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農林水産省

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肥料・土壌改良資材・培土の暫定許容値設定に関するQ&A

更新日:令和5年3月23日
担当:消費・安全局農産安全管理課

 

農林水産省は、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえて「肥料・土壌改良資材・培土の暫定許容値設定に関するQ&A」を作成しました。

このQ&Aは、現場からの質問や今後の検討に合わせて、随時更新します。

肥料・土壌改良資材・培土の暫定許容値設定に関するQ&A

肥料・土壌改良資材・培土に関する基礎知識

 

肥料について

肥料は、植物を育てる際に不足しがちな栄養成分や、花・果実など特に発達させたい部分に必要な栄養成分を、植物に吸収されやすいようにして、土に施用したり、葉に散布したりするものです。
そのため、肥料は以下の条件を満たす必要があります。
(1)植物の成長、開花、結実などに効果があること

(2)植物に害を与えないこと

(3)その肥料を用いて栽培された作物が摂取する人や家畜の健康に悪影響を与えないこと

肥料には窒素、リン、カリウムのような植物の主要栄養成分やその他の微量栄養成分が含まれていますが、肥料の種類によっては重金属(カドミウム、水銀等)などの有害成分が含まれていることもあります。
したがって、肥料製品は、その銘柄ごとに有効性や安全性を評価し、有効かつ安全であるもののみ生産・販売を許可しています。

土壌改良資材とは

植物を育てる土壌の物理的、化学的、生物的性質を改善するために土に施用されるものです。主に土壌の透水性、保水性、保肥力の改善や団粒形成の促進を目的としています。バーク堆肥、木炭、ゼオライトやパーライトのほか、有機質物や無機質物の多様な製品があります。

培土とは

土に肥料や土壌改良資材等を加えることにより、植物が生育しやすい状態に整えた土のことです。今回の通知では、主として農業用の稲や、野菜の育苗のために使用されるものを対象としています。

自給肥料とは

農家が自らの農地に施用するために農家自身で生産する肥料のことです。地域内の動植物性の有機質を使用した落ち葉堆肥、稲わら堆肥、農作物残さや牛ふん堆肥等があります。

 Q&A

Q1:なぜ、肥料・土壌改良資材・培土に基準をつくったのですか。

A1. 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って、放射性物質が原子炉から大気中に放出されたため、家畜排せつ物、稲わら、落ち葉、樹皮等が放射性セシウムに汚染され、これらを原料として生産された堆肥が高濃度の放射性セシウムを含有する可能性があります。

普通肥料の中にも堆肥原料を混入したものがあり、肥料としてではなく土壌改良資材として農地土壌に施用されるものもあります。それらの中にも高濃度の放射性セシウムを含有する可能性のあるものがあります。

もし、高濃度の放射性セシウムを含む堆肥等を農地土壌に施用すると、土壌中の放射性セシウム濃度が増加し、そこで生産される農作物の放射性セシウム濃度が食品衛生法の基準値を超える可能性が増えます。

また、個々の農家ごとに放射性セシウム濃度が大きく異なる堆肥等を施用すれば、同一地域内に放射性セシウム濃度の大きく異なるほ場が存在することになり、地域を単位として実施している野菜等の出荷制限や作付け制限の前提が崩れかねません。

そこで、農地土壌の汚染の拡大を防ぎ、食品衛生法上問題のない農産物を生産するため、肥料・土壌改良資材・培土に基準をつくりました。

Q2:農地が汚染されないよう、何に気をつければよいのですか。

A2. 汚染された堆肥などの肥料や土壌改良材を農地に施用すると、そこで育てた農産物が食品衛生法の基準値を超える放射性セシウムを含み、出荷・販売ができなくなる可能性があります。

そこで、個々の農家の皆様が、安全な農産物の生産のために、汚染された肥料等を使わないという意識を持って、基準に適合した肥料等のみを利用することが何より重要です。

また、肥料等の生産者や販売業者の方々も、汚染された肥料等を出荷・販売することで農家の方々に大きな影響を及ぼす可能性がないよう、出荷・販売する肥料等を適切に管理し、それらを基準に適合したものとすることが重要です。

