昆布〆(こぶじめ)|にっぽん伝統食図鑑
昆布〆(こぶじめ)

富山県昆布〆(こぶじめ)
分類(大)
水産
分類(小)
海藻製品
主な使用食材
昆布、カジキ・タイなど
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主な伝承地域
県内全域
食品概要(特徴・種類)
総務省統計局の家計調査(2024年)によると、富山市の一世帯あたりの昆布の年間支出金額は1,618円で、全国平均(702円)の2倍以上と、群を抜いた“昆布王国”であり、中でも新鮮な刺身を旨味豊かな昆布で挟んだ「昆布〆」は、富山の食文化を代表する一品である。
もともとは江戸時代に、北前船が運んできた北海道の昆布と富山湾で捕れる新鮮な魚を組み合わせて誕生した物で、冷蔵庫がなかった当時、生魚を保存する手段として昆布に挟んで余分な水分を吸収する方法が考案された。その後、昆布の旨味の染み込んだ魚は味わい深く、身は熟成され程よい弾力が生まれるなど、その美味しさや食感により広く定着していった。
昆布〆に使う魚は、富山県民にサスと呼ばれるカジキマグロが定番だが、他にもタイやヒラメといった白身魚、富山名産のシロエビやホタルイカなども使われる。近年では、魚以外に肉や野菜、豆腐などの昆布〆も楽しまれている。
昆布はカロリーがゼロなのに加え、骨を強くするカルシウム、血圧を下げるカリウム、大腸の動きを活発にするアルギン酸などが豊富に含まれていることから、美容と健康に優れた食材として注目されている。
歴史・文化、関連行事
国内で採れる昆布の9割が北海道産でありながら、富山県が“昆布王国”と呼ばれるほど昆布を消費するようになったのは、江戸時代の海上輸送を担った北前船の役割が大きい。当時、北前船は“昆布ロード”と呼ばれる北海道~日本海沿岸~薩摩を盛んに航行し、富山の米や綿織物、酒などを北海道や日本海沿岸部で売る代わりに、北海道から昆布やニシン、ニシン肥、サケ、マスなどの海産物を仕入れていた。特に昆布は大量に購入され、東岩瀬(富山市)、伏木(高岡市)、水橋(富山市)と言った寄港地から富山全域で消費されていた。
また、明治中頃には、新たな安定収入を得るため多くの人たちが富山から北海道の釧路や根室に移住したり、出稼ぎに出向いたりした。特に昆布の産地である羅臼の人口の70パーセントは富山県ゆかりの人たちで占められており、そうした人たちが富山に帰郷する際に昆布を持ち帰り、身近な食材として浸透していった。
その後、1973年に県内で初めて白身魚の昆布〆が商品化され、県内はもとより全国へと広がっていった。
製造方法
昆布の片面に酢を塗り、その上に刺身にした魚を敷き詰め、刻んだ生姜を載せる。その上に昆布を載せ、昆布と魚がしっかりとくっつくようにラップを被せて軽く重石をして一晩寝かせる。寝かせる時間の長さによって味わいや身の弾力に違いが出る。昆布〆用の昆布はスーパーなどで販売されている。
かつては白身魚が定番であったが、最近ではよし菜やわらびといった山菜を使うことも多い。山菜を使う場合はアクをしっかり抜いてから使用する。
保護・継承の取り組み
富山県商工会議所では、昆布〆の美味しさや優れた栄養価に着目し、昆布〆を富山ブランドとして全国に発信しようと2005年に「とやま昆布〆研究会」を発足し、情報発信やイベントの開催に取り組んでいる。
また、旧細入村(富山市)では、昆布に山菜を重ねて保存する習慣があり、2008年、それを踏まえて地元商工会が村おこしの一環として山菜の昆布〆を復活させ、道の駅などで販売された。
今でも家で作る人が多いが、スーパーや大型商業施設などで手軽に購入することができる。県内のお土産店や昆布専門店などでの取り扱いも増え、観光客も購入しやすい。
主な食べ方
昔からハレの日やおもてなしの一品として振る舞われることが多いが、近年は手軽に購入できるということもあり、日頃からおかずや酒の肴として好んで食されている。
昆布〆された魚は昆布の旨味が移っているため、何も付けずにそのまま食べても良い。また、昆布〆に使った昆布はそのまま食べても美味しいが、佃煮や煮物などにできる。




