更新日:平成27年11月2日
「ミカンコミバエ種群の防除対策検討会議」議事概要
開催日及び場所
日時:平成27年11月4日(水曜日)14時00分~16時30分
会場:中央合同庁舎4号館 12階 共用会議室 1219~1221号室
所在地:東京都千代田区霞が関3-1-1
議事概要
農林水産省消費・安全局は、本日、標記検討会において、鹿児島県奄美大島で確認されているミカンコミバエ種群の誘殺状況を有識者等に説明し、今後の防除対策について、意見を聴取した。その結果は以下のとおりであり、本件については、直ちに、以下のとおり、防除対策を強化し、本虫のまん延の防止・駆除に万全を期すべきであるとされた。 |
- 根絶を目的とした島内におけるまん延防止・駆除対策について
委員からは、これまでの対策では、誘殺地点を中心に防除対策が強化されているが、継続的に誘殺があり、また、果実から幼虫が発見されていることを踏まえれば、防除対策の弱い場所(例えば、人の立ち入りが困難な山間部や崖部等)で、ミカンコミバエ種群が生存している可能性が考えられることから、防除対策を更に強化する必要があるとの指摘があった。
また、ミカンコミバエ種群の飛翔能力を考慮し、奄美大島近隣の島々においても、侵入警戒を厳にすべきとの指摘があった。
これらの指摘を踏まえ検討した結果、農林水産省の提案のとおり、防除対策を以下のとおり強化することが妥当であると判断された。
(1) トラップ密度の増強
奄美大島内では、全体的に集落内のトラップ密度を増強する。また、移動ルートと想定される道路や海岸線等集落間のトラップを速やかに増設する。
さらに、奄美群島全域において、トラップを増設し、侵入警戒体制を強化する。
(2) 果実の寄生状況調査
誘殺が確認されていない集落でも、月に1回の果実状況調査を実施する。
(3) 野生寄主植物等の把握
市町村や地元住民の協力を得て、生産園地等のリストの整理や聞き取り等により、放任園や野生寄主植物の所在を確認する。これらの結果得られた情報を基に、防除すべき地点を明確化するなど、効果的な防除対策を実施する。
(4) 有人ヘリコプターによるテックス板の散布
ミカンコミバエ種群が集落外の放任園や野生寄主植物の群落で発生している可能性を考慮し、有人ヘリコプターによる山間地や崖部へのテックス板の散布を11月から開始し、その後は、テックス板の効果を考慮した適切な間隔で散布する。
(5) 侵入ルートとなりうる道路等へのテックス板の設置
ミカンコミバエ種群が、公道や海岸線、低山地帯を侵入ルートとして、瀬戸内町から近隣の市町村に侵入する可能性を考慮の上、誘殺が確認されていない地域への侵入ルートとなりそうな、公道や海岸線、集落の周辺部(里山等)には、ただちにテックス板の設置を開始する。
2. 島外へのまん延防止を目的とした移動規制について
委員からは、果実から幼虫が確認されていることを踏まえ、島内の一部の果実を介して、ミカンコミバエ種群が島外にまん延する可能性があるとの指摘があった。このため、これから収穫期を迎える奄美大島の特産品であるポンカンやタンカンなどの寄主植物の果実については、今後、奄美大島全島を対象として、植物防疫法に基づく緊急防除による移動規制を行うとともに、特に寄生のおそれがあるものについては廃棄を行う必要があるとの見解が示された。
具体的な移動規制の実施方針については、農林水産省の提案のとおり、期間については、当面、来年度末までとし、今後の誘殺状況によって、見直す可能性があること、また、方法については、誘殺地点からの距離に応じ、以下の対策を実施することが妥当であると判断された。(別紙参照)
(1) 誘殺地点から半径5km以内の区域
(ア)誘殺地点から半径5km以内の範囲を対象果実の島外への移動を禁止する区域(以下、「移動禁止区域」という。)とする。
(イ)移動禁止区域内の対象果実については、植物防疫官の命令に従って、ミカンコミバエ種群の幼虫が羽化できないよう、例えば、廃棄果実に農薬を散布の上、土中に埋却するなどの適切な方法で廃棄する。