Q3:耕種農家が堆肥を作る際には何に気をつければよいのですか。

 A3. 堆肥を作る際には、放射性物質に汚染された原料を使用しないよう気をつけてください。具体的には、原発事故後に屋外に野積みされていた等、高濃度の放射性セシウムに汚染されやすい状況に置かれていた稲わら、麦わら、牧草(一番草)、もみがら、樹皮(バーク)、剪定枝、落ち葉や雑草等は、堆肥の原料として使用しないようにしてください。

Q4:畜産農家が堆肥を作る際には何に気をつければよいのですか。

A4. 堆肥を作る際には、放射性物質に汚染された原料を使用しないよう気をつけてください。具体的には、(1)高濃度の放射性セシウムを含む稲わらや牧草などを牛に給与しない、(2)牛のふん尿については、適切に堆肥舎に保管する、稲わらについては、屋外に放置せず、屋内に保管したり、シートを被せたりするなど放射性物質の影響を受けないようにする、(3)稲わら等を購入するときは、暫定許容値を下回っていることを購入先に問い合わせて確認する、(4)放射性物質が降り積もったと考えられるわら、牧草、もみがら等は副資材として使用しない(Q3参照)等に気をつけてください。

なお、高濃度の放射性セシウムを含む稲わらを給与したことが明らかな場合は、その牛のふん尿は堆肥舎には入れず、分けておくことも重要です。

<飼料中の放射性セシウムの暫定許容値>

牛の飼料  1キログラムあたり 100ベクレル

Q5:なぜ、肥料・土壌改良資材・培土として利用できる放射性セシウム濃度を400ベクレル/kg以下としたのですか。

 A5. シミュレーションによれば、肥料等の放射性セシウム濃度が400 ベクレル/kg以下であれば、たとえ同濃度の肥料等を40年程度施用し続けても、過去の農地土壌中の放射性セシウム濃度の範囲内である100ベクレル/kg(事故前の最大値140ベクレル/kgを切り下げた値)を超えることがないからです。

つまり、施用される肥料等が400ベクレル/kgという基準を満たせば、その肥料等を長期施用し続けても、土壌中の放射性セシウム濃度を、過去の農地土壌の放射性セシウム濃度の範囲内に収めることができます。

また、基準の設定に当たっては、肥料等を農地に散布する作業者の安全についても検討しており、今回設定した基準は原子力安全委員会が示している外部被ばくの基準(10マイクロシーベルト/年)を満たします。

核実験や他国での原発事故の影響等を調査するために、独立行政法人農業環境技術研究所が1959年から約50年間農地土壌での放射性セシウム濃度を測定した結果によると、東京電力福島第一原子力発電所の事故以前における全国の農地土壌の放射性セシウム濃度の平均は約20ベクレル/kg、最大値は約140ベクレル/kgでした。

今回、(1)非汚染農地土壌10アール(土壌量約150t)当たり放射性セシウムを含む肥料等を毎年2t施用、(2)放射性セシウムはすべて半減期の長い放射性セシウム137(半減期:約30年)であると仮定し、さらに土壌中及び肥料等の放射性セシウムは、自然減少しかしないとした場合の農地土壌の放射性セシウム濃度の変化を試算しました。

Q6:放射性ストロンチウムなど、放射性セシウム以外の放射性物質の基準は必要ないのですか。

 A6. 事故後の東京電力福島第一原子力発電所の周辺における放射性物質の測定結果(文部科学省)によれば、土壌中の放射性ストロンチウムの濃度は放射性セシウムと比べて相当低く(400分の1程度)、そのほとんどは原発事故以前の放射性ストロンチウム濃度の範囲に収まっています。

また、放射性セシウムの濃度を測定する場合、結果が出るまでに1日程度で済みますが、放射性ストロンチウムの場合は、測定結果が出るまでに長い時間(1ヶ月程度)が必要です。

