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農林水産省

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令和5年度(2023)⾷品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類等の含有実態調査の結果について

2024年12月25日公表


農林⽔産省は、令和5年度に、食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類等の含有実態を調査しました。その結果、我が国に流通する油脂類及び乳児用調製乳等中の濃度は製造事業者による低減対策の取組の進捗に伴い低減したことを確認しました。一方で、一部の食品では更なる低減が必要であると考えられました。農林水産省は、食品中のこれらの物質の低減に向けて、国内の関係事業者による自主的な努力を引き続き支援します。

調査の背景と目的

農林⽔産省は、3-MCPD脂肪酸エステル類(以下「3-MCPDE」といいます。)及びグリシドール脂肪酸エステル類(以下「GE」といいます)について、「農林⽔産省が優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質のリスト」及び「⾷品の安全性に関する有害化学物質のサーベイランス・モニタリング中期計画」(令和3年3⽉24⽇公表)の中で、「リスク管理措置を導入済みであり、当該措置の有効性の検証及び措置の見直しを実施」とし、令和3~7年度の期間内にサーベイランス(問題の程度や実態を知るための調査)を実施することとしています。

3-MCPDE及びGEについては、消費者(特に乳児)の健康保護の観点から、精製油脂や当該油脂を使用した乳児用調製乳中の濃度を低減する努力を継続することが国際的に推奨されています。農林水産省は、令和2年に、関係団体と連携して「食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類低減のための手引き」を策定しました。その後も、国内の関係事業者は、この手引き等を活用し、自主的に低減対策を進めています。また、EUやアジア地域等において油脂や乳児用調製乳中の3-MCPDEやGEの基準値の設定が進んでいます。これらの国や地域への輸出に際しては、輸出先国の基準値への適合が必須です。そこで、関係事業者による自主的な低減対策の効果を検証し、油脂類をはじめとする加工食品の安全性向上や輸出促進に向けた取組を支援するため、食用植物油脂、魚油、加工油脂等の油脂類及び乳児用調製乳等中の3-MCPDE及びGEについて、最新の含有実態を調査しました。

なお、今回の調査では関連物質である2-MCPD脂肪酸エステル類(以下「2-MCPDE」といいます。)も調査対象としました。2-MCPDEは、国際的なリスク評価機関から毒性や含有実態に関するデータの不足が指摘されています。国内でもこれまでに2-MCPDEの含有実態に関する調査実績がなかったことから調査しました。

調査対象食品

食用植物油脂:147点

マーガリン、ショートニング、ラード:計92点

魚油を主成分とする食品*1:30点

乳児用調製乳等*2:121点

 *1 精製⿂油を主成分とするソフトカプセルタイプの⾷品(いわゆる健康⾷品)が該当します。
 *2 乳児⽤調製乳、フォローアップミルク、特殊⽤途育児⽤粉乳が該当します。

試料採取方法

  • 食用植物油脂

国内で主に流通する油種のうち、過去の農林水産省の調査で3-MCPDEまたはGEが定量下限以上の濃度で含まれたもの、または、乳児用調製乳の原料として使用されるものを対象とし、各油種の供給量等を考慮し5点~40点ずつ採取しました。市販品は、⼩売店⼜はインターネット販売サイト等を通じて、令和5年10~11月の期間に購⼊しました。一部の食用植物油脂は、一般社団法人日本植物油協会を通じて入手しました。入手可能な銘柄数が少ないなどの理由により、同じ製品を複数点採取する必要が生じた場合は、ロットが異なるものを入手しました。

  • マーガリン、ショートニング、ラード

市販品を、小売店又はインターネット販売サイト等を通じて、マーガリン及びショートニングは令和4年9月~令和5年1月の期間に、ラードは令和5年10~12月の期間に購入しました。使用する原料油脂の差異が製品中の3-MCPDE等の濃度に及ぼす影響の有無を検証するため、一部の銘柄について、ロットが異なる製品を最大3点ずつ購入しました。

  • 魚油を主成分とする食品

市販品を、小売店又はインターネット販売サイト等を通じて、令和5年10~11月の期間に製品の重複がないように購入しました。

  • 乳児用調製乳等

市販品を、小売店又はインターネット販売サイト等を通じて、令和5年10~11月の期間に購入しました。各銘柄のロット間差も考慮した、3-MCPDE等の含有に関する傾向を把握するため、市販品1銘柄につき、ロットが異なる製品を最大5点ずつ購入しました。