(ウ)(イ)により区域内の対象果実が全て廃棄された場合には、当該果実について、移動を禁止する区域の設定は解除される。
(エ)なお、移動禁止区域が設定される前にこの区域から出荷される対象果実(ポンカン等)がある場合には、個別に廃棄命令を出す。
(2) その他の区域
移動禁止区域外の生果実等については、植物防疫官が、移動禁止区域外で生産されたものであること、及び、移動中にミカンコミバエ種群の付着等がないよう、出荷箱の開口部に網を張る等の汚染防止措置がなされていることを確認した場合に限り、移動を許可する。
3. 奄美大島以外の地域におけるトラップ調査等の強化
委員からは、他の奄美諸島、九州、沖縄県等においてもトラップ調査等を速やかに強化すべきであるとの指摘があった。
4. その他
委員からは、昨年度に続き、ミカンコミバエ種群の我が国への飛来が増加していることを踏まえ、温暖化の進展を踏まえた飛来に関する分析も含め、通常時の本虫の監視体制、初動対応等について検討を行うことが必要ではないかとの指摘があり、このような課題等について今後検討を行っていくこととされた。
(別紙)
緊急防除における移動規制(案)の概要
1. 移動規制の目的
ミカンコミバエ種群が寄生しているおそれのある果実等の移動を禁止することにより、ミカンコミバエ種群が未発生地域にまん延することを防止する。
2. 移動規制を行う期間
平成27年12月~平成29年3月
ただし、終了時期については、今後の誘殺状況により、見直す可能性がある。
3. 移動規制の対象範囲
鹿児島県奄美市並びに大島郡宇検村、瀬戸内町、龍郷町及び大和村(奄美大島全域)。
4. 移動規制の対象植物
- ミカンコミバエ種群の寄主植物となる以下の植物
ポンカン、タンカン、スモモ、マンゴー、パッションフルーツ等の果実類全般。 - トマト、ピーマン等の果菜類全般。
5. 移動規制の範囲
(1) ミカンコミバエ種群の誘殺地点から半径5km以内の区域
各寄主植物ごとに設定された「移動規制基準日(注1)」以降に誘殺が確認された場合、当該地点から半径5km以内の範囲を当該寄主植物の生果実の島外への移動を禁止する区域とする。
(注1)移動規制基準日:対象果実の収穫開始日から、その時の気温に基づき算出された、一世代相当の期間(産卵から成虫が成熟するまでの期間)を遡った日。
(2) その他の区域
(1)の区域外のミカンコミバエ種群の寄主植物の生果実等を島外に持ち出す場合には、植物防疫官が(1)の区域外で生産されたものであること、及び、移動中にミカンコミバエ種群の汚染がないよう、出荷箱の開口部に網やビニールを張る等の防止措置がなされていることを確認した場合に、移動を許可する。
6. 廃棄
5の(1)のうちミカンコミバエ種群が寄生しているおそれがあると判断され廃棄を命令された生果実等については、当該果実から幼虫が羽化し発生源とならないよう、例えば、廃棄果実に農薬を散布の上、土壌中に埋却するなど植物防疫官の指示する適切な方法で廃棄する。また、確実に廃棄されたことを植物防疫官が確認する。
7. 海空港等における検疫体制の整備
ミカンコミバエ種群が寄生しているおそれがある生果実が島外に出荷されないよう、海空港等において植物防疫官が監視する。また、生産者や宅配業者等へ周知を徹底する。
8. 緊急防除の解除
移動規制については、植物防疫法第17条に基づく緊急防除により法的な強制力をもって実施することとし、ミカンコミバエ種群の誘殺が三世代相当の期間(夏期であれば、おおよそ4ヶ月程度)確認されなかった市町村(旧市町村)については、有識者の意見も踏まえた上で、緊急防除の解除を判断する。
(以上)
お問合せ先
消費・安全局植物防疫課
担当者:国内検疫班
代表:03-3502-8111(内線4564)
ダイヤルイン:03-3502-5976