、さまざまな効果をここにまとめるべきだろうというふうに考えています。その上で、ここに非常に大きな効果があれば次期対策において、村田委員がおっしゃったように、それをすくい取るような形で、つまり目的を再設定するような形で制度設計を次の段階ですべきだろう、そのように思います。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

服部委員
幾つか申し上げたいと思います。

1つは、これは一番最初の検討会のときに私が表を見て、「白地」(農用地域外)における耕作放棄地のことを言った点に関係するんですけれども、この制度の目標にかかわることなんですね。確かに、5年前の制度発足のときに直接支払を農用地域に絞るということで始めたわけですけれども、この制度の目標は端的に言って耕作放棄地の拡大の防止にある、それによる国土条件等々の環境条件の維持だと、そこにあると思うんです。

耕作放棄地の防止という観点から見た場合に、対象地域内ではそれは確かに効果が上がっている。経団連の立花さんの発言じゃないんだけれども、これは定量的にも確認できる。同じように定量面で見た、表で見た場合に、白地内ではこの間も増加してきて、やっと最近になってそれが伸びがとまっているような姿が見える、このギャップが大きいわけですよね。

そうした場合、発足時に対象から外した白地の中での耕作放棄地の拡大、存在というものをどう考えるのか、私はこれは基本的に制度の目標に関わるものとして検討した方がいいと考えています。私のそういう考えは依然として現在も残っています。これは検討した方がいいというのが一つです。本当に耕作放棄地の防止のための制度にするのかどうかということにあると思うんです。5年間は対象を限定してやってきた。今後それでいいのかと、これはこの委員会としては検討すべきことだろうと私は思います。これが第1点です。

それから、第2点はそれにも関連するわけですが、この制度の発足をするときに耕作放棄地の拡大を防止する、それの直接支払のコストとして平地と中山間地の生産条件の格差を補てんするという、私は正当だと思うんですけれども、こういう方式でもって単価をはじいてきた。そして、その考えによって、耕作放棄地を防止していく手段として、集落協定というものが考えられた。

さらに次の段階でもって、これは実施する運用の段階だと思うんですけれども、半額は集落段階において用いるということになった。半額を集落段階において用いるということがいわば行政指導として入ってくれば、当然これは集落機能の強化にお金を使うということになってくるわけです。ですから、制度の目標が耕作放棄地の防止ということに加えて、実際には中山間地域における農業生産活動の維持、さらにそれを活力のあるものとして維持していくために、集落活動をいかに強化していくのか、その中にいかに担い手をつくっていくのかといういわば耕作放棄地の拡大の防止という目的に直接かかわらない、構造改革上の問題がそこに大きく加わってきたわけです。そういう構造改革の目標をもった制度に実際にはなっていて、後者の面が実際に運用面においては意識されて行われてきたと私は思います。

先ほどの小田切さんの発言というのは、その後のところは付随して出てきたことだから、差し当たり現在の評価では外して、今後の制度として必要ならばそれもきちっと意識的に入れていくべきではないのかという発言と私は承っていますが、実際には後者の面が非常に強く意識されて5年間行われてきたと言っていいと思うんです。そうであるならば、実際はそうやって行われてきたのだから、評価においてもそれを外すのは、私はうまくないと思う。

耕作放棄地の拡大防止という目的で始まった制度なんだけれども、その中に集落活動の強化という構造改革的な目的が実際には入ってきて、2つの目標で行われてきたというのがこの制度の実態なんですね。それをそういうものとして今後やっていくのかどうか、それは意識的に私もはっきりさせた方がいいと思います。

それから、第3点はそれに関連しますけれども、これは村田委員からも指摘されましたが、本来直接支払という概念から来ますのは、これはアメリカやヨーロッパは当然のことなんだけれども、一たん文字どおり個人に支払がいくわけですよね、直接支払なんですから。ところが我が国の場合には、これは途中でもって集落営農というところにいくわけです。半分はそこで使われると、残りの半分、あるいは控除された額が個人にいくと、こういう方式をとっています。まさに日本型直接支払なんだろうなと思いますけれども、その点に関しても私は議論が要ると思うんです。一たん個人にお金を原則的には渡して、それで集落で使う必要があればそこに出していくというのが本来なのかなという感じはぬぐえないところが残っています。そうすると、実際に集落へのお金がほとんど出さないんじゃないだろうかという危惧を持たれて、多分集落で半分以上だという判断になったんだろうと思うんですけれども、ただそれでいいのかという割り切れない気持ちが残るんですね。そこのところも原則的な問題として検討をする必要があるんじゃないだろうかなという感じがします。

