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持続性の高い農業生産方式への取組状況調査の概要

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調査の目的

本調査は、農業が本来有する自然循環機能の維持・増進を図るため、化学肥料や農薬の使用を低減するとともに、たい肥による土づくりを行う環境保全型農業を推進する諸施策に必要な資料を得るため、農家における肥料、農薬の平均的な投入実態や持続性の高い生産技術に関する意向等を把握したものである。

 

調査対象

調査対象は、調査の時期に下記の調査対象作目を販売目的で作付けした農家とした。

調査対象作物

1.14年調査

露地野菜:トマト、きゅうり、なす、ピーマン、すいか、いちご、はくさい、キャベツ、ほうれんそう、ねぎ、たまねぎ、レタス、だいこん、 にんじん、さといも
施設野菜:トマト、きゅうり、なす、ピーマン、すいか、いちご、メロン
いも類:ばれいしょ、かんしょ
豆類:大豆

2.15年調査

露地果樹:りんご、ぶどう、日本なし、もも、温州みかん、かき、くり、うめ
施設果樹:温州みかん、ぶどう
露地花き類・花木:全ての品目
施設花き類・花木:全ての品目
工芸農作物:たばこ、茶、さとうきび、てんさい
麦類:小麦

 

調査事項

調査は、次に揚げる事項について行った。

1.調査対象作物の生産方式

(1)農薬の種類別投入状況
(2) 農薬以外の防除方法
(3) 化学肥料の成分別投入状況
(4) 有機質資材の投入状況
(5) 農産物残さの処理方法
(6) たい肥(コンポスト)の入手方法

2.持続性の高い農業生産方式への意向

(1)エコファーマー認定の意向
(2) 減農薬・減化学肥料栽培への意向

 

調査の時期

1. 14年調査
平成13年12月1日~14年11月30日の1年間の状況を平成14年12月1日現在で調査した。

2. 15年調査
平成14年12月1日~15年11月30日の1年間の状況を平成15年12月1日現在で調査した。

 

調査の方法

標本農家に調査票を郵送し、職員が回収する自計調査の方法により実施した。

 

集計・推計方法

1. 14年調査

抽出した標本7,856戸のうち、回答のあった7,189戸(有効回答率91.5%)について集計を行った。

(1) 肥料の投入量や農薬の投入回数等の数量データ

数量データの集計は、作目別に以下の方法により行った。

ア. 農業地域別結果(平均値)の集計方法

(ア)農家平均値
農家の作期別10a当たり肥料投入量等の数量データに、当該農家の当該作期における栽培面積を乗じた後、全作期分積み上げ、当該農家の年間延べ栽培面積で除して1作期の10a当たり平均値を算出した。

(イ)農業地域平均値
農業地域別に(ア)の農家平均値を積み上げ、当該農業地域内の全標本農家数で除して、当該農業地域平均値を算出した。

イ. 全国結果(平均値)の集計方法

アの(イ)で求めた当該農業地域平均値に当該農業地域の作付面積を乗じた後、すべての農業地域分を積み上げ、全国の作付面積(平成13年産野菜生産出荷統計、平成13年産作物統計より)で除して全国平均値を算出した。

(2) (1)以外のデータ

(1)以外のデータの集計は、該当した農家をカウントする方法により行った。
なお、選択項目については、各項目別に該当した農家数をカウントし、その構成比を求めた。

(3) 利用上の留意点

調査対象作目を栽培するために投入した有機質資材、化学肥料及び農薬について、1作栽培するために投入された数量について集計した。

ア. 有機質資材の投入量

標本農家が調査対象作目を1作栽培するために投入した有機質資材を、その種類別に集計した。

イ. 化学肥料の投入量

標本農家が調査対象作目を1作栽培するために投入した化学肥料を種類別に調査し、それを成分(窒素:N、りん酸:P2O5、加里:K2O)別、基肥及び追肥別等に集計した。

ウ. 農薬の投入回数

標本農家が調査対象作目を1作栽培するのに投入した農薬の投入回数を農薬種類別に集計した。なお、投入した農薬の製品(製剤)単位でカウントした投入実回数の他に、その製品に含まれる有効成分の数(成分数)をカウントした数値(投入延べ回数)を集計した。

 

