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農林水産省

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第1回農業人材の確保に向けた検討会(令和3年5月21日)議事概要

1 日時:令和3年5月21日(金曜日) 16時00分~17時30分

2 場所:農林水産省 本館3階 第1特別会議室

3 出席者
   [有識者(テレビ会議での参加)]
    秋元 里奈  (株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長)
    西田 裕紀  (株式会社LifeLab代表取締役)
    加藤 百合子(株式会社エムスクエア・ラボ代表取締役)
    諸藤 貴志  (株式会社アグリメディア代表取締役)

   [農林水産省]
    葉梨農林水産副大臣
    宮内農林水産副大臣
    熊野農林水産大臣政務官
    光吉経営局長
    松尾大臣官房審議官
    平山就農・女性課長

4 概要

〇葉梨副大臣挨拶

 (葉梨副大臣)

   本日は御多用のところ、「農業人材の確保に向けた検討会」に御参集をいただき、心から感謝申し上げる。

   農業者の減少・高齢化が本当に急速に進んでおり、50年前は、農業者が600万人、農地が600万haだったが、今は基幹的農業従事者が120万人、農地は440万haと、農地が減る速度よりも、人が減る速度が勝っていると感じている。雇用労働者の面でも、これまで外国人技能実習生に頼ってきたが、コロナの影響で止まってしまっている状況にある。

   そのような状況において、意欲ある多様な若者を農業に呼び込むことで、新規就農者数を増やし定着させていくことの大切さを改めて痛感しており、対策を講じなければいけないと考えている。

   そこで、農業人材の確保にむけた検討会を立ち上げ、多様な方々からしっかり御意見を頂戴し、施策の検討を進めてまいりたい。

   本日は4名の方にご出席いただいており、農業の求人情報サイトの運営を通じて、農業をやってみたいと関心を示す若者と農業者とのマッチングに取り組まれる方々、あるいは、農畜産物の直販により、生産者と消費者を結び付ける取り組みをされている方々など、いずれも、現場の生産者をめぐる現状に熟知されておられると聞いており、非常に楽しみにしている。

   若者が、職業としての農業に魅力を感じていただくために必要なこと、更に、農業に関心をもった若者が就農し、定着していくために必要なことなどについて、皆様の御経験で得られたお考えをお聞かせいただきたい。本日は、忌憚のないご意見を頂戴できればと思う。

〇有識者からの説明

(秋元里奈氏)
  
   生産者と消費者が直接繋がる産直通販サイト「食べチョク」を展開しており、約50万人の方が利用している。

   家族に良いものを食べさせたいから直接農家から新鮮なものを取り寄せたい方が、メインで使っている。農家は、大規模より中小規模の方で、多少手間をかけてでも自分で価格を決めて直販したい、自社の農園をブランディングしたい、という目的で使用されている。中小規模の農家のため、伝票記入などをなくし、なるべく手間を省いている。

   「食べチョク」は、50万人以上が利用している国内最大の産直通販サイトである。登録している生産者4,500軒のうち、ほとんどが野菜や果実等を生産する農業者である。また、1日1時間、clubhouseで全国の農家や漁師と交流したり(現在100回以上開催)、弊社従業員3名(エンジニア、インターン生)が新規就農するなど、農家とのつながりが日常的にある中、就農における様々な課題を聞いている。

   就農に当たっての課題を整理するため、農業に関する人材を、農業に興味がある潜在層から、新規就農する方、更に経営を安定化させる方として、プロセスごとにまとめた。農水省でも新規就農への支援や情報提供など、たくさんの施策を打っていると思う。

   食べチョクとしては、50万人以上の消費者とつながっており、食に興味をもっている潜在層へのつながりが強く、このすそ野を広げる取組ができないかと考えている。その取り組みの一つとして、食べチョクだけでなく「一次産業みらいラボ」というオンラインコミュニティを立ち上げ、50~60人のコミュニティの中で、農家のほ場とつないでインスタライブを実施するなど、消費者と農業者や漁業者とのつながりを作っている。また、食べチョクで契約している農家は、約半数が1代目の新規就農者だが、月700万円売り上げる方や、家族経営でも月200~300万円売り上げる方など、安定した販売の場として活用してもらっている。また、消費者からのコメントにより、新規就農者のモチベーションづくりにつなげている。

