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農林水産省

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農業DXの事例紹介(11)水門管理自動化システムの活用による省力化、生産性の向上

(MAFFアプリでの公開:2022年7月11日)






(写真左上:「有限会社スタファーム」代表取締役の廣地聡さん)

(写真右上、下:水管理システム(「paditch」))

 

今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指すデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。

農林水産省も、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。そこで、多くの皆様にDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介しています。

11回目は、IoTセンサーを用いた水門管理自動化システムによって、コスト削減と品質向上の両方を実現し、経営規模の拡大を図っている農業者をご紹介します。富山県高岡市でこのシステムを活用している米農家「有限会社スタファーム」代表取締役の廣地聡さんにお話しを伺ってきました。

――本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、栽培されている品目についてお伺いできますでしょうか?

米です。主食用米のほか、米粉用の新規需要米、備蓄米です。あと、農機を時期的に隙間なく稼働させるように、10月の晩生(おくて)の刈り取りが終わった後、主穀作の大麦、大豆のほか、人参などを栽培しています。

――どのくらいの作付け面積になりますでしょうか?

水稲で44町歩(44ha)、うち新規需要米が25町歩(25ha)です。できるなら、新規需要米を増やしたいと考えています。

――何名でやっていらっしゃるのですか?

従業員は2名です。あと家族2名(お父様とご自身)の計4名です。1人15町歩(15ha)は担当できると思っています。

――販売先はどうしていらっしゃいますか?

卸売業者と直接取引をしています。その業者からの提案で新規需要米を拡大しました。

――水管理システム(「paditch」)利用のきっかけを教えていただけますか?

大きなきっかけとなったのは、離れた地域に15haの圃場が増えたことです。この戸出地域の自分たちが管理している圃場から7km離れたところで、高齢化に伴い、耕作者がいなくなった田んぼを請け負いました。

――経営を拡大されていらっしゃるのですね?

今まで戸出地域の北西部の圃場で栽培していましたが、新たに請け負ったのは南東部の圃場です。南東部の圃場は、元々飛び地だったところを近隣の耕作者さんや農業委員会に調整していただき、一つにまとめてもらえたというのも大きかったです。快く受け入れてくれた近隣の皆さんの協力があってこそできたことだと思います。

――それは勇気のいる決断ではなかったですか?

どうしてそんなに遠いところをという声もあったのですが、やはり耕作者がいなくなって本当に困っておられたから決断しました。ただ、1年目は自分たちで水管理をしていましたが、7kmも離れていると毎日見に行くのは正直かなりの負担でした。 

――どのようにして、「paditch」と巡り合ったのでしょうか?

笑農和(「paditch」の運営会社)の社長とは以前から面識があり、製品を売り出された頃から見させていただく機会がありました。僕が以前機械を扱う会社にいたこともあって、機能面についてお話しすることもあったんです。 

――なるほど。製品について、事前によくご理解されていたわけですね。>

管理面積が増えた段階での導入に際して、良い補助金がある、というお話もしていただき、導入を決意しました。導入するなら離れた圃場すべての水門に入れないと意味がないと思い、トータルで60台導入しました。

――導入に際して苦労された点や、特に印象に残ったことはありましたか?

他の圃場の方の迷惑にならないように注意してほしい、と水路や農道の管理組合さんからお話があり、説明会を開いて近隣の生産者さんにご理解いただいた上で設置しました。

――導入してみて、操作性はどうでしたか?(導入に必要な設備、必要な通信環境、操作の難易度、操作に習熟するまでの期間など)

各水門に設置された機械はLoRa-WANで通信し、(社屋に入れた)基地局から半径5km範囲はカバーされ、かつ携帯電話料金が必要なSIMは1契約で済むため廉価です。

タイマー機能や水位センサーを組み合わせてきちんとスケジュール設定できるので、管理は難しくありません。タブレット、パソコン、スマートフォン、どれでも対応しているので操作も非常に楽です。夜、水門が開くように設定できることにもメリットを感じています。 

――水管理の効率化への効果はいかがですか? 

シーズン中は、勤務時間外も含めて朝・昼・晩で1日に3回ほど水門の調整をするために水門の見回りに来ていたが、タイマー機能や水位センサーを利用することで、3日に1回ほどで済むようになり、移動時間も含めると水門の見回りだけで、2か月/人くらいの労力が節約できています。水管理はお米の栽培の四分の一の手間と時間を占めますが、このシステムを導入したことで、日曜日を完全休日にできています。

また、効果的な水管理にもつながりますので、雑草などが減り、除草剤のコストも削減できました。その結果だと思いますが、導入初年度は収量も1割以上増えましたので、生産性や品質向上の観点でも導入したメリットを感じています。

――ありがとうございました。

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いかがでしたか。今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材・紹介していきます。

それでは!

参考:「paditch」のHPはこちら

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