第1回研究会 議事要旨
1.日時及び場所
日時:平成25年11月26日(火曜日)13時30分~16時20分
場所:農林水産省第2特別会議室
2.議事
(1)スマート農業の実現に向けた研究会の設置について
(2)スマート農業の将来像と実現に向けた課題
(ア)将来像の実現に向けた課題及びワーキンググループにおける検討の進め方
(イ)ロボット技術・ICTの活用における公的研究機関と民間企業等の連携
(ウ)ロボット技術安全性確保策の検討状況及びワーキンググループにおける検討の進め方
(3) 今後の検討スケジュール
3.要旨
事務局より、研究会の趣旨に加えて、
(ア)スマート農業の実現に向けた課題及びワーキンググループにおける検討の進め方
(イ)ロボット技術・ICTの活用における公的研究機関と民間企業等の連携
(ウ)ロボット技術の安全性確保策の検討状況及びワーキンググループにおける検討の進め方
について、それぞれ資料に基づき説明後、意見交換。
主な意見は以下のとおり。
1)スマート農業の実現に向けた課題
(1)検討の方向性
- 「超省力」、「高品質」に止まらず、輸出の拡大などその技術の導入によって日本農業がどのように変わっていくのか、出口を明確にしておくべき。
- 担い手不足が深刻化する中で、ロボット技術・ICTにより省力化を図ることが重要。
- 技術開発する際には、縮小傾向にある日本市場だけをターゲットにするのではなく、技術やノウハウそのものを海外に輸出するといった観点も必要。
- 技術的に可能だからといって全て自動化するのが必ずしも効率的とは言えない。自動化せず人が行う方が効率的な作業などもある。機械と人が共に働く「自働化」の観点が必要ではないか。
- 一部の作業だけを自動化したことで、かえってそれ以降の作業が非効率になることもある。一連の作業全体を眺めて全体のシステムとして効率的なものとなるよう自動化することが必要。
- ロボット技術やICTを活用し、世界でも通用する先進農業者の層を厚くすることを目指すべきであり、小規模な生産者にどのように普及していくかという課題とは別に議論すべき。
- 大規模化したといっても、多くの小規模圃場を管理しているのが現状。経営の中では労賃、減価償却費、収量の影響が大きい。収量向上だけでなく、収量の不安定性の解消なども現場の関心。本研究会でもそのような現状を踏まえた検討を行うべき。
- 同じ地域でもほ場一つ一つで土壌の状況などが異なる。こうしたバラツキを考えず、これまで一律に農業や技術指導を行ってきたが、それぞれの経営体、ほ場ごとに管理を変えることが今後の方向。
(2)農業現場のニーズ
- ハードとしては水管理の自動化、ソフトとしては圃場の状況をセンシングで把握し、精密管理や遠隔管理する技術に期待。
- トラクターのGPSガイダンスの導入により、新たに雇用した未経験のオペレータでも大豆播種作業が可能になった。労働力確保の観点からも非常に有効。2台協調走行などで更に省力化などが可能となることを期待。
- 新たな技術の導入によりオペレーターやコントラクターに任せられるようにして、経営判断をする人が現場作業をする必要はなく経営判断等に力を注げるような状況を作ることが大事。
(3)農業現場に受け入れられるための条件
- 日々刻々と新たな技術は開発されていくが、現場に受け入れられるためには価格(導入コスト)で、具体的なメリットを示すことが必要。
- 経営者・事業体の目的は手取りを増やすことであり、スマート農業の各技術の研究開発に当たっては、技術の導入で如何に手取り増に繋がるかという観点で厳しく吟味すべき。
- 技術開発はシーズベースで進み、開発したが普及しないといった事態が生じがち。開発に着手する前に、農業現場の課題のうち本当に自動化で解決すべきものは何かを特定し、明確な指標により技術導入の投資効果を検証することが重要。
- 安全性確保にもコストは掛かるので、コストも考えながら機械側でどの程度の安全を確保していくのか等も決めておく必要。
- 一人雇用すると人件費はトータルで相当な額となる。機械で省力化できるなら、同じコストであれば、減価償却なども可能な機械での投資の方が安い。経営者によって経営内容・経営マインドが違うので、コストの判断も経営者ごとに異なることに留意する必要。
2)ロボット技術の活用
(1)実現に向けた課題
- まだGPSが安定的に利用できない時間帯などがある。ロボット技術の導入には、各省が連携して準天頂衛星等の打ち上げ等を加速化してGPSの信頼性の向上を速やかに実現することが重要。
- 農家の資産の有効利用、安全確保をはじめとしたルールづくり、GPSシステム等のインフラ整備、既存のインフラ(衛星写真)のコストダウンなど利便性の向上等が必要。
(2)自動走行トラクタの安全性確保策
- ロボットトラクタを有人トラクタが後から監視する追随型での自動走行は2~3年で実用化すると思うが、安全性が比較的高いと考えられる追随型であっても、オープンな空間でいきなり無人で作業することが受け入れられるとは思えず、生産者とのコンセンサス形成、安全基準の整備が必要。
- 安全性確保策WGでの論点は、現在プロジェクトで開発を進めている技術で必要十分か、その導入コストはどのようになっているか、併せて残留リスクの見積りと低減対策を検討していくべき。
3)ICTの活用
(1)実現に向けた課題
- スマートフォンの普及によりデータを蓄積・分析し、現場にフィードバックできるようになった。現場ベースでPDCAサイクルを廻せるようになることで、省力化など農業の変革につながるのではないか。
- 単なるコスト削減のためにICTを活用すると縮小均衡の負のスパイラルに陥っていくだけでパフォーマンスの向上に繋がらない。発想を転換してICTの導入により「担い手の役割の変革」を実現し、経営の変革・発展につなげていくというプラスのスパイラルを描くことが重要。
- 農業現場の意見を聞いていると、ICT導入に対する農業者の関心は、若者の方が強いと感じる。今後導入促進を図っていくためには、各社バラバラになっている規格の統一化が必要。
- IT企業には農業現場とのチャネルがないほか、経営マインドやITの詳しい知識がない生産者も多いため、農業における市場の見極めが難しい。
- 人とIT、ロボット技術の組合せによる農業の高度化に期待しているが、現在は導入を判断する上での経営状況をベンチマークする指標がない。このほか、農薬の使用基準などもホームページを見ながら手で一つずつ入力するしかないなど、情報基盤も脆弱。
(2)公的研究機関とIT企業の連携強化
- マッチングにより研究機関が有する成果が共有されれば、今後の商品開発に当たっての素材としての活用が期待されることから、積極的に参画していきたい。
- マッチング企画には期待しているが、その際、ユーザーたる生産者も参画してマッチングしていくことが必要。
- 以上 -
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