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農林水産省

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水産物価格動向と生産コストに関する影響分析

分析の目的

水産物(主に漁船漁業により水揚げされたもの)においては、産地卸売市場の経由率が過半以上を占め、需給事情や品質評価を反映した価格形成が行われる中、生産・流通コストの変化がそもそも産地市場価格に連動・反映されているかどうか明らかではありませんでした。
このため、本分析では、既存の統計調査データを用いて、流通段階別の価格動向や、産地価格に対する資材価格の動向を把握することを目的とします。
なお、魚種別に分析する場合の対象魚種は、「きはだ・めばち」、「さば類」、「ぶり類」及び「まいわし」としました。

使用データ及び分析方法

  1. 使用データ
    ■漁獲量に関するデータ
    海面漁業生産統計(2010-2022年)
    ■価格に関するデータ
    産地水産物流通調査(年間:2009-2023年、月別:2010-2024年)〔外部リンク〕
    市場統計情報(東京都中央卸売市場)(月別:2010-2024年)〔外部リンク〕
    小売物価統計調査(動向編)(年間:2010-2023年、月次:2015-2024年)〔外部リンク〕
    ■漁業経営体・漁船に関するデータ
    漁業センサス(2003,2008,2013,2018,2023年)
    ■生産コストに関するデータ
    漁業経営統計調査(2006~2023年)
    消費者物価指数(CPI)(全国、2020年基準、総合)(年次:2006-2023年、月次:2010-2024年)〔外部リンク〕
    企業物価指数(CGPI)2020年基準、国内企業物価指数)(月次:2010-2024年)〔外部リンク〕

  2. 分析方法
    ■相関分析
    ■回帰分析
    ■価格弾力性分析

分析結果の概要

  1. 水産物に関する基礎データ
    漁獲量の推移
    本分析の対象魚種(きはだ・めばち、さば類、ぶり類、まいわし)の漁獲量合計(右図)は、2013年から2018年までは増加傾向にありましたが、2019年以降横ばい又は減少しました。
    魚種別(左図)では、まいわしは全体を通じて増加し、さば類は2013年から2018年までは緩やかに増加傾向にありましたが2019年以降は減少しました。また、きはだ・めばち及びぶり類の漁獲量はおおむね一定で推移していたものの、 2019年以降は緩やかに減少しました。


    漁獲量の推移


    漁業経営体の収入・支出
    漁業経営体(漁船漁業)における漁労支出の構成割合(左図)を見ると、個人経営体・会社経営体ともに、人件費※1(個人:16.9%、会社:35.8%)、油費(個人:16.5%、会社:16.2%)の割合が高い状況でした。
    収入・支出(漁獲量1kg当たり)の年次変化(右図)を見ると、個人経営体では、漁獲量1kg当たりの漁業収入※2及び各支出※3とも増加傾向で推移しています。一方、会社経営体では修繕費・減価償却費が増加傾向となっているものの、その他の支出の増加幅は個人経営体と比べて小さい状況でした。
    ※1 人件費は、個人経営体は雇用労賃の値、会社経営体は労務費及び給料手当・役員報酬の合計値
    ※2 漁業収入は、個人経営体は漁業生産物収入、会社経営体は漁労売上高の値
    ※2・※3 ここで言う収入及び支出は、漁業経営統計に基づき漁獲量1kg当たりに換算した値であり、経営全体(個人経営体又は会社経営体)としての効果(影響分析)ではないことに留意。


    漁労支出の構成割合(2023年)収入・支出(漁獲量1kg当たり)及び漁獲量の推移(2006年対比)


    資材等の価格推移
    資材等の価格推移を国内企業物価指数(2020年基準)で見ると、A重油、電力等及びナフサ価格(左図)は総じて変動幅が大きく、2022年頃から急激に上昇しその後も高い水準で推移しています。軟質プラ発泡製品(右図)については、他品目に比べて変動幅は小さいが、同じく2022年頃から価格が上昇しています。
    消費者物価指数(CPI:生鮮食品及びエネルギーを除く総合)(右図)については、2022年頃から上昇傾向があり、その後も継続しています。


    物価指数の推移(A重油、電力等、ナフサ)物価指数の推移(CP総合、軟質プラ発砲製品)


