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農林水産省

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カプサイシンに関する詳細情報

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作成日:2014年6月27日

 

カプサイシンの一般情報

  • カプサイシン(Capsaicin、C18H27NO3) は、バニリルアミンと脂肪酸がアミド結合したカプサイシノイドと呼ばれるアルカロイドの一種です。
化合物名
カプサイシン(Capsaicin)
組成式
C18H27NO3
分子量
305.41
構造式
 
カプサイシンの構造式
CAS登録番号
404-86-4
水溶性
水に溶けにくい
エタノール、クロロホルムに溶けやすい
融点
65℃
沸点
210-220℃
  • カプサイシノイドはナス科トウガラシ属の果実内部の胎座や隔壁に多く含まれます。下の写真はハバネロという種類のトウガラシの縦方向、横方向の断面図であり、実線矢印(実線矢印)が隔壁、二重線矢印(二重線矢印)が種子の付着している胎座を示します。

                                                                               

ハバネロ断面図

  •  カプサイシノイドには、カプサイシンと同程度の辛みをもたらすジヒドロカプサイシンや半分程度の辛みをもたらすノルジヒドロカプサイシンなど、脂肪酸部分の構造が異なる10種以上の同族体があります。トウガラシ中の主なカプサイシノイドの含有割合の範囲を以下に示します。

トウガラシ中のカプサイシノイドの含有割合の範囲と辛み相対強度
(岩井と渡辺. 2000. の表2.3を農林水産省で改変の上、転載)

主なカプサイシノイド
含有割合の範囲(%)
辛み相対強度1)
カプサイシン
   46 - 77
100
ジヒドロカプサイシン
   21 - 40
100
ノルジヒドロカプサイシン
     2 - 12
57
ホモカプサイシン
   1 - 2
43
ホモジヒドロカプサイシン
0.6 - 2
50
  • トウガラシなどの辛さを表記する際、分析機器で求めたカプサイシノイド濃度の他に、分析値をスコヴィル単位2)に換算した値が用いられることがあります。食品中の平均的な総カプサイシン濃度とスコヴィル値を以下に示します。

食品中の平均的な総カプサイシン濃度とスコヴィル値
(BfR. 2011. のTable 1を農林水産省で改変の上、転載)

食品名
総カプサイシン濃度3)
(mg/kg)
スコヴィル値
(SHU)
ピーマンパウダー
< 1
 0 - 10
パプリカパウダー
 5 - 30
100 - 500
タバスコソース
100 - 300
1,600 - 5,000
ハラペーニョ(生)
最大500
2,500 - 8,000
チリパウダー
1,000 - 3,000
30,000 - 50,000

1)カプサイシンを100とした場合の強度。
2)辛さや刺激の単位。1912年に化学者のスコヴィル氏が、トウガラシ抽出物の辛みを感じなくなるまで砂糖水で薄めた時の希釈倍率で辛さを表したことに由来して命名。 
3)総カプサイシン濃度は、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシンの濃度の合計。 

 

参考文献

  • 岩井と渡辺. 2000. トウガラシ辛味の科学. 初版; (株)幸書房.
  • ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR). 2011. BfR Opinion No.053/2011. Too Hot Isn't Healthy-Foods with very high capsaicin concentrations can damage health. 
  • The Merck Index. 14th ed.

カプサイシンの生理作用

  • カプサイシンのバニリル基が、全身に分布する感覚神経終末で細胞膜のバニロイド受容体TRPV1(カプサイシン、酸、熱などの侵害刺激を受容するイオンチャネル型受容体)に結合して、神経細胞が脱分極し活動電位を発生することで、灼熱感(焼けつく痛み)を引き起こします。
  • カプサイシンを経口摂取することによって引き起こされる舌上の灼熱感を私たちは辛みとして認識しますが、その刺激は口腔内だけに生じるわけではなく、気管支や消化管全体におよびます。気管支が強く刺激されると気管支収縮により息切れや咳が生じます。また、肛門側の直腸にはTRPV1が多いため、カプサイシンにより刺激されると強い灼熱感を感じます。
  • カプサイシンを摂取すると、感覚神経を介して胃酸の分泌が抑制されます。
    動物試験では、少量のカプサイシンの摂取によって、胃粘膜を保護する作用が働いて胃潰瘍が発生しにくくなる4)ことが知られています。一方、大量のカプサイシンの摂取によって、感覚神経のTRPV1が機能不全を起こすと、胃粘膜の保護作用がなくなる5)との報告があります。