したがって、放射性物質を含む肥料等の管理のため、実効性のある基準として、放射性セシウムを対象として設定しました。

今後、放射性ストロンチウムの濃度が高くなるようなことがあれば、その時点で基準が必要であるかどうか検討します。

Q7:通知の暫定許容値が適用される資材とは何ですか。

A7.  今回の暫定許容値は、国内で生産・流通・施用される全ての肥料・土壌改良資材・培土が対象です。

Q8:高濃度の放射性セシウムを含む可能性のある堆肥原料とは何ですか。

A8. 樹皮、落ち葉、剪定枝、雑草、稲わら等が高濃度の放射性物質に汚染されている可能性があります。また、平成22年に収集された稲わら、もみがら等であっても、原発事故後、覆いをせずに屋外で保管されていたものも汚染されている可能性があります。

また、汚染された稲わら、麦わら、牧草等を給与した家畜や動物の排せつ物も、放射性セシウムを高濃度に含む可能性があります。なお、通常、粗飼料ではなく配合飼料を給与されている豚や鶏のふん尿は、原発事故後に屋外に放置されていなければ、放射性セシウムを多く含む可能性は低いと考えられます。

Q9: 平成23年7月25日の通知で、生産、流通、施用が自粛の対象となっていた肥料やその原料、地域の扱いはどうなるのですか。

A9. 今後は、平成23年8月1日の局長通知及び平成23年8月5日の課長通知に基づき、肥料等の暫定許容値を下回ることを確認して、施用・出荷・流通等を行う必要があります。

自粛の対象地域となっていた牛ふん堆肥について、事業者には自ら検査を行っていただきますが、農業者が堆肥を生産している場合は、県が自ら作成した検査計画に従って、市町村ごとに3カ所抽出して検査し、暫定許容値(400ベクレル/kg)を超えないことを確認できた地域から施用等が可能となります。(ただし、腐葉土、剪定枝堆肥についてはロットが特定できないため、検査することはできません。Q27参照)

Q10:肥料等の暫定許容値の適用の例外措置とは何ですか。

A10. 下記の自給的な利用は、農地や草地、飼料畑等の放射性セシウム濃度を上昇させないことから、本利用法に限り本通知の肥料等の暫定許容値の適用対象外としました。

農地で生産された農産物の全部又は一部を当該農地に還元施用する場合

  • 畜産農家が粗飼料を自給生産する草地・飼料畑等において自らの畜産経営から生ずる家畜排せつ物又はそれを原料とする堆肥を還元施用する場合
  • 畜産農家に供給する飼料を生産している農家等が、当該飼料を生産する草地・飼料畑等において、当該飼料の供給先の畜産経営から生じる家畜排せつ物又はそれを原料とする堆肥を還元施用する場合

ただし、外部から持ち込まれた放射性物質を含む原料を用いて、自ら生産した肥料等を、自らの農地に施用する場合は、基準が適用される場合があります。基準が適用されるかどうか判断がつかない場合は、都道府県にご相談ください。

Q11:「畜産農家が飼料を自給生産する草地・飼料畑等において自らの畜産経営から生ずる家畜排せつ物又はそれを原料とする堆肥を還元施用する場合」とは、どのような場合か具体的に教えてください。

A11. 例外措置が適用されるには、堆肥の使用が農地の汚染の拡大につながらないことが必須条件です。
    以下に暫定許容値適用の例外になる場合とならない場合とを例示します。

 (暫定許容値適用の例外になる場合)

ア)自らの牧草地・飼料畑で収穫した飼料を給与した牛のふん尿から生産した堆肥を牧草地・飼料畑に還元施用する。

イ)畜産経営の中において、牧草地・飼料畑に加えて飼料を作付けした転換畑等に、自ら収穫した飼料を給与した牛のふん尿を含む堆肥を還元施用する。

(例外措置が適用されず、暫定許容値が適用される場合)

牛を経営する側ら果樹園を営んでいる農家が、自らの牧草地で収穫した粗飼料を給与した牛のふん尿から生産した堆肥を果樹園に施用する。

Q12:「畜産農家に供給する飼料を生産している農家等が、当該飼料を生産する草地・飼料畑等において、当該飼料の供給先の畜産経営から生じる家畜排せつ物又はそれを原料とする堆肥を還元施用する場合」とは、どのような場合か具体的に教えてください。

