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農林水産省

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平成28年度リスク管理検討会(第1回)議事概要

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1.日時

平成28年7月5日(火曜日)14時00分~16時30分

2.場所

中央合同庁舎第4号館 12階 共用会議室1219-1221号室

3.出席者

メンバー(敬称略):莇祥子、天野弘、稲津康弘、上原健一郎、小倉寿子、鬼武一夫、川崎一平、児玉泰徳、手塚義博、室谷元
農林水産省関係者 

4.議事次第

  1. 開会
  2. 今後の有害微生物のリスク管理の方向性について
  3. 優先的にリスク管理に取り組む有害微生物の見直し及びサーベイランス・モニタリング中期計画の検討について
  4. 有害微生物のリスク管理の取組状況について
  5. その他
  6. 閉会 

5.議事概要

メンバーとの情報・意見交換の概要は以下の通り。

〇 :メンバー及び農林水産省からの発言、→:発言に対する回答

(1)開会

消費・安全局食品安全政策課長から挨拶。

 

(2)今後の有害微生物のリスク管理の方向性について

農林水産省担当官から、資料1に沿って、今後の有害微生物のリスク管理をどのように進めるか説明。

〇 非常によく分かった。今般、「食品媒介感染症」と「非栄養性疾患」が国際的にもキーワードとなっており、フードチェーン全体で微生物を管理することはことさら大切である。資料に示された主な有害微生物に汚染された食品が原因であると特定された事例のうち、90%以上で畜産物が原因食品とあり、個々にリスク管理しないといけない。畜産物を対象としたリスク管理に重点を置いた説明ぶりで良かった。過去10年の取組については、生産者・消費者向けの衛生管理対策として良い資料を作ってきており、否定することはないし、過小に言わず堂々とやれたと言えば良いと考える。また、厚生労働省にも役割があるわけで、この会議に出席するかは別として、厚生労働省と連携しても良いのではないか。

〇 私はリスク管理検討会のメンバーであるため、農林水産省ウェブページをよく閲覧する。食中毒予防のための動画は、「肉・魚は最後に買う。」という部分など、頭に残っている。とはいえ、農林水産省ウェブページを閲覧する消費者は少ないと考えられる。マスメディアと協力し、効果的に情報発信してほしい。

〇 これまでの知見を消費者や現場にフィードバックしていく時期に来ていると思う。動画については、ちらっと見るには良いかもしれないが、色々な方に見ていただく工夫が必要。テレビで流すなどしないと、消費者には見てもらえない。動画は、個々のコンテンツで詳しく作り、充実させてほしい。例えば、カンピロバクターやノロウイルスなど、学習に使える教材を作ってほしい。消費者には細菌とウイルスの違いが分からない方も多く、基礎レベルから分かるものがよい。厚生労働省との連携は、今後避けて通れないと思う。是非やってほしい。

〇 HACCPをやっているが、どうやって管理するのか。各ハザードの管理に関する公表されているデータが少ない。リスクプロファイルを含め、もっと基礎情報が多くの方に提供されるべき。二枚貝のノロウイルスについては、生産現場がほしいのは生産海域をどうモニタリングするのかの検討に役立つ科学的なデータ。特に、ノロウイルスと糞便系大腸菌群との関連性に関心がある。

〇 衛生管理対策のハンドブックや指針はわかり易く秀作と思う。ただし、実績として、微生物の種類によって、低減効果が見られているものと、いないものがある。ハンドブックや指針の中身をリバイスするほか、普及や啓蒙も重要であり、それに関する今の課題を共有し、今後につなげるべき。また、今のところ生産者向けのものが多いが、衛生管理対策の取組とはフードチェーンの関係者全員で行うものであるため、食品事業者や消費者向けの内容を加えて行ってはどうか。

〇 二枚貝の生産現場でノロウイルスの検査を行い、検出された海域由来の製品は出荷・販売停止にするが、既に市場に出回ってしまっているケースがほとんどである。検査すれば良いというのではなく、検査結果をどう使うかを念頭に置き、検査の方法やタイミングを熟慮すべき。

