4 国際的な動向等に対応した食品の安全確保と消費者の信頼の確保
(1)科学の進展等を踏まえた食品の安全確保の取組の強化
科学的知見に基づき、国際的な枠組みによるリスク評価、リスク管理やリスクコミュニケーションを実施します。
(ア)食品安全に関するリスク管理を一貫した考え方で行うための標準手順書に基づき、農畜水産物や加工食品、飼料中の有害化学物質・有害微生物の調査や安全性向上対策の策定に向けた試験研究を実施します。
(イ)試験研究や調査結果の科学的解析に基づき、施策・措置を企画・立案し、生産者・食品事業者に普及するとともに、その効果を検証し、必要に応じて見直します。
(ウ)情報の受け手を意識して、食品安全に関する施策の情報を発信します。
(エ)食品中に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度導入時に残留基準を設定した農薬等や新たに登録等の申請があった農薬等について、農薬等を適正に使用した場合の作物残留試験結果や食品健康影響評価結果等を踏まえた残留基準の設定や見直しを推進します。
(オ)食品の安全性等に関する国際基準の策定作業への積極的な参画、国内における情報提供や意見交換を実施します。
(カ)関係府省庁の消費者安全情報総括官等による情報の集約・共有を図るとともに、食品安全に関する緊急事態等における対応体制を点検・強化します。
(キ)食品関係事業者の自主的な企業行動規範等の策定を促すなど、食品関係事業者のコンプライアンス確立のための各種取組を促進します。
ア 生産段階における取組
生産資材(肥料、飼料・飼料添加物、農薬及び動物用医薬品)の適正使用を推進するとともに、科学的知見に基づく生産資材の使用基準、有害物質等の基準値の設定・見直し、薬剤耐性菌のモニタリングに基づくリスク低減措置等を行い、安全な農畜水産物の安定供給を確保します。
(ア)肥料については、国内資源を活用した肥料の利用拡大に向け、令和5(2023)年度に創設した「菌体りん酸肥料」の周知を進めます。
(イ)農薬については、「農薬取締法」(昭和23年法律第82号)に基づき、農薬の使用者や蜜蜂への影響等の安全性に関する審査を行うとともに、全ての農薬について順次、最新の科学的知見に基づく再評価を進めます。
(ウ)飼料・飼料添加物については、家畜の健康影響や畜産物を摂取した人の健康影響のリスクが高い有害化学物質等の汚染実態データ等を優先的に収集し、有害化学物質等の基準値の設定・見直し等を行い、飼料の安全確保を図ります。飼料関係事業者における飼料のGMP(適正製造規範)の導入推進や技術的支援により、より効果的・効率的に飼料の安全確保を図ります。
(エ)動物用医薬品については、モニタリング結果を関係者に共有の上、意見交換を行うほか、治療に抗菌薬を多用する疾病の制御や予防法の技術伝達といった畜種別の課題に応じた薬剤耐性対策を検討します。さらに、動物用抗菌剤の農場単位での使用実態を把握できる仕組みの検討を進めます。
イ 製造段階における取組
(ア)HACCPに沿った衛生管理を行う事業者が輸出に取り組むことができるよう、HACCPの導入に必要な一般衛生管理の徹底、輸出先国・地域ごとに求められる食品安全管理に係る個別条件への理解促進、HACCPに係る民間認証の取得等のための研修会の開催等の支援を実施します。
(イ)食品等事業者に対する監視指導や事業者自らが実施する衛生管理を推進します。
(ウ)食品衛生監視員の資質向上や検査施設の充実等を推進します。
(エ)長い食経験を考慮し使用が認められている既存添加物について、安全性の検討を推進します。
(オ)いわゆる「健康食品」について、事業者の安全性の確保の取組を推進します。
(カ)SRM(特定危険部位)の除去・焼却、BSE(牛海綿状脳症)検査の実施等により、食肉の安全を確保します。
ウ 輸入に関する取組
輸出国政府との二国間協議や在外公館を通じた現地調査等の実施、情報等を入手するための関係府省の連携の推進、監視体制の強化等により、輸入食品の安全性の確保を図ります。
(2)食品表示情報の充実や適切な表示等を通じた食品に対する消費者の信頼の確保
ア 食品表示の適正化等
(ア)「食品表示法」(平成25年法律第70号)を始めとする関係法令等に基づき、関係府省が連携した監視体制の下、適切な表示を推進します。また、外食・中食における原料原産地表示については、「外食・中食における原料原産地情報提供ガイドライン」に基づく表示の普及を図ります。
(イ)輸入品以外の全ての加工食品に対して義務付けられた原料原産地表示制度については、引き続き消費者への普及・啓発を行い、理解促進を図ります。
(ウ)米穀等については、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(平成21年法律第26号)(以下「米トレーサビリティ法」という。)により産地情報伝達の徹底を図ります。
(エ)栄養成分表示について、消費者への普及・啓発を行い、健康づくりに役立つ情報源としての理解促進を図ります。
(オ)保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品)の制度について、消費者への普及・啓発を行い、理解促進を図ります。
イ 食品トレーサビリティの普及啓発
(ア)食品のトレーサビリティに関し、事業者が自主的に取り組む際のポイントを解説するテキスト等を活用して普及・啓発に取り組みます。
(イ)米穀等については、米トレーサビリティ法に基づき、制度の適正な運用に努めます。
(ウ)国産牛肉については、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(平成15年法律第72号)による制度の適正な実施が確保されるよう、DNA分析技術を活用した監視等を実施します。
ウ 消費者への情報提供等
(ア)フードチェーンの各段階で事業者間のコミュニケーションを円滑に行い、食品関係事業者の取組を消費者まで伝えていくためのツールの普及等を進めます。
(イ)「消費者の部屋」等において、消費者からの相談を受け付けるとともに、展示等を開催し、農林水産行政や食生活に関する情報を幅広く提供します。
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