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農林水産省

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令和元年度 緑茶中の鉛及びアルミニウム等の含有実態調査の結果について

2020年11月20日公表


農林水産省は、令和元年度に、国産緑茶(茶葉)中の鉛、総ヒ素、カドミウム及びアルミニウムの含有実態を調査しました。また、飲用茶(浸出液)への溶出試験も行いました。
この結果を用いてこれら物質の摂取量を推定したところ、茶からの摂取量は、食品全体からの摂取量よりも著しく少なく、茶はこれら物質の主要な摂取源ではないことが分かりました。
農林水産省は、今後も食品中のこれらの物質について情報を収集し、必要に応じて実態を調査します。

調査の背景と目的

鉛は、大気中に存在し、粉塵とともに落下し、農畜水産物を汚染することが知られています。また、水や食品を通じて人の体内に一定量以上吸収されることで人の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。日本では、排出源対策により、環境中への人為的な鉛の放出は抑制されています。しかしながら、環境以外に、食品の製造過程における汚染もあることが知られています。環境中への放出の低減に加えて、合理的に達成可能な範囲で食品に含まれる鉛を減らすことが重要です。

コーデックス委員会食品汚染物質部会は、各国における環境中への鉛排出抑制を受け、食品中の最新の鉛濃度に基づいて、食品中の鉛の最大基準値を見直しています。2019 年には、鉛の最大基準値を新たに設定する食品の候補の一つとして、「茶・ハーブティー類」を提案しました。「茶・ハーブティー類」には我が国で消費量が多い緑茶が含まれ、コーデックス基準に国内の緑茶の実態を反映するには、科学的な情報が必要です。 また、緑茶の原料であるチャノキは、土壌から根を通じてアルミニウムを吸収しやすいことが知られています。この他、鉛と同様に自然環境に広く存在しているヒ素とカドミウムを、緑茶が高濃度に含む可能性もあります。

そこで農林水産省は、緑茶を通じて摂取した鉛、総ヒ素、カドミウム及びアルミニウムが健康への悪影響を与えないことを確認するため、また鉛のコーデックス基準に我が国の緑茶の実態を反映するため、国産の緑茶中のこれら物質の含有実態を調査しました。

調査した食品及び試料の入手方法

国産緑茶*:計120点
*生産国が日本、原材料が「茶」又は「緑茶」のみであり、葉状のもの又は葉を粉末にしたもの

内訳
煎茶又は深蒸し煎茶 :55点 茎茶 : 5点
玉露又はかぶせ茶 :10点 ほうじ茶 : 5点
番茶 :20点 抹茶 :10点
玉緑茶又は釜炒り茶 :10点


2019年9~10月に、品種や製造者等ができるだけ重複しないよう、入手可能な範囲で多様な製品を小売店又はインターネット販売サイトで購入しました。

調査対象とした物質及び分析法

<鉛・総ヒ素・カドミウム>
試料を均質化後、硝酸と過酸化水素水を加えてマイクロウェーブ分解装置を用いて湿式分解し、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて分析しました。

<アルミニウム>
試料を均質化後、硝酸と過酸化水素水を加えてマイクロウェーブ分解装置を用いて湿式分解し、誘導結合プラズマ発光分光分析計(ICP-AES)を用いて分析しました。

分析法の詳細や妥当性確認の結果はこちら(PDF:245KB) をご覧ください。

緑茶(茶葉)の調査結果

調査した緑茶120点の鉛濃度は、117点で0.30 mg/kg以下であり、このうち77点は定量下限(0.10 mg/kg)未満でした。鉛濃度が0.30 mg/kgより高かった3点は全て番茶であり、このうち最も鉛濃度が高かった1点(2.4 mg/kg)は、総ヒ素(0.13 mg/kg)及びカドミウム(0.10 mg/kg)が唯一定量された試料でした。この番茶について、製造事業者は原料茶葉を変えることで鉛の低減を図り、今後も自主的に濃度を把握することとしています。

アルミニウムについては、調査した試料120点全てで定量され、その濃度は246~1980 mg/kgと広範囲でした。緑茶の原料となるチャノキは、栽培中に土壌からアルミニウムを吸収するため、チャノキの新芽が出てから収穫までの期間の長さが、緑茶中のアルミニウム濃度に影響している可能性があります。

表1 緑茶中の鉛、総ヒ素、カドミウム、アルミニウム濃度
分析種 点数 検出下限
(mg/kg)
定量下限
(mg/kg)
定量下限
未満の数
最小値
(mg/kg)
最大値
(mg/kg)
平均値
(mg/kg)
中央値
(mg/kg)
120 0.01 0.10 77 < 0.10 2.4 -* < 0.10
総ヒ素 0.01 0.10 119 < 0.01 0.13 -* < 0.10
カドミウム 0.01 0.10 119 < 0.01 0.10 -* < 0.10
アルミニウム 20 70 0 246 1,980 707 521

*鉛・総ヒ素・カドミウムは、試料の半数以上が定量下限未満だったため平均値を算出していません。

飲用茶(浸出液)への溶出試験とその結果

調査した煎茶(55点)、番茶(20点)のうち、鉛濃度が高かった茶葉各5点(計10点)について、飲用茶を想定した浸出液を以下の方法で調製し、各物質の濃度を測定しました。

この結果、茶葉から飲用茶への各物質の推定溶出率は以下のとおりです。

:8.8%
総ヒ素* :32%未満
カドミウム* :39%未満
アルミニウム :19%


*総ヒ素・カドミウムについては、飲用茶中の濃度が全て検出下限(0.001 mg/kg)未満でした。このため、最もこれら物質の濃度が高かった茶葉(番茶)1点について、飲用茶中の濃度を検出下限と仮定して算出した値です。

茶を通じた摂取量の推定

今回の調査で得られた茶葉中の濃度及び飲用茶への溶出率、日本人の実際の茶の消費量データを用いて、鉛、カドミウム、総ヒ素、アルミニウムの摂取量を推定しました。この結果、茶を通じて摂取するこれらの物質の量は食品全体から摂取する量よりも著しく少なく、茶はこれらの物質の主要な摂取源ではないことが分かりました(詳細は別途公表準備中です)。

※鉛・総ヒ素:食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発に関する研究[外部リンク](厚生労働科学研究データベース)
カドミウム:我が国における食品からのカドミウムの摂取量(農林水産省)
アルミニウム:マーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査(PDF:241KB)[外部リンク](厚生労働省)

まとめ・今後の対応

今回の調査の結果、国産緑茶(茶葉)中の鉛は半数以上の試料、総ヒ素及びカドミウムについてはほぼ全ての試料で定量下限(0.10mg/kg)未満であることが分かりました。また、飲用茶への溶出率も考慮すると、茶を通じた鉛、総ヒ素、カドミウム及びアルミニウムの摂取量は食品全体からの摂取量より著しく少ないことがわかりました。

今回得られた緑茶中の鉛含有実態のデータについては、コーデックス委員会における新たな基準値設定の議論に貢献できるよう、国際的なデータベースに提出します。

なお、鉛は大気中に存在し、粉じんとともに降下して農産物等を汚染することが知られています。大気中の鉛濃度の変化等によって食品の汚染状況が変化する可能性があるため、一定期間が経過した後には最新の実態を把握することとします。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)
ダイヤルイン:03-3502-8731

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