1 国際的な動向等に対応した食品の安全確保と消費者の信頼の確保
リスクアナリシスに基づいた食品の安全確保としては、科学的知見に基づき、客観的かつ中立公正に食品健康影響評価(リスク評価)を実施しました。
リスクコミュニケーションの推進としては、食品の安全に関するリスク評価や施策等について、国民の意見を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するとともに、消費者、事業者、生産者等の関係者による情報や意見の交換の促進を図るため、関係府省や地方公共団体、消費者団体等と連携した意見交換会、施策の実施状況の公表、Webサイト等を通じた分かりやすく効果的な情報発信、意見・情報の募集等を実施しました。
(1)科学の進展等を踏まえた食品の安全確保の取組の強化
a食品安全に関するリスク管理を一貫した考え方で行うための標準手順書に基づき、農畜水産物や加工食品、飼料中の有害化学物質・有害微生物の調査や安全性向上対策の策定に向けた試験研究を実施しました。
b試験研究や調査結果の科学的解析に基づき、施策・措置に関する企画や立案を行い、生産者・食品事業者に普及するとともに、その効果を検証し、必要に応じて見直しました。
c情報の受け手を意識して、食品安全に関する施策の情報を発信しました。
d食品中に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度導入時に残留基準を設定した農薬等や新たに登録等の申請があった農薬等について、食品健康影響評価結果を踏まえた残留基準の設定、見直しを推進しました。
e食品の安全性等に関する国際基準の策定作業への積極的な参画や国際基準の策定等の過程に参画できる人材の育成、国内における情報提供や意見交換を実施しました。
ア 生産段階における取組
(ア)生産資材の適正な使用
生産資材(肥料、飼料・飼料添加物、農薬、動物用医薬品)の適正使用を推進するとともに、科学的データに基づく生産資材の使用基準、有害物質等の基準値の設定・見直し、薬剤耐性菌のモニタリングに基づくリスク低減措置等を行い、安全な農畜水産物の安定供給を確保しました。
肥料については、堆肥と化学肥料の配合を可能とする配合規制の緩和や原料管理制度の導入等を措置する「肥料取締法の一部を改正する法律」が第200回国会で成立し、改正法の内容に関する周知と具体的な運用ルールの検討を行いました。
農薬については、平成30(2018)年に改正された「農薬取締法」(昭和23年法律第82号)に基づき、農薬の安全性に関する審査の充実を図ることとしており、令和元(2019)年6月に、農薬の使用者や蜜蜂への影響についての新たな評価に関するガイドラインを公表しました。
また、蜜蜂の被害件数及び都道府県による被害軽減対策等を把握するとともに、国内外の知見を収集し、これらに基づき必要な措置を検討しました。
(イ)GAP(農業生産工程管理)の推進
農産物においては、令和元(2019)年度末までにGAP認証取得経営体数を平成29(2017)年4月の3倍以上(13,500経営体)にすることを目指し、各種政策を通じてGAPの取組拡大を推進するとともに、ほぼ全ての国内の産地における国際水準のGAPの実施を目指し、令和2(2020)年度中に「GAP共通基盤ガイドライン」を国際水準に改訂するために必要な取組を実施しました。
畜産物においては、JGAP家畜・畜産物やGLOBALG.A.P.の認証取得、GAPの認証取得に向けたステップアップを目指す「GAP取得チャレンジシステム」の取組拡大を図りました。
イ 製造段階における取組
(ア)HACCP(危害要因分析・重要管理点)に沿った衛生管理が制度化されることを踏まえ、中小規模の食品等事業者が円滑に対応できるよう、HACCPの知識を普及する研修、業界団体等によるHACCP導入の手引書作成、施設整備に対して「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」(平成10年法律第59号)による金融措置等の支援を実施しました。
(イ)食品等事業者に対する監視指導や事業者による自主的な衛生管理を推進しました。
(ウ)食品衛生監視員の資質向上や検査施設の充実等を推進しました。
(エ)長い食経験を考慮し使用が認められている既存添加物については、毒性試験等を実施し、安全性の検討を推進しました。
(オ)国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている食品添加物については、国が主体的に指定に向けて検討しました。
(カ)保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品)を始めとした健康食品について、事業者の安全性の確保の取組を推進するとともに、保健機能食品制度の普及・啓発に取り組みました。
(キ)SRM(特定危険部位)の除去・焼却、BSE(牛海綿状脳症)検査の実施等により、食肉の安全を確保しました。
ウ 危機管理等に関する取組
(ア)食品関係事業者のコンプライアンス確立のための取組
食品関係事業者の自主的な企業行動規範等の策定を促すなど食品関係事業者のコンプライアンス(法令の遵守及び倫理の保持等)確立のための各種取組を促進しました。
(イ)危機管理体制の整備
a食品の摂取による人の健康への重大な被害が拡大することを防止するため、関係府省庁の消費者安全情報総括官等による情報の集約及び共有を図りました。
b食品安全に関する緊急事態等における対応体制を点検・強化しました。
c2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等における食品への意図的な毒物等の混入を防止するため、食品防御対策の構築に取り組みました。
エ 輸入に関する取組
輸出国政府との二国間協議や在外公館を通じた現地調査等の実施、情報等を入手するための関係府省の連携の推進、監視体制の強化等により、輸入食品の安全性の確保を図りました。
(2)食品表示情報の充実や適切な表示等を通じた食品に対する消費者の信頼の確保
ア 食品表示の適正化の推進
(ア)食品表示に関する規定を一元化した「食品表示法」(平成25年法律第70号)の下、関係府省の連携を強化して立入検査等の監視業務を実施するとともに、科学的な分析手法の活用等により、効果的・効率的な監視を実施しました。
また、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)に基づき、関係府省が連携した監視体制の下、外食メニュー等の適切な表示を推進しました。
(イ)輸入品以外の全ての加工食品に対して、原料原産地表示を行うことが義務付けられた新たな原料原産地表示制度については、消費者、事業者等への普及・啓発を行い、理解促進を図りました。
(ウ)米穀等については、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(平成21年法律第26号。以下「米トレーサビリティ法」という。)により産地情報伝達の徹底を図りました。
(エ)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う中国産輸入原材料の供給不足を受け、中国産として表示を行っている商品について、制度を弾力的に運用する通知を消費者庁と連名で発出しました(食品表示法及び米トレーサビリティ法)。
イ 流通段階における取組
(ア)食品事故等発生時の原因究明や商品回収等の円滑化に資するため、食品のトレーサビリティに関し、「実践的なマニュアル」の活用及びフードチェーンを通じた具体的な取組モデルの提供等新たな推進方策の策定等により、その普及・啓発に取り組みました。
(イ)米穀等については、米トレーサビリティ法に基づき、制度の適正な運用に努めました。
(ウ)国産牛肉については、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(平成15年法律第72号)による制度の適正な実施が確保されるようDNA分析技術を活用した監視等を実施しました。
ウ フード・コミュニケーション・プロジェクトの推進
消費者の「食」に対する信頼向上に向けた食品関係事業者の主体的な活動を促すため、フードチェーンの各段階で事業者間のコミュニケーションを円滑に行い、食品関係事業者の取組を消費者まで伝えていくためのツールの普及等を進めました。
エ 消費者への情報提供
「消費者の部屋」等において、消費者からの相談を受け付けるとともに、特別展示等を開催し、農林水産行政や食生活に関する情報を幅広く提供しました。
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