2 大規模自然災害への備え
(1)災害に備える農業経営の取組の全国展開等
ア自然災害等の農業経営へのリスクに備えるため、農業用ハウスの保守管理の徹底や補強、低コスト耐候性ハウスの導入、農業保険等の普及促進・利用拡大、農業版BCPの策定等、災害に備える農業経営に向けた取組を全国展開しました。
イ地域において、農業共済組合や農業協同組合等の関係団体等による推進体制を構築し、作物ごとの災害対策に係る農業者向けの研修やリスクマネジメントの取組事例の普及、農業高校、農業大学校等における就農前の啓発の取組等を推進しました。
ウ卸売市場における電源確保対策や業務継続のための施設整備等を推進しました。
エ基幹的な畜産関係施設等における非常用電源確保対策を推進しました。
(2)異常気象などのリスクを軽減する技術の確立・普及
地球温暖化に対応する品種・技術を活用し、「強み」のある産地形成に向け、生産者・実需者等が一体となって先進的・モデル的な実証や事業者のマッチング等に取り組む産地を支援しました。
(3)農業・農村の強靱(きょうじん)化に向けた防災・減災対策
「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」等に基づき、農業水利施設・ため池の整備や農業用ハウスの災害被害防止等に取り組むとともに、令和3(2021)年度以降の対策として中長期的に取り組むべき国土強靱化施策を加速化・深化させるため「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定しました。
ア基幹的な農業水利施設やため池等の耐震診断、耐震対策や豪雨対策等のソフト面とハード面を組み合わせた防災・減災対策を実施しました。特に、ため池については、防災重点ため池を中心に、防災・減災対策の一層の推進を図りました。
イ「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」に基づき、ため池の決壊による周辺地域への被害の防止に必要な措置を進めました。
ウ防災重点農業用ため池に係る防災工事等を集中的かつ計画的に推進する「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」(令和2年法律第56号)が令和2(2020)年10月に施行されました。同法に基づく都道府県の推進計画により防災工事等が集中的かつ計画的に推進できるよう、補助事業制度の拡充や地方財政措置の充実を図りました。
エ気候変動による降雨量の増大や水害の激甚化・頻発化が予測されるなど水災害リスクの増大に備えるため、流域全体の治水対策を検討する流域治水協議会に農業関係者と連携して参画するとともに、大雨により水害が予測される際に、<1>事前に農業用ダムの水位を下げて雨水を貯留する「事前放流」、<2>水田に雨水を一時的に貯留させる「田んぼダム」、<3>ため池への雨水の一時的な貯留、<4>農作物への被害のみならず、市街地や集落の湛水(たんすい)被害も防止・軽減させる排水施設の整備等流域治水の取組を通じた防災・減災対策を強化しました。
オ平成31(2019)年4月に改定した排水の計画基準に基づき、農業水利施設等の排水対策を推進しました。
カ津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害等から農地等を防護するため、海岸保全施設の整備等を実施しました。
(4)初動対応をはじめとした災害対応体制の強化
ア災害対応体制の強化のため、地方農政局等と農林水産本省との連携体制の構築を促進するとともに、地方農政局等の体制を強化しました。
イ地方公共団体における災害対応職員の不足に対応するため、国からの派遣人員(MAFF-SAT)の充実等、国の応援体制の充実を図りました。
ウ被災地のニーズの変化を的確に捉え、被災者に寄り添った丁寧な対応を行うため、被災者支援のフォローアップ体制の充実を図りました。
(5)不測時における食料安定供給のための備えの強化
ア食料のサプライチェーンの機能を維持するため、食品産業事業者によるBCPの策定や事業者、地方公共団体等の連携・協力体制を構築しました。また、卸売市場における電源確保対策や業務継続のための施設整備等を促進しました。
イ米の備蓄運営について、米の供給が不足する事態に備え、国民への安定供給を確保するため、100万t程度(令和2(2020)年6月末時点)の備蓄保有を行いました。
ウ輸入依存度の高い小麦について、大規模自然災害の発生時にも安定供給を確保するため、外国産食糧用小麦需要量の2.3か月分を備蓄し、そのうち政府が1.8か月分の保管料を助成しました。
エ輸入依存度の高い飼料穀物について、不測の事態における海外からの供給遅滞・途絶、国内の配合飼料工場の被災に伴う配合飼料の急激な逼迫(ひっぱく)等に備え、配合飼料メーカー等がBCPに基づいて実施する飼料穀物の備蓄、災害に強い配合飼料輸送等の検討の取組に対して支援しました。
オ食品の家庭備蓄の定着に向けて、企業、地方公共団体や教育機関と連携しつつ、ローリングストック等による日頃からの家庭備蓄の重要性や、乳幼児、高齢者、食物アレルギー等への配慮の必要性に関する普及啓発を行いました。
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883