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農林水産省

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農業DXの事例紹介(5)営農データの見える化による農業経営の高度化

(MAFFアプリでの公開:2021年2月13日)

今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指すデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。
農林水産省としても、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは、「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。
そこで、多くの皆様に農業分野でのDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介していきます。

第5回目の今回は、鹿児島県曾於郡大崎町で農業経営分析支援ソフトを利用し、野菜の生産・加工・販売を営んでいる有限会社大崎農園さんの取組を紹介します。同社の山下社長と中山専務にインタビューしました。

――本日はよろしくお願いします。まず、データを活用した農業経営を始めたきっかけを教えてください。
当社は契約販売を中心とした経営なので、安定的に供給する生産体系にする必要がありました。そのために生産計画の精度向上を追求した結果、データを駆使した農業経営に至りました。それまでに蓄積してきたほ場ごとの生産情報と気象の短期・長期予報を組み合わせて生産計画を作成しています。生産計画と実績にずれが生じた場合には、土壌分析などのデータに基づいて原因を分析し、次年度の生産計画に反映しています。その繰り返しにより、徐々に精度の高い生産計画を作成できるようになってきました。

――農業経営分析支援ソフトはどのように利用しているのでしょうか。
農業経営分析支援ソフトのベンダーさんの協力も得て、自社で蓄積したデータと気象データや市況データなどを組み合わせて、生産・販売実績の分析や今後の収量・相場を予測しています。例えば、過去のほ場ごとの情報(播種日、生育日数、選果日、歩留まり、排水、土壌分析、品質、気象情報など)と未来の気象の短期・長期予報を組み合わせて様々な角度で分析し、作型を変更したり、種まきや収穫の最適な日を予測したりしています。
また、ソフトの機能の一つであるダッシュボード(複数のデータを集約し、概要をわかりやすく一覧表示する画面)を使うことで経営の状況が「見える化」でき、仕事の成果が分かりやすく把握できるようになりました。日々の業務が農業経営にどのように反映されているか社員一人ひとりに理解してもらうことで、農業っておもしろいなあと心から感じてもらえているのではないかと思っています。だから、社員にはどんなデータでもフルオープンで情報を開示していますよ。
自分の仕事の成果が経営に与える影響を社員一人ひとりが理解できるようにすることでやる気が増し、個々人の考える力も身について、社員から業務に関する改善提案が出てくるようになってきました。

――社員一人ひとりがデータに基づいて経営全体を理解しながら日々の業務に取り組んでいるのですね。
はい。農業経営を見える化することで、社員の能力向上につながっています。また、「この人がいないと仕事ができない」という状況を発生させないように、農作業の勘と経験の見える化にも取り組んでいます。
確かに、勘と経験は、農業に役立ちます。しかし、勘と経験のある人材は限られているため、経営規模が大きくなってくると勘と経験のみに頼ることが難しくなります。そのため、見える化したデータを用いて、データに基づく農業の勉強会を実施して、社員の知識の向上を図っています。例えば、ほ場巡回の際に生育状態に気になる点があった場合に生育状態をスマートフォンで撮影してSNSで共有する際には、知識と経験が豊富な社員がコメントを入れるようにしています。
こうした取組により、社員の農業に対する理解が進み、畑の管理を任せられる社員を効率的に育てることができるようになってきています。

――ほかにも、データを経営改善に用いることによる効果があれば教えてください。
例えば、複数の社員の作業を簡単に平準化できるようになりました。
当社ではジョブローテーションを導入し、多くの社員に様々な作業の知識を身につけてもらっています。データの見える化で社員の成長が早くなったこともあり、個々の社員が多くの作業に関するスペシャリストに育ってきています。各作業に要する時間のほか、作業と作業の間の空き時間などもデータ化していることから、社内全体の労働時間の予測が容易になりました。
1人の社員に様々な作業を任せられることと、各作業の時間を正確に把握していることで、フレキシブルに社員のシフトを組むことができるようになり、社員に働きやすい環境を提供することができるようになりました。

――最後に、今後の展望を教えてください。
今後は、タブレット端末を使って現場でのデータ入力作業を改善したり、パソコンごとに管理しているデータを1カ所にまとめたりして、データをより利用しやすい環境を整備したいと考えています。
これまで行ってきたデータ分析とその活用の取組も、まだまだ発展途上だと思っています。例えば、リアルタイムに積算温度などのデータを取得できるようにすれば、更に細かく栽培計画を修正していくことができます。データ分析のアイデアはまだまだたくさんあるので、農業経営分析支援ソフトのベンダーさんと協力して、更なる発展に寄与するデータの見える化や分析をもっともっと進めていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

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いかがでしたか。今回は、農業経営分析支援ソフトを導入して経営改善に取り組む大崎農園さんを紹介しました。
今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材・紹介していきます。
それでは!


お問合せ先

大臣官房デジタル戦略グループ

担当者:荒木
代表:03-3502-8111(内線3067)
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