   就農に当たっての一番のハードルは、土地探し。自分が就農したい場所で、なかなか農地が見つからない。所有者側の、知らない人に農地を渡したくないという心理的ハードルもある。見知らぬ土地で就農を目指す場合、ツテがないことでより困難になるが、自治体によっても差があると感じている。地域でコミュニティが形成されていると、こういったハードルも下がっていくのではないかと思う。現場との日々の交流の中で感じていることだが、農水省でも就農希望者向けの情報提供が行われているポータルサイトなど、様々な施策が打たれているものの、上手く生産者に浸透していない気がしている。もっと使ってもらう必要があり、施策を波及させていくことが重要と考えている。新規就農者同士のコミュニティの場があれば良いという声もある。

   各課題についてすでに様々な対策は打たれているが、打っている対策が生産者に届いていない。作ったサービスを使ってもらうことが重要なので、我々民間企業の知見も併せながらお手伝いできたらと考える。

(西田裕紀氏)

   弊社は一次産業の人材のうち、主に雇用就農事業を15年ほど展開しており、新規就農というより、雇用就農者の減少という問題に対する提案をしたいと思う。このような会が開かれた大前提として、2020年の農林業センサスによる雇用就農者の減少が大きいと考えている。まずは、減少している雇用就農者の「層」を把握し、どこを増やさなければいけないのか、検証していくことが重要だと思う。実態として技能実習生が増えているので、相対的に日本人の就農者が減っているということが言える。次に、減少している理由を分析し、就農者を増やすための施策を検討し、KPI、目標値を設定する。段階的に検証を進め、場合によっては、途中で事業の方向性を変えるなど大胆な方針を取りながら施策を展開していくことで、効果が見えてくるのではないかと思う。一番大事なところは給料であると考えており、農業が儲かれば、給与面が改善され、問題は解決すると思っている。

   解決策としては、農の雇用、経営者の育成、規制緩和の大きく3つを提案したい。一つ目の農の雇用事業は、雇用者の雇用ハードルを下げている点で素晴らしいと思うが、就農者にメリットが反映できているかというと疑問である。雇用者とは分けて求職者に直接支援していく施策も考えてはどうか。もう一つは経営者の育成という点で、農業経営者に対するスキルアップ講座は全国で実施されているが、人材採用や育成に関する講座はあまりない。一方、農業はここ10年で急激に法人化が進んできたため、人材育成のプログラム、ノウハウ等が蓄積されていないことが課題。また、最近は大手農業法人に人が集まる傾向にあるので、一般企業の農業参入における規制緩和を行うことで人の流れが変わっていくと考えている。一般企業には長年の人材育成ノウハウが蓄積されているため、地域と関わり合い、ノウハウを共有し蓄積していくお手伝いができるのではないかと考える。

   労働環境の変化は著しく、農業の大規模化に伴い、雇用の多様化が生まれている。近年の傾向として、日本の農業界は、諸外国と比較して外国人からは給料面での魅力が低下してきており、このままだとこれまで以上の労働力不足に繋がると予測している。結論としては、これまでの土地生産性を追求する農業から、労働生産性を高める農業にシフトしていくことで、儲かる農業を実現し就農者確保につながっていくと考える。

(加藤百合子氏)

   弊社は、生産、流通、アグリテック、教育と農業と掛け合わせることで、課題解決を行っている。アグリテックについては、もともとエンジニアであった時の知見を活かし、労働力や業務改善について、自動車産業と一緒に農業現場へ適用させる活動を実施している。人材育成では、小中学生を対象に研修を行い、地域資産を上手に使い、地域を盛り上げる人材を育成する活動している。「やさいバス」は、地域が抱える流通の課題を解決している。地域で共同配送網を作り、情報はECを活用し、地域コミュニティを作りながら実装している。弊社は新規就農者ではなく、安定した量を動かすためにプロ農家とプロ子会社をつなげており、いわゆるBtoB事業を実施している。

