食品中のピロリジジンアルカロイド類に関するQ&A
- ピロリジジンアルカロイド類とはどのような物質ですか
- ピロリジジンアルカロイド類はどのような食品に含まれていますか
- なぜ、キク科やムラサキ科等の植物の一部にピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
- なぜ、ハーブティー等のお茶やサラダミックスにピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
- なぜ、はちみつや花粉荷などにピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
- 国内ではどのような食品にピロリジジンアルカロイド類が含まれていることが分かっていますか
- ピロリジジンアルカロイド類はヒトの健康にどのような影響を与えますか
- ピロリジジンアルカロイド類を含むとされている食品をこれまで摂取してきましたが、健康に影響はありますか
- ピロリジジンアルカロイド類を含む食品による健康被害を予防するために出来ることはありますか
- 食品に含まれるピロリジジンアルカロイド類について、農林水産省はどのような対応をしていますか
- 国際的にはピロリジジンアルカロイド類についてどのような取組がなされていますか
1. ピロリジジンアルカロイド類とはどのような物質ですか
ピロリジジンアルカロイド類は、植物が作る天然物の一種で、ピロリジジン環構造(右図)を共通に含むアルカロイドの総称です。ピロリジジンアルカロイド類は、キク科、ムラサキ科、マメ科などの一部の植物に含まれており、600 種類以上の非常に多くの種類があります。その一部には、とても強い毒性があり、肝障害の原因となることが知られています。ヒトでは確認されておりませんが、動物実験では発がん性があるものもあることが報告されています。
2. ピロリジジンアルカロイド類はどのような食品に含まれていますか
農林水産省による実態調査の結果や文献、データベース、海外政府機関の調査結果から、ピロリジジンアルカロイド類は以下の食品に含まれる場合があることが報告されています。
- キク科やムラサキ科等の植物の一部(例:フキ、ツワブキ、バターバー、コンフリーなど)
- ハーブティー等の茶類やサラダミックスなど
- はちみつ、花粉荷(ビーポーレン)などのミツバチ生産物
また、飼料がピロリジジンアルカロイド類に汚染されていた場合、乳や卵からも極めて低い濃度で検出される場合があることが報告されています。
3.なぜ、キク科やムラサキ科等の植物の一部にピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
おそらく、植物が動物に食べられないようにするため、動物にとって有毒な成分を自ら作り出して、植物体内に蓄積していると考えられます。大昔から、フキやツワブキ等にはピロリジジンアルカロイド類が天然に含まれていたと考えられますが、このような毒素が含まれているのがわかったのは、1970年代に入ってからです。
4.なぜ、ハーブティー等のお茶やサラダミックスにピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
ピロリジジンアルカロイド類を含む植物が雑草として農地や園地に侵入し、食用の植物と間違って収穫されたり、食用の植物に混じって収穫されたりするためです。お茶の原料に含まれるハーブがピロリジジンアルカロイド類を含む植物である場合もあります。
なお、これまでに、緑茶や紅茶の原料であるツバキ科ツバキ属のチャノキに、ピロリジジンアルカロイド類が含まれるという報告はなく、農林水産省の調査結果でも、チャノキのみを原料とする緑茶にピロリジジンアルカロイド類が含まれる可能性は低いことが分かりました。
5. なぜ、はちみつや花粉荷などにピロリジジンアルカロイド類が含まれているのですか
キク科のアザミ属やムラサキ科のエキウム属など、ミツバチが蜜源として好む植物にもピロリジジンアルカロイド類を含むものがあることが知られています。ミツバチが、そのような植物から花蜜や花粉を集めてしまうことがあるためです。
6.国内ではどのような食品にピロリジジンアルカロイド類が含まれていることが分かっていますか
農林水産省による実態調査では、はちみつ、ふき、ふきのとうに、ピロリジジンアルカロイド類が含まれる場合があることが分かりました。ただし、はちみつ中のピロリジジンアルカロイド類の濃度は低く、通常の範囲での摂取では健康への悪影響の懸念はないと考えられること、ふきやふきのとうはあく抜きによって含まれるピロリジジンアルカロイド類の量を減らせることが分かりました。
また、緑茶にピロリジジンアルカロイド類が含まれる可能性は低いことが分かりました。
詳しくは、実態調査の結果をご覧ください。
これ以外の食品の含有実態は、まだ分かっていません。
7. ピロリジジンアルカロイド類はヒトの健康にどのような影響を与えますか