A12. 具体的には、牛に給与する飼料を、単一ないしは近隣の複数の市町村内で耕畜連携の枠組みの中で耕種農家が生産し、その飼料を畜産農家が利用することを想定しています。この場合には、畜産農家のふん尿由来の堆肥を耕種農家も含めて還元施用できます。

以下に暫定許容値適用の例外になる場合とならない場合とを例示します。

(暫定許容値適用の例外になる場合)

ア)耕畜連携の枠組みの中で、耕種農家が生産した飼料を給与した牛のふん尿を含む堆肥を、耕種農家の飼料生産圃場に還元施用する。

(例外措置が適用されず、暫定許容値が適用される場合)

畜産農家が自らの牧草地で生産した粗飼料を給与した牛のふん尿を含む堆肥を、耕種農家が野菜畑に施用する。

Q13:放射性セシウムの濃度が暫定許容値以下の肥料・土壌改良資材・培土等を施用した農地で栽培された作物を食べても大丈夫ですか。

A13. 暫定許容値(400ベクレル/kg)と同じ濃度の放射性セシウムが含まれる肥料等を土壌に施用したとすると、玄米中の放射性セシウム濃度は、食品衛生法の基準値(100 ベクレル/kg以下)より低い値になると計算されます。

試算の前提条件:

  • 耕作する土壌の深さを15 cm、(1)土壌の比重を1.0とすると、10 アールの土の量は150t、(2)土壌の比重を1.3とすると、10 アールの土の量は195t
  • 放射性セシウムの玄米への移行係数の幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根。データの数値範囲が広い場合の中央値を示す。)は0.012

(注)公表されている移行の指標0.1は、米の安全を確保するため、移行係数の上限値に近い数値を指定したもの

試算の式:((1)ベクレル/kg +(2)ベクレル/kg × 2 t ÷((3)t + 2t))×(4)

(1):農地土壌の放射性セシウム濃度(20ベクレル/kg)※

事故以前の全国の農地土壌の放射性セシウム濃度の平均

(2):肥料等の放射性セシウム濃度(400 ベクレル/kg)

(3):農地土壌の量(150 t又は195 t)

(4):放射性セシウムの玄米への移行の係数(指標)

(1)放射性セシウムの玄米への移行係数の幾何平均値(0.012)を用いた場合

 
施用前の農地土壌
の放射性セシウム濃度
肥料等の
の放射性セシウム濃度
玄米中
の放射性セシウム濃度
肥料由来の増加分
土壌の比重=1.0
(土壌量150t)
20
400
0.3
0.1
土壌の比重=1.3
(土壌量195t)
20
400
0.3
0.05

 

(2)放射性セシウムの玄米への移行の指標(0.1)を用いた場合

 
施用前の農地土壌
の放射性セシウム濃度
肥料等の
の放射性セシウム濃度
玄米中
の放射性セシウム濃度
肥料由来の増加分
土壌の比重=1.0
(土壌量150t)
20
400
3
0.5
土壌の比重=1.3
(土壌量195t)
20
400
2
0.4

 ※   (1)及び(2)における玄米中の放射性セシウムの濃度は、計算値です。厚労省の「緊急時における食品の放射農測定マニュアル」によると、セシウム137の分析目標レベル(定量下限)は、穀類の場合50ベクレル/kgとなっており、(1)及び(2)の数値は不検出となる濃度です。 

Q14:暫定許容値を超える肥料・土壌改良資材・培土はどうすればよいのでしょうか。

A14. 暫定許容値を超える肥料等を施用・生産又は流通させることはできません。

 8,000 Bq/kgを超えるものについては、申請により特定廃棄物に指定され、国が直接処分を行います。また、それ以外のものは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物として処分を行ってください。

環境省のHP内(http://shiteihaiki.env.go.jp/radiological_contaminated_waste/guidelines/)にガイドラインが掲載されていますので、ご参照下さい。

