(2)地球温暖化対策への貢献
(気候変動に係る最新の知見を取りまとめた第5次評価報告書の公表)
平成26(2014)年11月、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC(*1))」総会において、人為的な温室効果ガス(*2)の排出による気候変動の現状及び今後の見通しについての最新の知見を取りまとめた第5次評価報告書(AR5)の統合報告書が承認・採択され、公表されました。今回の統合報告書において、工業化(1750年)以前と比べた温暖化を2℃未満に抑制する可能性の高いシナリオでは、今後、数十年間にわたり温室効果ガスの排出を大幅に削減し、今世紀末までに排出をほぼゼロにすることを要すること等が報告されました。また、農業分野に関しては、最も費用効率が高い緩和対策として農地・牧草地管理等が挙げられているなど、今後、気候変動枠組条約等、地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を与える重要な内容となっています。
(平成32(2020)年以降の新たな国際枠組みに向けた議論)
現在、全ての国が参加する平成32(2020)年以降の温室効果ガスの排出削減に関する新たな法的枠組みについて、平成27(2015)年の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)までに合意することを目標に国際交渉が行われています。平成26(2014)年12月には、ペルーのリマにおいて気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)が開かれ、平成32(2020)年以降の新たな枠組みについて、期間等各国が事務局に提出する約束草案に盛り込む情報等に関して合意が得られました。約束草案は、平成27(2015)年11月から12月にフランスのパリで開催予定の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に十分先立って、また、準備のできる国は平成27(2015)年第1四半期までに提出することが求められています。
(農業分野における温室効果ガスの排出削減は着実に進展)
我が国は、京都議定書(*1)の第一約束期間(平成20(2008)年から平成24(2012)年)において、温室効果ガスの排出量について基準年(*2)に比べて6%削減する目標が課せられましたが、第一約束期間中の合計排出量に森林による吸収量等を加味すると、5か年平均で基準年に比べてマイナス8.4%となり、目標を達成することとなります。
農林水産業においては、燃料の燃焼、家畜排せつ物の管理、肥料の施用等といった営農活動において温室効果ガスを排出しており、平成24(2012)年度の排出量は3,551万t-CO2)となっており、我が国全体の総排出量の2.6%を占めています(図2-6-3)。農林水産業における温室効果ガスの排出量の推移をみると、長期的には減少傾向にありますが、更なる排出削減の取組を推進していくために、ヒートポンプや木質バイオマス利用による加温設備等を用いた省エネ型施設園芸への転換等、省エネ農業機械の普及等の地球温暖化対策に引き続き取り組む必要があります。
(気候変動に対する適応策の導入・普及の推進)
我が国においても、地球温暖化等の気候変動の進行により、農作物の栽培適地の変化等食料生産面への影響が懸念されており、例えば、りんごの栽培適地が地球温暖化により変化する可能性があるとした予測があります(図2-6-4)。このような気候変動に対し、農林水産省では、農業への影響を軽減するため、品種や栽培技術の改良等の対策が進められています。平成25(2013)年の適応策の実施状況としては、水稲では「つや姫」、「きぬむすめ」等の高温耐性品種の導入や遅植え、水管理・肥培管理といった基本技術の徹底、うんしゅうみかんでは植物ホルモンの散布等による浮皮果の発生防止技術の導入、りんごでは「秋映(あきばえ)」といった優良着色系統品種の導入、ぶどうでは果実の着色を向上させる環状はく皮の導入、トマトでは遮光資材の導入、乳用牛ではダクト細霧冷却等の取組が進められています。
また、地球温暖化等の気候変動による影響への対処の観点から、政府全体の気候変動適応計画を平成27(2015)年夏頃を目途に策定することとなっています。これに対応して農林水産省では、平成26(2014)年4月に「農林水産省気候変動適応計画推進本部」を設置し、農林水産分野の適応計画について検討を進めています。
(J-クレジット制度により、温室効果ガス排出削減等の取組を推進)
温室効果ガスの排出削減・吸収を促すため、温室効果ガスの排出削減量等をクレジットとして認証する「J-クレジット制度」があります。
同制度は、省エネルギー機器の導入や森林管理等の取組による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして国が認証する制度で、省エネルギー機器による燃料コストの低減やクレジット売却益、環境に良い取組を行うことによるPR効果等のメリットがあるほか、クレジットを購入する側にも低炭素社会実行計画の目標達成、カーボン・オフセット(*1)への活用、地域への貢献等のメリットがあります。
具体的な事例としては、宮崎県の養豚農家による取組が挙げられます。この農家は、低たんぱく質飼料を用いることで、ふん尿由来の温室効果ガスである一酸化二窒素の排出を削減しており、生産した豚肉にクレジットを付与して販売することにより、この豚肉の購入者は、日常生活で排出する温室効果ガスを削減したということになります。今後、同制度を活用した農林漁業者による地球温暖化対策や生産物の付加価値向上、さらには地域の活性化につながる取組への波及が期待されています。
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX:03-6744-1526