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茶人に聞く、茶事をもっと身近に

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和ごはん×茶懐石

茶懐石と聞いたことがあっても、それが茶道流の“おもてなし”である『茶事』の一環であることは、案外知られていません。茶事とは、お茶を愉しむためのパーティーのようなもので、茶懐石はその中で提供される軽食のこと。敷居の高いものと思われがちな茶道の世界について、茶懐石を入り口に覗いてみましょう。

茶懐石1茶人に聞く、茶事をもっと身近に

総合芸術とも言われる日本の伝統・茶道。その流派は数百以上もあるそうです。いずれも、亭主がお客様に濃茶と薄茶を出すことを軸に、茶道具や美術品、季節の設え、庭園、そして懐石など、文化や芸術鑑賞を含めた細やかな演出による繊細なおもてなしを行います。茶事はその一連の流れのことで、通常4時間くらいかける優雅な宴です。茶道や茶事をもっと気軽に体験してお茶の世界の楽しさを知ってもらいたいと、都内で茶室バー、茶懐石料亭といった茶事体験型店舗を営む茶人・宇田川宗光さんを訪ねました。

茶事と茶会

茶事は通常、亭主が親しい人を招待して行われる少人数のプライベートな集い。茶事が懐石を含むフルコースである一方、茶会は濃茶または薄茶だけを振る舞うもので、食事は懐石を簡略化した『点心』と呼ばれるお弁当が供され、大勢でお茶をいただきます。

懐石・茶懐石とは

懐石とは、修行僧が空腹を凌ぐために、温めた石(温石)を懐に入れたことが語源。遠路遥々やって来たお客様に、茶の湯が沸くまでの間、「お腹を温める程度ですが」と軽食やお酒を勧め、メインであるお茶をより美味しく飲んでもらおうという心遣いです。近年では和食のコース料理を懐石と呼ぶことも多いため、茶事における懐石を『茶懐石』と言うようになりました。

一般的な茶事の流れ

1.寄付(よりつき)と呼ばれる待合室でウェルカムドリンクの白湯をいただきながら、身支度を行い、亭主の案内を待ちます。
2.手を洗い、口をすすいで茶室の席につきます(席入り)。この時、掛け軸などの設えや茶道具を鑑賞し、調度品について亭主に質問したり、感想を述べたりします。
3.亭主が炉に炭を焚べる『炭点前(すみてまえ)』を行い、お湯を沸かすために茶釜を炉にかけます。茶の湯が沸くまでの間、軽い食事として一汁三菜の懐石とお酒が振る舞われます。
4.主菓子(おもがし)と呼ばれるお茶菓子が出されます。意外ですが、この時、お茶は出ません。お客様は一旦庭へ出て、お茶の用意ができるまで庭を愛でたり、お手洗いに行ったりします。
5.銅鑼の音を合図に茶室に戻り、亭主が立てた濃厚な濃茶が提供されます。この時、参加者一同で回し飲みします。これには、分かち合ったり、茶の仲間として心を寄せ合ったりする意図があるそうです。それから干菓子、薄茶をいただき、終了します。薄茶は銘々のお茶碗で振る舞われます。
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宇田川さんがすすめる茶事 茶事は主役がお茶のホームパーティー

本来の茶事の目的はお客様をもてなし、芸術を鑑賞し、酒を酌み交わしながら謡を披露したり、会話を楽しんだりするもの。そのメインディッシュがお茶であり、一連の流れをゆっくり愉しむ時間も含めてお茶事です。お茶事にお招きした方の多くが、「お茶席でお料理食べたりお酒を飲んだりしてもいいんだ!」「茶事はこんなに楽しいんだ!」と驚かれることが多いです。でも、いざ茶道のお稽古に行くと、お手前の練習から始まる。お茶事の“愉しむ”部分を体験できるところがないですよね。それなら作ろうと思い、店舗を開きました。お稽古やお作法は、後から学びたい人が学べばいい。まずは、私が幼い時にワクワクしたように、皆さんにもお茶事が楽しいということを知ってほしいと思っています。
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通常、寄付と呼ばれる待合室で供される白湯も、ここでは主菓子と共に

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茶室バーでは抹茶を使ったカクテルも提供。茶道の敷居を低くする小粋な仕掛け

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人気アニメとコラボした九谷焼の器。器を愛で愉しむのも茶事の一環

お気に入りの茶道具を持参する、“主人”としておもてなし体験も

店舗では気軽に体験していただくことが目的なので、正式なお茶事をアレンジして、2時間くらいにしています。また、ご希望があれば、ご自身の茶道具や美術品をお持ちいただいたり、主人を務めていただいたりと、店舗の茶室でおもてなし側を体験していただくことも可能です。

「茶道・茶事を身近に感じてもらいたい」という宇田川さんの原点は、幼いころ、自宅で度々体験した茶道・香道の宴だったそう。隠れ家のような茶室、薄明かり、美味しい食事、カジュアルな宴、厳粛な雰囲気。宇田川さんから伺うお茶の世界は和の魅力にあふれていました。現代にアレンジされた茶事体験から伝統文化に触れてみてはいかがでしょうか。

プロフィール

うたがわ・そうこう

1974年東京生まれ。宗和流当代。幼い頃から茶道・香道などが身近な環境で育ち、3歳で志野流に入門。大学時代に宗和流に入門。十六代堀宗友に茶を学び、十七代増田宗蒔より代を譲られて十八代を継ぐ。大徳寺真珠菴二十七世住職山田宗正に得度し、寒鴉齋の号を授かる。正座なしに茶事・茶道体験ができる立礼茶室「夜咄Sahan」、本格的な茶室を備える「南青山 即今」を営む。根津美術館顧問。

取材協力

南青山即今

南青山 即今

所在地 東京都港区南青山5-12-4全菓連ビル B1F
電話番号 03-6427-7787
営業時間 11時30分~15時00分(L.O.13時00分)、17時00分~22時00分(L.O.20時00分)
※事前予約制
※営業日はお問い合わせください

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お問合せ先

大臣官房新事業・食品産業部
外食・食文化課食文化室

代表:03-3502-8111(内線3085)
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