Q15:東京電力福島第一原子力発電所の事故以前の農地土壌の放射性物質セシウム濃度は何ベクレルですか。

A15. 東京電力福島第一原子力発電所事故の発生以前における全国の農地土壌の放射性セシウム濃度の範囲は、0.5ベクレル/kg~140ベクレル/kgです。

また、事故以前の全国の農地土壌の放射性セシウム濃度の平均は約20ベクレル/kgです。

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(旧農業環境技術研究所)のHP内(https://vgai.rad.naro.go.jp/vgai-agrip/crops)にデータが掲載されていますので、ご参照ください。

Q16:今後、暫定許容値の見直しは行わないのですか。

A16:基本的には今回の暫定許容値を変更する必要はないと考えていますが、今後、原発事故の推移や原発から放出される物質に変化がある場合には、必要に応じて暫定許容値を見直します。

Q17:暫定許容値が定められる前に販売店から購入した肥料等の取扱いをどうすればいいですか。

A17.   既に施用した肥料等については今般の通知の対象ではありませんが、    暫定許容値が定められる前に購入した肥料等については、購入された販売店や生産業者に問い合わせて、暫定許容値を下回るものであるかどうか確認してください。

なお、既に施用した肥料等が暫定許容値を下回ることが確認できない場合は都道府県にご相談ください。

Q18:今回、国内で生産される全ての肥料等に対する暫定許容値が設定されたことにより、自粛の対象とはなっていなかった肥料についても放射性セシウム濃度を測定する必要があるのですか。

A18. 暫定許容値は、堆肥のみならず、種類にかかわらず全ての肥料に適用されます。どのような飼料を給与したのかや、飼料中の放射性セシウム濃度、給与量、給与期間等の情報から、暫定許容値を超える可能性が高いと判断されれば、優先的に検査してください。

このため、原料や製品中の放射性物質の含有量の確認方法等に係る具体的な手順を自ら定め、製造・品質管理を適切かつ確実に行っている事業者が、「検査計画通知」(平成23年8月5日農産安全管理課長通知)に照らして、製品が暫定許容値400ベクレル/kgを十分に下回ることが確実と判断できる場合は、肥料等の製品検査は必要ではありません。

Q19:放射性セシウムの測定は全ての肥料について行わなければならないのですか。

A19. 使用される原料中の放射性セシウムの含有濃度が低く、密閉された施設内で、製造・品質管理に基づき製造される肥料等について、適切な管理が行われている場合は、検査は必要ありません。具体的にはQ21を参照ください。

Q20:事故以前に原料を収集し、倉庫等で保管していた肥料も放射性セシウムの測定が必要ですか。

A20. 事故以前に製造され、倉庫等で適切に保管していたものについては、原発事故による放射性物質の降下の影響を受けていないと考えられますので、測定の必要はありません。

また、事故以前に収集し、倉庫等で適切に保管していた原料のみを用いた堆肥であれば、同様に測定の必要はありません。

Q21:具体的にはどのような肥料であれば放射性セシウムの測定が必要ないのですか。

A21.  次のような肥料については適切な管理がなされていれば必ずしも検査が求められるものではありません。(「肥料中の放射性セシウム測定のための検査計画及び検査方法」の制定について)https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/hiryou/kennsa.html

(1)化学肥料

  • 化成肥料、普通肥料を配合した配合肥料、その他の化学肥料
  • 石灰質肥料、けい酸質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ほう素質肥料及び微量要素複合肥料

(2)動物の排せつ物

  • 300ベクレル/kg以下の飼料を給与した牛ふん
  • 豚ぷん、豚ぷん堆肥
  • 鶏ふん、鶏ふん堆肥

(3)動植物質有機質肥料

  • 蒸製骨粉や豚鶏の肉骨粉等の動物由来の有機質肥料
  • 魚粉などの魚に由来する有機質肥料
  • 輸入原料を用いた油かす
  • 平成22年以前の国産の原料を使用した米ぬか、米ぬか油かす、なたね油かす及び管理されている米ぬか
  • 汚染された稲わらを使用していない稲わら堆肥
  • 汚染されたもみがらを使用していないもみがら堆肥 

