フランス
更新日:2011年12月26日
フランスでは、2010年7月以降、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)(以前はフランス食品衛生安全庁(AFSSA))において、食品中のトランス脂肪酸に関する取組を進めています。
食品中のトランス脂肪酸の健康リスクとベネフィット(便益)に関する勧告
AFSSAは、「食品中のトランス脂肪酸の健康リスクとベネフィット(便益)に関する勧告」という報告書を2005年に公表しました。
その中で、科学的な根拠に基づいて、総トランス脂肪酸摂取量が総エネルギー摂取量の2%を超えると心血管疾患リスクが増加することから、総トランス脂肪酸摂取量が総エネルギー摂取量の2%を超えないようすべきであると勧告しています。さらに、ケーキ、菓子パンのような焼き菓子、チョコレートバー、ビスケットなど栄養的な価値が低くトランス脂肪酸を含む食品の消費量を30%まで削減するように助言するとともに、乳製品はトランス脂肪酸の主要な摂取源であるが削減すべきではなく、しかしながら脱脂粉乳や低脂肪乳を選択するのがより好ましいとしています。
また、フランス人のトランス脂肪酸摂取量について、以下のような報告が記載されています。
- 成人では、トランス脂肪酸の総摂取量の53%が乳製品由来であり、乳製品、反すう動物の肉など動物由来のトランス脂肪酸が総摂取量の60%を占める。
- パン、ケーキ、ビスケットなどは、2番目に多いトランス脂肪酸摂取源であり、成人では総摂取量の18%、子供では約30%である。
- フランス人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は、男性で3.2 g/日、女性で2.8 g/日であり、一日の総エネルギー摂取量の1.3%に相当する。
- 成人の5%では総トランス脂肪酸摂取量が総エネルギー摂取量の2%を超えており、男性では約6 g/日、女性では約5 g/日と平均の約2倍摂取している。
- 最もトランス脂肪酸を過剰に摂取しているのは12-14歳の男子で、平均摂取量が3.5 g/日であり、そのうちの約10%では総トランス脂肪酸摂取量が総エネルギー摂取量の2%を超えている。
この報告書では、食品に含まれるトランス脂肪酸についても、栄養表示の一部として義務づけることが提案されました。フランスでは、天然由来のトランス脂肪酸や共役型二重結合を含むトランス脂肪酸を除外せずに、トランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸をトランス脂肪酸として定義しています。焼き菓子、ビスケット、チョコレートバー、乳製品などのいわゆる「見えない油」では食品中のトランス脂肪酸が0.1 g/100 g (100 ml)以下の場合、調理油やマーガリンなどの「見える油」では総脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量が0.1%以下の場合に、表示が不要とされています。
フランス人におけるトランス脂肪酸の推定摂取量に関する意見書
AFFSAは、「フランス人におけるトランス脂肪酸の推定摂取量に関する意見書」を2009年に公表しました。
その中で、上記の報告書にもあるようにトランス脂肪酸の過剰摂取が懸念されることから、次のような勧告を行いました。
- 飽和脂肪酸と総トランス脂肪酸の摂取量に正の相関が示されていることから、飽和脂肪酸の摂取量の低減目標を評価すること
- トランス脂肪酸の摂取寄与が多いある種の食品の摂取量を低減すること
- 製品の種類ごとにトランス脂肪酸含有量の上限値を設定すること
- クロワッサン、ペイストリー、ビスケット類、パン類、チョコレートバーなどを作るために食品工場やベーカリーで使用される脂肪(ショートニング類)については、消費される形態の製品100 g当たり1 gを上限とする
- 「見える脂肪」については、食用油脂及びマーガリン類の1%を上限とする
トランス脂肪酸に関する状況
AFFSAは上記の報告書や意見書をとりまとめましたが、現時点ではフランスにおいて栄養表示へのトランス脂肪酸の表示は義務づけられていません。「水素添加油」の表示が原材料名の中にあれば、トランス脂肪酸が含まれると判断できるとしています。
ANSESは、現時点ではトランス脂肪酸に関するQ&Aの中で次のように推奨しています。
- 総エネルギー摂取量に占めるトランス脂肪酸の摂取量を2%未満とすること
- 人工的なトランス脂肪酸を含むいくつかの主要な食品(ヴィエノワズリー(クロワッサンやデニッシュ系のパン)、ペイストリー、商業的に作られたパン類、チョコレートバー、ビスケット類)の摂取量を減らすこと
- 人間が食べる食品と動物用飼料の両方で、人工的なトランス脂肪酸の使用を減らす努力を続けること
また、事業者向けの勧告の中で、ANSESは広く消費される食品中のトランス脂肪酸の最大含有量を下記の通り設定することを提案しています。
- トランス脂肪酸の含有量は、食品100g中1gまたは9kcal(総エネルギー摂取量の0.4%相当)とする
- 食卓油(table oils)については、トランス脂肪酸の含有量を0.5%以下とする
- マーガリンについては、トランス脂肪酸の含有量を1%以下とする
参考リンク
- Risques et bénéfices pour la santé des acides grastrans apportés par les aliments - Recommandations/ Health risks and benefits of trans fatty acids in food - Recommendations (synthesis) (PDF : 4.3MB)(旧フランス食品衛生安全庁の報告書、後半に英文要約あり)〔外部リンク〕
- Opinion of the French Agency for Food Safety regarding the estimation of trans fatty acid intake in the French population (PDF : 807KB)(旧フランス食品衛生安全庁 トランス脂肪酸の摂取量に関する意見書)〔外部リンク〕
- Trans Fatty Acid (フランス食品環境労働衛生安全庁 Q&A)〔外部リンク〕
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