   全国に順次展開をしているが、地域によって抱える事情が異なる。例えば、北海道では、やさいバスは役に立たないと思っていたが、地域の中でも価値に気づいていなかったり、物流面で手に入らないといった課題がある。また、広島では、自給率30%であり、地産地消のマーケットはあるが、九州から安価な農産物が入るため安定収入を得られないといった課題がある。

   農業は、社会基盤の産業であり、農があるところには、スマートコミュニティがある。アグリテックの取組は、労働生産性を向上させることを目的としている。多くの企業が様々な機器を開発しているが、もっと現場の生産者に寄り添えるようなかたちでスマート農業が実現すれば、より生産性が向上すると考えている。

   農業はどうあるべきかという問いについて、競うのではなく、共創、共有であるべきと考えている。地域デザインの中で新規就農者をどのように地域に取り込むかを考えることが大事だと思っている。

   新規就農は、普通に起業するよりも難しい。現在の補助金みたいに、最低限の生活資金だけ提供しても続かない。まず、安定があることが一番であり、安定への道筋を明確にすることが大事。安定を確保するためには、3年から5年といったある程度の時間がかかる。そのためのポイントとして、優良な農地の提供、地域の人からの栽培技術、そして、初期投資は自己資金が良いと考えるため、初期数年の売上の確保、設備の共有等によるコスト削減など、新規参入者に対する地域の寛容な受入れが何よりも大事である。そのため、地域のグッドプラクティスの共有は有効であると考える。

(諸藤貴志氏)

   弊社は持続可能な農業者を増やしたいというビジョンを持っている。農業という産業を強くしたいという思いの中、農地活用事業、農業人材事業、流通事業、経営支援事業を展開している。10年事業を展開する中で、農地や人材の情報が蓄積されてきている。主力事業は、都市近郊の農地を活用した「シェア畑」であり、農業にある程度興味がある方に活用いただいている。

   雇用就農には伸びしろがあると思うが、雇用にかかる費用や手続き等の事業者側のコストを軽減する必要があると考える。就農意欲がある人と農家をマッチングする仕組みはあるので、その先の採用や諸手続きをサービスとして提供したいと考えている。

   弊社が取引している事業者は、雇用就農をしており、売り上げが1,000万円以上の農家が中心。求職者はコロナの影響で増加している。就農に興味がある方だけでなく、いわゆる農業や移住等に興味があるような潜在層も、シェア畑の登録者も増加している。

   雇用就農の求職者は増加しているものの課題はあり、雇用側の事業者がまだ少なかったり、50歳以上の登録者の出口がないなどの課題が挙げられる。人材紹介のマッチングの実績については、牧場は収益性も高く、求人にお金がかけられるため高くなっているが、一方で野菜農家は求人にかける余裕がなくサービスの活用はまだ少ない。

   就農関心者は約2万6千人と多いものの、実際の就農実績は約1,700人と約7%しかいない。一番の原因は、農家の収益性が低く給料面が低いことであり、これは産業全体で上げていく必要がある。それ以外にも、事業者が採用にコストをかけられないことや、求職者が自分に合った事業者を見つけられない等の課題がある。

   弊社として考える改善の一点目として、雇用就農における事業者の課題解決であり、給与条件だけでなく、例えば、採用事務や農の雇用事業の事務負担の支援を検討している。採用事務はかなり煩雑であるが、人材紹介によりその負担は軽減できるため、こういったサービスを行う事業者が増えればと考える。実際に農業に興味を持つ登録者は増えているため、こういった人材を活用したいと思っている事業者は多くいると思う。二点目に、親族以外に資産の承継が進む施策が必要だと考える。最後に、潜在的農業関心層の取り込みが必要であると考える。新規就農者にとって、いきなり農業に取り組むのはハードルが高い。家庭菜園やレジャーと就農の間サービスがあるとよいと考える。最初は100~300平方メートルの都市型・小規模農業を展開することで、新規参入者が増えるのではないか。


