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農林水産省

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第4回農業人材の確保に向けた検討会(令和3年7月8日)議事概要

1 日時

令和3年7月8日(木曜日) 13時30分~15時00分

2 場所

農林水産省 本館3階 第1特別会議室

3 出席者

[有識者(テレビ会議での参加)]

三浦 綾佳 株式会社ドロップ 代表取締役

村田 翔一 ロックファーム京都株式会社 代表取締役

丸田 洋    有限会社穂海農耕・株式会社穂海 代表取締役

田中 進    株式会社サラダボウル 代表取締役

[農林水産省]

 葉梨農林水産副大臣

 宮内農林水産副大臣

 熊野農林水産大臣政務官

 光吉経営局長

 松尾大臣官房審議官

 平山就農・女性課長

4 概要

〇葉梨副大臣挨拶

(葉梨副大臣)
   本日は御多用のところ、「農業人材の確保に向けた検討会」に御出席いただき、心から感謝申し上げる。

   農業者の減少、高齢化が急速に進んでいく中、これまでも新規就農を増やすための施策を行ってきたが、意欲ある多様な若者を農業に呼び込み、新規就農者数を増やし、定着させていくことは喫緊の課題であり、対策を講じなければいけないと考えている。そこで、農林水産省では「農業人材の確保に向けた検討会」を立ち上げた。

   第4回目となる今回は、多くの若者を雇用されている皆様に御出席いただいている。雇用就農は、非農家出身であっても就農しやすいルートであり、農業人材の確保が喫緊の課題となる中、重要な観点である。

   本日は、皆様の御経験を踏まえたお考え、これから新規就農者を増加・定着させるために何が必要か、存分にお聞かせいただければと考えている。

   本日は、忌憚のない御意見をいただければと思う。

 

〇有識者からの説明

 (三浦綾佳氏)
   2013年に広告代理店「株式会社ドロップ」としてスタート。結婚、出産を機に、プライベートと仕事を両立した働き方を実現したいと考え、2015年に農業分野に参入。当初は、自分と同じような境遇にある女性が働ける職場を目指して経営していたことから、社員は全員女性だったが、近年は家庭と仕事の両立を目指す男性からの応募も多い。

   当社では、トマトの生産から販売まで、ワンストップで行っている。当初は、夫とパート社員1人の家族経営だったが、人材育成に力を入れてきた結果、今では、正社員7名、パート社員10名の規模になった。 

   人材確保について、「販売」と「人材募集」は同じ法則ではないかと気付いてからは、スムーズにいくようになった。自分を知り、相手を知り、マッチングする、この3つのステップで雇用者と働き手がwin-winの関係を築き、相手のニーズに合った働き方を柔軟に提案している。

   地域の農家から相談を受けた際に、全く情報を発信してないのにも関わらず、応募がないと嘆くケースが見受けられる。今では、応募側もインターネットを使って、労働環境をしっかりと調べた上で応募する。雇用者が、法人で働いている人の情報や仕事内容など、必要とする情報を、SNSを活用しながら、発信していく必要がある。

   マッチングの成功事例を紹介する。応募のあったある女性のニーズは、子供が預けられる数日だけ働きたい、急な休みにも対応してほしいということだった。1人だけ雇用する場合では、女性側のニーズを満たすことは難しかったが、同じようなニーズのある3人を同時に雇用することで、双方のニーズを満たし、パート雇用につながった。その後、子育てが一段落した段階で正社員へ登用することができ、継続的な雇用につなげることができた。

   長期雇用につなげるためのポイントは、5つあると考える。

   1つ目は、農業のネガティブなイメージを払拭すること。親世代以上は、農業にネガティブなイメージを持っていることが多く、就職に当たって家族の理解を得られないことがあるため、職場に家族見学を受け入れるなど、家族を巻き込んだ採用を行っている。

   2つ目は、役割分担を明確化すること。作業内容を文書化し、パート社員を含めて仕事の内容を明確化し、全員が働きやすい環境を作っている。

   3つ目は、仕事を「自分ごと」として捉えさせること。正社員1人に専属でパート社員を付けてチーム制で仕事を行わせることで、主体的に考えて仕事をする環境を作っている。

   4つ目は、マニュアルの整備。月に数回しか出勤できないパート社員の中には、仕事を覚えられないから辞めていくケースが多かった。分からないことを聞かなければいけないということをなくすようにしている。