調査対象物質及び分析法

3-MCPDE、2-MCPDE及びGEは、結合している脂肪酸の違いに応じた種類がありますが、調査の目的が食品中の3-MCPDE、2-MCPDE及びGEの総量の把握であるため、今回の調査では、結合している脂肪酸の種類ごとに区別しない分析法(間接分析法*)を⽤い、3-MCPDE、2-MCPDE及びGEのそれぞれの総量を測定しました。

 * 以下の分析法を用いました。分析法を改良または一部の手順を変更したため、単一試験室で妥当性を確認した後、分析を実施しました。

      • 食用植物油脂及び乳児用調製乳等:Dubois M., et. al., “Determination of 2- and 3-MCPD as well as 2- and 3-MCPD Esters and Glycidyl Esters (GE) in Infant and Adult/Pediatric Nutritional Formula by Gas Chromatography Coupled to Mass Spectrometry Method, First Action 2018.03”, Journal of AOAC International Vol. 102, No. 3, 903-914, 2019
      • マーガリン、ショートニング、ラード:基準油脂分析試験法2.4.14-2016  2-/3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル(間接分析-酵素法)
      • 魚油を主成分とする食品:基準油脂分析試験法 奨7-2017  魚油中の2-/3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル(間接分析-酵素法)

 なお、3-MCPDE, 2-MCPDE及びGEの分析には、これまでに油脂や乳児用調製乳を対象として複数の分析法が確立されています(詳細はこちらをご覧ください)。分析の目的に応じて、上記の分析法以外の分析法を用いることも可能です。

調査結果の概要

食品中の3-MCPDE濃度を表1に、2-MCPDE濃度を表2に、GE濃度を表3に示しました。

令和5年度調査では、食品中の3-MCPDEは約9割、2-MCPDE及びGEは約8割が定量下限以上の濃度でした。

過去の農林水産省の調査と比較して、3-MCPDEは食用植物油脂ではほぼ全ての油種において同程度または低い傾向でした。マーガリン及び乳児用調製乳等は低減しており、ショートニング、ラード及び魚油を主成分とする食品では概ね同程度でした。GEは食用植物油脂では全ての油種において同程度または低い傾向でした。ラード、魚油を主成分とする食品、乳児用調製乳等では低減しており、マーガリン及びショートニングは概ね同程度でした。

食品中の3-MCPDE及びGE濃度は、製造事業者による低減の取組の進捗に伴い低減したことが確認されました。一方、一部の食品については、やや高い濃度で3-MCPDEやGEを含んでおり、更なる低減に取組む必要があると考えられるものもありました。

表1 食品中の3-MCPDE(遊離した3-MCPD)濃度の概要(単位:mg/kg 食品中の濃度)


品目
調査点数 定量下限*1
未満の点数
最小値 最大値 平均値*2 中央値*3
食用植物油脂 147
オリーブ油 5 0 0.12 0.31 0.23 0.28
ココヤシ油 5 0 0.056 0.11 0.078 0.072
ごま油 5 2 <0.050 0.092 0.049-0.069 0.064
こめ油 30 0 0.15 7.3 1.1 0.60
大豆油 24 1 <0.050 0.21 0.11-0.11 0.095
とうもろこし油 5 0 0.066 0.31 0.19 0.18
なたね油 40 21 <0.050 0.13 0.040-0.066 -
パーム油*4 23 0 1.3 5.4 3.5 3.4
パーム核油 5 0 0.13 0.24 0.20 0.20
ぶどう油 5 0 0.26 2.7 1.5 1.5
マーガリン 60 0 0.09 1.42 0.55 0.51
ショートニング 12 0 0.38 2.44 1.32 1.50
ラード 20 0 0.10 0.93 0.32 0.15
魚油を主成分とする食品 30 1 <0.20 4.64 1.07-1.07 0.75
乳児用調製乳等*5 121
乳児用調製乳 58
粉乳 40 0 0.030
(0.0041)
0.13
(0.017)
0.057
(0.0075)
0.052
(0.0068)
液状乳 18 0 0.0043 0.0076 0.0061 0.0060
フォローアップミルク 38
粉乳 33 10 <0.020
(<0.0028)
0.11
(0.015)
0.033-0.040
(0.0047-0.0055)
0.039
(0.0053)
液状乳 5 0 0.0067 0.0074 0.0071 0.0072
特殊用途育児用粉乳 25 0 0.031
(0.0043)
1.4
(0.20)
0.301
(0.042)
0.043
(0.0062)

