おうちで茶懐石!大切なのはお客様を思う心
テーマ
和ごはん×茶懐石
前回ご紹介した茶事と茶懐石。自宅でもそのおもてなしの心や精神を再現できたら楽しいですよね。今回は、自宅の一角に設えた茶室をリビングとして使いこなし、日常に茶道の心を取り込んでいる茶人・鹿持渉さんに、おうちでできる茶懐石レシピと設えを教えていただきました。
茶懐石2おうちで茶懐石!大切なのはお客様を思う心
茶道、茶事の精神は、お客様の顔を浮かべながら、いかに喜んでいただくかを考えておもてなしをすることです。豪華なものというよりも、ちょっと美味しいものや癒しの空間を提供する配慮や気持ちが重要な要素になります。また、会話を楽しむのも茶懐石の大切なエッセンスです。あなたも“亭主”になって、お客様を招待してみましょう。
おうちで茶懐石の3つのポイント
【空間の設え】
お茶室には季節に応じたお軸(掛け軸)や生花などが飾られています。和室がなくても、食卓にテーブルクロスを掛け、季節のお花を飾るだけでもおもてなしになります。美術品やアートは書に限らず、お気に入りの絵画や写真を飾ったり、お香を焚いたりしても良いでしょう。
【ご飯は鍋で炊く】
ご飯は電気炊飯器で炊く方がほとんどだと思いますが、茶懐石では鉄鍋でガス炊きします。鉄鍋をわざわざ買うのは大変なので、ご自宅にある一番厚手のお鍋で炊いてみましょう。
【お菓子とお茶】
地元で人気のお店のお菓子や、有名店のお菓子など、少し物語のあるお菓子を用意すると良いでしょう。また、お抹茶は立てられなくても、急須で緑茶を正しくおいしく淹れれば十分です。最高級でなくとも、ちょっといいお茶を用意して、たっぷりと茶葉を使い、適温で淹れるだけで、驚くほど美味しくなります。
茶懐石コース手順
今回は、出汁をたっぷり効かせた茶懐石料理を作ります。ご家庭の場合、順番にはあまりとらわれずに楽しむことを優先しましょう。ご飯と汁のお代わりやお酒は、合間合間にお勧めします。
1.向付(むこうづけ)、汁、飯
飯碗と汁椀はどちらも蓋付きが正式ですが、なければ普通のお椀を使いましょう。ご飯を手前左、汁(味噌汁)を手前右、向付(お刺身やなます)を奥と、三角形を作るように配置します。折敷(おしき)は立ち上がり部分を箸置きとして使いますが、フラットな通常のお盆を使う場合は、箸置きを用います。向付はお刺身にすると簡単です。
2.お酒
元来は日本酒を盃で勧めるものですが、おうちの場合、お酒の種類はお客様の好みに合わせてワインでも何でもかまいません。お料理に合い、美味しく楽しいことが肝心です。
3.炊き合わせ
汁椀がお味噌汁なので、こちらはすまし汁仕立てのあっさりした野菜の煮物などが良いでしょう。
4.焼物
魚や鶏を焼いたものが多いですが、他の調理法でもかまいません。
5.湯桶(ゆとう)
お焦げのお湯漬けと香の物をお出しします。お焦げができていなかったら、普通のご飯でもかまいません。
6.主菓子と緑茶
正式には主菓子、濃茶、干菓子、薄茶の順ですが、難しければ主菓子と緑茶で代替します。
茶懐石の簡単レシピ
出汁をたっぷり効かせた一汁三菜の茶懐石を作ってみましょう。驚くほどシンプルで、誰が作っても失敗の少ない意外な調理法を教えていただきました。どれも薄味で上品な味わいで、素材の旨味をダイレクトに堪能できるものばかりです。
ガス炊きのご飯
使用する鍋はホーロー鍋やストーブ鍋がお勧めですが、土鍋や圧力鍋など、厚手の鍋なら何でも大丈夫です。火加減は鍋によって多少変わります。