〇 テレビを観ていたら、河川敷でのバーベキューで、肉の取扱いが雑だった。衛生的な取扱いを消費者に浸透させることは非常に難しいことだと認識した。一方、カンピロバクターやサルモネラをはじめとする食中毒菌は、動物から排除することが難しいのも事実である。フードチェーンのそれぞれの段階で減らすことが重要である。また、農場HACCPの認証も大規模農場で増えてきており、今後期待できるのではないか。

〇 腸炎ビブリオ食中毒は事業者の努力でかなり減少した。具体的には、殺菌海水の使用、10℃以下での流通など。他の病原体、例えば最近発生件数が多いカンピロバクターによる食中毒についても、効果のある対策が何かしらあるはずなので、ぜひ取り組んでほしい。

 

(3)優先的にリスク管理に取り組む有害微生物の見直し及びサーベイランス・モニタリング中期計画の検討について

 農林水産省担当官から、資料2に沿って、優先的にリスク管理を行うべき有害微生物の見直し及びサーベイランス・モニタリング中期計画の作成の手順及びスケジュールを説明。

(意見等なし。)

 

(4)有害微生物のリスク管理の取組状況について

農林水産省担当官から、資料3に沿って、フードチェーンの各段階における有害微生物の陽性率、これまでに得られた知見・成果、今後の課題について説明。

〇 サーベイランスと研究のデータを同じ土俵に乗せて議論するのは適当でない。農林水産省の調査と他の調査で試験方法も違うのではないか。特に公表時は読み手に誤解されないよう気をつける必要がある。

→ 調査年、検査方法について精査したい。

<畜産物>

鶏肉のリステリア・モノサイトジェネス等

〇 調査結果が有意義でためになった。しかし、市販品の結果については自分たちの肌感覚とは違うような気がする。どこで汚染されているのか。市販品のデータが古いからかも知れない。海外の報告との整合性はどのようになっているのか。

→ リステリア・モノサイトジェネスの管理については、コーデックスでも議論された。家畜が元々保有していて処理場での解体時に汚染されるというよりは、加工・製造ラインからの汚染が多いのではないかという見解。市販品のデータについては古いものであるが、食品安全委員会の評価書にも引用されているもの。なお、国内の汚染率が海外と比べて高いという認識はない。

〇 リステリア・モノサイトジェネスによる食中毒事例は国内であまり起こっていない。今回説明されたほどの汚染率であれば、問題が顕在化しているのではないか。何か事例はあるか。

→ 国内での発生は、ナチュラルチーズを原因とした感染事例の論文による報告が1件のみ。潜伏期間が長いせいか、食中毒統計上の報告はない。厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)により、リステリア症の患者数は年間200人程度と推定されている。

〇 日本の水産物からも検出されることが多い。水産物の話であるが、米国FDAのImport Alert でリステリア・モノサイトジェネスを原因として輸出を止められた事例が見られる。微凍結状態で3-4日保存できるパーシャルフリージングが普及したことにより、加工・流通段階でリステリア・モノサイトジェネスが増殖しやすくなった可能性がある。ぜひ水産物についても調査してほしい。

〇 低温でも増殖するため、生産・加工段階だけでなく、家庭や調理場での実態調査と低減策検討も次の5年間では必要ではないか。

〇 海外では、調理済み(RTE)食品に規格基準が設定されているケースが多い。国内でも生ハム等に設定されている。RTE食品のリステリア・モノサイトジェネスに対しては、生肉などの原料の管理も必要だが、RTE食品に対する調査や措置の検討も必要であると考える。

〇 リステリア・モノサイトジェネスについてはかなりの数をモニタリングしているが、肌感覚としては、陽性率はかなり低く、1年に何度か見かける程度。知見が少ないため定期的なモニタリングをして、実際のところを知りたい。

〇 全体を調査するのはよいが、最終的にどう対策につなげるのか検討する必要がある。鶏肉の生産衛生管理ハンドブックには、カンピロバクター、サルモネラ、リステリア・モノサイトジェネスについても全部記載されているのか。