4) ラットにカプサイシンの経口投与試験を行ったところ、0.5 mg/kg体重及び2.5 mg/kg体重(単回投与)で保護作用が確認(経口投与30分後に0.6 N塩酸 1 mlを胃内投与して胃の損傷面積を検査)。
5) ラットにカプサイシンの皮下投与試験を行ったところ、125 mg/kg体重(2日間の投与量の合計)で保護作用がなくなることを確認(皮下投与10 - 14日後に、カプサイシン2.5 mg/kg体重を経口投与し、30分後に0.6 N塩酸 1 mlを胃内投与して胃の損傷面積を検査)。

  • また経口摂取しなくても、カプサイシンが眼、鼻の粘膜や皮膚に触れると局所的な刺激作用により、流涙、鼻漏、疼痛などが生じます。
  • 消化管から吸収され血中に入ると、感覚神経から中枢神経系を介して、副腎からのアドレナリン分泌を促進します。このアドレナリンが、脂肪代謝などエネルギー代謝を促進したり、発汗を促したりします。 
  • カプサイシンの刺激が繰り返されると、感覚神経細胞のTRPV1を介して細胞内に流入したカルシウムイオンによって、TRPV1が脱感作され、感覚神経が麻痺して辛みと痛みを感じにくくなります。この作用を利用した鎮痛外用薬として、カプサイシンを含む温湿布やクリームがあります。

 

参考文献

  • 富永真琴. 2004. 温度受容の分子機構-TRPチャネルセンサー-.日薬理誌, 124, 219-227.
  • 堀江俊治ほか. 2005. 知覚神経TRPV1の胃酸分泌調整作用. G.I.Research, 13(5), 347-354
  • 堀江俊治ほか. 2008. 温度と辛味を感じる受容体-消化管にとってよい受容体か?悪い受容体か?. G.I.Research, 16(5), 403-410.
  • Horie et al. 2004. Protective role of vanilloid receptor type 1 in HCl‐induced gastric mucosal lesions in rats. Scandinavian Journal of Gastroenterology, 39(4), 303-312

 

カプサイシンに関連した健康影響

(ヒトのカプサイシンの過剰摂取による症状)

  • ヒトがトウガラシやその加工品のカプサイシンを過剰に摂取することによる症状は、流涙症や鼻液漏、排尿障害、胃食道逆流症などです。なお、子どもや感受性の強い人では、粘膜炎症や吐き気、嘔吐、高血圧などの症状が報告されています。

 

(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)でのカプサイシン関係のリスク評価)

  • 1970年に行われたパプリカオレオレジン6)のリスク評価では、香辛料としての使用では技術的にも官能的にも自分で制限できるものであるとの理由から、一日許容摂取量(ADI)を設定しませんでした。
  • その後、2000年に行われた香辛料として使用されるパプリカオレオレジンの再評価(追加のデータなし)では、香辛料としての使用は引き続き許容できるとされました。一方、パプリカ抽出物7)の着色料としての使用について評価が行われていない点が注目されました。
  • そこで、2009年に着色料として使用されるパプリカ抽出物のリスク評価を行いました。

発がん性について、インドやメキシコでの疫学調査の結果、チリペッパーの消費量が多い人は大腸がんリスクが増加するとの報告がありましたが、この疫学調査にはかなり制限があるため、この結果から最終的な結論を導くことはできないとしました。また、この疫学調査結果と、着色料として使用されるパプリカ抽出物の評価とは関係がないとの見解を示しました。

