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農林水産省

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平成28年度リスク管理検討会(第2回)議事概要

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1.日時

平成28年9月12日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

農林水産省 7階 共用第1会議室

3.出席者

メンバー(敬称略):莇祥子、天野弘、稲津康弘、大森正樹、小倉寿子、鬼武一夫、川崎一平、児玉泰徳、手塚義博、室谷元
農林水産省関係者 

4.議事次第

  1. 開会
  2. 優先的にリスク管理を行うべき有害微生物の見直しについて
  3. サーベイランス ・モニタリング中期計画の作成について
  4. その他
  5. 閉会

5.議事概要

メンバーとの情報・意見交換の概要は以下の通り。

○:メンバー及び農林水産省からの発言、→:発言に対する回答

(1)開会

消費・安全局食品安全政策課長から挨拶。

(2)優先的にリスク管理を行うべき有害微生物の見直しについて

農林水産省担当官から、資料1、資料2、参考2に沿って、優先的にリスク管理を行うべき有害微生物の見直しについて説明。

全般的なこと

○ 「リスク管理」 と「リスク管理措置」の違いは何か。

→ 「リスク管理」は、情報収集、実態調査、リスク推定、リスク管理措置の検討など全体を指す。一方「リスク管理措置」は、リスクを下げるための対策の部分のみである。「リスク管理」の一部が「リスク管理措置」という関係である。

クドア・セプテンプンクタータ

○ 検討会の資料を事前に読み、リスク管理の優先度を変更する有害微生物について納得できたし、説得力のあるものになっていると思う。
クドア・セプテンプンクタータについて、リスク管理機関や食品安全委員会の動向やリスクに関する最近の知見などをもとに優先度を下げたことは、非常に合理的な判断だと思う。一方、まだ世間の認知度が低いため、食品関連事業者や消費者への情報提供が重要と感じる。

○ クドア・セプテンプンクタータについて、現状できることはすべてやっているので、現行の対策がうまくいっているか注視することが重要と考える。

ノロウイルス

○ ノロウイルスの年間患者数が1万人とのことだが、二枚貝が原因である食中毒と、その他の食品を原因とする食中毒の割合はどの程度か。

→ 二枚貝が原因食品であるノロウイルス食中毒は、年間の発生件数で全体の約1割を占める。その他の食品を原因とする発生件数は9割である。

○ スーパーマーケットなどでは、従業員が食品を汚染させてしまうリスクを抱えながら営業している。また、老人ホームや給食センターなどではリスクが高いため、社員の健康管理には特に気をつけていると思う。
ノロウイルスは培養できず、ワクチンや消毒剤などの研究が進まないと言われているが、新しい知見はあるか。

○ 研究所で実験動物を使った研究をしているが、培養系がなく、薬剤効果の評価ができないというのが実情である。今後いろいろな形で研究が進んでいけば良いと思う。

→ ワクチンについては、ウイルスの遺伝子亜型が複雑なため、有効な抗原の選択が進まないと聞いている。また、先日、厚生労働省は「大量調理施設衛生管理マニュアル」を改訂した。ノロウイルスはエンベロープを持たないため、エタノール系消毒剤は効果がないと言われていたが、市販のエタノール系消毒剤の効果にも言及されているので、確認してほしい。

→ 参考情報であるが、先日、ある製薬企業が、世界初の筋肉内注射ノロウイルスワクチンのフィールド試験を開始したというプレスリリースを出している。

○ 一般的な意見ではないかもしれないが、スーパーマーケットでは、多少高価だとしても効果のある対策を取り入れたいと考えている。

○ 消費者としては、二枚貝を原因とするノロウイルス食中毒がどの程度起こっているのか関心がある。全体の1割だと知ることができて良かった。「浄化処理」がノロウイルスの除去・低減の効果がない可能性があると説明があったが、消費者は「生食用」と記載のあるカキでノロウイルスに感染すると思っていない。消費者や流通事業者への情報提供をきちんと行ってほしい。

○ 老人ホームなどでノロウイルスの感染事例がよく報告されている。多くは吐しゃ物などによる、人から人への感染が主な原因と考えられる。手洗いや清掃といった一般的な衛生管理が重要ということは分かるが、人への感染源がどこなのかが分からない。どのような検査を行い、どのような事が分かるようになってくるのかを教えてほしい。

