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農林水産省

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第2節 鳥獣被害対策の推進


シカやイノシシ、サル等の野生鳥獣による農業被害や自然生態系への影響が深刻化する一方、高齢化等を背景として狩猟者等の鳥獣被害防止の担い手が減少しています。

以下では、鳥獣被害の現状や鳥獣被害対策の具体的な取組について記述します。


(鳥獣被害の現状)

野生鳥獣による農作物被害額は、近年、年間200億円前後で推移しています。このうち、獣類によるものが8割、鳥類によるものが2割を占めており、シカとイノシシによる被害額が依然として多くなっています(図3-2-1)。

鳥獣被害が深刻化・広域化する背景として、農山漁村の過疎化や高齢化の進行による耕作放棄地(*1)の増加、狩猟者の減少・高齢化による捕獲圧の低下、里山・森林管理の粗放化、近年の少雪傾向等に伴う野生鳥獣の生息環境の変化等が考えられます。

また、鳥獣被害は農業者の営農意欲を低下させ、耕作放棄地を増加させる一因となっていますが、耕作放棄地の増加が更なる鳥獣被害を招くという悪循環を生じさせており、被害額として数字に表れる以上に農村の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。

一方、捕獲の担い手である狩猟免許所持者数は、減少傾向にあるとともに高齢化が進んでいます(図3-2-2)。このうち、わな猟免許所持者数については増加がみられますが、銃猟免許所持者数は大きく減少しています。


*1 [用語の解説]を参照

(鳥獣被害対策の推進)

野生鳥獣による被害の深刻化、広域化に対応するため、農林水産省では、市町村が鳥獣被害防止特別措置法(*1)に基づく被害防止計画を作成し、鳥獣被害対策実施隊による捕獲や追い払い等の地域ぐるみの被害防止活動、侵入防止柵の整備、地域リーダーの育成、獣肉の利活用等を図る人材育成の取組を推進しています。

被害防止計画を作成した市町村数は1,409まで増加し、鳥獣被害が認められる全市町村(約1,500)の9割に達する一方、鳥獣被害対策実施隊を設置している市町村数は939まで増加したものの、引き続き設置の促進と体制の強化が必要となっています(表3-2-1)。

鳥獣被害は、農林水産業にとどまらず、生態系、生活環境等広い範囲に及ぶことから、環境省と農林水産省が共同で「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を取りまとめるなど、シカとイノシシの個体数及びニホンザルの加害群数を平成35(2023)年度までに半減させることを目指し、捕獲等の対策の強化を図ることとしています。

さらに、環境省が所管する「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」の一部改正法が平成26(2014)年5月に公布され、都道府県や国が鳥獣の管理のために行う捕獲等事業の創設、鳥獣の捕獲等を行う事業者に関する認定制度の導入、網猟免許及びわな猟免許の取得年齢の引下げ等を含む「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に改められることとなっています。

また、今後、野生鳥獣の捕獲数も増え、捕獲鳥獣の食肉利用(ジビエ)の増加が見込まれることから、平成26(2014)年11月に厚生労働省において「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を作成し、狩猟から消費に至るまでの各工程における安全性確保のための取組を推進することとしています。


*1 正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」

事例:鳥獣被害対策の取組

(1)地域住民が一体となった追い払いによるサル被害の軽減

三重県伊賀市
複数獣種に対応した防護柵(上段がサル用電気柵下段がシカ・イノシシ用ワイヤーメッシュ柵)
複数獣種に対応した防護柵
(上段がサル用電気柵
下段がシカ・イノシシ用
ワイヤーメッシュ柵)

三重県伊賀市(いがし)の阿波地域住民自治協議会は、10年ほど前から目立ち始めたサルの群れによる農作物被害や住居侵入に対応するため、平成21(2009)年から地域住民全員で山頂付近にまで徹底的に追い払うことで、サルが同地域を避けるようになりました。

さらに、サルやシカ等の複数獣種に対応した防護柵の設置や餌場にされにくい集落づくりを実践することで被害を大幅に軽減し、被害のために耕作を諦めざるを得なかった畑で営農を再開するなど、地域の活性化に大きく貢献しました。

サルは学習能力が高く人慣れするなどの理由から、被害軽減に成功する事例は少ないところですが、地域住民が自発的に被害防止活動の担い手となり、地域一体となった同協議会の取組は、サル被害に強い集落づくりのモデルとなり、周辺地域のみならず県内外の地域にも普及しています。

 

(2)実施隊の活動による捕獲の迅速化と獣肉のブランド化による地域活性化の取組

福岡県糸島市
地域でのイベントに出店しPR活動
地域でのイベントに出店し
PR活動

福岡県糸島市(いとしまし)の糸島市鳥獣害防止対策協議会は、民間の鳥獣被害対策実施隊員の任命による捕獲活動の迅速化、地域ぐるみでの侵入防止柵や緩衝帯の整備等により、同市の被害額の5割を占めていたイノシシによる被害を大きく軽減しました。

特に、地域住民からの捕獲要請に即日対応できるよう、比較的時間の融通が可能な自営業者を中心に実施隊員を任命し、活動することにより、捕獲頭数が飛躍的に増加しました。

加えて、イノシシの品質が劣化しない輸送方法(氷冷輸送)に取り組むことで高品質な獣肉を確保し、「浮嶽(うきだけ)くじら」としてブランド化に取り組むとともに、地元の大学と連携してソーセージ等の加工品を製品化するなどの取組も進めています。これらの地域一体的な取組は、他の地域の模範的なモデルとして注目されています。

 


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