1 食育や日本食・食文化の海外展開と海外調査の推進
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指しています。政府は、平成28(2016)年5月に内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置しました。SDGs推進本部は、SDGs達成に向けた日本の中長期的戦略である「SDGs実施指針」や政府の施策のうち重点項目を整理した「SDGsアクションプラン」を定めています。令和3(2021)年12月に定められた「SDGsアクションプラン2022」の中で、食育の推進は、政府が進めていく取組の一つとして位置付けられており、SDGsの達成に寄与するものです。第4次基本計画においても、SDGsの考え方を踏まえ、食育を推進する必要があるとしています。
政府は、我が国の食育の理念や取組等を積極的に海外に発信し、「食育(Shokuiku)」という言葉が日本語のまま海外で理解され、通用することを目指しています。
外務省では、海外広報文化活動の中で食育関連トピックを取り上げています。具体的には、日本の食文化等も取り上げている海外向け日本事情発信誌「にぽにか」を在外公館を通じて配布しています。また、海外のテレビ局で放映され、在外公館でも上映や貸出しが行われている映像資料「ジャパン・ビデオ・トピックス」においても、日本の食文化や日本食等を紹介しています。
さらに、在外公館では、対日理解の促進、良好な対日感情の醸成を目的に、各国の要人、文化人、飲食・食品業界関係者、一般市民などに対して、日本の食文化の紹介や日本食の作り方のデモンストレーションをオンラインでの配信も利用しながら行うなどして、日本の食文化の魅力を発信する取組を行っています。
農林水産省では、従来実施している海外での日本食普及セミナーや日本料理講習会が新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかったことから、オンラインによる外国人日本料理コンテストや日本食の魅力を世界に発信するポータルサイトの活用(6言語対応)などにより、日本食・食文化の魅力発信に取り組みました。また、平成28(2016)年度に創設した海外の外国人料理人の日本料理に関する知識・調理技能を習得度合いに応じて認定する「日本料理の調理技能認定制度」の認定者は、令和3(2021)年度末時点で、令和2(2020)年度に比べて349人増加の2,068人になっています。
さらに、農林水産省の英語版ウェブサイトの「Promotion of Shokuiku(Food and Nutrition Education)」で、「食生活指針」、「食事バランスガイド」、「「食事バランスガイド」解説」、「日本型食生活のススメ」等の英訳版を掲載しています。また、「東京栄養サミット2021」の開催にあわせて、海外に向けて日本の食育を紹介するパンフレットを作成しました。そのほか、独立行政法人国際協力機構がオンラインで実施した研修プログラムにおいて、アフリカやアジアから参加した研修員に向けて、我が国の食育に関する取組を紹介しました。

Taste of Japan(農林水産省)
URL:https://tasteofjapan.maff.go.jp/jp/(外部リンク)

Promotion of Shokuiku(Food and Nutrition Education)
(農林水産省)
URL:https://www.maff.go.jp/e/policies/tech_res/shokuiku.html
コラム:東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会における日本の食文化の発信、ホストタウンでの食文化交流
東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)では選手村の食堂での飲食提供を通して、持続可能性の高い日本の食文化を世界に発信しました。
大会の基本方針では、地域性豊かな和食、その他の食文化の魅力を世界に発信することを定めました。日本の伝統的な食文化である「和食」を東京2020大会で提供することにより、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習や、「地域固有の様々な食文化の存在」、「健康的な食生活を支える栄養バランス」、「自然の美しさや季節の移ろいの表現」、「家庭・地域の絆の強化」という特徴を大会に参加する選手等にPRしました。
(選手村の食堂での食文化の発信、被災地産食品のPR)
東京2020大会の選手村などで提供する食材は、持続可能性に配慮した食材の調達基準、いわゆる「調達コード」が策定され、選手村の食堂ではこれらの基準を満たした47都道府県の食材を活用しました。結果として、選手村の食堂で使用された食材のうち、約60%が国産食材、約80%がいわゆるGAP認証といった持続可能性に配慮した調達基準を満たしたものとなりました。
日本食や国産食材を活用した食事の提供を行ったカジュアルダイニングでは、地方ブロックごとの食材を使った料理を被災地産・東京都産食材と併せて提供しました。また、産地の情報をモニターで発信するなど、大会史上初の産地表示が実施され、食事をした選手からは、SNS等で「食材が新鮮。」、「日本食が好きになった。」等の声が発信されました。
(ホストタウンにおける食文化交流)
東京2020大会の開催に伴い来訪する大会参加国・地域の人々と交流する「ホストタウン」でも、選手等が農業や茶道の体験をしたり、農業高校の生徒が作った食材等を使って調理科のある高校や大学、地元レストランなどが選手等のコンディショニングに配慮したおもてなし料理を提供したりといったことなども行われ、地元と相手国・地域双方の食文化を学ぶことにもつながりました。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下で直接の交流が制限される中では、ホストタウン同士がおもてなし料理の情報を交換する会を、大使館職員等も参加してオンラインで開催するなど、食文化交流を推進する取組も行われました。
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