発がん性以外の毒性については、動物試験で使用されたパプリカ抽出物中のカプサイシン濃度が0.01%未満のものがあったため、さまざまなパプリカ抽出物の組成やカプサイシン濃度に関するデータや、毒性学的試験が市場に流通している製品を代表するもので行われたかについての情報が必要であると言及しました。

このように情報が不足していたため、ADIを設定しませんでした。 

6) 主な着香成分がカプサイシン、着色成分がカプサンチンやカプソルビンで構成される適度に辛いトウガラシの抽出物。
7) 主な着色成分がカプサンチンやカプソルビンで構成され、着色成分としてカロテノイドも含むトウガラシの抽出物。香辛料として使用されるパプリカの抽出物と比べるとカプサイシン濃度は非常に低い。  

 

(ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)でのカプサイシン関係のリスク評価)

  • 近年の激辛食品の大食い、早食い競争の人気を背景に、2011年、カプサイシンに関するリスク評価を実施しました。
  • 急性毒性について、マウスの経口摂取での動物実験から最も低い半数致死量(LD50)を60 - 75 mg/kg bwとしました。また、ヒトでの疫学調査から胃の細胞の剥離についての経口摂取での無毒性量(NOAEL)を8.3 mg/kg bwとしました。
  • 伝統的な食事における大人の1回の食事当たりの総カプサイシンの摂取量を最大5 mg/kg bwと推定しました。なお、この推定最大摂取量は感受性の強い人やトウガラシとその加工品に食べ慣れていない人には望ましくない効果を与えることがあるとしています。
  • この推定最大摂取量と、ヒトの疫学調査結果のNOAEL 8.3 mg/kgやマウスのLD50 60 - 75 mg/kg bwを比較し、不確実係数をそれぞれ1.7、12 - 15と推計しました。

 

参考文献

  • ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR).2011. BfR Opinion No.053/2011. Too Hot Isn't Healthy-Foods with very high capsaicin concentrations can damage health.
  • JECFA.2009 Safery Evaluation of certain food additives Paprika Extract(WHO Food Additives Series 60).
  • Richard Cantrill. 2008. PAPRIKA EXTRACT - Chemical and Technical Assessment (CTA) prepared for the 69th JECFA, pages 1 - 11.

 

 国際機関や外国でのカプサイシンに関する取組み

(国際機関での品質規格の設定)

  • コーデックス委員会のチリペッパーの品質規格では、辛さや刺激の大きさに応じてチリペッパーを以下の4つに分類しています。 
辛さ、刺激
スコヴィル値
 (SHU)
総カプサイシノイド濃度
(mg/kg乾燥重量)
マイルド(穏やかな辛さ)
900-1,999
60-133
中程度の辛さ
2,000-19,999
134-1,333
辛い
20,000-100,000
1,334-6,600
非常に辛い
>100,000
>6,600

注)15 SHU ≒ 1 mg/kg乾燥重量として換算。 

また、コーデックス委員会のコチュジャンのアジア地域品質規格では、コチュジャン中のカプサイシン濃度について10.0 mg/kg以上であることを求めています。

 

(ドイツでの総カプサイシン濃度に応じた対応の推奨)

  • カプサイシン濃度が高いチリソースが販売されている状況などから、リスク評価機関であるドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、2011年にカプサイシン濃度に応じた以下の対応を推奨しました。
食品の総カプサイシン濃度
推奨する対応
100 mg/kgを超える
- 辛さを示す注意書きをすること
- 少量ずつ出る容器を使用すること
6,000 mg/kgを超える
規制担当機関が安全な食品かどうかを個別に検討

 

参考文献

  • ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR).2011. BfR Opinion No.053/2011. Too Hot Isn't Healthy-Foods with very high capsaicin concentrations can damage health.
  • Codex.2011 CODEX STAN 307-2011. Standard for Chilli Peppers.
  • Codex.2009 CODEX STAN 294R-2009. Regional Standard for GochuJang.

 

お問い合わせ先

消費・安全局消費・安全政策課
代表:03-3502-8111(内線4453)
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