→ 食品安全の観点からできるところはやっていきたいと考えている。メンバーからのコメントにもあったとおり、ノロウイルスは培養系がないため、実験的にも評価が難しいのが実情である。農林水産省は、感染性のあるノロウイルスを検出できる方法で汚染低減対策の効果を検証し、有用なものについては情報発信していきたいと考えている。

→ 平成26年度に、ある条件下において浄化処理の効果を検証した結果、細菌の低減には有効であったがノロウイルスには効果がない可能性が示唆された。平成28年度には高圧処理によりノロウイルスを低減できるかどうかを検証している。

○ 食中毒の過去の事例から関心は高いと考えていたが、管理する方法が難しいというのが現状だと分かった。二枚貝以外の食品による食中毒事例が多いこと、人から人への感染が起こりうることから考えて、二枚貝だけについて対策を取っても、十分なリスク管理措置と言えないのではないか。ノロウイルス流行の時期に、農林水産省、厚生労働省、国立感染症研究所などが早めに情報を出す、体力が落ちている場合などは二枚貝の生食を避ける、といった対策しかできないと思う。

○ 浄化処理の実験系を具体的に知りたい。浄化処理に使用した海水の中にノロウイルスが残っているかもしれないし、死んで感染性のなくなったノロウイルスを検出しているかもしれない。試験法とセットで低減効果を議論してもらわないと、生産現場としては困ってしまう。
二枚貝を原因とするノロウイルス食中毒の発生件数は全体の約1割とはいえ、これを減らせれば全体への波及効果は大きいと思う。ノロウイルスの対策については、食品加工場の一般的衛生管理が重要と考える。

A型肝炎ウイルス

○ ハワイで起こったA型肝炎食中毒について、原因食品が国産のホタテであるかのような報道があったが、実際は外国産のイタヤ貝であったと認識している。誤った報道があった場合は、正確な情報をいち早く提供してほしい。

→ 指摘の通り、フィリピン産のイタヤ貝が原因食品であった。関係企業のプレスリリースにイタヤ貝である旨が明記され、一部の報道は修正されたと把握している。我々も正確な情報をタイムリーに取っていきたい。

E型肝炎ウイルス

○ ジビエの流通については、猟師が動物を撃った後、獣医師のチェック等もなくそのまま市場に流れてしまうと認識している。具体的にどのようにリスク管理するのか。

→ 厚生労働省の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を参考に自治体が対策を行っている。ガイドラインでは、処理した食肉や施設等の細菌検査を定期的に行うことが望ましいとしている。このような枠組の中で情報が蓄積されると考えているため、農林水産省は、ジビエの肉は焼いて食べることについての情報提供、関係機関の動向の注視、基礎情報の収集等を行う予定である。
E型肝炎ウイルスの対策としては、出荷される豚のE型肝炎ウイルスの保有率等を調査し、農林水産省としてどのようなことができるか検討していく。

○ 食用動物について調査することが重要な視点だと考えている。ジビエは人の手で管理されていない状態で生育しているため、他の食用動物と比べて、E型肝炎ウイルスだけでなく、放射性物質等についてもリスクが高いと認識している。農林水産省や厚生労働省が、このような全体的なことについて情報提供していき、E型肝炎ウイルスはあくまでその中の一つのリスクと考えた方が良いと思う。

○ ジビエについては、大学で研究していたり、猟師が料理屋に持ち込んだりと、それなりに我々の生活の近くに来ている。それぞれの自治体での対策が必要というのはもちろんそうであるし、管理されていない状態で生育しているため種々のリスクが高いことも理解している。しかし、かつての日本の食生活では、管理されていないものや十分に研究されていないものを食べ、亡くなってしまう方もいたし、今般、ジビエという新しいものを食べてみようという慣習が生まれているのも事実である。農林水産省が行うかは別として、ジビエの利用や研究などの現状を把握する必要はあると思う。現時点で何か検討していることはあるか。

→ そもそも検査用のサンプルをきちんと取ることができるか、検査体制が確立されているかという部分で現状を把握することは難しい。現時点では、食中毒患者数が非常に多いというわけではなく、適切に加熱して食べることで感染のリスクを低減できることが分かっている。引き続き、E型肝炎ウイルスの保有状況等の情報を収集していく段階であると考えている。