(4)輸入された化成肥料、有機質肥料

また、給与された飼料中の放射性セシウム濃度から確実に暫定許容値を超えるとわかっている牛ふん堆肥についても、検査する必要はありません。

Q22:ごく高濃度の放射性セシウムを含むと思われる堆肥を分析したいのですが、問題はありませんか。

A22.  NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータ等のガンマ線スペクトル検出器は、環境からの放射線の影響を強く受けるため、測定にあたっては、適切な遮蔽体(シールド)を用いて測定した上で、測定後、環境からくる放射線量を差し引いて、補正を行う必要があります。

つまり、検査機器が、環境由来の放射線量ができるだけ低く、ノイズが小さい場所に置かれていなければ、正確な測定ができないこととなります。

高濃度の放射性セシウムを含む堆肥が実験室内にあるだけで、適切な測定ができなくなる恐れがあるとともに、その堆肥が別の分析検体である堆肥を汚染したり、最悪の場合、検査機器を汚染し、検査が行えなくなる可能性があります。

使用可能な堆肥の有効利用や検査機器の台数が限られている中での効率的な検査のためにも、明らかに暫定許容値を超える堆肥については、検査をしないで、適切に処分していく必要があります。

Q23:これまで農産物等で食品衛生法の基準値を超える放射性セシウムが検出されていない地域等においても検査が必要ですか。

A23. 農産物等で食品衛生法の基準値を超える放射性セシウムが検出されていない地域であるかどうかにかかわらず、「肥料中の放射性セシウム測定のための検査計画及び検査方法」(平成23年8月5日付け農産安全管理課長通知)において、検査対象地域以外の地域で製造された肥料や当該地域で収集された原料で製造された肥料については検査することなく、生産・流通・施用が可能です。
      しかし、平成23年度以降に実施した検査の結果が肥料の暫定許容値を超え、その後の検査が行われていない地域や平成23年度以降に実施した牧草中の放射性セシウム濃度が300 Bq/kg を超えた地域では、食品衛生法の基準値を超えた農産物等が検出されていなくても検査が必要なので、特に注意が必要です。
      詳しくは、下記に記載します。

<検査対象地域>

a.牛ふん堆肥

岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県及び千葉県の計8 県

b.雑草堆肥・稲わら堆肥等(腐葉土、剪定枝堆肥は除く)(注)

空間放射線量率が平常時の範囲(小数点以下第2 位を四捨五入して0.1 μSv/h 以下となる範囲)を超えたことがある17 都県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県)

(注)汚染されていない稲わら、もみがらを使用した稲わら堆肥、もみがら堆肥を除く。

c.バーク堆肥

空間放射線量率が平常時の範囲(小数点以下第2 位を四捨五入して0.1 μSv/h 以下となる範囲)を超えたことがある17 都県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県)

d.腐葉土・剪定枝堆肥

空間放射線量率が平常時の範囲(小数点以下第2 位を四捨五入して0.1 μSv/h 以下となる範囲)を超えたことがある17 都県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県)

Q24:測定機器は何をもちいればよいのですか。どこで測定できるのですか。

A24.  放射性セシウム134及び137の合計量が測定可能なガンマ線スペクトル測定装置を用いてください。また測定を依頼する時には、このような機器を備えている分析機関または会社に測定を依頼してください。
 (例)

NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータ(セシウム134及び137の合計量を、それ以外の放射性核種と区別して定量できるものに限る。

LaBr3シンチレーションスペクトロメータ

×・GMサーベイメータ(ガイガーカウンター)

×・NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータ

 

なお、ゲルマニウム半導体検出器は、高精度に放射性セシウムを分析できる機器ですが、きわめて重く、高価である上、ランニングコストも高いので、使用可能な場合のみお使い下さい。

Q25:測定のためのマニュアルはあるのですか。どの程度の頻度で測定をすればいいのですか。

A25.  平成23年8月5日付け「「肥料中の放射性セシウム測定のための検査計画及び検査法」の制定について」で、検査対象肥料、サンプリング方法、サンプリング頻度及び分析法方法等について示しています。

Q26:肥料の全ロットを検査しなければならないのですか。

A26.  検査通知にあるとおり、牛ふん堆肥は検査対象製造所の複数のロットの中から1ロットを特定し、1検体をサンプリングすることを求めています。また、稲わらたい肥や雑草たい肥は、製造所にある複数のロットから5ロットを抽出し、各ロットから1検体ずつ検査します。(ただし、腐葉土、剪定枝堆肥についてはQ27参照)

