特集1 東日本大震災からの復旧・復興 みんなの力で、未来(あした)へ(6)
サンマ漁の復旧・復興現場レポート
地震直後の大津波に巻き込まれ、自慢の船は座礁……
一時は廃業を考えたものの、国の補助金を活用し最新の“省エネ漁船”を新造して、震災前の水揚げ量まで回復!
大船渡市漁業協同組合(岩手県大船渡市)
省エネ・省コストに優れた第二十八桜丸。安全性・居住性も向上しており、甲板での作業を操舵室からモニタリングできるカメラが設置されたほか、居住区にはエアコンも装備 |
岩手県は、日本有数のサンマの水揚げ地。震災前、大船渡市魚市場には年間約2万1700tの水揚げがありました。 ただ、燃料価格の高騰などで、漁業者の経営状況は極めて厳しい状況に、そこに追い打ちをかけるように東日本大震災が発生したのです。津波により、大船渡市漁協では、登録していたすべての漁船1401隻の約9割が大破するなど、甚大な被害が。 新沼長福(ちょうふく)さんのサンマ漁船「第二十八桜丸」(19t)も、港に係船中、津波に巻き込まれて座礁。修理不能なダメージを受けたため、解体処理するほかありませんでした。 新沼さんは、「漁師は、船がないと何もできません。新しい船を造る資金もなく、一時は廃業を考えました」と、当時を振り返ります。 漁協は、国の支援(共同利用漁船等復旧支援対策事業など)を利用し、漁船や加工施設などの再建に着手。新沼さんも、漁協が整備した船で、漁を再開することにしました。 こうして平成25年に竣工した、新しい「第二十八桜丸」には、震災前からの経営課題である、燃料費の高騰を克服できるよう、さまざまな“省エネ装備・省エネ設計”が盛り込まれています。 まず、サンマの動向を、遠距離から探索できる「スキャニングソナー」を搭載。より早くサンマの群れに到達できるようになったことで、操業時間が短縮されました。 さらに、サンマをおびき寄せる漁灯を、白熱灯からLED電灯に変更したことで電力の消費量が大幅ダウン。 また、船の形がスマートになったことで、水の抵抗が少なくなり、燃料の使用量も大きく減りました。 竣工した平成25年は、操作に慣れないことや漁場の形成状況の問題があり、水揚げ高が伸び悩みましたが、平成26年は、震災前の水揚げを上回りました。 「経営はまだまだ苦しいですが、船は希望の光。新しい装備を上手に利用し、収益力を上げていきたいです」と、新沼さんは力強く話します。
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