○ E型肝炎の症状は劇症から無症状までさまざまである。人の医療関係では、劇症肝炎という切り口で多少研究が進んでいるが、ウイルスの培養が難しいことが足かせとなり、動物ではほとんど研究が進んでいない。
シカ肉を原因食品として死者が出ている事実はあるが、シカのE型肝炎ウイルス遺伝子の保有率は低く、むしろ豚やイノシシの方が高いことが分かっている。ただし、豚については、E型肝炎ウイルス遺伝子の保有率が高いのは子豚の時期のみなので、と畜場ではそれほど問題ないと考えている。
野生動物により人が襲われたり、農作物が食べられたりしてしまう、という問題も、特に田舎では深刻である。ジビエの消費拡大は、頭数を減らすための対策として非常に重要だと感じている。被害防止対策のため農林水産省が補助金を出していることも承知している。
猟師が自家消費する分にはそれほどの問題でないかもしれないが、ジビエが不特定多数の方の食卓に届きうることを考えると、対策が必要となる可能性はあると思う。

○ 全体的に、危害要因と対象とする食品の組合せをできる限り絞って、効率よく、効果的にリスク管理を行おうとしており、非常に良いことだと感じた。
E型肝炎ウイルスについて当面実施すべき事項としては豚に関する対策しかないが、ジビエについても、保有状況の調査等を行うべきだと考える。

アニサキス

○ 水産業と密接に関わる方はよく知られていることかもしれないが、消費者としては、背の青い魚等はあまり生で食べない方が良い、という程度の認識しかない。今般流通が良くなっており、生の魚が食卓に並ぶようになってきている。焼いたり煮たりすれば大丈夫というのは理解できるが、冷凍で運ばれてくるものは安全と理解して良いのか。もう少し詳しく教えてほしい。

→ 農林水産省や厚生労働省が食中毒予防のための対策をウェブページに掲載している。加熱と冷凍により寄生虫を殺すことが重要である。基本的にアニサキスは内臓に寄生するため、内臓をすぐに取り除くことも有効である。しかし、宿主が死んだ後に筋肉に移行することがあり、その場合は内臓を取り除くだけでは不十分で、目視で取り除くことも困難である。

○ スーパーマーケットでもよく発生している。原因食品としてサンマの刺身が多い。もともと内臓にいて、筋肉中に移行することや、焼いたり煮たり冷凍したりすることで死滅させることができることも把握している。三枚おろしにしたサンマの切り身に飾り包丁をいれて少しでもアニサキスを殺そうとすることなども検討した。結局、営業部門は難色を示しているものの、刺身で提供する場合は全て冷凍のサンマを使うルールに切り替えることができ、現在は全て冷凍となっている。

ビブリオ・バルニフィカス

○ 患者数は少ないが、感染した場合の被害は大きいと思う。危害要因の病原性はLで妥当なのか。

→ 重篤化すると高い確率で死に至ると報告されている。ただし、健康な場合であれば、症状は軽度の胃腸炎程度であり、アルコール性肝炎等の慢性肝疾患を持つハイリスクグループが重篤化するとされている。研究報告によれば患者数が少ないこと、健康であれば症状が軽いことから、優先的にリスク管理すべき微生物としなかった。

○ 漁業関係者がしばしば重篤化している。一般消費者にはあまり関係ないことだと感じているかもしれないが、ビブリオ・バルニフィカスが海水中に広く存在する細菌であることは理解してほしい。リステリア・モノサイトジェネスやボツリヌス菌と同様、ハイリスクグループにどのように情報提供していくかが重要だと考える。

→ 優先度リストを見直すに当たって難しかったのが、農林水産省としてリスク管理措置をどこまでできるのかという部分である。
これまで10年間リスク管理に取り組んできて、今後の方向性として、初期作業から情報発信へ重点をシフトさせていくべきだと考えている。どのような方にどのような情報を出していくかについて、よく検討して進めていく。

(3)サーベイランス・モニタリング中期計画の作成について

農林水産省担当官から、資料3に沿って、平成29~33年度の調査計画について、危害要因と食品の組合せ別に説明。
(補足事項)
E型肝炎ウイルス及びA型肝炎ウイルスについては、優先度リスト(案)上では同じ区分(2)に分類しているが、中期計画(案)では異なる区分(豚肉のE型肝炎ウイルスは優先度A、二枚貝のA型肝炎ウイルスは優先度B)に分類している。これは、豚肉のカンピロバクター調査で採取した試料を使うことで、豚肉のE型肝炎ウイルスの検査コストを抑えることができ、効率的に調査ができるためである。

