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農林水産省

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クロロプロパノール類及びその関連物質の分析法

作成日:2019年3月28日
更新日:2021年9月17日

遊離体の分析

一般的に、食品中の3-MCPDを分析する際には、食品から3-MCPDを有機溶媒で抽出し、不純物を取り除きます(精製)。その後、3-MCPDを分析に適した分子に変換(誘導体化)し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)注1で定量注2します。

農林水産省が行ったしょうゆ及びアミノ酸液中の3-MCPDの実態調査では、以下の分析法を使用しています。

  • 食品衛生学雑誌 Vol.36, No.3, 360-364 (1995)
    (定量限界:0.003 mg/kg、検出限界:0.001 mg/kg)
    (参考)これまでに確立された分析法
  • AOAC Official Method 2000.01
  • 酸を用いた間接分析法(欧州食品安全機関)

 注1 クロマトグラフとは、物質の大きさや吸着性の違いを利用して、成分ごとに分離する装置です。固定相と呼ばれる物質の中を、移動相と呼ばれる物質が通過する時に物質が分離されます。ガスクロマトグラフ(GC)では、固定相に対する気体の吸着性等を利用し、成分を分離します。GCで分離した成分を、質量分析計(MS)を用いて、質量の情報から成分の定性及び定量を行います。

 注2 適切な正確さをもって分析値を求めることができる限界の濃度を定量下限、これ以上低い濃度では化学物質の存在を検出できない限界の濃度を検出下限といいます。

エステル体の分析 ー直接分析法と間接分析法―

油脂を構成する脂肪酸は、炭素の数や二重結合の数・位置・構造によって、様々な種類があります。このため、3-MCPD脂肪酸エステル類は3-MCPDと結合する脂肪酸の種類や数、位置によって、グリシドール脂肪酸エステル類はグリシドールと結合する脂肪酸の種類によって、それぞれ様々な種類があります。

これら物質の分析法はいくつかありますが、大きくは直接分析法間接分析法に分けられます。
直接分析法は、結合している脂肪酸の数や種類によって異なる3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類を、それぞれの分子種ごとに測定する方法です。
間接分析法は、結合している脂肪酸の違いを区別せず、3-MCPD脂肪酸エステル類の総量、グリシドール脂肪酸エステル類の総量を測定する方法です。間接分析法では、3-MCPD脂肪酸エステル類、グリシドール脂肪酸エステル類を分解し、脂肪酸がとれた3-MCPDの濃度、脂肪酸がとれたグリシドールの濃度を測定するため、これら物質の濃度は、3-MCPD当量、グリシドール当量で表されます。

直接分析法と間接分析法

直接分析法間接分析法には以下のような特徴があり、分析の目的によって使い分けることができます。

  メリット デメリット
直接分析法
  • 分子種ごとの濃度がわかる
  • 分析できる分子種は標準品を入手できるもののみ
間接分析法
  • 総量の濃度がわかる
  • 比較的簡便かつ安価に分析できる
  • 分子種ごとの濃度はわからない


これまでに、油脂中のグリシドール脂肪酸エステル類の直接分析法、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の間接分析法は、複数の試験室での妥当性確認を経て確立されました。油脂を用いた加工食品中のこれら物質の直接分析法及び間接分析法については、現在開発が進められているところです。 加工食品中のこれら物質を分析する際には、食品から油脂を抽出する必要があります。しかし、乳児用調製乳は他の食品に比べて油脂の抽出がとても難しく、これら物質を十分に低い濃度で、信頼性をもって定量することができないという問題があり、国際的に分析法開発が進められています。

(参考)これまでに確立された、油脂中の3-MCPD脂肪酸エステル類、グリシドール脂肪酸エステル類の分析法

名称 対象食品 対象物質 原理 種類
Joint AOCS/JOCS Official Method Cd 28-10〔外部リンク〕
(日本油化学会基準油脂分析試験法2.4.13-2013〔外部リンク〕
植物油 GE
(脂肪酸5種類)
LC-MS
AOCS Official Method Cd 29a-13〔外部リンク〕 食用油脂 3-MCPDE
2-MCPDE
GE
GC-MS
AOCS Official Method Cd 29b-13〔外部リンク〕 固体または液体の油脂 3-MCPDE
2-MCPDE
GE
GC-MS
AOCS Official Method Cd 29c-13〔外部リンク〕 加工食品から抽出された、固体又は液体の油脂 3-MCPDE
GE
GC-MS
Joint AOCS/JOCS Official Method Cd 29d-19〔外部リンク〕
(日本油化学会基準油脂分析試験法2.4.14-2016〔外部リンク〕
植物油脂
動物油脂
3-MCPDE
2-MCPDE
GE
GC-MS
欧州委員会が開発した分析法〔外部リンク〕 食用油脂
加工食品(ワッフル、ポテトスナック等)
3-MCPDE
2-MCPDE
GE
GC-MS
(参考・食品からの脂質抽出法)
AOCS Official Method Cd 30-15〔外部リンク〕
スプレッド類、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ - - -

直:直接分析法、間:間接分析法

農林水産省による分析法開発の取組

農林水産省は、食品から3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類をとる量を推定するため、研究委託事業を活用し、油脂や加工食品中のこれら物質の分析法の開発を行ってきました。

食用油脂中の3-MCPD脂肪酸エステル類の直接分析法の開発(2010~2011)

平成22~23年度(2010~2011)のレギュラトリーサイエンス新技術開発事業で、食用油脂に含まれる3-MCPD脂肪酸エステル類の直接分析法を世界に先駆けて開発しました。
本研究では、3-MCPDに脂肪酸が1つ結合したモノエステル体5種類、3-MCPDに脂肪酸が2つ結合したジエステル体25種類について、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)(注)を用いて定量する方法を確立し、市販の食用油脂10種の分析に使えることを確認しました。ただし、異なる脂肪酸2つが結合したジエステル体については、2つの脂肪酸の位置が入れ替わった分子種の区別は困難でした。なお、この分析法の妥当性確認は単一試験室で行いました。

(注)液体クロマトグラフ(液体の分析対象物から目的とする成分を分離する装置)に、質量分析計(質量の情報から目的成分の構造を調べる装置)を直列に2台つなげた分析装置です。

(詳細)レギュラトリーサイエンスに属する研究-終了した研究課題

油脂を用いた加熱調理が、食材中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の生成に及ぼす影響を把握するための間接分析法の開発(2017)

平成29年度(2017)の安全な農林水産物安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究委託事業で、油脂を用いた加熱調理を経て製造される加工食品を対象として、調理前及び調理後のそれぞれの場合に3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類を定量できる分析法を開発しました。
本研究では、欧州食品安全機関(EFSA)が報告した酸を用いる間接分析法と、日本油化学会基準油脂分析法(2.4.14-2016)が引用する酵素を用いる間接分析法の2つを改良し、改良後の分析法が5種類の加工食品の分析に使えること、両分析法で同等の分析結果が得られることを確認しました。酵素を用いる間接分析法は、より簡便かつ短時間での分析が可能です。なお、改良した分析法の妥当性確認は単一試験室で行いました。

(詳細)レギュラトリーサイエンスに属する研究-終了した研究課題
本研究では、上記の分析法開発の他、モデル加工食品を用いて、加熱調理が3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の生成に及ぼす影響に関する基礎データを収集しました。

乳児用調製乳中のクロロプロパノール類及び関連物質の高感度間接分析法の開発NEWアイコン(2021~2022)

令和3~4年度(2021~22)安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業で、乳児用調製乳中の3-MCPD脂肪酸エステル類/グリシドール脂肪酸エステル類について、関係事業者が実施している低減対策の効果を検証するために十分低い濃度範囲で精確に定量できる分析法の確立に向けた研究を推進しています。 本研究では、AOAC International における複数試験室間での妥当性確認の候補となっている2つの間接分析法を対象に、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル類、2-MCPD、2-MCPD脂肪酸エステル類 及びグリシドール脂肪酸エステル類 濃度の精確な分析が可能か検証し、要すれば、それらの方法を改良又は新たな分析法の開発を行います。また、検証、改良又は開発した分析法について、単一試験室での妥当性確認を行います。

(詳細)レギュラトリーサイエンスに属する研究-実施中の試験研究課題

海外における分析法開発の取組

AOAC INTERNATIONALにおける乳児用調製乳中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の分析法の開発

AOAC INTERNATIONALは、様々な分野における分析法の標準化等 を行う組織です。2018年には、乳児用調製乳中の2-MCPD脂肪酸エステル類、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の分析法の性能規準を策定しました。現在、この性能基準を満たすことを単一試験室で確認した分析法が2つあります。AOAC INTERNATIONALは、今後、これらの分析法について、複数試験室間での妥当性確認を進めていくこととしています。

(参考)

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)

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