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農林水産省

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農業DXの事例紹介(4)データを活用した牛群管理・個体選抜

(MAFFアプリでの公開:2021年1月14日)

今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指す
デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。
農林水産省としても、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは、「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。
そこで、多くの皆様に農業分野でのDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介していきます。

第4回目の今回は、北海道中標津町で牛群管理や個体選抜にデータ分析を活用して酪農経営を行っている株式会社さいとうFARMの取組を紹介します。
同社の齋藤代表取締役にインタビューしました。


――本日はよろしくお願いします。まず、齋藤代表が取り組まれている内容を教えてください。
昨年から、乳牛の飼養管理の効率化と営農改善のため、乳汁の成分の分析機能を備えた搾乳ロボットを導入しました。
現在、搾乳牛160頭程度をフリーストール型牛舎(つなぎ飼い牛舎と異なり、乳牛が自由に歩き回れるスペースを持った牛舎)で飼育し、搾乳ロボットによる搾乳を行っています。
このほか、育成牛も併せて320頭ほどを夫婦、従業員2名と両親の手伝いを得て飼育しています。
年間の生産乳量は約2,000トンです。

――搾乳ロボットの導入によりどのような効果が得られたのでしょうか。
酪農は他産業よりも労働時間が多いと言われていますが、搾乳ロボットの導入により牛舎で働く時間は大きく削減しました。
朝と夜の搾乳作業の時間が短くなり、一日当たり2~3時間は牛舎での労働が減っていると思います。
しかし、私が搾乳ロボットに期待した効果は労働時間の削減だけではありません。
冒頭にも触れましたが、当社が使用している搾乳ロボットは個体を識別し、搾乳回数、搾乳量はもちろんのこと、黄体ホルモンや尿素、ケトン体などの濃度を測定することができます。
得られたデータは個体ごとに管理されますが、瞬時にロボットメーカーの本社に送られ、本社が持つビッグデータから病気の初期症状や発情兆候を示してくれます。

――それらのデータをどのように酪農経営に活かしているのでしょうか。
今までのやり方では、営農者が異変に気付いてから地域の獣医師に連絡するか、地域の獣医師の定期診断を行って初めて病気や発情の状態が判明することになるので、どうしても対応が後手に回ってしまいます。
今回導入した搾乳ロボットでは、乳中の成分濃度が一定の範囲に収まっているか、毎日の搾乳のたびごとにデータで示されます。
そのため、異変があればすぐに獣医師に相談することができますし、発情期も数時間という精度で把握することができます。
餌が多い、少ないといった乳牛が感じているストレスや病気を早期に検知できるかどうかは当然ながら営農上の利益に直結します。
発情期についても、牛の発情は一定の周期でしか行われないので、一度タイミングを逃すと経営上の損失となります。
そのリスクを下げることができるのは大きなメリットです。
ロボットを導入し、今まで得られなかったデータを活用することで、様々な面から分析して生産効率を上げる方法を考えることができるようになりました。

――人の目ではわからないいろいろな情報が得られるんですね。ロボット導入に当たって工夫されたことはありますか。
搾乳ロボットの場合は手動の場合よりも乳房炎に注意しなければならないので、牛舎を清潔に保つ工夫をしています。例えば、牛床には常に新しいおがくずを敷いたり、換気のためのファンを設置して湿度が高くならないようにしたりしています。
また、最も重要なことは、飼育している乳牛を、フリーストール型の牛舎や搾乳ロボットによる搾乳に適した集団にしていくことです。
乳量が多い乳牛の系統選抜などはよく行われていると思いますが、当社では3年前から搾乳ロボットの導入を見据え、フリーストール型の牛舎でも怪我をしにくい体型や、搾乳ロボットで搾乳しやすい乳頭の形状などによる選抜を進め、十分な準備の上で導入に至っています。

――選抜にもデータを活用されているのでしょうか。
もちろんです。生まれた子牛の毛を採取し、企業に送って遺伝子診断してもらっています。
そこでも診断結果をビッグデータとして蓄積されており、病気抵抗性や受胎性、乳量、流産の因子のハプロタイプ(遺伝子の組合せ)など、多くの項目の評価をスコア化してくれます。この評価を参考にして選抜します。
日本ではつなぎ牛舎方式で育てる牛に向いている形質は高く評価されますが、海外ではフリーストール型の大規模な酪農経営が多いので、そちらに適した形質が高く評価されます。
当然、選抜も大規模に行われるため、良い系統の乳牛が広がるスピードも速いです。
こうした良い系統の子牛は、高ければ一頭数億円で取引されることもあると聞いています。
話がそれましたが、搾乳ロボットにかかわらず、良い系統を選抜して後代の集団を改良し続けるために遺伝子診断のデータを活用しています。

――他にも遺伝子データを活用されていることはありますか。
牛乳を飲んでお腹を壊してしまう人がいるのは乳糖不耐症が原因と言われてきましたが、βカゼインというタンパク質のタイプもその原因の一つということが分かってきました。
中標津町では私を含めいくつかの酪農経営者と農協が協力し、遺伝子から牛乳内のβカゼインのタイプを判定して、A2というお腹を壊さないタイプのβカゼインを作る牛から出た牛乳だけを集めた牛乳を販売しています。
これは、遺伝子データを使うことで得られた付加価値と言えると思います。

――最後に一言お願いします。
昔は、「お前が絞ると乳房炎になる」などと指導されたものですが(笑)、発情の兆候など、これまで肌感覚、経験で感知していた重要なサインをデータに基づいて把握できるようになれば、多くの人を酪農経営に受け入れることができるようになると思います。
より多くの人が技術に触れることができるようになり、酪農を誰が入ってもできる仕事にしたいとと思っています。

――ありがとうございました。

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いかがでしたか。今回は、搾乳ロボットを導入してDXに取り組む斎藤代表を紹介しました。
今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材・紹介していきます。
それでは!

お問合せ先

大臣官房デジタル戦略グループ

担当者:荒木
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