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農林水産省

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第1節 令和元年度の災害からの復旧・復興


令和元(2019)年度も自然災害により我が国の農業基盤を揺るがす甚大な被害が発生しました。発生した災害への対応として、令和元年房総半島台風(台風第15号)、令和元年東日本台風(台風第19号)等では、早期に広い範囲で激甚災害に指定されることで、被災農業者等の負担軽減が図られました。また、被災農業者が営農を継続するために必要なきめ細かい支援対策を迅速に決定するとともに、査定前着工制度の活用促進や被災した地方公共団体等への国の技術系職員(MAFF-SAT)の派遣等により、被災地の早期復旧を全力で支援しました。

(1)近年多発する自然災害と農林水産業への被害状況

(農林水産関係の被害額は近年増加傾向)

近年、日本各地で地震や異常気象に伴う大規模な自然災害が頻発しています。令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風は強い勢力を保ったまま本州に上陸し、農林水産業に甚大な被害をもたらしました(図表4-1-1)。また、1時間降水量80mm以上の「猛烈な雨」の発生回数も近年増加しています(図表4-1-2)。

これらに伴い、農林水産関係の被害額は近年増加傾向となっています。令和元(2019)年は、全国で4,883億円の被害が発生し、平成30(2018)年に引き続き、東日本大震災(2兆3,841億円)のあった平成23(2011)年を除くと過去10年で最大級の被害額となりました(図表4-1-3)。

図表4-1-1 令和元年房総半島台風と令和元年東日本台風の台風経路図
図表4-1-2 1時間降水量80mm以上の年間発生回数(全国)
図表4-1-3 過去10年の農林水産関係被害額

データ(エクセル:39KB / CSV:2KB

(2)令和元年度発生災害による農林水産関係の被害状況

令和元(2019)年度においては、特に、6月下旬からの大雨、8月の前線に伴う大雨、9月の房総半島台風、10月の東日本台風等において、農作物、農林水産関係施設等に大きな被害が生じました(図表4-1-4、図表4-1-5)。

図表4-1-4 令和元(2019)年度の主な自然災害による農林水産関係の被害額

データ(エクセル:32KB / CSV:2KB

図表4-1-5 令和元(2019)年度の主な自然災害による農林水産関係の被害状況
流出した油が付着した稲(8月の前線に伴う大雨)

流出した油が付着した稲(8月の前線に伴う大雨)

浸水したキュウリ(8月の前線に伴う大雨)

浸水したキュウリ(8月の前線に伴う大雨)

被災したガラスハウス(令和元年房総半島台風)

被災したガラスハウス(令和元年房総半島台風)

強風のため倒伏した水稲(令和元年房総半島台風)

強風のため倒伏した水稲(令和元年房総半島台風)

冠水したりんご(令和元年東日本台風等)

冠水したりんご(令和元年東日本台風等)

堆積した稲わら(令和元年東日本台風等)

堆積した稲わら(令和元年東日本台風等)

(3)令和元年度発生災害への対応

(迅速な被害把握に向けた人的支援)

近年、自然災害の多発と被害の甚大化に、被災地方公共団体の深刻な人員不足等もあいまって、迅速な被害の把握や被災地の早期復旧に支障が生じている場合があります。

このため、農林水産省では、災害発生後に被災地方公共団体等へ速やかにリエゾンを派遣し、迅速な被害の把握に努めています(図表4-1-6)。

令和元年房総半島台風では、台風上陸の翌日には、国の職員を被災地へ派遣したほか、令和元年東日本台風等では、被災地方公共団体に延べ871人日のリエゾンを派遣しました。

図表4-1-6 被災地方公共団体への人的支援の取組(令和元年東日本台風等)

(プッシュ型による食料支援)

政府は、8月の前線に伴う大雨、令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風に関し、発災当初から、必要な食料等の物資が避難所等の被災者に速やかに行き届くようにするため、佐賀県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、長野県の7県に対し地域の実情に応じてプッシュ型支援を行いました。

政府が支援した物資のうち食料及び飲料は、令和元年房総半島台風では、食料約30万食、飲料約25万本となり、令和元年東日本台風では、食料約18万点、飲料約36万本となりました。

(早期かつ広い範囲で激甚災害を指定)

被災地方公共団体等からは、復旧・復興に迅速に取り組むため、激甚災害の指定が強く望まれています。

このため、令和元(2019)年は、8月から9月の前線に伴う大雨(*1)、令和元年東日本台風等について広い範囲で激甚災害に指定されました。また、被災地方公共団体等からは激甚災害指定の早期化も強く望まれていたことから、平成30(2018)年では事前公表まで1週間から2週間程度要していたところ、令和元年東日本台風では、発災から4日後に激甚災害指定見込みの事前公表が行われました(図表4-1-7)。

これにより、被災地方公共団体等は財政面での不安なく、迅速に復旧・復興に取り組むことが可能になるとともに、農業関係では、農地・農業用施設、農林水産業共同利用施設の災害復旧事業について、被災農業者等の負担軽減が図られました。