→ 生産衛生管理ハンドブックに書かれている対策は、食中毒菌が農場に侵入・まん延しないようにするための衛生対策が書かれている。例えば、踏み込み消毒に関すること等が記載されており、単一の食中毒菌を減らすものとしてではなく、食中毒菌の低減に有効と考えられる対策をパッケージとして紹介している。

〇 生産衛生管理ハンドブックの内容は毎年更新した方がよいのか。

→ 現場での対策として効果的なものがあれば掲載していきたい。例えば、飲水を消毒している農場と消毒していない農場で、鶏群のカンピロバクターの陽性率に差があったことに関しては、データもつけて紹介している。

鶏卵のサルモネラ

〇 汚染状況や殺菌条件によっては、卵殻に付着した細菌が完全に除去されていない場合もあり得るので、公表の際は情報の出し方に注意してほしい。

〇 卵の賞味期限はかなり長いが、菌の増え方や品温管理についての知見はあるか。

→ これまでは農場とGPセンターを対象に調査しており、菌の増え方や品温管理については調査していない。引き続き論文等で情報を収集していきたい。

〇 鶏病研究会で、専門家により37℃又は低温で保存された場合のサルモネラの増殖について調査が行われ、その結果をもとに卵の賞味期限が設定されている。一般的には、2週間弱程度に設定されているが、1か月程度は大丈夫だと科学的に証明されている。

<野菜>

生鮮野菜全般

〇 河川水のリステリアの調査は定性試験・定量試験のどちらを行ったのか。また、どこで採取したのか。

→ 定性試験のみ行っている。河川水は農業用水として使われると考えられるものを採取している。

〇 対象ほ場はどのように選定しているのか。堆肥を使っている所と、化学肥料を使っている所、いろいろあると思う。

→ 全国生産量の上位6割を占める産地を中心に協力を募り、農場を選定している。調査の中で、どのような肥料を使っているか各農場にアンケートを取っており、堆肥を使っているところ、使っていないところは両方とも含まれている。

〇 海外の調査研究では、上流に畜産農場がある場合や、発酵の不十分な堆肥を使用している場合などに、ほ場(作物)の食中毒菌汚染リスクが上がるという報告がある。GAP導入等の効果を判定するために、農場の微生物の汚染率の変化を知りたいのであれば、サルモネラや腸管出血性大腸菌を検査しても陰性というデータしか出ないので、混入率が最低でも数%はある汚染指標菌を測定するほうがよい。

〇 野菜に関する取組状況の資料に野生動物の有害微生物保有率が記載されているが、野生動物については、現在は未だ食べる機会が少ないためリスク管理の優先度は低いかもしれないが、情報が整備できていないのも事実だと認識している。どのように関わっていくのか。また、次期サーベイランス・モニタリング中期計画のポイントのひとつに食品事業者と連携した特定の衛生対策の導入による汚染低減効果を検証するための小規模な調査が挙げられているが、どのようなものを意図しているのか。

→ この調査では、野生動物が野菜ほ場の中に侵入し、有害微生物を持ち込む可能性を考え、野生動物の直腸内容物を検査している。野生鳥獣の肉については、厚生労働省が野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)を作成しており、各自治体がこのガイドラインに沿って管理し、モニタリング調査も行われるので、今後情報が蓄積されると考える。優先度については、次回の検討会で情報交換しながら決定していきたい。その際、サンプルを採取できるかどうか、寄生虫などに関しては検査法があるかなども考慮する必要がある。小規模な調査については、例えば農場と連携し、サルモネラが検出された農場と検出されていない農場の衛生管理対策の取組状況の違いを詳細に調査する。結果を比較することにより効果的な低減対策を検討していく。

<水産物>

二枚貝のノロウイルス

〇 試験方法は、感染性遺伝子推定法か。

→ 今回示している平成25-26年のデータは感染性遺伝子推定法ではない。平成27年以降採用しており、結果は解析中である。

〇 検出率がかなり高く感じる。この検出率だと100人が食べたら10人は感染しそうな印象。検査法を公表する場合、バリデーションはどのように担保するつもりか。

→ 採用した方法ではウイルスを濃縮するなどの工程があるので、厚生労働省の通知法と比べ検出率は高くなる。農林水産省の調査結果を公表する時には、検査方法も明記する。農林水産省は検査法を固定し、誰が検査しても一定の結果を得られるものにしたい。

