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農林水産省

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第4節 地域の食文化の魅力を再発見する取組


四季折々の食材に恵まれた日本は、長い年月をかけて地域の伝統的な行事や作法と結び付いた食文化を形成してきました。

一方で、食生活の多様化に伴い、地域の郷土料理や伝統料理等の食文化が次世代に十分に継承されない傾向も見られることから、地域の食文化を継承していくためには、伝統的な郷土料理や食文化を支えてきた地域の食材等の特徴を理解し、伝えていくことが大切です。

家庭での継承が難しくなっている近年の状況を踏まえ、地域において、市町村や民間団体、農協、生協等が、子供たちや子育て世代を始めとする地域の消費者を対象に、郷土料理づくり教室の開催や大豆の種まきから行う味噌づくり、食品工場見学等を実施し、地域の食文化や地場産物等への関心を高める取組を行っています。

そのほか、地域の伝統野菜や米等の植付けから収穫までの一連の農作業体験を通じて農作業の楽しさや苦労等を学ぶことにより、地域の食や食文化への理解が深まることから、このような農業体験の機会の提供が全国で行われています。

農林水産省では、令和元(2019)年度、これら全国各地で行われている郷土料理や伝統野菜を始めとする伝統的食材等の魅力の再発見につながる取組を、地方公共団体、農林漁業者、食品関連事業者等が連携し、継続して実施できるよう支援しました。

事例:食文化を大切に継承する「つなげよう宇和島(うわじま)の味」

宇和島市(うわじまし)(愛媛県)

郷土料理研究会の講演

郷土料理研究会の講演

宇和島市(うわじまし)では、郷土料理をつくる家庭が少なくなり、郷土料理の伝承が課題となっていることから、第2次宇和島市(うわじまし)食育プランにおいて「食を大切にし、健康で心豊かに生きる力を育む」を基本理念に、「食文化を大切に継承する」ための食育活動を推進しています。

宇和島市(うわじまし)の地場産物を使った郷土料理を楽しむ家庭を増やすことや、伝承できる人材を育成することを目的に「宇和島市(うわじまし)食生活改善推進協議会」と連携して、幅広い世代を対象とした事業を実施しています。

平成30(2018)年度に開催した一般市民向けの郷土料理研究会「つなげよう宇和島(うわじま)の味」の講演には市民92人が参加しました。たくさんのメッセージが込められている郷土料理について学ぶとともに、宇和島(うわじま)の郷土料理「ふくめん(*1)」の試食や鉢盛(はちもり)料理の展示、さらには作成した郷土料理レシピ集を通じて、宇和島(うわじま)の食文化について改めて考える機会となりました。

中学生による郷土料理「ふくめん」の調理実習

中学生による郷土料理「ふくめん」の調理実習

また、大人を対象とした「郷土料理講習会」に加えて、小中高校生を対象とした「郷土料理出前講座」も実施しています。宇和島(うわじま)の郷土料理「ふくめん」や「宇和島(うわじま)鯛めし(*2)」などの紹介と調理実習を通じて、「おもてなし」の心から生まれ、創意工夫された料理をこれからも継承していくことの大切さを実感する機会となっており、多くの学校から実施の希望が寄せられています。

幼児健診会場での展示

幼児健診会場での展示

さらに、郷土料理への興味や関心が低い若い世代への働きかけとして、幼児健診に訪れた保護者を対象に、郷土料理パンフレットの配布やパネル展示を行い、郷土料理に興味を持ってもらうきっかけづくりとしました。

宇和島(うわじま)の郷土料理は、代表的な農水産物である「鯛」や「みかん」などを余すことなく利用しており、食文化継承のための取組が、魚食の普及や地産地消にも効果があるものと期待されることから、今後も、幅広い年代に向けた取組を継続していくこととしています。

*1 細切りにしたこんにゃくを白身魚で作った紅白のそぼろとねぎ、みかんの皮のみじん切りで彩り豊かにおおった料理。宇和島(うわじま)ならではのお祝いの席に欠かせない一品。

*2 炊き込みの鯛めしとは違う宇和島(うわじま)ならではの食べ方で、鯛の刺身と特製のたれ、生卵、薬味(ねぎやみかんの皮など)をごはんにかけて混ぜ合わせて食べるもの。

事例:地域の食文化の継承(第34回国民文化祭・にいがた2019)

文化庁では、都道府県等と共催で、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業などの施策と有機的に連携しつつ、地域の文化資源等の特色を生かした文化の祭典として、「国民文化祭」を昭和61(1986)年から毎年開催しています。