図表4-1-7 平成30(2018)年度、令和元(2019)年度発生災害における激甚災害指定

*1 台風第10号、第13号、第15号及び第17号の暴風雨を含む。

(農林水産省緊急自然災害対策本部の設置)

令和元年東日本台風等の特に甚大な被害が発生した災害では、発災前から農林水産大臣を本部長とする「農林水産省緊急自然災害対策本部」を開催し、テレビ会議システムを通じて地方農政局長等から被害状況の情報を収集するとともに、発災後は、プッシュ型支援や人的支援等に最優先に取り組みながら、現地調査、必要な対策について迅速に取りまとめました。

(「被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージ」の取りまとめ)

令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風等による被害を受けて、被災地のニーズや地域ごとの特性を踏まえつつ、被災者の生活・生業の再建に向け、令和元(2019)年11月7日に緊急に対応すべき施策として「被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージ」が政府(被災者生活支援チーム)で取りまとめられました(図表4-1-8)。このパッケージに基づき、被災農林漁業者の安心感を確保し、被災地方公共団体が安心して復旧・復興に取り組めるよう、切れ目なく、予備費等の財政措置が講じられました。

図表4-1-8 対策パッケージの主なポイント

(「農林水産関係被害への支援対策」を迅速に決定し早期復旧を支援)

水稲の生産者(千葉県佐倉市)から、周辺ほ場から流れてきた稲わらの堆積状況について説明を受ける農林水産大臣(中央)

水稲の生産者(千葉県佐倉市)から、周辺ほ
場から流れてきた稲わらの堆積状況について
説明を受ける農林水産大臣(中央)

農林水産省では、令和元(2019)年度に発生した自然災害のうち、被害が甚大であった山形県沖の地震については令和元(2019)年7月に、8月から9月の前線に伴う大雨と令和元年東日本台風等については10月に、被災状況や現場の要望等を踏まえながら、営農を継続するために必要な「農林水産関係被害への支援対策」を迅速に決定しました。これらの支援対策は、激甚災害指定の範囲に合わせる形で広い範囲の大雨や台風が対象になっているほか、各災害による被害の特徴等を踏まえ、支援内容の充実が図られました。

支援対策決定後は、被災地に担当職員を派遣して、地方公共団体や農協等の関係者を対象に説明会を開催するとともに、被災した農林漁業者を積極的に訪問して相談に乗るなど、支援対策の周知を図りました。

また、被災した地方公共団体等への国の技術系職員(MAFF-SAT)の派遣や地方公共団体間の職員派遣の促進、民間コンサルタントの確保に向けた調整を行うなど、被災地の早期復旧を人的・技術的な面から支援しました(図表4-1-9)。なお、令和元年東日本台風等では、災害復旧事業の技術指導等を支援するため、国の技術系職員(MAFF-SAT)を被災県へ延べ1,677人日派遣しました(図表4-1-10)。

さらに災害復旧事業では、被災した農地、農業用水路等の農業用施設の早期復旧を支援するため、復旧を急げば次の作付けに間に合う場合等には、災害査定を待たずに復旧工事に着手できる査定前着工制度の活用を促進しました。

図表4-1-9 被災地の早期復旧に向けた人的・技術的な面からの支援
図表4-1-10 被災地方公共団体への技術的支援等の取組(令和元年東日本台風等)

(4)令和元年度発生災害の復旧状況

(令和元年房総半島台風からの復旧・復興は着実に進展)

令和元年房総半島台風で被災した農業用ハウスについては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型等により、早期の営農再開に向け、各地で事前着工が進められました。

酪農・畜産関係については、台風に伴い発生した停電、道路交通事情の悪化等に伴い、生乳廃棄が発生しましたが、生産者団体が中心となり、稼働している乳業工場への生乳の配送調整を実施したほか、経済産業省の協力により電源車を配備したクーラーステーション1か所も復電しました。乳業工場では順次停電が解消し、稼働を再開しました。

このように、令和元年房総半島台風から、復旧・復興は着実に進展しています。農林水産省では、被災した農業者の速やかな経営再開に向け、補正予算等を活用して支援を行いました。

(令和元年東日本台風等からの復旧・復興は着実に進展)

稲わらの除去の様子(令和元年東日本台風等)

稲わらの除去の様子(令和元年東日本台風等)

令和元年東日本台風等により土砂流入等があった水田のうち、土砂の流入量が多く災害復旧事業を必要とする水田約2,100haについては、人的・技術的支援を行いながら、令和2(2020)年1月末までに災害査定が完了し、順次工事の発注が行われています。その他の水田約15,600haについては、農家の自力復旧や堆積した稲わらの撤去、土づくり等を実施しました。

果樹の浸水被害については、土砂が多く堆積した園地において、水田と同様に令和2(2020)年1月末までに災害査定が完了し、災害復旧事業等による土砂撤去が進められたほか、長野県や福島県等では、令和2(2020)年3月中旬までに、樹勢回復に向けた泥やごみの撤去、剪定(せんてい)等の作業が樹体を維持する全ての被災園地で実施されました。

このように、令和元年東日本台風等からの復旧・復興は着実に進展しています。農林水産省では、被災した農業者の速やかな経営再開に向け、補正予算等を活用して支援を行いました。



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