2. 15年調査

抽出した標本6,372戸のうち、回答のあった5,976戸(有効回答率93.8%)について集計を行った。

(1) 肥料の投入量や農薬の投入回数等の数量データ

数量データの集計は、作目別に以下の方法により行った。

ア. 農業地域別結果(平均値)の集計方法

(ア)農家平均値
農家の年間の10a当たり肥料投入量等の数量データを、当該農家の年間栽培面積で除して1年間の10a当たり平均値を算出した。

(イ)農業地域平均値
14年調査と同様

イ. 全国結果(平均値)の集計方法

アの(イ)で求めた当該農業地域平均値に当該農業地域の作付面積を乗じた後、すべての農業地域分を積み上げ、全国の作付面積(平成14年産果樹生産出荷統計、平成14年産作物統計、平成14年産花き出荷統計より)で除して全国平均値を算出した。

(2) (1)以外のデータ

14年調査と同様

(3) 利用上の留意点

調査対象作目を栽培するために投入した有機質資材、化学肥料及び農薬について、年間の作付期間・回数等に係わらず、調査対象期間の1年間に投入された数量について集計した。

ア. 有機質資材の投入量

標本農家が調査対象作目を栽培するために投入した有機質資材を、その種類別に集計した。

イ. 化学肥料の投入量

標本農家が調査対象作目を栽培するために投入した化学肥料を種類別に調査し、それを成分(窒素:N、りん酸:P2O5、加里:K2O)別、基肥及び追肥別等に集計した。

ウ. 農薬の投入回数

標本農家が調査対象作目を栽培するのに投入した農薬の投入回数を農薬種類別に集計した。なお、投入した農薬の製品(製剤)単位でカウントした投入実回数の他に、その製品に含まれる有効成分の数(成分数)をカウントした数値(投入延べ回数)を集計した。

 

目標(実績)精度

標本数及び化学肥料の10a当たり投入量の標準誤差率は、以下のとおりである。

14年調査対象作物
標本数
有効回答数
回収率(%)
標準誤差率(%)
露地野菜
       
トマト
245
219
89.4
7.6
きゅうり
225
195
86.7
6.8
なす
355
328
92.4
4.7
ピーマン
135
116
85.9
9.1
すいか
186
169
90.9
8.7
いちご
227
124
54.6
8.4
はくさい
236
212
89.8
5.9
キャベツ
234
223
95.3
8.0
ほうれんそう
328
301
91.8
6.7
ねぎ
445
415
93.3
7.7
たまねぎ
631
577
91.4
3.2
レタス
612
580
94.8
3.8
だいこん
697
661
94.8
5.0
にんじん
441
403
91.4
1.2
さといも
343
322
93.9
5.2
施設野菜
       
トマト
311
287
92.3
6.5
きゅうり
216
204
94.4
10.9
なす
173
152
87.9
5.9
ピーマン
58
55
94.8
14.2
すいか
118
109
92.4
7.3
いちご
216
206
95.4
9.5
メロン
169
150
88.8
6.2
いも類
       
ばれいしょ
278
262
94.2
5.7
かんしょ
293
271
92.5
9.5
大豆
684
648
94.7
5.9

 

15年調査対象作物
標本数
有効回答数
回収率(%)
標準誤差率(%)
露地果樹
       
りんご
449
428
95.3
8.1
ぶどう
359
341
95.0
10.8
日本なし
437
423
96.8
4.4
もも
212
204
96.2
6.8
温州みかん
252
238
94.4
13.6
かき
321
306
95.3
5.5
くり
944
900
95.3
5.0
うめ
756
709
93.8
5.1
施設果樹
       
温州みかん
139
122
87.8
11.2
ふどう
220
211
95.9
5.7
露地花き類・花木
355
308
86.8
15.6
施設花き類・花木
283
256
90.5
10.5
工芸農作物
       
たばこ
387
371
95.9
3.7
531
482
90.8
4.1
さとうきび
190
171
90.0
8.1
てんさい
143
128
89.5
2.9
小麦
394
378
95.9
3.9

用語の解説

定義

1. 有機質資材類

(1) 有機質資材

植物残さや家畜ふん、そのたい肥化したもの等をいう。

(2) 動物質肥料

魚かす粉末、肉かす粉末、骨粉等、動物質の肥料をいう。

(3) 植物質肥料

なたね油かす、米ぬか油かす等、植物質の肥料をいう。

(4) ぼかし肥

油かす、骨粉、魚かすなどの有機質肥料を混ぜ合わせ、水分を加えて発酵させた肥料をいう。

(5) たい肥 (コンポスト)