   最後に、給与面以外で「評価」を伝えること。何を評価されているのかを給与明細にメッセージを付けて伝えるようにしている。

   まとめとして、何点か提案したい。

   農業を仕事にしたい若者は多くいる印象を受けるが、どこで仕事を探したらよいのか分からないという声が多数ある。弊社の場合、農業特化型求人サイトよりも、身近な求人サイトの方が、応募数が多い傾向にあり、採用率も高い。雇用する側が、就農希望者のニーズを捉え、それに合わせた情報発信をすることで、マッチングできる案件は多いのではないかと考える。

   潜在的に農業に興味がある若者が多いと仮定すると、雇用する側の成長が急務。具体的な成功例を、農業界全体でシェアできると良いと考える。

   農業を仕事の1つと捉えて応募してくる者が多くなっている。異業種から就農したときのギャップ、違和感をいかになくせるか。職場環境の整備や雇用条件など、雇用する側がきちんと整備することが必要。

   「農業」という分野に甘えない、雇用する側の意識改革が必要だと考える。


(村田翔一氏)
   2018年に就農、2019年1月にロックファーム京都株式会社を設立。九条ネギの周年栽培と自社ブランドである「京都舞コーン」を生産。また、2019年7月には、九条ネギの販売を行う、「京葱SAMURAI」株式会社を設立、また、今年度、農福連携を支援する事業所を設立。企業理念は「従来の農業にとらわれない豊かな発想でお客様を震撼させる新しい価値を提供する」。

   起業して3年間で9名を雇用(20代4名、30代3名、40代1名、60代1名)、全員が農業未経験で他業種からのエントリーで、2名(20代1人、30代1人)が独立した。当社では、HP上で法人を立ち上げた際のストーリーや企業理念を発信しており、「かっこいい農業」、「ワクワクを創造する」という理念に惹かれてエントリーしてくる若者が多い。

   採用後の定着率は100%。採用に当たっては、就農に対する本気度を見るため、複数回に亘って面接を実施し、一週間の就農体験を行っている。医療メーカーや営業職の経験のある者など多様な人材を確保できており、今後、独立する社員とともにホールディングス化を目指している。

   情報を発信し続けていることで、地域の方から声をかけられる機会も増えてきており、地域における目に見える信頼が仕事のモチベーションにつながると感じている。

   職場環境については、子供を連れて出勤できる体制もできており、農業ならではの働きやすい環境を整備している。

   新規就農者を増やしていくための課題と行政に求める支援については、3つ。

   1つ目は、農地の集約と情報提供の強化。京都では、なかなか農地が見つからず、新規参入や事業拡大が困難。農地の集約や農業に関心はあるが、具体的にはよく分かってない若者に対し、情報を発信していく必要があると考える。また、移住者や新規参入者が地域にうまく馴染めるような支援があれば、新規就農者は増えていくと考える。

   2つ目は、新規就農者の初期費用に対する踏み込んだ支援。また、時代とともに農業の形も変化しているため、生産して販売するだけではなく、ブランド化や販路の拡大などへの支援も充実していただければありがたい。

   3つ目は、地域が主体となったスタートアップ研修の充実。都道府県単位で、経営塾などの研修が行われているが、栽培技術だけではなく、経営や販路の確保などについての研修、他業種の優れた取組をしている経営者からの情報提供などがあれば良いと考える。


(丸田洋氏)
   有限会社穂海農耕は、新潟県上越市板倉区で事業を営んでいる。同区は、中山間地域に属し、耕地面積が約1,000ha、雪深い大穀倉地帯である。有限会社穂海農耕で水稲の栽培を行い、株式会社穂海が販売を行っている。

   水稲10品種を栽培、基本的には業務用米として外食企業などとのBtoB取引を行っている。年間の販売量は、1,500tから2,000t。農業者の高齢化によるリタイア等もあり、経営面積は、右肩上がりに拡大し続けており、令和3年には約170haとなった。また、経営面積の拡大に合わせて、従業員数も増えており、現時点で20名雇用している。

   当社の働き方の特徴は、農業なのにサラリーマンのように働けること、農閑期に自己研鑽休職制度を設定していること。また、就業規則や賃金規定、育児・介護休業規定などの労務管理も整備している。

   採用に当たっては、首都圏や県内の就農イベントでの出展やインターネットを活用するなど幅広く募集している。現在の従業員は、北は北海道から南は宮崎まで、様々な地域から採用している。若者のエントリーが多く、当社で働く従業員全員が農業未経験者、平均年齢は30歳である。

   若者の力を十分に発揮できる職場づくりの一環として、生産現場でのICTの活用を進めている。職員にはスマートフォンを配布し、アプリを用いた栽培管理や情報共有、ICカードによる勤怠管理などを行っている。また、将来のキャリアアップの目標を立てるための研修制度を整備。資格取得費も会社負担としている。外部講師を招いての研修会も、定期的に開催している。雇用就農者の不安を軽減させるための取組として、メンター制度を導入している。

