1 東日本大震災からの復旧・復興
「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成31(2019)年3月改定)に沿った復興に向けた支援として、「農業・農村の復興マスタープラン」(平成29(2017)年6月改定)や「避難指示解除準備区域等における公共インフラ復旧の工程表」に沿って、農地の大区画化等の取組を推進するとともに、被害が甚大な農地や避難指示区域内の農地の復旧と早期の営農再開に向けた支援を行いました。
また、「東日本大震災復興特別区域法」(平成23年法律第122号)に沿って、関係府省が連携し、津波被災地域等の円滑かつ迅速な復興を図りました。
(1)地震・津波災害からの復旧・復興
ア 農地等の生産基盤の復旧・整備
(ア)被災した農地や農業用施設等の着実な復旧を進めました。
(イ)地震により損壊のおそれがある農業水利施設の改修・整備等を実施しました。
(ウ)福島県(避難区域を除く。)においては、個々の市町村の状況に応じて、災害廃棄物等の処理を進めることが必要であり、災害廃棄物処理代行事業により、市町への支援を継続しました。避難区域については、「対策地域内廃棄物処理計画」(平成25(2013)年12月改定)に基づき、国が災害廃棄物等の処理を着実に進めました。
イ 経営の継続・再建
(ア)東日本大震災により被災した農業者等に対して、速やかな復旧・復興のために必要となる資金が円滑に融通されるよう利子助成金等を交付しました。
(イ)海水が流入した浸水農地においても、除塩により収穫が可能と見込まれる農地については、現地調査を行い、水稲等の生育状況を踏まえて共済引受を行いました。
ウ 東日本大震災農業生産対策交付金による生産手段の回復
震災の影響により低下した被災地の生産力の回復、農畜産物の販売力の回復等に向けた取組を支援するため、都道府県向け交付金を交付しました。
エ 再生可能エネルギーの導入
被災地域に存在する再生可能エネルギーを活用し小水力等発電施設の整備に係る調査設計等の取組を支援しました。
オ 農山漁村対策
被災産地の復興・創生のため、状況変化等に起因して新たに現場が直面している課題を対象に先端技術の現地実証を行うとともに、実用化された技術体系の速やかな社会実装を促進しました。
カ 東日本大震災復興交付金
(ア)被災市町村が農業用施設・機械を整備し、被災農業者に貸与等することにより、被災農業者の農業経営の再開を支援しました。
(イ)震災によって著しい被害を受けた地域において、畦畔(けいはん)除去等による区画拡大や暗渠(あんきょ)排水等の農地の整備、老朽施設の更新等の農業水利施設の整備をきめ細かく支援しました。
(ウ)被災地域における農地・農業用施設や集落道等の整備を推進しました。
(エ)被災地域の復旧・復興のため、生産施設、地域間交流拠点施設等の整備を支援しました。
(2)原子力災害からの復旧・復興
ア 食品中の放射性物質の検査体制及び食品の出荷制限
(ア)食品中の放射性物質の基準値を踏まえ、検査結果に基づき、都道府県に対して食品の出荷制限・摂取制限の設定・解除を行いました。
(イ)都道府県等に食品中の放射性物質の検査を要請しました。また、都道府県の検査計画策定の支援、都道府県等からの依頼に応じた民間検査機関での検査の実施、検査機器の貸与・導入等を行いました。さらに、都道府県等が行った検査の結果を集約し、公表しました。
(ウ)消費者の安全・安心を一層確保するため、独立行政法人国民生活センターと共同して、希望する地方公共団体に放射性物質検査機器を貸与し、消費サイドで食品の放射性物質を検査する体制の整備を支援しました。
イ 稲の作付再開に向けた支援
令和2(2020)年産稲の作付制限区域及び農地保全・試験栽培区域における稲の試験栽培、作付再開準備区域における実証栽培等の取組を支援しました。
ウ 放射性物質の吸収抑制対策
放射性物質の農作物への吸収抑制を目的とした資材の施用、品種・品目転換等の取組を支援しました。
エ 農業系副産物循環利用体制の再生・確立
放射性物質の影響から、利用可能であるにもかかわらず循環利用が寸断されている農業系副産物の循環利用体制の再生・確立を支援しました。
オ 避難区域等の営農再開支援
(ア)避難区域等において、除染完了後から営農が再開されるまでの間の農地等の保全管理、鳥獣被害防止緊急対策、放れ畜対策、営農再開に向けた作付け・飼養実証、避難先からすぐに帰還できない農家の農地の管理耕作、収穫後の汚染防止対策、水稲の作付再開、新たな農業への転換及び農業用機械・施設、家畜等の導入を支援しました。
(イ)福島相双復興官民合同チームの営農再開グループが、農業者を個別に訪問して、要望調査や支援策の説明を行いました。
(ウ)原子力被災12市町村に対し、福島県や農業協同組合と連携して人的支援を行い、営農再開を加速化しました。
カ 農産物等輸出回復
諸外国・地域において日本産食品に対する輸入規制が行われていることから、関係省庁が協力し、各種資料・データを提供しつつ輸入規制の緩和・撤廃に向けた働き掛けを実施しました。
キ 福島県産農産物等の風評の払拭
福島県の農業の再生に向けて、生産から流通・販売に至るまで、風評の払拭を総合的に支援しました。
ク 農産物等消費拡大推進
被災地及び周辺地域で生産された農林水産物及びそれらを活用した食品の消費の拡大を促すため、生産者や被災地の復興を応援する取組を情報発信するとともに、被災地産食品の販売促進等、官民の連携による取組を推進しました。
ケ 農地土壌等の放射性物質の分布状況等の推移に関する調査
今後の営農に向けた取組を進めるため、農地土壌等の放射性核種の濃度を測定し、農地土壌の放射性物質濃度の推移を把握しました。
コ 放射性物質対策技術の開発
被災地の営農再開のため、放射性セシウム吸収抑制対策としてのカリウム施肥の適正化、除染作業に伴い低下した農地の生産力の回復、農地の省力的維持管理のための技術開発等を行いました。
サ ため池等の放射性物質のモニタリング調査、ため池等の放射性物質対策
ため池等における水質・底質の放射性物質の経年変化等を把握するため、放射性物質のモニタリング調査等を行いました。また、市町村等がため池の放射性物質対策を効果的・効率的に実施できるよう技術的助言等を行いました。
シ 東電福島第一原発事故で被害を受けた農林漁業者への賠償等
東電福島第一原発事故により農林漁業者等が受けた被害については、東京電力ホールディングス株式会社から適切かつ速やかな賠償が行われるよう、関係省庁、東京電力ホールディングス株式会社等との連絡を密にし、必要な情報提供や働き掛けを実施しました。
ス 食品と放射能に関するリスクコミュニケーション
食品中の放射性物質に関する消費者の理解を深めるため、関係府省、各地方公共団体及び消費者団体等が連携した意見交換会等のリスクコミュニケーションの取組を促進しました。
セ 福島再生加速化交付金
(ア)農地・農業用施設の整備や農業水利施設の保全管理、ため池の放射性物質対策等を支援しました。
(イ)生産施設、地域間交流拠点施設等の整備を支援しました。
(ウ)地域の実情に応じ、農地の畦畔(けいはん)除去による区画拡大や暗渠(あんきょ)排水整備等の簡易な基盤整備を支援しました。
(エ)被災市町村が農業用施設・機械を整備し、被災農業者に貸与等することにより、被災農業者の農業経営の再開を支援しました。
(オ)木質バイオマスや小水力等再生可能エネルギー供給施設、木造公共建築物等の整備を支援しました。
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