家畜ふん尿たい肥、都市ごみコンポスト、汚泥コンポスト、バークたい肥等をいう。

(6) 家畜ふん尿たい肥

牛、豚、鶏等のふん尿をたい肥化したものをいう。

(7) 都市ごみコンポスト

都市から発生する生ごみ等の有機廃棄物をたい肥化したものをいう。

(8) 汚泥コンポスト

下水汚泥等をたい肥化したものをいう。

(9) バークたい肥

製材工場から排出される樹皮を主原料に、牛、豚、鶏のふんの他、各種の有機性廃棄物をたい肥化したものをいう。

 

2. 化学肥料類

(1) 化学肥料

化学的な方法によって、無機質原料から製造された肥料をいう。

(2) 単肥

通常は、窒素、りん酸、加里のうち1成分のみを含み、1回の製造単位で造られ、化成肥料(普通化成肥料、高度化成肥料)や配合肥料のように、更に加工や混合等の過程を経ていない肥料をいう。

(3) 普通化成肥料

窒素、りん酸、加里のうち2成分以上を含み、その含量が30%未満の化成肥料をいう。

(4) 高度化成肥料

窒素、りん酸、加里のうち2成分以上を含み、その含量が30%以上の化成肥料をいう。

(5) 配合肥料

固形の原料どうしを配合したもので、窒素、りん酸、加里の3要素のうち2成分以上を主成分として、それぞれの主成分の合計量10%以上を保証する肥料をいう。

(6) 肥効調節型肥料

通常使用される化学肥料は、即効性のものがほとんどであるが、肥料を薄い皮膜で被うこと等により、土壌における肥料成分の溶出や形態変化を物理的あるいは化学的方法により調節・制御し、作物の養分要求に応じて肥料成分を適期に供給することを目標に開発された肥料の総称である。
被覆肥料、化学合成緩効性肥料、硝酸化成抑制剤入窒素肥料等がある。

(7) 被覆肥料(コー ティング肥料)

化学肥料の粒をポリ塩化ビニリデン、パラフィンワックス等の微細な孔の開いた薄い皮膜で被覆し、肥料成分の溶出量や速度を物理的に調節するものをいう。

(8) 化学合成緩効性肥料

尿素とアルデヒド類を低縮合などで、難水溶性もしくは微生物による分解を受けにくくし、長期にわたって少しずつ窒素成分を溶出できるようにしたもの。
一般に「IB」、「CDU」、「UF」、「GU」、「オキサミド」等の文字が商品名に付加されている。

(9) 硝酸化成抑制材入窒素肥料

窒素質肥料は、通常アンモニア態の形で比較的安定しているが、硝酸態窒素になると土壌からの流亡、大気中への散逸が容易に行われることになる。このことから、アンモニア態から(亜)硝酸態への変化を抑制(微生物の活性を抑性)することにより肥効を維持する硝酸化成抑制材を混入した肥料をいう。
一般に「シジアン」、「ST」、「ASU」、「DCS」、「ATC」、「AM」、「MBT」等の文字が商品名に付加されている。

(10) 局所施肥

通常土壌全面に対して行われる施肥方法を作物の根域へ集中して施用する施肥方法をいう。この方法は、従来の全面全層施肥方法では作物の根域以外の部分へ使用された肥料については無駄になっていたものを作物根域への局所施肥に替えることにより、効率的な利用を図るものである。供給養分の作物による利用効率を向上させることにより、作物収量は維持しつつ、施肥量が節減できることから、環境負荷の軽減に効果的である。

 

3. 農薬類

(1) 農薬(化学農薬)

農産物等の生産、品質に悪影響を及ぼす害虫、病原菌、雑草等の駆除、発生の制御等を行うために農産物、土壌、施設等に使用する薬剤をいい、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤等の種類がある。

(2) 植物成長調整剤

植物の生理機能の増進または抑制などの目的で用いられる薬剤をいう。

(3) 生物農薬

農薬取締法(昭和23年法律第82号)第1条の2第2項に規定する天敵であって、同法第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けたものを利用する技術をいい、捕食性昆虫(「タイリク」等)、寄生性昆虫(「エンストリップ」等)のほか、拮抗細菌(「ボトキラー水和剤」等)、拮抗糸状菌(「プリファード水和剤」等)、BT剤等が含まれる。

(4) フェロモン剤

農作物を害する昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とする薬剤であって、農薬取締法第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けたものを利用する技術をいう。性フェロモンは、一般に昆虫の雌が分泌し、雄がその臭いに誘引される化学物質でその強い生物活性を利用して、害虫の発生予察及び防除に実用化されている。
虫害防除用としては、性フェロモン剤をほ場内に多数配置して、害虫の交尾を阻害し、次世代の個体数を減少させる交信攪乱と、性フェロモン剤の誘引作用を利用して殺虫剤を併用する方法等がある。

