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農林水産省

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第3節 生産・流通システムの革新


担い手の高齢化、労働力不足等の課題を解決し、我が国の農業の成長産業化を図るためには、先端技術の導入による規模拡大や省力化、低コスト化を実現することが重要です。以下では、次世代施設園芸や、農業分野でのロボット技術やICT(*1)等の活用について記述します。


*1 Information and Communication Technologyの略。情報や通信に関する技術の総称

(次世代施設園芸の推進)

施設園芸は、野菜や果樹、花きの周年的な安定供給によって豊かな国民生活に貢献するとともに、収益性の高い農業経営の実現に向け大きな役割を果たす分野として期待されています。一方、冬に加温が必要な品目も多く、経営コスト削減や地球温暖化対策の面から化石燃料依存からの脱却が課題となっています。

図2-3-1 次世代施設園芸導入加速化支援事業実施地区一覧

農林水産省では、我が国の施設園芸を次世代に向かって発展させるため、大規模に集積した拠点において、木質バイオマス等の地域エネルギーと先端技術を活用し、化石燃料依存からの脱却、所得向上、地域雇用の創出を実現する次世代施設園芸を推進しています。平成27(2015)年3月末現在、全国9か所で整備が進められています(図2-3-1)。

これらの地域では、生産から調製・出荷までを一気通貫して行い、施設の大規模な集約によるコスト削減や、周年・計画生産により、所得の向上と地域雇用の創出等が期待されています。

平成26(2014)年7月には、農業界から経済界まで幅広い参加者から意見を聴取し、今後の施策へ反映させる「次世代施設園芸セミナー」(農林水産省主催)を開催しました。セミナーでは、次世代施設園芸の全国展開を進めるため、国内の優良事例や次世代施設園芸拠点の取組等について紹介しました。

 

(スマート農業の実現に向けた取組)

我が国の農業をめぐる高齢化や新規就農者の不足等の厳しい状況の下で、農業の競争力を強化し、魅力ある産業とするとともに、担い手がその意欲と能力を存分に発揮できる環境を創出していくためには、農業技術においても、省力化・軽労化や精密化・情報化等の視点からその革新を図っていくことが重要です。一方、他分野ではロボット技術やクラウドシステム(*1)を始めとしたICT等の活用が進展し、これらの技術革新が競争力の強化につながっており、農業分野でもその活用が期待されています。

このため、農林水産省では、ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業(スマート農業)の実現に向け、経済界等の協力を得て立ち上げた研究会において、平成26(2014)年3月、スマート農業の将来像や実現に向けたロードマップ、取組上の留意事項について概略的に整理しました(図2-3-2)。この内容を踏まえ、研究開発、導入実証や、ロボット技術の安全確保策等の検討が進められています。


*1 ネットワーク上にあるサーバー群(雲)のこと。データ等をクラウドに保存することで、利用者は自分のコンピュータでデータを加工・保存することなく、どこからでも、必要な時に利用することができる。

図2-3-2 スマート農業の将来像

(農業分野におけるロボット技術とICTの導入)

農業分野へのロボット技術とICTの導入は、労働力不足を補うことのほか、飛躍的な生産性の向上や、高齢者も含め若者・女性等、多様な人材が活躍できる環境の整備につながる重要な取組です。

このため、農林水産省では、平成27(2015)年2月に日本経済再生本部において本部決定された「ロボット新戦略」に基づき、GPS自動走行システム等を活用した作業の自動化や、人手に頼っている重労働の機械化・自動化、ロボットと高度なセンシング技術の連動による超省力・高品質生産等の実現に向けた課題を解決する革新的技術の開発・普及に向けた取組を推進しています。

また、担い手の高齢化が進む中、「匠の技」のデータ化・マニュアル化等や農業機械のアシスト装置の導入により、経験の浅い者や作業に不慣れな若者等も高度な技術を利用できることから、若い世代への円滑な技術継承や、新規就農者の増加が期待されています。

さらに、ICTを活用して蓄積されたデータの解析等を通じ、生産システムの高度化・効率化を図ることで、規模拡大が進む中においても、効率的な作業が可能となることも期待されます。


事例:ロボット技術やICTを活用した新たな農業の取組

(1)トラクター等の自動走行システムの開発

北海道札幌市
無人機と有人機の協調作業システム(無人機による耕起(左)、有人機による施肥播種(右))
無人機と有人機の協調作業システム
(無人機による耕起(左)、
有人機による施肥播種(右))

北海道大学を代表機関とする研究グループでは、農作業の省力化や大規模生産の実現に向け、トラクター等の農業機械の自動走行システムの開発に取り組んでいます。

トラクターの自動走行システムは、高性能GPS等により、トラクターの位置や動きを計測し、設定した経路に沿って進むためのハンドル操作、前後進操作、変速等、作業者が行う運転操作を自動で行うシステムです。現在、無人でも数cm単位の精度で作業が可能ですが、安全性の確保等が課題となっています。

このため、まずは無人機と有人機の協調作業システムの導入が推進されています。同システムでは、無人機が先行して耕起作業を行い、その後方で有人機が施肥播種(はしゅ)作業を行います。有人機の運転者が無人機の安全確認を行うことにより、完全な無人機よりも安全面に関する課題を減らすことができます。同システムを導入し、2つの作業を合わせて行うことで、作業可能期間が短い畑作の春作業等の効率化が実現し、生産規模拡大につながることが期待されます。

 

(2)ICTの活用により分散した水田を効率的に管理

愛知県弥富市
事務所内の端末で作業状況を一括管理
事務所内の端末で
作業状況を一括管理

愛知県弥富市(やとみし)の有限会社鍋八農産は、ICTを試験的に導入することで、分散した水田を少人数で効率的に管理しています。

同社は、同市を中心とした県内外で約170haの水田作の作業受託をしていますが、農地が約2千か所に分散しており、農作業の効率化が重要な課題となっていました。

このような中、平成23(2011)年、トヨタ自動車株式会社と農業IT管理ツールの共同開発を行い、翌年より試験運用を開始しました。同ツールの導入により、各作業員が所有するスマートフォン(高機能携帯端末)とGPS機能を活用し、事務所内においてリアルタイムな作業状況把握が可能となったほか、作業計画に対する進捗状況の把握が容易になりました。この結果、作業時間やミスの軽減、資材費削減等により、育苗費で25%、労務費で5%のコスト削減に成功しました。

また、平成26(2014)年度からは、トヨタ自動車株式会社や石川県の農業生産法人等から成るコンソーシアム「米づくりカイゼンネットワーク」が発足し、地域を越えた情報共有等により、更なるコスト削減や作業効率化に向けて同ツールの機能強化に取り組んでいます。

 

(援農者の確保・育成を図る体制の構築)

援農者向けの研修の様子
援農者向けの研修の様子

農産物の生産には、苗の定植や、摘果、収穫作業等の時期に一時的に多くの労働力を確保する必要があり、従来は近隣の方の臨時雇用等で対応してきました。しかしながら、近年では高齢化や人口減少が進行し、必要な労働力の確保が困難になってきています。

このため、農林水産省では、収穫期等の農繁期に、一時的に農作業を補助する「援農者」を確保・育成し、組織化する取組を支援しています。平成26(2014)年度から開始した「援農隊マッチング支援事業」では、援農者の確保を推進しており、普及指導員等による援農者向けの研修・セミナーの開催や作業マニュアルの作成を通じた技術習得を進めているほか、援農者同士のネットワークづくりを進めています。平成26(2014)年度は、14地区で700人を超える援農者が活躍しており、今後、援農隊データベースの整備等を行い、援農隊の活動を一層推進することとしています。

 

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