〇意見交換

(光吉経営局長)

   新規参入時に、農地を確保しがたい状況が課題であるとの御意見を頂いた。新規参入者に対する地域の寛容な受入が重要だと考えているが、ここが難しい課題だと感じている。この点について、どのようにお考えか。

 
(加藤百合子氏)

   日本において、新しいことに対する寛容度が低いのは農業に限らない。仕組みを作っていかないと、地域差を是正できないという問題もある。

   農地は、地域の資産で大切なものであり、外から来た新参者に渡したくないという気持ちは、非常に分かる。この課題に対する良い取り組みがあって、茨城県の「JAやさと」では、2年間JAで雇用され、技術を養いつつ、売上の一部を貯蓄しておき、独立時に、JAが農地を提供し、貯金を活用し、就農開始するという仕組みを行っている。北海道でも、そのような人材育成の仕組みを行っている。そういった良い仕組みを奨励・表彰するとともに、そのような取組を行っているところに対して、補助金を提供するのも良い。

   また、デンマークでは、農地を借してほしいベンチャー企業の若い経営者は、地域に対して、経営ビジョンをプレゼンし、地域が認めた人に、跡継ぎとして農地を提供するという取組を行っている。
 

(諸藤貴志氏)

   新規参入者を見極めるフィルターを用意することも一つの考え。2反、3反の農地を借りてもすぐに離農したという事例、事業計画もないので営農することを認められないという事情も受け入れ側にはあると思う。

   例えば、最初の1年間は一旦100~500平方メートルほどの農地で営農させてみて、やる気や実績を見極めるといったフィルターをかけることで、受け入れる側も認めやすくなっていくのではないか。就農する側にとっても、いきなり始めるのは辛いので、もう少しライトな入口を作ってあげることも必要ではないか。


(秋元里奈氏)

   地方自治体の協力が必要と考える。自治体にとっても、新規就農者への手厚い支援により人口が増加し、地方創生に繋がるなどのメリットを感じられれば、より前向きに進んでいくと思う。既に積極的に取り組んでいる自治体の取り組みを可視化することで、自治体間の、人材獲得における健全な競争を促すことも期待できる。

 
(西田裕紀氏)

   雇用就農に長く関わってきたが、いきなり新規就農することは、ハードルが高いと感じている。一旦、しっかりとした経営ができている農家で2、3年位雇用就農をして、その後その地域で就農してもらえれば一番良い。実際、どんどん就農希望者を受け入れて、地域に輩出している企業もあり、そういった企業に、就農希望者を斡旋して、就農につなげていくことも大事ではないか。


(宮内副大臣)

   全国の農業就業者の平均年齢は67.8歳で、担い手の高齢化が進んでいる。将来に亘っての食料安定供給体制の維持が懸念される中、若者を集めることが長年の課題となっている。そもそも、若い人たちには、農業に興味がある潜在層は存在すると思うか。もし存在するのであれば、就農してもらうために、国としてやるべきことは何か。就農希望者が増加すれば、人と農地とのマッチングが重要になる。どのようなシステムや仕組みが良いと考えるか。また、そこに民間企業が入っていくビジネスの可能性はあるのか。

 
(諸藤貴志氏)

   コロナ禍による地方への移住の流れがあり、潜在層は増加していると思うが、実際に就農に至る人は少ないのが現状と思う。年収250万、週6日労働といった、給与や待遇面が壁になっている。土地の問題については、水田を畑地へ転換し、集約化するのが一番現実的だと思っている。集約した農地に先進的農家や新規就農者を呼び込み、そこで自立していける仕組みやプログラムを構築すれば、継続的な就農につなげていけるのではないか。しかしながら、こういった取組に対して、現状では、例えば、不動産業者のような民間企業が参入する見込みは全くないと思う。農地の賃借の斡旋で事業採算をとることは現実的ではない。国が委託するか、国の事業としてやるしかないと思う。