  2. 産地市場の価格と水揚量の相関分析
    産地市場価格と水揚量・水揚量の前年同月比との相関

    産地市場(産地水産物流通調査(月別)の値で、以降同じ))における4魚種(きはだ・めばち、さば類、ぶり類、まいわし)の価格と水揚量・対前年同月比の相関をみたところ、4魚種とも、産地市場価格と水揚量(もしくは前年同月比)には一定程度の負の相関が認められました。この結果から、水揚量が増えると価格が下がる傾向があると考えられます。
    また、水揚量そのもの(純粋な量の多少)に比べ、水揚量の前年同月比との相関(負の相関)がやや強いことから、直近年の水揚量の動向に強く影響を受けていると考えられます。


    代替魚種群における産地市場価格と水揚量・水揚量の前年同月比との相関
    魚種ごとに代替魚種群※を設定して相関分析を行ったところ、魚種単独の相関と比較して、代替魚種群の方が相関(負の相関)がやや強いことから、魚種によっては代替となる魚種の動向にも影響されるものと考えられます。
    ※代替魚種群
    きはだ・めばち:きはだ、めばち、まぐろ、びんながの合計
    さば類:さば類、まいわし、まあじ、むろあじの合計
    ぶり類:-
    まいわし:まいわし、さば類、うるめいわし、かたくちいわし、まあじ、むろあじの合計

    例:きはだ・めばちの相関分析結果


    きはだ・めばちの相関分析結果


  3. 産地市場価格に対する資材価格の影響分析
    因果関係ダイアグラム(DAG)
    DAG(有向非巡回グラフ:Directed Acyclic Graph)は、変数同士を矢印で結ぶことで、変数間の因果関係に関する仮説を整理する上で有効な手法です。
    「産地市場価格※2」をアウトカム変数(結果)、「資材等の価格※1」を介入変数(原因)とした場合のDAGを下図の通り定義しました。
    このDAGを踏まえ「物価水準※3」を交絡(アウトカム変数、介入変数双方に関連するもの)として回帰分析の説明変数に取り入れることにより「資材等の価格」が「産地市場価格」に与える影響を検証しました。
    なお、ここで定義したDAGは、既存調査等に基づき想定される変数間の関係を仮説として描いたものであり、一部の変数間の関係性について議論の余地がある(異なる観点が存在する可能性)点について留意が必要です。


    資材等価格の影響分析のためのDAG

    ※1 資材等の価格として、国内企業物価指数(以降、CGPIという。)を用いる。
    ※2 産地市場価格(kg当たり)として、産地水産物流通調査(月別)の価格(円/kg)を対数変換した値を用いる。
    ※3 物価水準(消費税含む)として、消費者物価指数(CPI)の全国値(月次・生鮮食品及びエネルギーを除く総合)を用いる。


    きはだ・めばち 回帰分析結果
    きはだ・めばちについて、DAGを踏まえた回帰分析を行った結果は以下のとおりで、産地市場価格に対し、(1)A重油(係数※:0.0017***)、(2)電力・都市ガス・水道(0.0039***)、(3)ナフサ(0.0012***)、(4)軟質プラ発泡製品(0.0085**)のいずれの介入変数でも係数が統計的に有意(P<0.05)となりました。
    この結果から、きはだ・めばちにおいては、物価水準を考慮した場合でも、資材等の価格上昇(1ポイントの指数上昇)は、産地市場価格を一定程度(A重油で0.17%、電力等で0.39%、ナフサで0.12%、発泡製品で0.85%程度)上昇させる可能性が高いと考えられます。
    ※ 偏回帰係数(以降、同じ。)


    (アウトカム変数)産地市場価格

  4. 漁業経営体の漁業収入に対する生産コストの影響分析
    因果関係ダイアグラム(DAG)

    「漁業収入※3」をアウトカム変数(結果)、「生産コスト※1」を介入変数(原因)とした場合のDAG(下図)を定義した上で、「漁獲量」及び「物価水準」を交絡変数(原因と結果の両方に影響を与える変数)として回帰分析の説明変数に取り入れることにより、「生産コスト」が「漁業収入」に与える影響を分析しました。
    なお、ここで定義したDAGは、既存調査等に基づき想定される変数間の関係を仮説として描いたものであり、一部の変数間の関係性について議論の余地がある(異なる観点が存在する可能性)点について留意が必要です。