全般的なこと

○ 「リスク管理措置の検討に活用」という文言が複数箇所に出てくるが、牛肉、鶏肉、鶏卵の生産衛生管理ハンドブックや野菜の衛生管理指針を既に作成・運用しており、既にリスク管理措置は取られていると認識している。リスク管理措置の検討とは、作成したハンドブックや指針の内容の追加と理解して良いか。

→ その通り。調査により得られた結果をもとに、現行の対策を見直し、より良い対策にしていきたいと考えている。

○ リステリア属菌ではなく、リステリア・モノサイトジェネスのみサーベイランスを行っているのか。

→ 目的としてはリステリア・モノサイトジェネスの汚染状況を知ることであるが、目的をかなえるために必要に応じて指標菌としてリステリア属菌の汚染状況を調べる可能性もある。

○ 承知した。質問した理由は、汚染経路を把握するだけならリステリア属菌を対象に調査すれば十分であり、食中毒菌としてリステリア・モノサイトジェネスの汚染率を把握しようと考えると莫大な費用がかかる上に、汚染率0%という結果が出ることになりかねないためである。

○ 全ての食中毒菌について共通することだが、継続的に汚染実態を把握することは当然大切であるが、同じ方法で調査することが非常に重要である。一方、E型肝炎ウイルス等は新しい知見を取り入れることも重要である。サルモネラなど古典的な食中毒菌については、膨大な情報が蓄積されているため、情報を収集・整理してほしい。

○ サルモネラについては防鳥防鼠が重要と思う。例えば飼料も、製造会社等がきちんと管理しても鼠族等により畜産農場で汚染される事例があると認識している。また、鳥や鼠族など野生動物の侵入を、畜産農場で管理してもなかなか結果に結びつかないと思う。侵入経路に関する情報はあるか。

→ 野生動物の侵入については、どのように防除すれば家畜への食中毒菌の感染を防げるかという観点で研究事業を用いて調べているところである。調査事業では、畜産農場にいる野生動物自体の調査はしていないが、採卵鶏農場、肉用鶏農場でサルモネラの汚染実態調査をした結果、同じ血清型のサルモネラが連続して分離されている。環境中に汚染が残ることが分かってきているので、引き続き具体的な汚染源について調査を検討したい。

○ サルモネラはどのように卵内を汚染するのか。また、汚染された卵はどのように殺菌すれば良いのか。

○ 全ての血清型のサルモネラが卵内を汚染するわけではなく、サルモネラ・エンテリティディスが知られている。卵巣などの生殖器官にサルモネラが入ることが原因である。これは取り除きようがないが、産卵時点では菌数が非常に少ないため、適切な温度管理により増やさないこと、新鮮な卵を割ってすぐ食べることが何よりも重要である。

(4)その他

○ 前回の検討会で、ハンドブック等の指針が充実している旨、多くの委員からコメントがあった。今後、中身を充実させていくことはもちろん、普及させていくことも重要である。別の事例であるが、一般的衛生管理やHACCPについての分かりやすい参考書等は世の中にあるが、現場では、分かりにくい、指導してくれる人がほしい、お金がかかるのではないか、といった意見が出ている。普及させていく上での課題について、農林水産省はどう認識しているか。

→ これまでは、都道府県を通じた配布が中心であったが、実際に使う人の手に届いているか把握できないという課題があった。
ここ数年間は、自ら地方でセミナーや説明会を開催したり、農政局のブロック会議等に参加したりし、現場に近いところで手渡しするように心がけている。
指針を作るだけでなく、実践してもらって初めて効果があると認識している。これからますます力を入れていきたい。その際は助言をいただきたい。

○ 畜産に限った話だが、例えば中央畜産会が農林水産省の支援を受け農場HACCPを実施しているので、今回の調査結果等をその基礎データとして使えば良いと思う。
また、農場には、家畜疾病だけでなく公衆衛生、食品安全に関わる管理獣医師がいる場合が多いので、彼らに活用してもらえれば良いと思う。

連絡事項

優先度リストの見直し、中期計画の作成に当たり、説明会、意見交換会を実施する予定。今後の予定は以下のとおり。

  • 11月              パブリックコメントの実施
  • 12月下旬以降  中期計画の公表
  • 2月中旬          第3回リスク管理検討会を開催し、平成29年度の年次計画の議論

(5)閉会

 

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:リスク管理企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674

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