それから、4点目として、これは2点目に係るんですけれども、私も最初の検討会で指摘して、今、村田委員の指摘があったんですけれども、北海道は本当に都道府県の場合と実態的に違うと思うんですね。だから、こういうぐあいに北海道では行われているという点に関する認識と検討があってしかるべきと思います。

以上、4点です。

佐藤座長
どうもありがとうございました。
予定の時間はとっくに過ぎているんですが、まだご意見がおありのようで、若干延ばさせていただくことをご了解いただけますか、12時25分には終えるということでよろしくお願いいたします。

柏委員
もう打ち切られると思って、先に手を挙げてしまいました。今、服部委員が言われたことと多分に関連するんですけれども、要するに中山間地域のあらゆる問題は何かこの制度に押しつけられてしまっていると言ったら悪いですけれども、要するにこの制度はあくまでも耕作放棄を防ぎ多面的機能を維持するということで 700億円ついているわけですね。したがって、それは農業の担い手とか生産の担い手をどうつくっていくか、確保していくかということがまずポイントとなるべきで、それに集中的に使うような形にしていくべきであろうと思うわけです。

と同時に、地域政策という視座からすれば、いろいろな、例えば「第六次産業化」のベースをつくっていくとか、新たな圃場システムをつくるとか、都市・農村交流をやるとか、何かそういった地域活性化施策という形で、「地域全体の底上げ」を図っていく必要もある。ですから、両者はある程度峻別して政策的にやらねばならないし。後者の方、いわゆる地域政策に関しては、例えば資料の一番最後に出てくる、「他の中山間地域対策との関係をどう評価するか」とありますけれども、これは容易ではない。省庁横断的なことというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、旧国土庁の過疎法なんかでは莫大な金を使って、画一的なハードのことばかりに使われてきた。ああいったものとの見直しといいますか、これは特にヨーロッパなんかで、例えばイギリスでは「SRB」という包括的なバージェントがありますけれども、ああいう形で省庁横断的で包括的な地域再生予算を考える必要がある。中山間直接支払制度の趣旨の問題と総合的な中山間地域再生と、これらは分けて考え、そして後者を対象とする施策は省庁横断的にきちっと総合活性化対策で練っていく、それが区分けといいますか、頭の整理であり、2つの制度が両輪のように設けられ動いていく必要があるという気がいたします。

以上です。

佐藤座長
具体的には、先ほどの集落機能の活性化は入れるべきであるという意見と入れるべきでないというご意見があったんですが、柏委員の今のご意見ですと入れないということでいいですか。

柏委員
そう言われればそうなるんですけれども、ただそれはあくまでも総合的な地域再生政策があったらの話ですね。ただ、現状においては副次的といってあえて排除する必要もないのではないか。

守友委
員先ほどの小田切さん、柏さんの意見と基本的に少し似ているのかなと思うのですけれども、目的は耕作放棄を発生させないということであって、そのために条件不利地域の格差是正ということで、平地との格差という、単価設定をしていってつくったわけですね。そして、放棄されているのかされてないのかというところを見るべきだということなのですね。

はっきりしていることは、協定違反だとか協定をやめたというところはほとんどないわけですね。さっきのステップアップ議論でいきますと、0点から0点というところでもぎりぎりのところは何とか耕作放棄せずにやっているというところになりますね。その限りではこの目的は達成しているだろうと思うのです。

私は今の柏さんの議論をもうちょっと広げると、評価はそこまででいいんですけれども、それ以上の予想以上の広がりを持った成果が出てきたというふうに見た方がいいんじゃないかと思っているのですね。つまり例えば多面的機能でも、耕作をきちっと維持していると土砂崩れを起こさないだとか、水質がよくなるという、そういう多面的機能もありますし、多くやられているコスモスを植えたとか景観を整備したとか、そういう議論もあるわけですね。ここにははっきり差がありまして、その前段階の方の部分はきちっと行われていると、それに対して地域の人たちはそれを前提とした上で、プラスアルファとしてのことをやったわけですね。だから、そこのところは政策の意図した以上のことを地域の人はアイデアで付加したと理解するのがいいんじゃないかというふうに思っております。