Q27:腐葉土や剪定枝堆肥を生産・出荷(販売)するには、どのような検査をすればいいですか。

A27.  腐葉土や剪定枝堆肥は、原料となる落ち葉、剪定枝を収集した地域・時期、収集した地点や範囲、製品の製造方法が多種多様であり、原料の収集場所や収集方法、製品の製造方法によっては、暫定許容値400ベクレル/kgを超える恐れがあります。

このため、原料の収集方法から製品の生産・出荷までの工程を適切に管理する必要があります。まずは特殊肥料の届出先の都道府県肥料担当部局に相談してください。

Q28:汚染稲わらを給与された牛や300ベクレル/kg~5000ベクレル/kgの粗飼料を給与した畜産農家からの移動牛などのふん尿から製造される堆肥が、暫定許容値を超過しないよう、それぞれの牛のふん尿の放射性セシウム濃度を測るべきではないですか。

A28.  牛ふん堆肥の放射性セシウム濃度を測るのは、暫定許容値を下回る堆肥を使うことにより、農地土壌中の放射性セシウム濃度の増加や、その農地で生産される農作物の放射性セシウムによる汚染を防ぐためです。

高濃度の放射性セシウムを含む稲わらを牛に給与すると、放射性セシウムのほとんどはふん尿として排出されますが、わずかな量が体内に残ります。その後も給与しつづけると、体内への取込みと排出が平衡状態となり、給与された放射性セシウムとふん尿中に排泄される放射性セシウムとがほぼ等しくなります。

清浄な飼料に切り替えれば、牛の体内の放射性セシウムは徐々に排泄されていき、ふん尿中の濃度も時間を経るごとに減少していきます。

つまり、平衡状態にある牛に同じ飼料を与え続けた場合を除いて、牛のふん尿中の放射性セシウム濃度は、飼料中の放射性セシウム濃度の変化や給与量、給与期間の長さに応じて変化するため、ある一時点の牛のふん尿の放射性セシウム濃度を測っても、その牛のふん尿から生産される堆肥が肥料の暫定許容値を超えるかどうかの判断はできません。

また、堆肥は、数ヶ月分の牛のふん尿をまとめて製造されることが多く、さらに、牛舎内の牛のふん尿を混ぜて製造するため、たとえ放射性セシウム濃度の高いふん尿が一部混ざっていたとしても、その他の牛のふん尿で薄まり、製造される堆肥を暫定許容値以下になることが十分に考えられます。

したがって、それぞれの牛のふん尿中の放射性セシウム濃度を実際に測るのは、意味がありません。

なお、牛のふん尿中に放射性セシウムがどれだけ含まれるかは、飼料の放射性セシウム濃度、牛への給与量、給与期間がわかれば、計算で推定することができます。

Q29:現在、漁業副産物(カキ殻、魚粉、海藻など)を肥料に活用しているが、ALPS処理水が海洋放出された場合も肥料として問題ないですか。

A29.
ALPS処理水に係る消費者庁の見解によれば、「「ALPS処理水」については、トリチウムを含む放射性物質の規制基準値を大幅に下回るまで希釈して海洋放出されるので、水産物については、現在と同様、安全性が確保されることとなります」とされています。
なお、「食物連鎖との関連で、トリチウムが特定の生物に濃縮されることもありません」とされております。

したがって、従前から活用されている水産物の残渣等(漁業副産物)に由来する肥料の原料・製品についても、現在と同様の安全性が確保されるものと認識しております。

今後とも、情報収集を行い、科学的知見に基づく対応を進めてまいります。

東電福島第一原発におけるALPS処理水の海洋放出と日本の食品の安全性について(消費者庁HP)
https://www.caa.go.jp/about_us/minister/kono2_message_003/

お問合せ先

消費・安全局農産安全管理課

担当者:肥料企画班、肥料検査指導班
代表:03-3502-8111(内線4508)
ダイヤルイン:03-3502-5968