    生産コスト影響分析のためのDAG


    ※1 生産コスト(kg当たり)として、漁業経営統計調査の個人経営体・会社経営体ごとに、「漁労支出」から「減価償却費」を差し引き「漁獲量」で除した値(1kg当たり)を対数変換した値、また、内訳項目として「漁船・漁具費」、「油費」、「修繕費」について同じく「漁獲量」で除した値(1kg当たり)を対数変換した値を用いる。
    ※2 漁獲量として、漁業経営統計調査の個人経営体・会社経営体それぞれの「漁獲量」を対数変換した値を用いる。
    ※3 漁業収入(kg当たり)として、漁業経営体調査の「漁業生産物収入」(個人経営体)及び「漁労売上高」(会社経営体)を「漁獲量」で除した値(1kg当たり)を対数変換した値を用いる。
    ※4 消費者物価指数(CPI)の全国値(年平均・生鮮食品及びエネルギーを除く総合)を用いる。

    個人経営体 回帰分析結果
    DAGを踏まえた回帰分析を行った結果(下表)によれば、(1)漁労支出(係数:0.732**)、(1)❜制度受取あり※の漁労支出(1.003***)の係数が統計的に有意(P<0.05)となりましたが、内訳項目((2)~(4))ごとには係数が有意となった介入変数はありませんでした。
    この結果から、個人経営体においては、交絡(漁獲量、CPI)を考慮した場合でも、漁労支出の増加(1%の支出増加)は、漁業収入(漁業生産物収入)を一定程度(0.732%程度、制度受取金等(漁業)を含めた場合で1.003%程度)増加させる可能性が高いと考えられます。
    ※ アウトカム変数として、漁業生産物収入【円/kg】に制度受取金等(漁業に関わる保険金の受取金、漁業災害補償法に基づき支払われた共済金の受取金、各種の損害補償金、補助・助成金等)を加算した値を利用


    (アウトカム変数)漁業生産物収入


  5. 流通段階別の価格における関連性分析
    魚種別に産地市場・消費地市場・小売価格の変動や相関関係、価格差の変化について把握しました。
    価格差は、産地市場価格※1と消費地市場価格※2では高価格帯のきはだ・めばちでやや大きい(631円)ものの、他3魚種では同程度(295~322円)となっており、消費地市場価格と小売価格※3では、魚体が大きく、また、小売段階で加工・調理が必要とされる魚種である、きはだ・めばち、ぶり類で価格差が大きくなっていました。
    価格差(産地市場価格と小売価格)の年次変化を見ると、4魚種とも価格差が拡大する傾向が見られ、特に2022年以降に顕著でした。


    流通段階別の価格差(2010-2023平均)価格差(産地と小売)の年次変化(2010年対比)


    ※1 産地市場価格は、産地水産物流通調査(年間調査・対象漁港計)
    ※2 消費地市場価格は、市場統計情報(全市場・鮮魚)(東京都中央卸売市場)
    ※3 小売価格は、小売物価統計調査(動向編・特別区部)(総務省統計局)

    例として、きはだ・めばちの産地市場・消費地市場・小売価格の相関関係は、以下の通りでした。

    例:きはだ・めばちの流通段階別価格の推移と相関分析結果


    流通段階別価格の推移(2015年対比)


    産地市場価格と小売価格は正の相関があるのに対し、産地市場価格と消費地市場価格、消費地市場価格と小売価格はほとんど相関がありませんでした。これは、消費地市場価格は年末年始の需要増による高騰など季節性が強いこと、また、小売段階ではまぐろ類の輸入品も含まれることが影響しているものと考えられます。


  6. 家計調査による需要の価格弾力性分析
    家計調査(二人以上の世帯)及び消費者物価指数(総合)を用い、回帰分析により、所得(消費支出)を考慮した需要(購入量)に対する価格弾性値(価格変動に対する購入量の変動の大きさ)を算出しました。
    回帰分析により算出した価格弾性値※(下図)によれば、鮮魚では、鮮魚計の価格弾性値が-1.91(1%の価格上昇に対し、購入量が1.91%減少)となり、魚種別に比較すると、あじ・さば・さんまは価格弾性値が高く(-2.85~-2.51)、えびは中間的(-1.02)、さけは価格弾性値が低い(-0.64)結果となりました。
    これに対し、貝類では、総じて価格弾性値が高い(-1より大きい)傾向が見られ、貝類計で-2.57(1%の価格上昇に対し、購入量が2.57%減少)となっています。
    ※ 価格弾性値の基準は-1(1%の価格上昇に対し、購入量が1%減少)を起点としている。


    回帰係数のP値

分析結果資料詳細版(PDF : 9,681KB)

お問合せ先

大臣官房統計部統計企画管理官

担当:統計データ分析支援チーム
代表:03-3502-8111(内線3591,3580)
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