   また、新規就農者を増やすには、半農を認める、勧める取組、枠組みが必要と考えている。コロナ禍で地方に移住し、テレワークしている人の中には、最低限の年収が確保されており、空いた時間を使って農業をやりたいという声が増えていると感じている。特に、デザイナーやシステムエンジニアなどのジョブ型雇用の人に、農業を志望する人が多い。半農半Xのように、現行と異なるような働き方を認め、それを受け入れやすい制度や補助があることで、新規就農がもっと増えていくと考える。

 
(西田裕紀氏)

   潜在層は年々増加していると思うが、雇用におけるマッチング面で壁がある。また、給料面は、最も大きな問題である。農業への転職は、一般に都市部から地方へ、引っ越しを伴う転職なので、住居の問題があり、加えて自動車を保有しているかどうかの問題もある。地方では車が必須になる。今までの生活とのギャップが大きく、興味を持っていても二の足を踏んでしまうという状況が起きている。

 
(熊野政務官)

   新規参入への寛容さに地域差があるという話があった。その差を是正する取組として、例えば優良事例の表彰も有効との説明があったが、自治体では具体的に何をするべきか。

(加藤百合子氏)

   やはり良い取組を表彰するのは大事だと思う。先ほど紹介した「JAやさと」では、人材育成の取組を20年間行っており、北海道の釧路でハーゲンダッツのミルクを製造しているところでも30年、40年と長期間、人材育成の取組を行っている。そういった素晴らしい取組を表彰するとともに、長期的な補助を行うなどのインセンティブを与えることで、モチベーションアップ、維持につなげることができる。特に、人材育成は多くの時間とお金がかかるため、金銭的補助は有用である。

 
(葉梨副大臣)

   西田氏、諸藤氏から年収がネックになっているとご意見を頂いた。農業で確実に儲かるならば、新規就農者が増えるはず。やはり世間一般的に、農業が儲かると認識されていないのではないかと感じている。潜在層の増加についてもコメントを頂いたが、儲かるからというよりも、コロナ禍で水と緑へのあこがれといった意識の変化によるものが要因ではないかとも思う。個人的には、興味を持つ人は増えていても、収入が低いと思われて、新規就農者数が伸び悩んでいる現状だと思っている。

   そのような中で、新規就農者を増やすためには、農業が儲かるシステムを作り、全国に展開していく必要があると考えている。営農類型は野菜、果樹と様々あるが、実際に生産者が儲かることは、システム作りにおける大きなヒント。加藤さん、秋元さんにおかれては、まさにBtoBで生産者とやりとりをされており、新規参入される方は、農業が儲かるという意識を持っておられるのか、印象を伺いたい。また、そういった儲かるシステムをどのようにして全国に展開していけばよいか、ご意見を伺いたい。

 
(加藤百合子氏)

   農業は、育てて、収穫して、出荷して、初めて利益になる。育てて、収穫する部分は、御自身でやっていただくが、出荷する部分は、我々が提供しているような様々な流通サービスを組み合わせて利用していけば、大体3年から5年で、黒字化する。そして、その地域に合った経営をモデル化することで、地域全体で安定した経営ができるようになっていく。昨今、様々な流通経路ができてきた中で、需要と供給が見えにくくなっていると思うが、国として把握しきれているのかと考えており、ここが一番の問題であると認識している。消費者が努力をしないと、安心安全を担保された美味しいものが手に入らないという状態ではいけない。誰がどのくらい何を作っているか。把握できているのだろうか。2年前、トマトが市場に溢れて売れなくなってしまい、あるトマト農家が自殺してしまうということもあった。人口は減っていき、胃袋は小さくなっていく。生産者側が、需要がどのくらいあるのか、そして何を作ればよいのか、ということを地域のモデルと併せて把握し、安定した経営を行っていくことができる環境を作っていけば、新規就農者は増えていくと考えている。

