農林水産省の調査により、アクリルアミド濃度の低減が裏付けられた事例
背景
2002年に食品中にアクリルアミドが含まれることがわかって以降、世界各国で食品中のアクリルアミド低減に向けた研究が進められており、食品中のアクリルアミドの低減方法に関する論文や特許は数多く出されています。
ただし、アクリルアミドの生成経路である「アミノカルボニル反応(メイラード反応)」は食品の色や味、香りに大きく影響を与えるほか、食品の加熱は有害な微生物の殺菌や保存性の向上にも関係するため、アクリルアミドの低減方法の検討は食品の美味しさや品質に留意して行う必要があります。
一部の食品では、低減対策についての知見が蓄積し、食品関連事業者によるアクリルアミド低減に向けた取組が行われています。こうした取組により、諸外国そして我が国においても、一部の食品についてアクリルアミド濃度の低減が確認されています。
ここでは、農林水産省の調査によって、実際に食品中のアクリルアミド濃度が低減したことが裏付けられた、国内の事例をご紹介します。
アクリルアミド濃度が低減した事例
最新の調査結果と過去に実施した同様の調査結果を比べたとき、アクリルアミドの濃度分布が左に移動していれば、食品関連事業者の取組の結果、濃度が低くなったといえます(下図の低減技術の導入と汚染物質の濃度分布の関係参照)。このような解析を行うことで、食品中のアクリルアミド濃度が低減したかどうかが分かります。
ポテトスナック
平成18~19年度に調査した結果と平成29~30年度に調査した結果とを比較しました。
1. 調査方法
ポテトスナックの原料であるばれいしょは、長期間貯蔵することにより、アクリルアミド前駆体の一つである還元糖の濃度が高くなり、アクリルアミド濃度も高くなる可能性があります。そのため、5~7月と9~10月の2回に分けて調査を行いました。
<平成18~19年度>
平成18年9~10月、平成19年5~7月の2回に分けて、マーケットシェア等を参考にそれぞれ271点、270点の市販品を購入しました。
<平成29~30年度>
平成29年10月、平成30年6月の2回に分けて、全国6都市で20点ずつ市販品を購入しました。
2. アクリルアミド濃度の比較
調査結果及び調査試料の濃度別の分布は以下のとおりです。
平成29~30年度の調査では、平成18~19年度の調査と比べて、アクリルアミド濃度は有意に低く(U検定・有意水準5%)、平均値は5割程度に減少していました。
ただし、平成29~30年度と平成18~19年度で、サンプリング方法が異なる点に留意する必要があります。
- 調査結果
調査 年度 |
調査 点数 |
定量限界 (mg/kg) |
定量 |
最小値 (mg/kg) |
最大値 (mg/kg) |
平均値 (mg/kg) |
中央値 (mg/kg) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
H18-19 | 541 | 0.020 | 1 | <0.020 | 5.5 | 1.1 | 0.94 |
H29-30 | 240 | 0.004-0.03 | 8 | <0.03 | 2.3 | 0.53 | 0.46 |
- 調査試料におけるアクリルアミド濃度の分布
フライドポテト
平成19年度に調査した結果と平成29~30年度に調査した結果とを比較しました。
1. 調査方法
フライドポテトの原料であるばれいしょは、長期間貯蔵することにより、アクリルアミド前駆体の一つである還元糖の濃度が高くなり、アクリルアミド濃度も高くなる可能性があります。そのため、5~7月と9~11月の2回に分けて調査を行いました。
<平成19年度>
5~7月、9~11月の2回に分けて、マーケットシェア等を参考にそれぞれ93点、87点の市販品を購入しました。
<平成29~30年度>
平成29年10月、平成30年6月の2回に分けて、全国6都市で20点ずつ購入しました(※)。
※このうちハッシュドポテト9点を除く231点のデータを図表に示しました。
2. アクリルアミド濃度の比較
調査結果及び調査試料の濃度別の分布は以下のとおりです。
平成29~30年度の調査では、平成19年度の調査と比べて、アクリルアミド濃度は有意に低く(U検定・有意水準5%)、平均値は7割程度に減少していました。
ただし、平成29~30年度と平成19年度で、サンプリング方法が異なる点に留意する必要があります。
- 調査結果
調査 年度 |
調査 点数 |
定量限界 (mg/kg) |
定量 |
最小値 (mg/kg) |
最大値 (mg/kg) |
平均値 (mg/kg) |
中央値 (mg/kg) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
H19 | 180 | 0.020 | 0 | 0.091 | 1.5 | 0.41 | 0.38 |
H29-30 | 231 | 0.004-0.03 | 1 | <0.03 | 1.3 | 0.27 | 0.21 |
- 調査試料におけるアクリルアミド濃度の分布
今後の取組
農林水産省は、最新の含有実態を把握するため、食品中のアクリルアミドの含有実態調査を継続していきます。他の食品についても、食品関連事業者による低減措置の有効性が農林水産省の調査により裏付けられた場合は、随時こちらのウェブサイトに掲載していきます。
また、アクリルアミドが含まれる食品の中には、低減対策に関する知見が少ないものもあります。これらの食品は、アクリルアミドの生成メカニズムや低減対策に関する情報収集、低減に向けた研究を進めることが重要です。
農林水産省は、引き続き、食品事業者のアクリルアミド低減に向けた自主的な取組への支援やアクリルアミド低減に資する試験研究を実施していきます。
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課
担当者:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674
FAX:03-3597-0329