特集1 東日本大震災からの復旧・復興 みんなの力で、未来(あした)へ(5)
ホタテ養殖の復旧・復興現場レポート
大津波で養殖施設や作業船が流され、やむなく廃業する者も
そこで、少人数でも効率よく作業できるよう「自動耳あけ機」などを導入し、今期、3年ぶりに出荷再開!
唐丹町漁業協同組合(岩手県釜石市)
![]() ![]() 最新の耳あけ機は、貝を1枚ずつそろえて投入するだけで、自動的に「位置決め・保持・穴あけ」が行われる。老若男女誰にでも扱えると評判 ![]() 耳の穴にピンを通す作業は手作業で行うが、耳あけ機があけた穴は「位置決め」が完璧なので、以前に比べ、ずっと簡単に通すことができる |
岩手県の沿岸部は、ホタテやカキなどの養殖業や、サンマやサケなどの漁業が盛んです。しかし、東日本大震災の津波で養殖施設は破壊され、漁船の9割が流出。県内の漁業者が受けた被害は、総額1122億円(漁港施設を除く)にのぼりました。 養殖業でも多くの被害が発生し、釜石市にある唐丹町(とうにちょう)では、入り江に押し寄せた津波により、海上の養殖施設をはじめ、作業船、陸上の作業所などのすべてが壊滅。 唐丹町漁協参事の佐々木久一郎(きゅういちろう)さんは、「出荷直前だった400tのホタテも流され、途方に暮れるしかありませんでしたね」と話します。 再建に向けて動き出したものの、高齢者を中心に、廃業する生産者も出て、震災前の約100名から50名にまで減ってしまいました。 そこで漁協では、国の補助を活用し、養殖施設や陸上の作業施設を再建するとともに、少人数でも効率よく作業できるよう、最先端の養殖機器を導入することに。 まず取り組んだのは、「耳あけ」作業の省力化です。ホタテの養殖では、貝殻の端の「耳」と呼ばれる部位に穴をあけ、ロープにピンで固定し、海中に沈めます。震災前は、錐(きり)を使っての手間のかかる作業でしたが、センサー感知式の「自動耳あけ機」を導入。これにより、以前は1分で10個に穴をあけるのが精一杯だったものが、60個まで処理できるようになりました。 さらに、ホタテを固定するためのピンをロープに取り付ける「ピンセッター」や、出荷前のホタテを磨く「クリーンカッター」なども導入。 こうして、平成24年7月には稚貝の育成を再開。そして、平成26年9月、震災後、初めてホタテの水揚げが行われました。水揚げ量は震災前の半分程度でしたが、久しぶりの水揚げに、漁港は活気づきました。 佐々木さんは、「消費者の皆さんの応援には、心から感謝しています。その気持ちに応えるためにも、一生懸命、質のいいホタテを作り続けていきたいです」と、意気込みを語ってくれました。 ![]() |