ピロリジジンアルカロイド類の一部には、肝障害の原因となるものもあることが報告されています。 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、2015年に、ピロリジジンアルカロイド類について、ラットが最も感受性の高い動物種で、肝臓が最も感受性の高い臓器であると報告しています。また、ヒトも、同様にピロリジジンアルカロイド類に感受性が高いとしています。欧州食品安全機関(EFSA)は、2011年に、ピロリジジンアルカロイド類のばく露がヒトの発がん性に関与するかについての疫学データは得られていないが、動物実験の結果から遺伝毒性発がん物質として作用する可能性があるとしています。食品安全委員会は、平成16年(2004年)に、シンフィツム(コンフリー)及びこれを含む食品について食品健康影響評価をした際に、「コンフリーのヒトに対する健康影響は、ピロリジジンアルカロイドの作用によるものと考えられている」と報告しています。同委員会によると、コンフリーが原因と考えられるヒトの肝静脈閉塞性疾患等の健康被害例が海外で多数報告されていると報告しています。なお、ピロリジジンアルカロイド類は600種類以上あり、個々の毒性の種類や強さが異なることに留意する必要があります。
(参考)
シンフィツム(コンフリー)及びこれを含む食品についての食品健康影響評価については、詳しくは以下の食品安全委員会のウェブページをご覧ください。
シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の食品健康影響評価〔外部リンク〕(食品安全委員会)
8. ピロリジジンアルカロイド類を含むとされている食品をこれまで摂取してきましたが、健康に影響はありますか
健康に影響があるかどうかは、食品に含まれるピロリジジンアルカロイド類とその毒性の種類や強さ、その含有濃度、食品の摂取量や頻度によります。また、影響の受けやすさには個人差があることから、単純に影響があるかどうかをお答えすることはできません。なお、日本国内で食品中のピロリジジンアルカロイド類による健康被害は、これまで報告されていません。
ピロリジジンアルカロイド類に限らず、特定の物質を一度に多量に摂取したり、長期にわたり摂取し続けたりすれば、健康に悪影響がでる可能性も考えられます。特定の食品に偏らずに、バランスの良い食生活に留意していただくことが大切です。
9. ピロリジジンアルカロイド類を含む食品による健康被害を予防するために出来ることはありますか
バランスの良い食生活を送っていただくことが大切です。ピロリジジンアルカロイド類を含む可能性がある食品は一部に限られているので、いろいろな種類の食品を食べれば、必要な栄養素を取ることができるだけでなく、ピロリジジンアルカロイド類を含む食品の摂取量も低く抑えることができます。
また、ピロリジジンアルカロイド類を含むことが知られているフキについては、あく抜きをすればピロリジジンアルカロイド類の量を減らすことができます。
なお、海外では、ピロリジジンアルカロイド類を含む植物を原料とした、いわゆる「健康食品」による健康被害が多数発生しています。これら を含め、いわゆる「健康食品」を利用する際には、信頼できる情報源から情報を得ることが大切です。
(参考リンク)
「健康食品」の安全性・有効性情報〔外部リンク〕(国立健康・栄養研究所)
10. 食品に含まれるピロリジジンアルカロイド類について、農林水産省はどのような対応をしていますか
農林水産省は、ピロリジジンアルカロイド類を優先的にリスク管理を行う有害化学物質の1つに選定し、農林畜産物やその加工品の含有実態を調査しています。
これまでに、はちみつ、緑茶、フキの実態調査をしており、今後も、技術的に実行可能な範囲で実態調査を行います。
また、家畜の健康被害の未然防止の観点から、ピロリジジンアルカロイド類を含む植物を飼料又は飼料原料として使用しないよう指導しています。
今後、フキについては、生産段階及び消費段階(加工時や調理時)におけるピロリジジンアルカロイド類の蓄積抑制及び低減のための試験研究を進めることとしています。
得られた知見、情報については、ウェブサイト等を通じて情報発信します。
11. 国際的にはピロリジジンアルカロイド類についてどのような取組がなされていますか
1980年代に、世界保健機関(WHO)は、ピロリジジンアルカロイド類の評価を行い、一部のピロリジジンアルカロイド類はラットで発がん性があり、それらを含む植物由来の製品を摂食すべきでないと結論しました。そして、ばく露を防ぐことがピロリジジンアルカロイド類による毒性を制限する唯一の効果的な手段であるとして、一定期間のばく露が少量でも健康上のリスクとなる可能性があり、ばく露をできるだけ避けるか最小限に抑えるべきであると報告しています。
2014年、コーデックス委員会は、ピロリジジンアルカロイド類を含む植物が食品や飼料に混入して食品が汚染されるのを未然に防ぐため、農地や牧草地における雑草管理に関する実施規範を策定しました。
また、コーデックス委員会は、穀類の国際食品規格において、ピロリジジンアルカロイド類を含むことが知られているタヌキマメ属の種子等、有毒・有害な種子を含有してはならないと規定しています。
2015年、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、ピロリジジンアルカロイド類のリスク評価を実施し、はちみつやハーブティー等の茶類をたくさん摂取する大人及びハーブティー等の茶類を平均的な量以上に摂取する子供は、健康への懸念があると評価しました。
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