 
(秋元里奈氏)

   販路は年々拡大し、儲かるための選択肢は増えているが、重要なことは経営者自身がマーケットを見て、自身でポートフォリオを組んで経営するということ。

   日本には、儲かることがポジティブに捉えられない空気がある。地方でも儲かっている人はたくさんいるが、目立たないように、周りから反感を買わないようにしている人もいる。儲かること、地域で飛び出た存在になることが良いことだというマインドを普及させるとともに、そういったスター経営者同士が、地域を跨いだつながりを作り、地域で孤立しないようにすることが大事。そうすることで周囲の参考、目標となり、追いつこうとする健全なサイクルが生まれると考える。

 
(葉梨副大臣)

   農業就業者が減少しているが、どの層が減っているのか分析をしなくてはいけない。少し、古い統計になるが、140万農家のうち、100万がコメ農家だった時と比較して、コメ農家の部分の減りは非常に多い。コメ農家全体で1兆8千億円の儲けがあっても、コメ農家が100万入れば、1戸当たりの生産販売額は年間180万円。一方で、養豚の場合は1戸当たり4,000万~1億円、酪農では5,000万円と大きな開きがある。畜産への支援が、だいぶ進んでいるということもあるのだが。個人的には果樹と野菜についても、生産額をもっと上げていかなければと考えている。

   例えば、土日だけ水田農業をするような半農半Xを認めて、また、主食米だけでは余って価格がつかなくなってしまうので、飼料米等を作付け分担して、加えて機械の共同利用などにより、上手にやっていただくのも私はよいと思う。しかしながら、例えば昭和30年代の頃は1町耕せば食えたが、今は20町耕さないと400万円の所得にもならないというコメ農家事情を考慮すると、水田の集約化によって、仮に半農半Xで新規就農が増えたとしても、全体的にはコメ農家は減少していくことが予想される。

   諸藤氏が提案された水田の畑作化と集約には賛成。そのため、コメ農家が今後減少していくことが予想される中で、果樹や野菜、畜産などのその他の作物に新規就農者を増やす施策のターゲットを絞っていくことが重要だと考えているが、そのことについてのご意見を頂きたい。

 
(諸藤貴志氏)

   水田は、土地の集約が難しいので新規参入者には向かない。露地で野菜、果樹を栽培したものの、反収が少なく上手くいかなかったり、施設栽培も投資に伴い失敗している事例を聞いている。そういった実情を踏まえると、エリアや産地ごとにゾーニングをして、このエリアでは何を作るのかしっかりと整理していくことが必要。

 
(西田裕紀氏)

   品目を、しっかりと意識していく必要があると考えている。日本は、産地に囚われ過ぎていて、閉鎖的になっているところがある。アメリカでは、品目ごとに組合があって、価格を仲間同士でコントロールをしている。日本でも、そのような視点を導入していくことで、違った結果が出てくるのではないか。日本でも、輸出に力を入れていると思うが、輸出する品目のうち、何について伸ばしていくのか、重点的に伸ばしていくターゲットを明確にし、それを作る農家に対する支援を手厚くし、儲かる農業にしていくという視点も重要と考えている。

 
〇葉梨副大臣挨拶

(葉梨副大臣)

   丁寧なプレゼン、貴重な御意見に感謝申し上げる。極めて興味深い意見交換ができた。農林水産省としては、本日頂いた御意見を踏まえ、新規就農者を増やし、定着させていくため、必要な施策を検討していく。引き続き、新規就農者を増加に向けた取組に御協力お願い申し上げるとともに、本日は御多用の中、御対応いただきましたことに御礼を申し上げ、閉会の挨拶とさせていただく。

お問合せ先

経営局就農・女性課

代表:03-3502-8111(内線5190)
ダイヤルイン:03-3501-1962