 *1 定量下限:0.050 mg/kg(食用植物油脂)、0.05 mg/kg(マーガリン、ショートニング、ラード。油脂当たりの濃度)、0.20 mg/kg(魚油を主成分とする食品)、0.020 mg/kg(乳児用調製乳等のうち粉乳)、0.0034 mg/kg(乳児用調製乳等のうち液状乳)
 *2 定量下限未満の濃度をゼロとして算出した平均値(LB)と、定量下限未満の濃度を定量下限と同値として算出した平均値(UB)の範囲(LB-UB)を記載しています。
 *3 複数のデータを、数値が小さい⽅から順番に並べた時、ちょうど中央にくる値のことです。50%を超える試料が定量された場合についてのみ記載しています。
 *4 平成24~25年度調査では「アブラヤシ油」と記載しています。
 *5 (括弧内の数字)は、各製品の表⽰に従って調乳した際の液体中の濃度を記載しています。各製品の⾷品中の濃度に調製粉乳等の使⽤量を乗じて、できあがり量(調製後の液体量。⽐重を1と仮定)で除して算出しました。

 

表2 食品中の2-MCPDE(遊離した2-MCPD)濃度の概要(単位:mg/kg 食品中の濃度)


品目
調査点数 定量下限*1
未満の点数
最小値 最大値 平均値*2 中央値*3
食用植物油脂 147
オリーブ油 5 2 <0.050 0.15 0.074-0.094 0.10
ココヤシ油 5 4 <0.050 0.052 0-0.050 -
ごま油 5 5 <0.050 <0.050 0-0.050 -
こめ油 30 0 0.074 4.0 0.56 0.31
大豆油 24 16 <0.050 0.10 0.024-0.057 -
とうもろこし油 5 1 0.034 0.16 0.090-0.10 0.090
なたね油 40 38 <0.050 0.057 0.003-0.050 -
パーム油*4 23 0 0.67 2.8 1.8 1.7
パーム核油 5 0 0.067 0.13 0.099 0.10
ぶどう油 5 0 0.13 1.4 0.76 0.78
マーガリン 60 0 0.04 0.76 0.27 0.24
ショートニング 12 0 0.18 1.22 0.69 0.77
ラード 20 0 0.05 0.50 0.18 0.08
魚油を主成分とする食品 30 15 <0.20 1.82 0.31-0.41 -
乳児用調製乳等*5 121
乳児用調製乳 58
粉乳 40 1 <0.010
(<0.0014)
0.060
(0.0078)
0.022-0.023
(0.0029-0.0029)
0.020
(0.0026)
液状乳 18 1 <0.0017 0.0033 0.0023-0.0024 0.0023
フォローアップミルク 38
粉乳 33 10 <0.010
(<0.0014)
0.053
(0.0074)
0.013-0.016
(0.0019-0.0023)
0.014
(0.0020)
液状乳 5 0 0.0033 0.0035 0.0034 0.0034
特殊用途育児用粉乳 25 0 0.011
(0.0015)
0.760
(0.11)
0.161
(0.023)
0.020
(0.0028)

 *1 定量下限:0.050 mg/kg(食用植物油脂)、0.05 mg/kg(マーガリン、ショートニング、ラード。油脂当たりの濃度)、0.20 mg/kg(魚油を主成分とする食品)、0.010 mg/kg(乳児用調製乳等のうち粉乳)、0.0017 mg/kg(乳児用調製乳等のうち液状乳)
 *2 定量下限未満の濃度をゼロとして算出した平均値(LB)と、定量下限未満の濃度を定量下限と同値として算出した平均値(UB)の範囲(LB-UB)を記載しています。
 *3 複数のデータを、数値が小さい⽅から順番に並べた時、ちょうど中央にくる値のことです。50%を超える試料が定量された場合についてのみ記載しています。
 *4 平成24~25年度調査では「アブラヤシ油」と記載しています。
 *5 (括弧内の数字)は、各製品の表⽰に従って調乳した際の液体中の濃度を記載しています。各製品の⾷品中の濃度に調製粉乳等の使⽤量を乗じて、できあがり量(調製後の液体量。⽐重を1と仮定)で除して算出しました。

