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特集1 東日本大震災からの復旧・復興  みんなの力で、未来(あした)へ(7)

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除染作業の復旧・復興現場レポート

原発事故直後から、農地の除染研究を始めた万福裕造さん
寝る間も惜しんで開発した“4つの除染技術”で、飯舘村の米や野菜の、放射性セシウム濃度が基準値以下に!
(独)国際農林水産業研究センター/万福裕造さん


「はじめのうちは、実証試験に対して懐疑的な人もいましたが、実際に農地に足を運び、疑問を解消することで信用していただけるようになりました」と万福さん(右)

「はじめのうちは、実証試験に対して懐疑的な人もいましたが、実際に農地に足を運び、疑問を解消することで信用していただけるようになりました」と万福さん(右)

セミナーで、放射性物質や農地除染について説明。飯舘村はもちろん、全国の大学などでも行い、計20回以上実施した

セミナーで、放射性物質や農地除染について説明。飯舘村はもちろん、全国の大学などでも行い、計20回以上実施した

セミナーで、放射性物質や農地除染について説明。飯舘村はもちろん、全国の大学などでも行い、計20回以上実施した

現在、万福さんは除染技術開発の担当からは離れているが、定期的に飯舘村を訪れている

東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故により、 福島県の周辺地域などが、放射性物質で汚染されました。

政府は、事故直後から放射性物質を除去する研究開発を開始し、農林水産省でも、農地などの除染技術の開発をスタート。その中心人物の一人が、当時農林水産技術会議事務局に勤務していた万福裕造さん(現、(独)国際農林水産業研究センター)です。

「事故後、放射性物質除去の技術開発を担当するようになり、平成24年4月から2年半の間、福島県飯舘村の復興対策課に派遣されました。地域の方々のために、一日でも早く効果的な除染方法を見つけようと、睡眠時間も削って技術開発や地元との調整に取り組みました」

万福さんは、飯舘村内での除染試験で、研究自体だけでなく、実験場所の選定や住民説明、関係者との調整など研究の裏方としても大活躍。除染方法の確立や農作物に含まれる放射性物質の吸収抑制対策の確立に大きく貢献しました。

「放射能の専門家ではないわたしが、除染方法や吸収抑制対策の開発を進めることができたのは、飯舘村のみなさんの協力があってこそ。一から勉強し、わかりやすい説明に徹しました」

万福さんたちが開発した除染技術は、環境省の「除染関係ガイドライン」に反映され、飯舘村では平成25年から環境省による本格的な除染作業がスタート。除染後の農地で続けている農作物の試験栽培で育てた稲や野菜などでは放射性セシウム濃度はいずれも基準値以下となっています。

「環境改善は着実に進んでいます。ただ、除染が完了しても、村に戻ってみえるのは60代以上の方が中心でしょう。高齢化によって自治体の機能が低下するなかで、今後どうやって村を維持していくのか、復興への課題はまだまだ山積みですよ」

万福さんら技術陣が開発した4つの除染方法
[1] 表土削り取り
事故後未耕起の農地では、放射性セシウムの大半は土壌の表層に存在する。表層ごと物理的に除去することにより高い除染効果が望めるが、除去した大量の土壌を持ち出す必要がある。

[2] 反転耕
土壌の表層と深層を反転プラウ(鋤の一種)で入れ替える方法。簡便で、除去した土壌を持ち出す必要もない。ただし、放射性物質は除去されないため、高濃度汚染地域には不向き。

[3] 深耕
土壌を30cm近い深層まで耕すことにより、土を攪拌し、放射性セシウムを希釈する。削り取りや反転耕より効果は劣るが、最も簡易な方法。

[4] 水による土壌攪拌除去
土壌中の放射性セシウムが細かい粘土質に吸着する特性を活用する。田んぼに入水して土壌と攪拌し、水中に懸濁した粘土を排水によって除去した後、排水は沈殿などによって水と粘土に分ける。取り出した粘土の処分などが課題となるほか、土壌によって除染効果はばらつく。