   求める人物像は、「明るく挨拶ができる人」、「仕事を前向きに考えられる人」、「業務改善ができる人」。農作業をメインに行う一般作業者と管理をメインに行う総合管理職に分け、採用を行っている。

   雇用就農に若者の関心を向けていくためには、(1)求める人材を明確にした採用と(2)受入れ体制の整備が必要。農業現場では、運営・管理と農作業を主に行う2種類の人材が必要であり、それぞれを分けたアプローチが必要であると考える。

   受入れ体制の整備として、採用活動を社労士などの専門家に依頼するだけではなく、雇用側が「自分ごと」として捉え、各農場の「想い」、「ルール」などを反映した採用活動を行うことが重要。

   採用活動の重要性とコストをかける必要性を意識するなど、雇用者側の意識改革が必要である。


(田中進氏)
   2004年に、山梨県中央市で、株式会社サラダボウルを創業した。

   現在、グループ会社と一体となり、全国7か所にある農場で、次世代施設園芸を行っている。弊社が、50%以上出資し、地元の農業者と協力しながら農場を運営しているため、どのようにマネジメントをするのかが課題であった。

   本日は、組織が成長していく中で、必ず発生する課題があり、それに対して、弊社がどのように対応してきたかをお話したい。

   採用においては、弊社に合う人材かを客観的に評価することを重点に置きながら、他産業と同じ採用フローを確立し、精度の高い採用につなげた。人事制度においては、それぞれの職種・職位の役割を明文化した。

   全国の農場が増え、経営層の人数も増えてきたことから、人財専門の部署を立ち上げた。人財のスペシャリストを社外取締役に登用し、採用・人事のみならず、ハラスメント防止やメンタルヘルスケアも行っている。社員の育成においては、様々な研修を整備した。

   権限委譲も大きなテーマになる。業務フロー、レポートラインを明確にしながら、権限の委譲を行ってきた。

   さらなる採用を強化するため、採用のパイプラインを構築し、様々な利害関係者と連携しながら採用活動を行うようになった。採用管理も大事になっていくため、クラウドサービスを導入し、適切な採用管理を行っている。

   社員が増えてくる中で、創業期のビジョンやミッションの見直しも行った。その際には、社内ワークショップで社員に考えを聞きながら、丁寧に進めた。

   アシスタントマネージャーや事業所長の育成も進めている。栽培管理の責任者を育成するには、他の職種と比べて、時間を要するため、体系的かつ様々な研修を行っている。また、独自の遠隔育成システムを活用し、兵庫の農場にいる職員が、山梨の農場にいるベテランの職員から指導を受けられるようになっている。

   また、オーブンでフェアな評価制度を導入するために、数値目標と行動目標を明確にし、1.5ケ月ごとの進捗の面談、3ケ月ごとの評価と目標設定の面談を行っている。

   様々な課題に取り組んできたおかげで、弊社で働きたいと思ってもらえるようになってきた。弊社の直近の離職率(入社3年後)は、13%である。10人に1人は、家庭の事業で辞める人が出てしまうが、昔に比べると少なくなったと感じる。農業が成長産業となっていくよう、農業界を牽引していってくれるような、よりよい人材が入ってきていると感じている。


〇意見交換

 (光吉経営局長)
  全国的にみると、定着率が低いことが課題。辞められる方は、どういった理由で辞められるのか、それに対して政策面でどうアプローチしたらよいか、お考えを聞きたい。

(三浦綾佳氏)
   採用する時点で、雇用する側と応募する側のミスマッチを1つでも減らすべきと考える。
   例えば、事前に、稼ぎたい金額や就業時間についてすり合わせるなど、双方が納得できるようにすることが必要。

(村田翔一氏)
   雇用する側が、働く環境をきちんと整備していないことが、1番大きな理由だと考える。

(丸田洋氏)
   雇用就農後に離農してしまうパターンは、2つあると思っている。
   1つ目は、農業をやってみたら、イメージと違っていたということ。
   2つ目は、自己評価と会社の評価との乖離が大きいこと。
   これらの対応として、弊社では、インターンシップの実施、オープンでフェアな評価のために、面談を行い、自己評価と会社の評価との乖離が小さくなるよう努めている。
 

(田中進氏)
   基本的には、まだ辞める人が多い業界だと思う。

   辞める人が、少なくなるためには、労働者の心と体が健康で、社会的にも認められている状態にある「well-being」が大事だと思う。自分のやっていることが認められ、周りから必要とされるような状態であれば、辞める人が少なくなる。周囲からの承認が不足していると、やる気が続かず、3年ぐらいで辞めてしまうのではないか。