 

4. 農薬以外の防除方法

(1) 機械による除草

有害植物を機械的方法により駆除する技術をいう。

(2) 対抗植物の利用

土壌中の有害動植物を駆除し、又はそのまん延を防止する効果を有する植物を栽培する技術をいう。例えば、キタネグサレセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウなどを効果的に減少させる植物として、マリーゴールド、ギニアグラス、クロタラリア、ヘイオーツ、エビスグサなどがある。

(3) 被覆栽培

農作物を有害動植物の付着を防止するための資材で被覆する技術をいう。具体的には、べたかけ栽培技術、雨よけ栽培技術、トンネル栽培技術、袋かけ栽培技術等である。

(4) マルチ栽培

プラスチックフィルム等で土壌表面を被覆する栽培であり、肥料成分の溶脱防止、土壌の流亡防止、黒色マルチによる雑草発生防止、反射マルチによる害虫忌避などの効果がある。
また、田面を再生紙で被覆し、その紙マルチの遮光効率によって、雑草の発生を抑制する方法もある。

(5) 太陽熱消毒

農薬を使わずに太陽の熱やたい肥やわらなどの有機物が分解するときに出る熱を利用して土壌の殺菌を行うことをいう。

(6) 有袋栽培

果樹を食べる害虫を防ぐため果樹に袋をかけて栽培することをいう。

(7) エコファーマー

「持続性の高い農業生産方式」として農林水産省令で定める「たい肥等による土づくり」、「化学肥料の施用を減少させる効果の高い施肥技術」、「化学農薬の施用を減少させる効果の高い防除技術」のすべてを用いる導入計画を作成し、都道府県知事の認定を受けた者をいう。

 

約束事項

1. 有機質資材の投入状況

当該作物の栽培に使用した有機質資材について、「動物質肥料」、「植物質肥料」、「ぼかし肥」及び「たい肥」については投入した農家数割合及び10a当たり投入量を調査し、その他の有機質資材については投入の有無を調査した。

2. 化学肥料の投入状況

当該作物の栽培に使用した普通肥料(農林水産大臣・都道府県知事登録肥料及び指定配合肥料)及び特殊肥料(都道府県知事に届出)の10a当たり投入量について調査した。
窒素、りん酸、加里の3要素ベースでの投入を把握するため、これらを含まない土壌改良資材(バーミキュライト、パーライト等)、微量要素肥料(ほう素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、鉄等)、石灰質肥料、苦土質肥料等は対象外とした。

3. 農薬の投入状況

当該作物の栽培期間中に使用した農薬(農薬取締法による登録を受けていないものを除く。)を農薬種類ごとに投入回数を調査した。なお、展着剤(粉末の薬剤を水に溶かす時に加える補助剤で、薬剤を水中に均一に分散させ、葉への接着性を高めて薬効を維持させる働きを持つ薬剤)は対象外とした。

4. 農薬以外の防除方法

農薬以外の防除方法については、「機械による除草」、「対抗植物の利用」、「被覆栽培」、及び「マルチ栽培」に区分した。
なお、15年調査においては、「有袋栽培」及び「太陽熱消毒」を加えて区分した。

5. 化学肥料、化学農薬をともに地域の慣行の半分以下に縮減する栽培方法

農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では、「化学肥料、化学農薬の使用回数を、ともに地域の慣行の半分以下に縮減する栽培方法」で生産された農産物に「特別栽培」の表示ができることを定めているが、その栽培方法をいう。

 

その他

全国農業地域

全国農業地域の表章区分は、次のとおりである。

 

【全国農業地域】
1.北海道(北海道)
2.東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
3.北陸(新潟、富山、石川、福井)
4.関東・東山(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野)
5.東海(岐阜、静岡、愛知、三重)
6.近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
7.中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
8.四国(徳島、香川、愛媛、高知)
9.九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)
10.沖縄(沖縄)
11.関東農政局(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡)
12.東海農政局(岐阜、愛知、三重)
13.中国四国農政局(鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知)

 

注:東北農政局、北陸農政局、近畿農政局及び九州農政局の管区内の所属府県は、全国農業地域の所属府県と同じである。

 

お問合せ先

大臣官房統計部経営・構造統計課センサス統計室
担当者:農林漁業構造統計班
代表:03-3502-8111(内線3664)
ダイヤルイン:03-3502-8093