 

表3 食品中のGE(遊離したグリシドール)濃度の概要(単位:mg/kg 食品中の濃度)


品目
調査点数 定量下限*1
未満の点数
最小値 最大値 平均値*2 中央値*3
食用植物油脂 147
オリーブ油 5 0 0.050 0.27 0.15 0.15
ココヤシ油 5 0 0.086 0.20 0.14 0.16
ごま油 5 1 <0.050 0.18 0.11-0.12 0.11
こめ油 30 0 0.32 3.5 1.5 1.1
大豆油 24 0 0.088 0.51 0.27 0.29
とうもろこし油 5 0 0.13 0.99 0.67 0.73
なたね油 40 4 <0.050 1.1 0.24-0.24 0.18
パーム油*4 23 0 0.81 3.2 1.4 1.1
パーム核油 5 0 0.12 0.52 0.35 0.49
ぶどう油 5 0 0.23 1.1 0.78 0.94
マーガリン 60 0 0.07 1.54 0.37 0.33
ショートニング 12 0 0.12 1.08 0.58 0.62
ラード 20 3 <0.05 0.80 0.20-0.20 0.07
魚油を主成分とする食品 30 27 <0.18 0.52 0.02-0.20 -
乳児用調製乳等*5 121
乳児用調製乳 58
粉乳 40 0 0.011
(0.0015)
0.061
(0.0079)
0.029
(0.0038)
0.031
(0.0040)
液状乳 18 9 <0.0017 0.0035 0.0011-0.0020 -
フォローアップミルク 38
粉乳 33 8 <0.010
(<0.0014)
0.046
(0.0064)
0.016-0.019
(0.0023-0.0026)
0.016
(0.0022)
液状乳 5 5 <0.0017 <0.0017 0-0.0017 -
特殊用途育児用粉乳 25 5 <0.010
(<0.0014)
0.030
(0.0042)
0.011-0.013
(0.0016-0.0019)
0.011
(0.0017)

 *1 定量下限:0.050 mg/kg(食用植物油脂)、0.05 mg/kg(マーガリン、ショートニング、ラード。油脂当たりの濃度)、0.20 mg/kg(魚油を主成分とする食品)、0.010 mg/kg(乳児用調製乳等のうち粉乳)、0.0017 mg/kg(乳児用調製乳等のうち液状乳)
 *2 定量下限未満の濃度をゼロとして算出した平均値(LB)と、定量下限未満の濃度を定量下限と同値として算出した平均値(UB)の範囲(LB-UB)を記載しています。
 *3 複数のデータを、数値が小さい⽅から順番に並べた時、ちょうど中央にくる値のことです。50%を超える試料が定量された場合についてのみ記載しています。
 *4 平成24~25年度調査では「アブラヤシ油」と記載しています。
 *5 (括弧内の数字)は、各製品の表⽰に従って調乳した際の液体中の濃度を記載しています。各製品の⾷品中の濃度に調製粉乳等の使⽤量を乗じて、できあがり量(調製後の液体量。⽐重を1と仮定)で除して算出しました。

 

今後の対応

  • 農林水産省は、関係業界に対し低減対策の取組の継続を要請します。
  • 更なる低減が望まれる製造事業者に対しては、より効果の高い低減対策を可能な限り実施するよう取組を促すとともに、取組状況のフォローアップや科学的助言等を行いその取組を支援します。
  • 今後も食品中の3-MCPDE及びGE等に関する情報を収集し、消費者や食品事業者の皆様に提供します。国内で含有実態に関する知見が不足している食品が明らかとなった場合等、必要に応じて最新の含有実態を調査し、低減措置を講じる必要性を検討します。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)
ダイヤルイン:03-6744-2135