イチジク株枯病に極めて強い抵抗性台木新品種「励広台1号」
ポイント
- イチジク属の野生種であるイヌビワとイチジクの種間雑種である。
- イヌビワと同程度の極めて強い株枯病抵抗性である。
- 挿し木で容易に増殖できる。
- わが国主要品種の「桝井ドーフィン」や「蓬莱柿」に接ぎ木できる。
イチジク株枯病の発症例
株枯病(病原菌:Ceratocystis ficicola)は、イチジクの難防除病害の一つである。
本病に侵された樹は、主幹基部にやや凹んだ病斑が観察され、葉の萎凋
と落葉の後、最終的に枯死する。主に土壌伝染で感染が拡大する。
イヌビワ(雄株)の果実
イチジク属野生種であるイヌビワ(F. erecta)は株枯病に極めて強い抵抗性(免疫性)を持つ。しかし、イチジクと接ぎ木できないため台木として利用できない。そこで、イヌビワの花粉をイチジクに人工交配して、種間雑種を獲得した。種間雑種の中から株枯病抵抗性が高くイチジクと接ぎ木できる台木を育成した。
イチジク株枯病抵抗性の比較
接種試験は、イチジク株枯病菌(105個/ml)の懸濁液(5uL)を苗木新梢に
あけた穴(幅約5mm、深さ約2mm)に注入して、その後の経過を観察した。
接種試験では、「桝井ドーフィン」が20日以内、「蓬莱柿」が50日以内にすべての苗が枯れる。一方、「励広台1号」は、イヌビワと同様に接種した部位において病斑の拡大がほとんどなく、枯死した苗もない。
「励広台1号」の挿し木の発根性
3月下旬に休眠枝を挿し木して、5月下旬に発根率を調査。
発根率(%)=(発根した挿し木数)/(挿し木数)×100
発根量は達観で評価(「桝井ドーフィン」は「多」)。
「励広台1号」は、発根促進剤を使用しなくても休眠枝挿し木で「桝井ドーフィン」と同程度の高い発根率や発根量が得られる。挿し木苗木の生育も良好である。
「励広台1号」を台木にしたイチジクの接ぎ木樹
左:「桝井ドーフィン」、右:「蓬莱柿」
赤丸は接ぎ木部
「励広台1号」は、「桝井ドーフィン」および「蓬莱柿」を穂木に用いた場合、いずれも癒合部の活着は強固であり、接ぎ木の成功率80%以上である。「桝井ドーフィン」の場合、やや台負けとなるが、収量や果実品質の影響は認められていない。
農林水産省のコメント
長期間の栽培を要することから、土壌病害に対して土壌消毒等の対応が困難な果樹栽培において、根本的な回避策を開発した成果として特筆すべきものである。【農産局果樹・茶グループ】
詳細情報
2012年度研究成果情報 イチジク株枯病抵抗性をもつイチジクとイヌビワの種間交雑体の獲得【外部リンク】
2019年度研究成果情報 イチジクとイヌビワの種間雑種由来のイチジク株枯病抵抗性系統の作出【外部リンク】
2022年度標準作業手順書(SOP) イチジク株枯病抵抗性台木「励広台1号」標準作業手順書【外部リンク】
2019Scientica Horticulturea252: 71-76 Ceratocystis canker resistance in BC1 populations of interspecific hybridization of fig (Ficus carica) and F. erecta【外部リンク】
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本研究成果は「イノベーション創出強化研究推進事業」(課題名:野生種イヌビワとの種間交雑体を利用したイチジク株枯病抵抗性台木新品種の開発、課題番号:29029C)
の支援を受けて得られたものである。
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