2 気候変動への対応等環境政策の推進
(1)気候変動や越境性動物疾病等の地球規模の課題への対策
アパリ協定を踏まえた森林減少・劣化抑制、農地土壌における炭素貯留等に関する途上国の能力向上、耐塩性・耐干性イネやGHG排出削減につながる栽培技術の開発等の気候変動対策を推進します。また、アジアモンスーン地域で共有できる技術情報の収集・分析・発信、アジアモンスーン各地での気候変動緩和等に資する技術の応用のための共同研究を推進します。くわえて、気候変動対策として、アジア開発銀行(ADB)と連携し、農業分野の二国間クレジット制度(JCM)の案件創出を促進させる取組を促進します。
イ<1>気候変動緩和に資する研究、<2>越境性病害の我が国への侵入防止に資する研究、<3>アジアにおける口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、アフリカ豚熱等の越境性動物疾病・薬剤耐性の対策等を推進します。
(2)気候変動に対する緩和・適応策の推進
ア「農林水産省地球温暖化対策計画」に基づき、農林水産分野における地球温暖化対策技術の開発、マニュアル等を活用した省エネ型の生産管理の普及・啓発や省エネ設備の導入等による施設園芸の省エネルギー対策、施肥の適正化、J-クレジット制度の利活用等を推進します。
イ農地からのGHGの排出・吸収量の国際連合(以下「国連」という。)への報告に必要な農地土壌中の炭素量等のデータを収集する調査を行います。また、家畜由来のGHG排出量の国連への報告の算出に必要な家畜の消化管由来のメタン発生量等のデータを収集する調査を行います。
ウ環境保全型農業直接支払制度により、堆肥の施用やカバークロップといった地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対して支援します。また、バイオ炭の農地施用に伴う影響評価、炭素貯留効果と土壌改良効果を併せ持つバイオ炭資材の開発等に取り組みます。
エバイオマスの変換・利用施設等の整備等を支援し、農山漁村地域におけるバイオマス等の再生可能エネルギーの利用を推進します。
オ廃棄物系バイオマスの利活用については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)に基づく廃棄物処理施設整備計画を踏まえ、施設整備を推進するとともに、市町村等における生ごみのメタン化等の活用方策の導入検討を支援します。
カGHGの排出を削減し、東南アジアの農家が実践可能で直接的なメリットが得られる、イネ栽培管理技術や家畜ふん尿処理技術の開発を推進します。
キ農産物については、ガイドラインに即した環境負荷低減の取組を評価する「見える化」の等級ラベル表示の普及を図ります。また、畜産物については、温室効果ガス簡易算定ツールの作成・実証を推進します。
ク「農林水産省気候変動適応計画」に基づき、農林水産分野における気候変動の影響への適応に関する取組を推進するため、以下の取組を実施します。
(ア)中長期的な視点に立った我が国の農林水産業に与える気候変動の影響評価や適応技術の開発を行うとともに、国際機関への拠出を通じた国際協力により、生産性・持続性・頑強性向上技術の開発等を推進します。
(イ)農業者等が自ら行う気候変動に対するリスクマネジメントを推進するため、リスクの軽減に向けた適応策等の情報発信を行うとともに、都道府県の普及指導員等を通じて、リスクマネジメントの普及啓発に努めます。
(ウ)地域における気候変動による影響や適応策に関する科学的知見について情報提供を実施します。
ケ科学的なエビデンスに基づいた緩和策の導入・拡大に向けて、研究者、農業者、地方公共団体等の連携による技術の開発・最適化を推進するとともに、農業者等の地球温暖化適応行動・温室効果ガス削減行動を促進するための政策措置に関する研究を実施します。
コ国連気候変動枠組条約等の地球環境問題に係る国際会議に参画し、農林水産分野における国際的な地球環境問題に対する取組を推進します。
(3)生物多様性の保全及び利用
ア「農林水産省生物多様性戦略」(令和5(2023)年3月改定)に基づき、農山漁村が育む自然の恵みを活かし、環境と経済がともに循環・向上する社会の実現に向けた各種の施策を推進します。
イ生物多様性保全効果の取組を温室効果ガスと合わせて等級ラベルで表示する「見える化」を推進します。
ウ環境保全型農業直接支払制度により、有機農業や冬期湛水管理といった生物多様性保全等に効果の高い営農活動に対して支援します。
エ「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)に基づき、遺伝子組換え農作物について、生物多様性に及ぼす影響についての科学的な評価、生態系への影響の監視等を継続し、栽培用種苗を対象に輸入時のモニタリング検査を行います。また、特定の生産地・植物種について、輸入者に対し輸入に先立つ届出や検査を義務付ける生物検査を実施します。
(4)土づくりの推進と農業分野におけるプラスチックごみ問題への対応
ア都道府県の土壌調査結果の共有を進めるとともに、堆肥等の活用を促進します。また、土壌診断における簡便な処方箋サービスの創出を目指し、AIを活用した土壌診断技術の開発を推進します。
イ好気性強制発酵による堆肥の高品質化やペレット化による広域流通等の取組を推進します。
ウ農畜産業における廃プラスチックの排出抑制や循環利用の推進に向けた先進的事例調査、生分解性マルチの導入、プラスチックを使用した被覆肥料に関する調査を推進します。
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883