ソラニンやチャコニンによる健康影響
更新日:2022年2月7日
このページでは、じゃがいもに含まれる天然毒素である、ソラニンやチャコニンによる健康影響について紹介します。 |
FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会の評価
国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、1992年の第39回会合で、ソラニンやチャコニンのリスクを評価しました。評価結果は以下のとおりです。
- ヒトの食中毒のデータから、ソラニンやチャコニンなどのグリコアルカロイドを、体重1 kgあたり1 mg以上摂取すると食中毒症状が出る可能性があり、体重1 kgあたり3~6 mg以上摂取すると死ぬ可能性があると考えられる。
- グリコアルカロイドを含む植物の摂取に関する疫学的・試験的データは限られており、健康に悪影響が出ないと考えられる摂取量を決定することはできなかった。
- じゃがいもは食経験がある野菜であり、適切に栽培・収穫・流通・調理された、グリコアルカロイドの濃度が一般的な範囲(2~10 mg/100 g)のじゃがいもであれば、食べても健康上の懸念はないと考えられる。
- じゃがいもを安全に食べ続けていくために、じゃがいもの新品種の開発や生産、加工、消費にかかわるすべての人が、じゃがいも中のグリコアルカロイドが意図せず増加してしまう可能性について認識すべきである。
出典:JECFA Monographs. 764. Solanine and chaconine(WHO Food Additives Series 30)〔外部リンク〕
欧州食品安全機関の評価
欧州食品安全機関(EFSA)は、2020年に、じゃがいも等の食品に含まれるグリコアルカロイドのリスク評価結果を公表しました。評価結果は以下のとおりです。
- ヒトの食中毒のデータから、ソラニンやチャコニンなどのグリコアルカロイドを、体重1 kgあたり1 mg以上摂取すると急性症状が出る可能性があると考えられる。個人差等を考慮した結果、体重1 kgあたりの摂取量が0.1 mg以下であれば健康への悪影響はないと考えられる。
- 欧州の人々がじゃがいもから摂取しているグリコアルカロイドの量を推定した結果、じゃがいもを平均的な量以上に食べる子ども、じゃがいもを多く食べる大人(上位5%)はグリコアルカロイドをとりすぎている可能性がある。
また、より詳細なリスク評価のために、以下が必要であるとしています。
- じゃがいもの既存品種及び新品種中のグリコアルカロイドや毒性学的に関連すると考えられる二次代謝物に関する研究
- じゃがいも加工品(乳児用食品を含む)中のグリコアルカロイドの含有実態
- トマトやなす及びこれらの加工品中のグリコアルカロイド類の含有実態
- じゃがいも、トマト、なすのグリコアルカロイド類の反復投与毒性(生殖毒性、発達毒性等を含む)に関するデータ
- ヒトのグリコアルカロイド摂取量、ばく露指標(バイオマーカー)、健康影響に関する研究
国内の食中毒事例
国内で過去に報告されたじゃがいもの毒素による食中毒の多くは、学校で栽培したじゃがいもを使った調理実習での喫食などによるものです。
年 | 発生件数 (件) |
患者総数 (人) |
---|---|---|
2016 | 2 | 32 |
2017 | 2 | 30 |
2018 | 1 | 16 |
2019 | 1 | 16 |
2020 | 0 | - |
子どもの場合、体重あたりのじゃがいもの消費量が多く、結果として体重当たりのグリコアルカロイドの摂取量も多くなりがちである上に、大人より少ない摂取量で食中毒の症状が出る可能性があるため、特に注意が必要です。過去には、体重1 kgあたり0.16~1.1 mgのグリコアルカロイドを摂取したと推定される小学生の食中毒事例が報告されています。
参考文献:松井久仁子ほか. 1998. 小学生のバレイショによるソラニン中毒発症量の推定. 福岡市保環研報, 24, 44-47.
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消費・安全局食品安全政策課
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