〇 浄化処理がノロウイルス除去・低減に効果がなかったのは寂しい結果。循環式、流水式のどちらで行ったのか。

→ ノロウイルス除去・低減には効果がなかったが、生食用カキの成分規格を満たすための細菌の汚染低減には有効であったことから、生食用のカキについては今後も浄化処理をする必要がある。浄化処理は流水式で行っている。

〇 ノロウイルスの場合、試験法がはっきりしないと、検出されたウイルスが感染性を有するものか遺伝子断片か分からない。安心してカキを食べたり、輸出したりできるよう、試験法を統一してほしい。ゆくゆくは世界に発信してほしい。そして、先ほども触れたが、生産海域のモニタリングも重要という認識を持っている。

→ 厚生労働省と農林水産省では検査の目的が異なるため、採用している検査法も異なる。統一するのであれば両者でよく連携する必要がある。

ヒラメのクドア・セプテンプンクタータ

〇 養殖ヒラメの管理を実施していることは理解したが、天然のヒラメ管理は行わないということか。

→ 食品安全委員会の食品健康影響評価によれば、平成25年1月-平成26年12月に発生したクドア・セプテンプンクタータ食中毒事例64件のうち、輸入養殖ヒラメを原因とするものが44件、天然ヒラメが10件であり、国内の養殖ヒラメが1件のみであった。これは、国内の養殖ヒラメの生産段階における管理対策が進んできていることを示している。まずは、リスク管理が可能な養殖ヒラメについて引き続き対策を講じて行きたい。

〇 リスク管理が難しいから対策を講じない、という姿勢は疑問を感じる。また、寄生虫関連で、サンマの刺身等を原因食品とするアニサキス食中毒が散発し、お客様にご迷惑をかけてきている。

<その他>

〇 A型肝炎については、消費者の問合せが多く、海外でのアウトブレイクの報告もあるため、優先リストに追加する方向で次回議論してほしい。

 

(4)その他

農林水産省担当官から、資料4-1及び4-2に沿って、食品中の放射性物質検査結果等について説明。

〇 このような資料をまとめていただき感謝。今後色々な形で関係者とのコミュニケーションを是非取って頂きたい。緊急時、全袋検査や全頭検査が関係者にとって必要な措置であって、検査点数を減らすことが非常に難しいことは理解するが、国内のリソースが不足する中で新たな問題に対処するためには、リスクアナリシスに基づく判断のもと検査点数の縮減を迅速にやっていく必要がある。特に、牛肉は、飼料規制も含めきちんと管理されている。海外に売って出て行くために濃度証明が必要かも知れないが、もう少し検査点数を減らしていいのではないか。検査点数全体の8割を占めることに、どれだけ意味があるのか改めて感じた。厚生労働省、外務省とも連携し、国際会議で日本の現状をもっと情報発信すべき。(食品表示法に基づく)「乳児用規格適用食品」の表示基準は、これだけ放射性物質が管理されている中でどれだけ意味がある表示なのか疑問に思う。国際化の中で、日本だけが変な規制、方向に行かないよう、リスクアナリシスの考えの中できちんと舵をとってほしい。

〇 (放射性セシウム濃度が高濃度な検体割合が減少するなど)検査結果は好ましい結果で推移している。このような情報を公開することで、生産者、消費者ともに安心できると思う。放射性物質の問題が生じた頃は、多くの消費者が「科学的知見」に目を向ける余裕がなかったが、今は冷静になってきている。5年間の検査結果から、検査の縮小という動きも出てくるだろうが、どのような努力により、どうして減少しているのか、科学的知見をもとに消費者とリスクコミュニケーションを行ってほしい。

 

 次回のリスク管理検討会について9月中旬に開催する予定である旨を連絡。

 

(5)閉会

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:リスク管理企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674

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