その上で、先ほどから村田委員からも出ておりますように、いろいろな意見も出ておりますけれども、そのプラスアルファ部分がきちっと体系化してできているかどうかということはまだ別の課題になると思いますけれども、そこまでちょっと踏み込むと、この制度に対して余りに負担が大きくなってしまうという気がいたします。だから、一定のところで線を引いて、しかも現地の方の努力はそれ以上のものが出たというふうに見るのが私は適切でないかと考えております。

佐藤座長
お願いいたします。

野中特別委員
簡単に申し上げますけれども、この制度につきましては、全体的に評価は高いわけですけれども、一方外部からはいろいろなご批判もあるわけですから、論点の取りまとめに当たっては外部の批判のポイントがどこにあるかということをふまえた論点が十分含まれている必要があるんじゃないかと思いますので、その点をもう一度検証する必要があると思います。

そのときに、トータルで制度が効果があるかないかというふうに議論をしましても、中山間地域によって状況がすごく違うわけですよね。ですから、例えばさっきの議論も耕作放棄の防止は最低できているとか、そうすると当然多面的機能はある程度果たしているはずですよね。ですから、できれば地域によりまして最低限耕作放棄並びに多面的機能の役割を果たしたと、しかしこういう地域はプラスアルファの効果が出たとか、この地域がどうだとかというふうに、少し地域による差みたいのをつけて説明しないと、トータルですと効果があったというアンケートの回答がたくさんある一方、よくよく見ると二、三割は何も動きがなかったというところもあるわけですね。それをどう解釈するんだという議論になると思うので、少し地域による差というのかな、何かそういうのをつけて説明をできれば、トータルに対して効果がないんじゃないかということに対しての回答になる。今日、多少上乗せするとの議論もありましたけれども、少し対策に差をつけるということも検討していいような気もしますので、そういう観点の整理が必要じゃないかなと思います。

佐藤座長
どうもありがとうございました。

地域別というのは、野中委員から前々回でしたか、そういうご発言もあったと思いますが、そういう視点も必要だということです。
ほかにいかがでしょうか。

一通りご意見をいただいたので、きょうはひとまずここでやめておいて次回にするということにしたいとおもいます。

その間、次回までに宿題をお持ち帰りいただきたいと思うんですが、きょういろいろご意見をいただきましたけれども、今までたくさんの資料、膨大な情報を提供されていますので、一度にそれを頭の中に整理して意見を出すというのはなかなか難しいと思いますので、きょう配付された都道府県の評価等々も踏まえまして、目を通していただいて、ご意見をファクスなりEメールなりで事務局の方にもしあればご提案いただきたいというふうに思います。それをまたつけ加えた形で次回の委員会で検討したいと思います。よろしくお願いいたします。Eメールアドレスは皆さんご存じなんでしょうか。ご存じない。ファックスだけですか。

中山間地域振興室長
お知らせいたします。

佐藤座長
もしEメールを使われる方はメモしてください。

地域振興課長
事務局からご連絡でございます。

次回の検討会につきましては、既に各委員の先生方との日程調整に入らせていただいております、決まり次第ご連絡させていただきたいと思います。

また、平成15年度の本制度の実施状況につきましては、6月の末日までに公表することになってございます。現在取りまとめ中でございまして、個別に委員の先生方にご相談をさせていただくことになりますが、なるべく早目にご相談をさせていただきまして、6月末までに公表したいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

また、本日の議事録につきましても、公開ということになりますので、各委員のご発言内容を確認するため、ご連絡させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上でございます。

佐藤座長
終わる前に委員の方から何かご意見ございましょうか、今後の進め方等々でも結構です。よろしいですか。

また、Eメールアドレスは別途お伝えください。お願いします。

では、きょうはこれで終わりにしたいと思います。どうも長々とありがとうございました。

(午後12時20分閉会)

お問合せ先

農村振興局農村政策部中山間地域振興課
代表:03-3502-8111(内線5632)
ダイヤルイン:03-3501-8359