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農林水産省

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農業DXの事例紹介(6)スマホを使った農作物生産記録・農薬利用記録管理

(MAFFアプリでの公開:2021年5月14日)

(写真左:澤藤園5代目にあたる澤井政善さん)
(写真右:澤井さんが利用するAgriHubの画面)

今、社会全体で、デジタル技術を活用して産業や社会をより良いものへと変革を目指すデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組が進められています。

農林水産省としても、農業や食関連業界の関係者の皆様に、通信機能を備えたセンサーやロボット、AIなどのデジタル技術を経営に活かしていただきたいと考えていますが、現場からは、「デジタル化やDXという言葉を聞くようになったがどういう意味だろう」、「参考にできる事例はないのか」といった声が聞かれます。

そこで、多くの皆様に農業分野でのDXの具体的なイメージを持っていただけるよう、農業や食関連業界におけるDXの実践事例を紹介してきております。

第6回目の今回は、農作物の農業日誌や農薬検索・散布管理をスマートフォンで管理できるアプリ「AgriHub」を利用し、農作物生産を省力化・効率化している農業者の取組をご紹介します。

東京都府中市で高糖度トマトをはじめとする20品目以上の野菜を生産されている、澤藤園5代目にあたる澤井政善さんにインタビューしました。


――本日はよろしくお願いします。まず、澤藤園ではどのような農作物を生産されているのか教えてください。

澤藤園では高糖度トマトをはじめ、年間に20品目以上の農作物を育てています。今の季節(※2021年4月末)ですと、枝豆、ネギ、スイートコーン、新玉ねぎなどを育てています。

高糖度トマトは自分一人で育てています。もともと一人でできる労力に見合った生産ができると考え、収穫量は少なくても商品価値の高い高糖度トマトの生産を開始しました。
給水量などをきめ細かく調整することで、糖度や触感の最もよいバランスのトマトの栽培に日々取り組んでいます。

以前は土耕栽培をしていたのですが、雨などで給水量のコントロールが難しかったため、昨年12月より水耕栽培に切り替えて給水量をコントロールできるようにしました。
複数の栽培方法をいくつか並行して試しながら、糖度や給水量などのデータをとり、最適な栽培方法を見つけるべく日々試行錯誤しながら取り組んでいます。

――すでにデータを活用した生産に取り組まれているのですね。その中でAgriHubを利用しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

以前はエクセルを使い、生産記録や農薬管理などを行っていたのですが、エクセルを使った管理の場合、記録をつけるのにPCを使うことになり、どうしても作業が終わった後にまとめて記録することになります。そうなると作業から実際の記録入力までに時間が空いてしまうため、その時記録したいと思っていた細かい情報を記録し忘れてしまったり、記録自体を後日にしてしまったりということが発生していました。

AgriHubはスマートフォンのアプリで記録を入力できるため、作業を行いながらその場で記録をつけることができます。その場で作業記録をつけることで、記録漏れなどのない精度の高い情報を入力できると考え、使用を開始しました。


――実際に使ってみて、効果はどうでしたか?

作業記録をその場で入力でき、必要なメモもその場で入力できるので、期待していたとおりの効果を得ることができました。同時に、とても使いやすいアプリなので、管理自体がとても楽になったと思います。

多くの場合、入力がタップだけで終わることが大きいです。作業項目はあらかじめいくつか用意されていて、それを使う場合には入力は不要でタップのみで完了します。あらかじめ用意されていない作業を記録する場合には、自分自身で作業名を入力することになりますが、一度入力した作業名はアプリ上に残るため、以降は入力をせずにやはりタップのみで完了します。

また、農薬の記録や散布管理もとても便利にできます。使用する農薬は最初に登録しておく必要がありますが、一度登録してしまえば生産する農作物に応じた農薬が自動で表示されますので、そこから使用する農薬を選ぶだけで済みます。農薬使用履歴はアプリに作業記録として残っているため、その農薬の使用ルールに合わせてあと何回散布できるかなどの情報も表示されます。


――記録したものはどのように確認することができるのでしょうか?

カレンダー表示にして、どの日にどのような作業を行ったかを一覧で確認することができます。

また、農薬散布の履歴を一覧にして確認することもできます。AgriHubはスマートフォンとPCどちらでも使うことができますので、そうした確認作業については見やすいほうを利用するようにしています。

さらに、所属するJAがAgriHubに対応していれば、AgriHubで記録した栽培情報や農薬使用履歴をJAに自動で提出することもできます。生産現場だけではなく、JAの業務改善にもつながるのではないでしょうか。


――とても便利ですね。それ以外に何か独自に取り組まれていることや、今後取り組んでいきたいことはありますか?

出荷に伴う作業時間を減らすために、今年の3月から無人販売機を設置しました。就農する前は一般企業で働いており、そのときの経験からこの地域で、この特別なトマトを売れるようにするためにはどうすれば良いかSWOT分析をした結果なんです。
トマトの販売用包装に2次元バーコードをつけてホームページに誘導したり、FacebookやInstagramなどのSNSによる活動を通して認知を広げています。今では一日に数回商品を入れ替えるほど利用していただいております。

また、ハウスの中では農薬の自動散布機を導入し、レールの上に散布機を設置してボタン一つで散布が出来るため、背負い動噴や手押しの散布機と比較し、農薬の曝露のリスクが軽減されます。そして個々の作業をAgriHubで記録することで、どの手法が最も効率的か検証することができます。このようなノウハウをいずれ規模拡大して従業員が増えた場合にも活かしていきたいです。

私はデジタル技術やデータを使った生産を進めていますが、そうした技術を利用することで、省力化や品質の向上・安定を得られ始めていると思います。今こうした技術はどんどん生まれていて、簡単に使えるものがたくさん利用できる環境にあると思います。
こうした新しい技術を積極的に活用し、よりお客様に喜んでもらえる農作物の生産に取り組んでいきたいと思っています。今は高糖度トマトの生産で活用していますが、今後はトマトだけではなく他の農作物の生産にも利用していきたいと考えています。


――ありがとうございました。

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いかがでしたでしょうか。今回は、スマートフォンを使った農作物の生産管理の省力化と生産情報の精度の向上に取り組む澤井さんをご紹介いたしました。今後も、DXに取り組む農業・食品産業の方を取材し、ご紹介していきます。

それでは!


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