(宮内副大臣)
   丸田さんと田中さんに、4点お聞きしたい。
   1点目は、法人を設立する際に、農地をどのように確保したか。
   2点目は、地域住民とどのように関係を構築したか。
   3点目は、従業員の給料は、どのような基準をもって決めているのか。
   4点目は、起業する際に、なぜ農業界を選んだのか。

(丸田洋氏)
   地域の人たちから、農地は穂海に任せたいと思ってもらえるような環境作りを行っている。そのために、地域の人に必ず挨拶をする、また、田んぼに草を生やさない、泥を道路に落としたらきれいにする、といった当たり前のことをすることで、地域の人たちから信頼を得られるようにしている。

   地域の方との関係性については、よそ者だからこそ、信頼関係をしっかり築く必要があると考える。弊社の圃場は、30有余の集落にまたがっているため、全ての集落の行事や飲み会に参加するのは不可能。その代わりとして、毎年、春に町内会長のところに挨拶に伺ったり、年4回、弊社の取組を紹介する「穂海農耕便り」を配布するなど、地域の方に理解をいただけるように努めている。

   給与については、地元の市役所と同じ水準にしている。現時点では過剰な人員であり経営的には大変厳しい。しかしながら、これから経営拡大をしていくために必要な仕組みの構築のためには、人員に余裕がなければ仕組みづくりをすることが不可能であり、将来を見据えた投資と捉えている。将来的には、基盤整備が行われ、スマート農業などに取り組むこと等で、1人当たりの経営面積を増やし、効率化し、利益を増やすことができると考えている。
 

(田中氏)
   弊社は、農地を一定のところに集約し、そこにハウスなどを建てているため、地権者、地域の方、行政の理解が必要。弊社が、地域の方に必要とされなければならない。週休2日制、年2回のボーナスと長期休暇という条件で働いているところを地域の方に見てもらうことで、地域の方からの期待も大きくなる。

   農業は地域におけるハブ的存在。地権者、地域の方、行政との連携も行っている。また、兵庫県の農場では、地元のJAと連携している。

   給与の待遇は本当に良くなったと感じる。新卒では、月約22万円の給与体系であり、他産業と変わらない給与体系となっている。また、現在、1年間で、自動的に6%昇給できるようにしている。しかし、他産業と比べて、選んでもらえないのが現状。

   なぜ「農業分野」での起業を選んだのかということについては、当初から、農業の新しい形を作りたいという想いがあったから。農業が経済の一角を担うようになることが目標。 


(葉梨副大臣)
   法人化が進んでおり、雇用就農の間口も大きくなっているが、定着しないという課題がある。一方で、家族経営で儲かっているのに承継がうまくいかない例も多いが、どんな理由が考えられるか。農業を辞めずに続けられるためには、何が必要かアドバイスいただきたい。
 

(三浦綾佳氏)
   やはり、仕事とプライベートを両立させる働き方ができることが重要であると考える。
 

(村田翔一氏)
   販路を確保することで、安心して農業ができるようになるのではないか。
   また、家族経営は、限られた範囲での人間関係になることから、人と人とのつながりが広がらないこともある。
 

(丸田洋氏)
   家族経営が、継承されない要因は2つあると思っている。
   1つ目は、家族間の関係性がフラットになってきていることもあり、今の若者たちは自由度が高く、外に出てしまう傾向がある。
   2つ目は、農業においても、企業的な経営を行っているところでも親子継承はある。そういうところは新たな取り組みを行っている。楽しい姿を見せることが、継承につながると考える。継承されていないところはそのような取り組みが出来ていないのではないか。
 

(田中進氏)
   職業の選択肢が広がって自由度が高くなっているため、農業という世界に人がこないのも、そういう時代なのかと感じることもある。また、これまでの指摘以外であえて言えば、農業独特の窮屈さがあるのではないか。価値観、社会通念の変化への対応が農業にも求められると思う。
   自分が自由にやりたい事を行うことで伴うリスクを背負いたくないと思うのではないか。このため、農業をやりたい人も、まずは雇用就農でという人もいる。


〇葉梨副大臣挨拶 

(葉梨副大臣)
   皆様から、大変興味深い話を聞かせていただいた。現在、農業現場では、家族経営、法人経営にかかわらず多くの問題を抱えているところだが、これまで、4回に亘って、出席者の皆様から先進的な取組をお聞きすることができ、大変心強く感じた。

   計4回の検討会において、皆様からいただいた御意見を踏まえて、新規就農者を増やし、定着させていくため、必要な施策を検討していく。

   本日は、御多用の中、御対応いただき、感謝申し上げる。

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