令和元(2019)年9月15日から11月30日までの77日間にわたり開催された「第34回国民文化祭・にいがた2019」では、新潟県南部の「妙高(みょうこう)・上越(じょうえつ)エリア」において、「発酵文化の礎を築いた先人たち」をテーマとして、地域の先人の偉業や歴史について振り返るイベントを開催するとともに、新潟県内の各小・中学校において、地場産の食材や郷土料理を取り入れた「和食給食」を実施するなど、和食のすばらしさを子供たちに伝えました。また、東京では、「国民文化祭・にいがた2019」のプレイベントとして、同年8月に、農林水産省の協力の下、次世代を担う子供や子育て世代に対し、新潟の食文化を発信するイベント「子供に伝えたい食文化~和ごはんってなあに?~」を開催しました。

(新潟)

○「発酵文化の礎を築いた先人たち」をテーマに、9月から11月に新潟県上越市(じょうえつし)、糸魚川市(いといがわし)、妙高市(みょうこうし)で、発酵の歴史を学びながら、郷土の発酵食品を使用した料理を味わい語らう「発酵リレートーク」、えちごトキめき鉄道の貸切列車を利用し、発酵文化を堪能する「発酵列車」といったイベントが実施され、発酵を中心とした地域の食文化を再認識する契機となりました。

○「和食」をテーマに、地元生産者の協力の下、栄養教諭や学校栄養職員が中心となって「和食給食」を実施するなど、各学校で和食文化を次世代に継承する取組を実施しました。

(東京)

○新潟の食文化の魅力を通して、新潟で開催する国民文化祭への関心を高める親子向けイベント「子供に伝えたい食文化~和ごはんってなあに?~」を8月に渋谷区(しぶやく)で開催し、約60組の参加がありました。当日は、新潟の食文化を象徴する「お米」をテーマとした講演や、忙しくても身近な材料で手軽に調理できる「和ごはん」レシピの実演、クイズ形式で新潟の食文化や名産品を紹介するコーナーが設けられ、子供たちが楽しく学ぶ機会となりました。

「和食給食」の例

「和食給食」の例

「和ごはんってなあに?夏休み子供相談室」

「和ごはんってなあに?夏休み子供相談室」

事例:郷土料理「吉田(よしだ)のうどん」の後継者に
(第3回食育活動表彰 農林水産大臣賞受賞)

山梨県立ひばりが丘高等学校うどん部

「吉田(よしだ)のうどん」は、山梨県富士吉田市(ふじよしだし)を含む郡内(ぐんない)地方で食べられてきたもので、硬い麺、馬肉、キャベツ等を使用したトッピング、味噌と醤油をあわせたつゆが特徴です。山梨県立ひばりが丘高等学校では平成22(2010)年、この郷土料理「吉田(よしだ)のうどん」を広めようと、授業の一環としてホームページを作成するなどの活動を始めました。平成26(2014)年からは、更なる発展をめざし、うどん部としてその活動の場を広げています。

フリーペーパー「うどんなび」

フリーペーパー「うどんなび」

スーパーマーケット内で「吉田(よしだ)のうどん」開店

スーパーマーケット内で
「吉田(よしだ)のうどん」開店

うどん部の主な活動として、ホームページ、フリーペーパー、SNS等のツールを活用した積極的な情報発信を行っています。フリーペーパーは平成24(2012)年から毎年発行し、令和元(2019)年にはVol.8を発行しました。情報発信は、地元うどん店、地方公共団体、商工会、食品メーカー、市民等との連携で成り立っており、食育に関する県民運動の原動力ともなっています。また、情報発信のみでは食文化の継承につながりにくいと考え、平成28(2016)年からは、地域の小中学生や外国人留学生、一般の方を対象にした、うどん作り体験教室を開始し、好評を得ています。

さらに、ここ数年、原材料の高騰、後継者不足などによってうどん店が激減したことから、富士吉田市(ふじよしだし)の食文化を守るために自らが後継者になろうと、平成30(2018)年4月に高校生によるうどん店を開店しました。若年層が利用しやすいように、価格を低めに設定するとともに、ボリューム感が出るように工夫しています。また、来店者のアンケート結果を参考に、麺やつゆの改善、新商品の開発、店舗での対応の見直し等を行っています。

富士吉田市(ふじよしだし)「吉田(よしだ)のうどん観光大使」として県内外でのイベントで出展するほか、郷土食等に関する技術や知識を有し、積極的に継承活動に取り組む山梨県の「食の伝承マイスター」にも認証され、「吉田(よしだ)のうどん」の魅力を全国に発信しています。高校生自らが活動することによって、若い世代の食文化への理解が進むとともに、食に関わる人々への感謝の念を深めることにつながっています。

「吉田(よしだ)のうどん観光大使」としてイベントに参加

「吉田(よしだ)のうどん観光大使」
としてイベントに参加

「第14回食育推進全国大会inやまなし」にブース出展

「第14回食育推進全国大会inやまなし」にブース出展



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FAX番号:03-6744-1974

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