調理時間約20分(浸け置き時間・蒸らし時間は除く)
材料2合分
米 | ・・・ | 2合 |
---|---|---|
水 | ・・・ | 200ml |
作り方
- 米を研ぎ、60分ほど水に浸ける。
- 米の水を切り鍋に入れ、分量の水を注いで蓋をし、強火にかける。
- 沸騰したら弱火にして10分炊き、火を止め、15分ほど蒸らす。
【蒸らしについて】
本来の茶懐石では蒸らしの違いで3回ご飯をお出しします。
蒸らしていない炊き立てをほんの一口だけ飯碗によそい、食べていただきます。その後、時間を置いて、少し蒸らしたもの(10分前後)、しっかり蒸れたもの(20分前後)を順番に出し、味の変化を楽しんでいただきます。
【お焦げの作り方】
1.ご飯を鍋肌に薄く残し、中火にかける。
2.パチパチ音がしてきたら弱火にして、菜箸で鍋肌の米を軽く突いて剥がれてくるくらいまでじっくり炙る(30分くらい)。
※お焦げは茶懐石の最後に湯桶(お茶漬け)としてたくあんと一緒に出します。
ズッキーニの味噌汁
お客様へのサプライズにもなる、ブラックペッパーがポイントのちょっと珍しいお味噌汁です。味噌は、白味噌と赤味噌の合わせを使います。割合は、暑い時期は赤味噌を多くし、寒い時期は白味噌を増やします。秋は気候の良い季節なので、半々で良いかもしれません。
調理時間約20分
材料4人分
ズッキーニ | ・・・ | 小1本 |
---|---|---|
水 | ・・・ | 600ml |
パック入りの出汁 | ・・・ | 1袋 |
味噌 | ・・・ | 白味噌と赤味噌併せて大さじ2.5 |
粗挽きのブラックペッパー | ・・・ | 少々 |
作り方
- 分量の水に出汁パックを入れ、強火にかけ、沸騰したら弱火にし、5分ほどぐつぐつ煮て出汁パックを取り出す。
- ズッキーニは4つに切り、縦に半分にする。
- 小鍋にお湯を沸かし(分量外)、(2)を入れて4~5分茹で、椀に盛る。
- (1)味噌を溶き、一煮立ちさせたら椀に注ぐ。
- アクセントに粗挽きのブラックペッパーを振る。
秋鮭の塩焼き
フライパンにオーブンシートを敷いて焼くので、失敗は皆無、後片付けも楽々。生鮭ではなく、甘塩鮭を使っても良いでしょう。
調理時間約25分
材料4人分
生鮭 | ・・・ | 4切れ |
---|---|---|
塩 | ・・・ | 少々(甘塩鮭の場合は不要) |
作り方
- 鮭の両面にまんべんなく塩を振り、1~2分馴染ませる。
- フライパンにオーブンシートを敷き、鮭を並べ、途中で返しながら弱火で20分焼く。
えのき茸とほうれん草の炊き合わせ
すまし汁仕立ての簡単な煮物です。えのきとほうれん草の長さを揃えるのがポイントです。
調理時間約20分
材料4人分
えのき | ・・・ | 1パック |
---|---|---|
ほうれん草 | ・・・ | 1把 |
出汁パック | ・・・ | 1袋 |
水 | ・・・ | 300ml |
塩 | ・・・ | 小さじ1/2 |
作り方
- えのきは根本を切り落とし、半分に切る。
- ほうれん草は下茹でし、えのきと同じ幅に切り揃える。
- 出汁パックと水を鍋に入れ、沸かす。ぐつぐつ言い始めてから5分ほど煮たら出汁パックを取り出す。
- (2)を入れ、さっと煮込み、塩で味を整える。
お問合せ先
大臣官房新事業・食品産業部
外食・食文化課食文化室
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